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第八章 二年次
第222話 ライの報告
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ライの方には、チェリシアとペシエラの二人が立ち会っている。こっちも疲弊は大きいものの、さすがは上位の魔物であるためか、意識ははっきりしているようだ。
さて、このライだがレイニとは相性が悪い。というわけで、カイスの村の事もあるので、レイニには礼だけ言って帰ってもらっていた。
ペシエラはライの状態は大丈夫と判断して、パープリア邸で見た事を報告してもらう事にした。
「で、ライ。今日体験した事を報告して下さるかしら」
口調はいつもの強気なものだが、表情は非常に優しい。ライは魔物とはいえどアイリスの配下にあるので、ペシエラにとっては身内のようなものだからだ。
「体調が優れないようだったら、無理に答えなくてもいいからね」
チェリシアも気遣っている。
自分に向けられる二人の感情を、魔物であるライは少し戸惑った。しかし、主従関係にあるのだから、ここは答えねばならないと、ライは少し力を振り絞った。
「パープリア男爵は思った以上に恐ろしい人物です。彼が唯一側に置くインディも同様です」
こうして、ライによるパープリア男爵邸の潜入調査の報告が始まった。
男爵は、インディ以外の人間をまったく信用しておらず、すべて駒のように思っている。それは妻であるアメジスタも同様で、自分の役に立たないと見ると、閉じ込めた上で微弱な毒で衰弱させていたようだ。
「あの男の下で主人様があのまま育っていたらと思うと、ぞっとする思いです」
思い出しただけで、ライは怒りが込み上げてきているようだ。
「気持ちは分かるけれど、今は報告が先よ。続けて」
ペシエラはバッサリと言い切った。ライもそれを受け入れる。
「はい、分かりました」
武術大会の会場の召喚陣に魔力を送っていた魔道具は、男爵の部屋にあり、それが禁法の道具とされているデーモンハートだった事を伝える。チェリシアもペシエラも、それが何か分からずに首を傾げている。
「デーモンハートは、私たち魔物の死骸が結晶化したものです。大体は化石と呼ばれる漆黒の石になります。私のようなハイスプライトも、レイニ様とは違う形ですが進化した妖精なんです。その原因の一つが、デーモンハートと言われています」
ライの説明によると、魔物の死骸が瘴気としてこもった石や宝石に変化したものがデーモンハートであり、それは人や妖精たちの心を歪めてしまうものだという。幻獣や神獣であれば影響はかなり軽減されるが、危険極まりない物である。
「稀に、心がそもそも黒く染まりきった者であれば、石に込められた魔力を自由に使う事ができます。男爵はこの条件をクリアして、会場の召喚陣を発動させたのでしょう。発動には、学生一人を生贄にしようとしたみたいですが」
ライは落ち着いて説明していく。しかし、聞いている側はとても落ち着いていられるものではない。
「それと、パープリア男爵が今回の事件の黒幕で間違いないですね。一日以上屋敷を空ける予定は今回が初めてらしいですし、何より男爵の部屋にデーモンハートがあったのですから」
ライは強く断言した。ライの話で、チェリシアもペシエラも同じように強く確信を持った。
ただ、ライは続けて気になる事を話し始めた。
「デーモンハートの使用は禁法です。インフェルノ様が仰るには、禁法を使う事には相当の代償が伴うそうなのです」
「という事は?」
「はい、禁法を使用した事を対象に知られてはならないのです。今回はその使用対象である私に知られました。今頃、彼らには反動が来ているはずです」
詳しくは知らないらしいが、禁法とそれに伴う代償はチェリシアたちにとって初耳であった。ゲームにも逆行前にも聞いた事のない話だからである。
「魔法だって軽微過ぎて気にならないですが、代償を伴ってますよ。魔法を使った後に疲れるのがそれです」
こう言われて納得するチェリシアたち。そこで、
「ライ、とりあえず今日の事が記録された髪飾りを預かるわ。疲れたでしょうし、今日はゆっくり休んで下さい」
「はい。お気遣いありがとうございます」
ライはそう言って、髪飾りを外してチェリシアとペシエラの二人に預けた。
「はぁ、明日はロゼリアたちと一緒に、またお城ね」
「そうですわね、お姉様」
いつもの事ではあるが、今回の事態もかなり深刻なので、いろいろと胃が痛くなってくる。
なんにしても、パープリアとの因縁は最終局面を迎える事になりそうだった。
さて、このライだがレイニとは相性が悪い。というわけで、カイスの村の事もあるので、レイニには礼だけ言って帰ってもらっていた。
ペシエラはライの状態は大丈夫と判断して、パープリア邸で見た事を報告してもらう事にした。
「で、ライ。今日体験した事を報告して下さるかしら」
口調はいつもの強気なものだが、表情は非常に優しい。ライは魔物とはいえどアイリスの配下にあるので、ペシエラにとっては身内のようなものだからだ。
「体調が優れないようだったら、無理に答えなくてもいいからね」
チェリシアも気遣っている。
自分に向けられる二人の感情を、魔物であるライは少し戸惑った。しかし、主従関係にあるのだから、ここは答えねばならないと、ライは少し力を振り絞った。
「パープリア男爵は思った以上に恐ろしい人物です。彼が唯一側に置くインディも同様です」
こうして、ライによるパープリア男爵邸の潜入調査の報告が始まった。
男爵は、インディ以外の人間をまったく信用しておらず、すべて駒のように思っている。それは妻であるアメジスタも同様で、自分の役に立たないと見ると、閉じ込めた上で微弱な毒で衰弱させていたようだ。
「あの男の下で主人様があのまま育っていたらと思うと、ぞっとする思いです」
思い出しただけで、ライは怒りが込み上げてきているようだ。
「気持ちは分かるけれど、今は報告が先よ。続けて」
ペシエラはバッサリと言い切った。ライもそれを受け入れる。
「はい、分かりました」
武術大会の会場の召喚陣に魔力を送っていた魔道具は、男爵の部屋にあり、それが禁法の道具とされているデーモンハートだった事を伝える。チェリシアもペシエラも、それが何か分からずに首を傾げている。
「デーモンハートは、私たち魔物の死骸が結晶化したものです。大体は化石と呼ばれる漆黒の石になります。私のようなハイスプライトも、レイニ様とは違う形ですが進化した妖精なんです。その原因の一つが、デーモンハートと言われています」
ライの説明によると、魔物の死骸が瘴気としてこもった石や宝石に変化したものがデーモンハートであり、それは人や妖精たちの心を歪めてしまうものだという。幻獣や神獣であれば影響はかなり軽減されるが、危険極まりない物である。
「稀に、心がそもそも黒く染まりきった者であれば、石に込められた魔力を自由に使う事ができます。男爵はこの条件をクリアして、会場の召喚陣を発動させたのでしょう。発動には、学生一人を生贄にしようとしたみたいですが」
ライは落ち着いて説明していく。しかし、聞いている側はとても落ち着いていられるものではない。
「それと、パープリア男爵が今回の事件の黒幕で間違いないですね。一日以上屋敷を空ける予定は今回が初めてらしいですし、何より男爵の部屋にデーモンハートがあったのですから」
ライは強く断言した。ライの話で、チェリシアもペシエラも同じように強く確信を持った。
ただ、ライは続けて気になる事を話し始めた。
「デーモンハートの使用は禁法です。インフェルノ様が仰るには、禁法を使う事には相当の代償が伴うそうなのです」
「という事は?」
「はい、禁法を使用した事を対象に知られてはならないのです。今回はその使用対象である私に知られました。今頃、彼らには反動が来ているはずです」
詳しくは知らないらしいが、禁法とそれに伴う代償はチェリシアたちにとって初耳であった。ゲームにも逆行前にも聞いた事のない話だからである。
「魔法だって軽微過ぎて気にならないですが、代償を伴ってますよ。魔法を使った後に疲れるのがそれです」
こう言われて納得するチェリシアたち。そこで、
「ライ、とりあえず今日の事が記録された髪飾りを預かるわ。疲れたでしょうし、今日はゆっくり休んで下さい」
「はい。お気遣いありがとうございます」
ライはそう言って、髪飾りを外してチェリシアとペシエラの二人に預けた。
「はぁ、明日はロゼリアたちと一緒に、またお城ね」
「そうですわね、お姉様」
いつもの事ではあるが、今回の事態もかなり深刻なので、いろいろと胃が痛くなってくる。
なんにしても、パープリアとの因縁は最終局面を迎える事になりそうだった。
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