逆行令嬢と転生ヒロイン

未羊

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第九章 大いなる秘密

第246話 妨害のゴーレム

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 儀式はかなり進み、デーモンハートから漏れ出る瘴気はどんどんと黒色が薄れてきていた。浄化されて純粋な魔力となってきた証である。
 だが、それを阻もうとするゴーレムが場を挟み込むように二体現れ、ついには攻撃を仕掛け始めた。全身岩でできており、人の頭ほどの大きさの岩を飛ばしてくる。だが、それはガレンたちには届かない。ライが風魔法を操って弾き返しているのだ。しかもゴーレムに向けて弾き返しているので、岩同士がぶつかってゴーレムはダメージを受けている。
「こいつら、精霊の森に住む土の精霊だわ。私と同じようにデーモンハートで狂ったのね」
 ライは弾き返した時の感触で、自分と同じ精霊の森の住人だと気付いた。ライが正気に戻ったのは、ペシエラの圧倒的強さに心折られた事とアイリスとの契約があってこそ。つまり、この二体のゴーレムを正気に戻す事は、今は困難だという判断した。
「私と同じように正気に戻すのは、今は無理よ。とにかく力を使わせて弱体化しないと!」
「了解した」
「とにかく倒せばいいんだな?」
 ライの言葉に、王子二人はそれぞれの反応を示す。
「無力化させるだけなら方法は問わないわよ」
 脳筋なペイルの発言だが、精霊なら簡単に死なないからライは了承する。
「了解。そういう事ならあたいに任せな」
 戦力外のモスグリネの二人は放っておいて、キャノルが作戦があるのか自信満々に宣言していた。
「これでもあたいは暗殺者だよ。依頼とあればどこにだって出向くし、中にはガーゴイルなんか従えてる奴も居たからね」
 空飛ぶ石像の悪魔ガーゴイルとも戦っていたとは、キャノルの経歴は詳しく聞いてみたくもある。
「ゴーレムとはいっても、体を動かすには関節ってのがあるんだ」
 そう言ってキャノルは短剣をゴーレムの肩目がけて投げる。
 ガキンッ!
 弾かれたような音が聞こえたが、よく見るとゴーレムの右肩に投げた短剣が突き刺さっている。
「グ……ゴ……」
 右肩が動かなくなって、ゴーレムが混乱している。
「岩だからね。隙間を埋めてやれば動けなくなるんだよ」
 キャノルはスカートの隙間から手を突っ込んで、両手いっぱいの短剣を取り出した。
「とくと見な! あたいの暗殺者としての技術を!」
 キャノルは飛び上がって、ゴーレムの関節目がけて短剣を投げつける。刺さったと思った短剣は、すぐさま引き戻され、もう一度投げつけられる。どうやら柄の部分に糸か何かが付いているようだ。
 ガキンッ!
 何度か投げつけているうちに、ゴーレムの右腕がごとりと落ちる。
「よしっ!」
「無駄よ。相手は土の精霊なんだから、すぐに元に戻るわ」
「魔力を使わせるなら、それも手だろ? それに、ただ腕を斬り落としただけじゃない」
 ライが口を挟むが、キャノルは不敵に笑っている。
 しばらくすると、ライが言った通りに腕が元に戻ろうとする。ところが、
「ゴ……ガッ?」
 腕がくっつかない。必死に腕を戻そうとするが、どうしても少し浮いたままで止まってしまう。
「どういう事?」
「なあに、土の精霊だから、相性の悪い風魔法を忍ばせてやっただけだ。これでしばらくあいつは無力化されたはず。もう一体も止めちまおう」
「え、ええ……」
 ライは戸惑いながらも、キャノルと一緒にシルヴァノとペイルの方に加勢する。二人とも剣を使うが、さすがに巨大な岩相手では分が悪い。
 ちなみにキャノルに右腕を無効化されたゴーレムは、腕が気持ち悪いのかまったくその場から動かない。さっさと諦めて動くかと思ったが、これが意外にも足止めになっていた。
 ライはそっちも気にしながら、シルヴァノたちに加勢する。
「王子ども、岩の隙間を狙え!」
 キャノルがそう叫びながら、ゴーレムの岩の隙間に短剣を突き刺しては風魔法を送り込む。暗殺者であるキャノルは、適性は弱いながらも光と闇以外の四属性が扱える。中でも水と風はこっそりと相手の息の根を止められるとあって、適性が弱いなりに得意としていた。そのため、このような器用な事ができるのである。
 キャノルが短剣を操って目をくらましている間に、シルヴァノとペイルがゴーレムの足を狙う。
「グ、ゴガァッ!!」
 猛攻に耐えきれず、ゴーレムは足を崩されてその場に倒れ込んだ。もちろん、ペシエラたちの居ない方向へとキャノルが押し込んでだ。
 こうして邪魔に現れたゴーレム二体は、主にキャノルの活躍によって撃退されたのだった。
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