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第十章 乙女ゲーム最終年
第305話 リベンジマッチ
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迎えた学園祭最終日。武術大会は決勝トーナメントが行われる。予選を勝ち抜いた精鋭の中には、ペシエラ、シルヴァノ、ペイル、オフライト、シェイディアとこれだけ残っていた。ちなみにプラティナも今年は参加したが、運悪くヴィオレスやオフライトと同じ組になってしまい、そろってオフライトに負けて予選敗退となっていた。
「うう、私も応援に行きたかったわよ!」
そう叫ぶのはチェリシアである。うっかり自分とペシエラしかできない写真撮影を目玉にしてしまったのだから、商会の持ち場から離れられないのである。なので、
「アイリス、ライ。ペシエラの試合を目に焼き付けておいてね」
撮影魔法を身に付けている二人にお願いをしておいた。
「任せておいて、チェリシア」
「お任せ下さい」
二人とも頼もしく返事をしてくれたので、チェリシアは安心して出店を切り盛りする事が出来そうだった。
何にしても、今日も忙しくなりそうだとチェリシアは気合いを入れた。
さて、武術大会は決勝トーナメントが始まる。
まずは勝ち残った十六人が紹介され、組み合わせ抽選が行われた。
「あら、いきなりおととしのリベンジマッチができそうですわね」
「ふっ、そうだな。どれだけ腕を上げたか、直に確かめてあげよう」
というわけで、いきなり優勝候補同士の対決となった。ペシエラ対オフライトである。この決定に、場内は大いに盛り上がった。なにせこのカード、おととしは力が均衡してペシエラの方が先に体力が尽きてという、とても白熱した試合が行われたからだ。ここまでの試合を見た限り、ペシエラの体力はかなり上がっていると見られ、今回も接戦が期待できそうなのだ。
「ふむ、こちらはシェイディア嬢ですか。レディに手荒な真似はしたくないけれど、試合だから全力で相手をしてあげますよ」
「殿下と剣を交えられるとは、光栄でございますね」
シルヴァノはシェイディアとの対決となった。
こうして、決勝トーナメントの組み合わせが決まった。最初の試合はペシエラとオフライトの対決である。
「ペシエラ、その格好でいいのかい?」
「ええ。私はこの格好でも問題ないですわ。中はドロワですもの」
「……そこまでは聞いていないのだが、その、まあいいだろう」
オフライトは何を口ごもっているのだろうか。ペシエラの姿はおととしと同じ格好である。
武台へと上がったペシエラはサーベル、オフライトはロングソードをすっと構える。
「殿下の婚約者とはいえ、手加減はしませんぞ!」
「望むところですわ」
二人の目つきが鋭くなる。そして、会場の盛り上がりも段々と上がっていく。
「始めっ!」
試合開始の合図がなされると、二人が揃って飛び込んでいく。そして、正面から剣がぶつかり合う。ぶつかったと思ったらすぐに後方へと下がり、再び剣をぶつけ合う。学生同士の、十五歳と十二歳の戦いとは思えないくらいの激しい剣の打ち合いである。観客席で観戦するアイリスが、思わず身をすくめるほどの迫力だ。
「ペシエラ……、怪我しないで」
アイリスがこう思うのも無理はない。ペシエラだって二年間でだいぶ背も胸も態度も大きくなったが、相手はそれをさらに上回る体格のオフライト・ノワールなのだ。怪我をするなと願うのも無理もない話というもの。
だが、当のペシエラに怪我をするとかいう概念はなかった。今年はぶっ倒す、それだけだった。
ペシエラは身体強化の魔法以外は使わず、純粋に剣技だけでオフライトを圧倒しようと考えていた。それがこの激しい剣戟なのだが、ペシエラのその素早く激しい攻撃をオフライトはしっかりと捌き切っていた。
(やはり、オフライト様の剣技の才能はさすがですわね。さすがに魔法なしで押し切るのは不可能かしら)
ペシエラの剣術は、他の学生はおろか一般兵士すらも凌駕できるレベルなのだが、オフライトにはさすがに通じてくれていない。体力もかなりあるので、素早さで揺さぶってもしっかりついてくる。このままではペシエラのジリ貧だという事がはっきりと見えてきていた。
「困りましたわね。いくら努力をしても埋められない差というものは」
ペシエラは冷や汗を浮かべている。
「そうでもないさ。君はそういう差を埋めるだけの努力は十分していると思うぞ」
一方のオフライトは余裕があるようだ。
「いえ、お世辞はよろしいのですわ。はっきり分かりますもの。私が追い詰められている事くらい。ですので、少し魔法を解放しますわ」
「身体強化以外も使うと言うのかい?」
「その通りですわ。もちろん、本気を出せば会場ごと吹き飛びますので、控えさせて頂きますけれど」
「さすがにそれは勘弁願いたいな」
剣戟を行いながらの会話。この二人には余裕があり過ぎる。
それを打ち切ると、ペシエラは大きく距離を取って簡単な風魔法を使う。
「そよ風ごときで牽制か。随分とお優しい事で」
オフライトは拍子抜けしたように言うが、すぐにその風の真意に気が付いた。
緩い風に見えて、その風が一瞬だけ鋭く強くなる。そよ風の中で凶暴に牙を剥く風の刃。これでは迂闊に飛び込めない。
「さすがは魔法に愛された令嬢。こんな器用な真似ができるとはね」
オフライトが腰を落として構えた。
「これで私を止められると思うな!」
オフライトは風の渦へと飛び込んでいった。
この戦い、勝つのは一体どっちだ?!
「うう、私も応援に行きたかったわよ!」
そう叫ぶのはチェリシアである。うっかり自分とペシエラしかできない写真撮影を目玉にしてしまったのだから、商会の持ち場から離れられないのである。なので、
「アイリス、ライ。ペシエラの試合を目に焼き付けておいてね」
撮影魔法を身に付けている二人にお願いをしておいた。
「任せておいて、チェリシア」
「お任せ下さい」
二人とも頼もしく返事をしてくれたので、チェリシアは安心して出店を切り盛りする事が出来そうだった。
何にしても、今日も忙しくなりそうだとチェリシアは気合いを入れた。
さて、武術大会は決勝トーナメントが始まる。
まずは勝ち残った十六人が紹介され、組み合わせ抽選が行われた。
「あら、いきなりおととしのリベンジマッチができそうですわね」
「ふっ、そうだな。どれだけ腕を上げたか、直に確かめてあげよう」
というわけで、いきなり優勝候補同士の対決となった。ペシエラ対オフライトである。この決定に、場内は大いに盛り上がった。なにせこのカード、おととしは力が均衡してペシエラの方が先に体力が尽きてという、とても白熱した試合が行われたからだ。ここまでの試合を見た限り、ペシエラの体力はかなり上がっていると見られ、今回も接戦が期待できそうなのだ。
「ふむ、こちらはシェイディア嬢ですか。レディに手荒な真似はしたくないけれど、試合だから全力で相手をしてあげますよ」
「殿下と剣を交えられるとは、光栄でございますね」
シルヴァノはシェイディアとの対決となった。
こうして、決勝トーナメントの組み合わせが決まった。最初の試合はペシエラとオフライトの対決である。
「ペシエラ、その格好でいいのかい?」
「ええ。私はこの格好でも問題ないですわ。中はドロワですもの」
「……そこまでは聞いていないのだが、その、まあいいだろう」
オフライトは何を口ごもっているのだろうか。ペシエラの姿はおととしと同じ格好である。
武台へと上がったペシエラはサーベル、オフライトはロングソードをすっと構える。
「殿下の婚約者とはいえ、手加減はしませんぞ!」
「望むところですわ」
二人の目つきが鋭くなる。そして、会場の盛り上がりも段々と上がっていく。
「始めっ!」
試合開始の合図がなされると、二人が揃って飛び込んでいく。そして、正面から剣がぶつかり合う。ぶつかったと思ったらすぐに後方へと下がり、再び剣をぶつけ合う。学生同士の、十五歳と十二歳の戦いとは思えないくらいの激しい剣の打ち合いである。観客席で観戦するアイリスが、思わず身をすくめるほどの迫力だ。
「ペシエラ……、怪我しないで」
アイリスがこう思うのも無理はない。ペシエラだって二年間でだいぶ背も胸も態度も大きくなったが、相手はそれをさらに上回る体格のオフライト・ノワールなのだ。怪我をするなと願うのも無理もない話というもの。
だが、当のペシエラに怪我をするとかいう概念はなかった。今年はぶっ倒す、それだけだった。
ペシエラは身体強化の魔法以外は使わず、純粋に剣技だけでオフライトを圧倒しようと考えていた。それがこの激しい剣戟なのだが、ペシエラのその素早く激しい攻撃をオフライトはしっかりと捌き切っていた。
(やはり、オフライト様の剣技の才能はさすがですわね。さすがに魔法なしで押し切るのは不可能かしら)
ペシエラの剣術は、他の学生はおろか一般兵士すらも凌駕できるレベルなのだが、オフライトにはさすがに通じてくれていない。体力もかなりあるので、素早さで揺さぶってもしっかりついてくる。このままではペシエラのジリ貧だという事がはっきりと見えてきていた。
「困りましたわね。いくら努力をしても埋められない差というものは」
ペシエラは冷や汗を浮かべている。
「そうでもないさ。君はそういう差を埋めるだけの努力は十分していると思うぞ」
一方のオフライトは余裕があるようだ。
「いえ、お世辞はよろしいのですわ。はっきり分かりますもの。私が追い詰められている事くらい。ですので、少し魔法を解放しますわ」
「身体強化以外も使うと言うのかい?」
「その通りですわ。もちろん、本気を出せば会場ごと吹き飛びますので、控えさせて頂きますけれど」
「さすがにそれは勘弁願いたいな」
剣戟を行いながらの会話。この二人には余裕があり過ぎる。
それを打ち切ると、ペシエラは大きく距離を取って簡単な風魔法を使う。
「そよ風ごときで牽制か。随分とお優しい事で」
オフライトは拍子抜けしたように言うが、すぐにその風の真意に気が付いた。
緩い風に見えて、その風が一瞬だけ鋭く強くなる。そよ風の中で凶暴に牙を剥く風の刃。これでは迂闊に飛び込めない。
「さすがは魔法に愛された令嬢。こんな器用な真似ができるとはね」
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