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第九章 大いなる秘密
第260話 食事会は交渉会
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チェリシアが建物に防護魔法を掛けて、ロゼリアたちは慌てて城へと戻る。兵士の慌て具合からすると相当に緊急な事態なのだろう。エアリアルボードを展開して、一気に城へと戻る。
「ロゼリア・マゼンダ、チェリシア・コーラル、ペシエラ・コーラル、以下従者三名、ただいま戻りました」
国王ダルグの待つ部屋に息を切らしながら、ロゼリアたちは駆けつけた。
息を整えながらロゼリアたちは、部屋の中に居た面々を見て驚いた。
「お前たち、どうしてそんなに慌ててるんだ? 兵士には呼んできてくれとしか頼んでなかったんだが?」
ロゼリアたちが続きを口に出すよりも先に、ペイルが驚いて尋ねてきた。その表情は驚きに満ちている。
「いえ、すぐに戻るように言われましたので、全速力で戻って来た次第ですけれど……」
息が乱れていて、あまりまともに喋れる状態ではないが、ロゼリアは理由をなんとか口にする。
「戻るように伝えろとは言ったが、すぐにとは言っていないぞ。やれやれ、俺たちが呼んでいるから待たせるのは良くないと勝手に解釈しおったな。すまなかったな、お嬢さん方」
国王なので頭は下げないが、ダルグは謝罪を口にした。
「まったく、商会の建物を手入れすると言っておったから、片付いてからでもよかったろう?」
ダルグは続けざまに確認するようにロゼリアたちに言うと、
「いえ、建物の掃除はすでに終わりましたわ。後は内装に関して話をしようと思っていたくらいですわ」
ペシエラから予想外の返答があった。これにはダルグたちモスグリネの面々は驚かされていた。ペイルとシルヴァノは「さすがだな」と言わんばかりにひたすら頷いている。
「それはちょうどよかったですな。ダルグとの昼食の際に、その辺の話をさせて頂きたい」
ペシエラの返答を聞いて、ケットシーが頭の中で算盤を叩き始めていた。人材云々も含めて、大きな金額が動くのは間違いなく、商売人として敏感に反応しているのだ。こういうところは本当に目ざとい。
とりあえず、ロゼリアたち女性陣も戻ってきた事で、モスグリネ王家の昼食会は大人数で賑わっている。昨日買い付けた魔石コンロとオーブンも早速役に立っている模様。
「それにしても、メタルゼリーの事が気になりますな。金属にお詳しいとの話ですが、どれくらいなのでしょうかな」
猫舌なのか、ふうふう冷ましながら食事をするケットシーは、ロゼリアたちに質問をぶつけてみる。
「本人曰く、六百年間で世界中の金属を食べたと言っているので、ほとんど知らない事はないんじゃないでしょうかね」
「ただ、メタルゼリーから聞くとしても、ルゼさんのように従魔化するかしないと無理だと思いますよ」
ロゼリアとチェリシアがそれぞれに答える。これにケットシーは「ふむむ……」と唸っていた。
「仕方ありませんね。年末にアイヴォリーを訪問させて頂きますので、その時にでもお話しさせてもらいましょう」
悩んでいたケットシーは顔を上げると、パッと明るい表情をしてそう締めくくった。
「内装に関してはこっちからある程度用意はさせてもらうよ。あの建物の寸法はすっかり頭に入っているからね。既に組合に絨毯などの発注は出してある。君たちは好きな物を選んでくれ」
ケットシーは最後にこう言うと、そのあとは食事に集中していた。
「素早い手配に感謝いたします。ゆっくり精査させて頂きます」
ケットシーの言葉に、ロゼリアが商会を代表して感謝の弁を述べていた。
そういえば、ケットシーが年末のアイヴォリー王国のパーティーに参加すると言っていたので、食事の後こっそりシルヴァノに確認してみた。すると、
「幻獣の頼みを断れるほど、私は偉くはないよ」
と言って笑っていた。シルヴァノは謙虚なようだった。
その後、ケットシーとダルグに連れられ、ロゼリアたちは城の一階の一室に運び込まれた内装の見本品を見にやって来た。そこに並べられたのは、モスグリネの商業組合が保管する物でも一級品の家財道具が並べられていた。
「いいんですか? 他国の商会にこれほどの品々を提供して」
一同が驚く中、ロゼリアはケットシーに慌てて確認を入れる。
「気にしなくていいよ。君たちは必ず我らがモスグリネに利益をもたらしてくれる。ボクの勘がそう言ってるから大丈夫だよ」
ケットシーがぱちんとウィンクする。人の身の丈ほどの猫がするウィンクは、いろんな意味で破壊力があった。
ケットシーの言葉を受けて、机や絨毯などを選んでいくロゼリアたち。これでマゼンダ商会がモスグリネ王国内で活動する基盤は調ったのだった。
「ロゼリア・マゼンダ、チェリシア・コーラル、ペシエラ・コーラル、以下従者三名、ただいま戻りました」
国王ダルグの待つ部屋に息を切らしながら、ロゼリアたちは駆けつけた。
息を整えながらロゼリアたちは、部屋の中に居た面々を見て驚いた。
「お前たち、どうしてそんなに慌ててるんだ? 兵士には呼んできてくれとしか頼んでなかったんだが?」
ロゼリアたちが続きを口に出すよりも先に、ペイルが驚いて尋ねてきた。その表情は驚きに満ちている。
「いえ、すぐに戻るように言われましたので、全速力で戻って来た次第ですけれど……」
息が乱れていて、あまりまともに喋れる状態ではないが、ロゼリアは理由をなんとか口にする。
「戻るように伝えろとは言ったが、すぐにとは言っていないぞ。やれやれ、俺たちが呼んでいるから待たせるのは良くないと勝手に解釈しおったな。すまなかったな、お嬢さん方」
国王なので頭は下げないが、ダルグは謝罪を口にした。
「まったく、商会の建物を手入れすると言っておったから、片付いてからでもよかったろう?」
ダルグは続けざまに確認するようにロゼリアたちに言うと、
「いえ、建物の掃除はすでに終わりましたわ。後は内装に関して話をしようと思っていたくらいですわ」
ペシエラから予想外の返答があった。これにはダルグたちモスグリネの面々は驚かされていた。ペイルとシルヴァノは「さすがだな」と言わんばかりにひたすら頷いている。
「それはちょうどよかったですな。ダルグとの昼食の際に、その辺の話をさせて頂きたい」
ペシエラの返答を聞いて、ケットシーが頭の中で算盤を叩き始めていた。人材云々も含めて、大きな金額が動くのは間違いなく、商売人として敏感に反応しているのだ。こういうところは本当に目ざとい。
とりあえず、ロゼリアたち女性陣も戻ってきた事で、モスグリネ王家の昼食会は大人数で賑わっている。昨日買い付けた魔石コンロとオーブンも早速役に立っている模様。
「それにしても、メタルゼリーの事が気になりますな。金属にお詳しいとの話ですが、どれくらいなのでしょうかな」
猫舌なのか、ふうふう冷ましながら食事をするケットシーは、ロゼリアたちに質問をぶつけてみる。
「本人曰く、六百年間で世界中の金属を食べたと言っているので、ほとんど知らない事はないんじゃないでしょうかね」
「ただ、メタルゼリーから聞くとしても、ルゼさんのように従魔化するかしないと無理だと思いますよ」
ロゼリアとチェリシアがそれぞれに答える。これにケットシーは「ふむむ……」と唸っていた。
「仕方ありませんね。年末にアイヴォリーを訪問させて頂きますので、その時にでもお話しさせてもらいましょう」
悩んでいたケットシーは顔を上げると、パッと明るい表情をしてそう締めくくった。
「内装に関してはこっちからある程度用意はさせてもらうよ。あの建物の寸法はすっかり頭に入っているからね。既に組合に絨毯などの発注は出してある。君たちは好きな物を選んでくれ」
ケットシーは最後にこう言うと、そのあとは食事に集中していた。
「素早い手配に感謝いたします。ゆっくり精査させて頂きます」
ケットシーの言葉に、ロゼリアが商会を代表して感謝の弁を述べていた。
そういえば、ケットシーが年末のアイヴォリー王国のパーティーに参加すると言っていたので、食事の後こっそりシルヴァノに確認してみた。すると、
「幻獣の頼みを断れるほど、私は偉くはないよ」
と言って笑っていた。シルヴァノは謙虚なようだった。
その後、ケットシーとダルグに連れられ、ロゼリアたちは城の一階の一室に運び込まれた内装の見本品を見にやって来た。そこに並べられたのは、モスグリネの商業組合が保管する物でも一級品の家財道具が並べられていた。
「いいんですか? 他国の商会にこれほどの品々を提供して」
一同が驚く中、ロゼリアはケットシーに慌てて確認を入れる。
「気にしなくていいよ。君たちは必ず我らがモスグリネに利益をもたらしてくれる。ボクの勘がそう言ってるから大丈夫だよ」
ケットシーがぱちんとウィンクする。人の身の丈ほどの猫がするウィンクは、いろんな意味で破壊力があった。
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