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第十章 乙女ゲーム最終年
第310話 三年次、学園祭を終えて
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学園祭の終了した翌日の事。ロゼリアたちは商会の執務室に集まっていた。ここなら外部を気にしないで落ち着いて話ができるからである。
「というわけでございます。パープリアの残党が王都で動いておりましたので、ラルクたちと協力して全員ぶっ飛ばしておきました」
ニーズヘッグからの報告を受けて、ロゼリアたちは驚くと同時に呆れていた。
「まだ動いてましたのね、奴らって」
「はい。ただ、処刑されたあの男どもが取りまとめ役だったらしく、統率も取れていない上に、少人数でちまちまやって来ましてね。かえって鬱陶しかったですね」
首筋を押さえながら、頭を左右に振るニーズヘッグ。コキコキと音が鳴っているので、だいぶお疲れのようだ。
「本当にご苦労様。おかげで学園祭が無事に終わったわ」
「ええ。写真撮影も思ったより反響があったし、そのために作った紙も取引の目処が立ちそうよ」
ロゼリアはほっと一息していて、対照的にチェリシアは商魂たくましく息を巻いていた。チェリシアって本来はヒロインだったような気がするのだが、どうしてこうなった。
それにしても、ペシエラは史上最年少で武術大会を制したとあって、終わった後はかなり注目の的だった。そもそもシルヴァノの婚約者となって注目度が上がっていたのに、さらに高まってしまった。
このままでは生活に支障が出るという事で、すぐさま王子だけではなく、国王女王両名の連名で命令が出されたほどである。破れば降爵(男爵なら爵位剥奪)の危険性すらある。おそらくこれで過剰な接触は避けられるはず。
「まぁ、それでも近寄って来るようであれば、最悪、手打ちにしてもよろしいですわよね」
ペシエラはすました顔で怖い事を言っている。逆行前に戦争まで経験したので、武力行使すらいとわないようになっているのだ。さすが死線を潜り抜けてきた女王経験者である。
それにしても、思えばこの三年間で初めて学園祭が無事に終了できたので、今年は実にやり切った充実感がある。本当にこの日は、どこかいつもの緊張がなくなっていた。とはいえ、この学園祭の四日間の売上と在庫の変動のチェックは欠かせない。のんびりとした空気の中、午前中はこれだけで時間が過ぎていった。
食事を挟んで午後を迎えれば、プラティナとシェイディアが尋ねてきた。学園祭の労いのようである。
この時、チェリシアはちょうどいいと思って、自分が撮ったものやアイリスたちの撮影魔法から切り取った写真を二人に渡しておいた。プラティナもシェイディアも、実にカッコいい場面が切り取られていて満足している。だがしかし、やはり優勝したペシエラの写真が一番いいようである。写真魔法も次の写真を撮るまでなら何枚でも複製できるようになったので、それによって焼き増しされた写真である。まだ十枚くらいあるらしい。
「あの、オフ、オフライト様のはございますか?」
プラティナが前のめりでチェリシアに迫ってくる。そういえば婚約者でしたね。
「ええ、ございますよ、少々お待ち下さい」
チェリシアはごそごそと写真の束からオフライトの写真を探し出す。
「あった、これですね」
チェリシアが取り出したのは、対ペシエラ戦で風の渦に突っ込むオフライトを写したものだった。その風を切り裂いて進む姿はなんともかっこよかった。
「まぁ、素晴らしい……」
その写真を受け取ったプラティナはうっとりしていた。この分ならプラティナとオフライトの仲は心配なさそうである。
「はぁ、写真魔法って便利ですわね。こうやってお姿を留めておけるだなんて、羨ましい限りですわ」
プラティナは写真を見ながら呟いている。
「この写真魔法は光属性の魔法なので、適性がない事には使えないのが難点でございます。現状は私とペシエラの二人だけの専売特許ですね」
チェリシアはしれっとそういう風に答えておいた。本当はカメラを作っているのだが、いろいろ問題があるという事で生産中止になっている。だから、カメラの存在は秘密にしておいた。知られたら、間違いなく詰め寄られるだろう。
「それにしても、今年は無事に学園祭が終われてよかったですね。去年は途中で中止でしたし」
「ええ、まったくね」
シェイディアがほっとした表情で言うと、ロゼリアはそれに同意する。しかし、実際のところは事件が起きなかっただけで、裏ではいろいろ起きていたわけだが、それを知るのはロゼリアたちと王族だけである。パープリアの残党はだいぶ潰したので、これからはもっと安全になる事だろう。
というわけで、令嬢たちの学園祭後の労いのお茶会は、ほのぼのした話題に終始したのである。本当に平和というのはいいものだ。
乙女ゲームの最終イベントは年末の年越しパーティーだ。ここでヒロインと男性陣が集まって、悪役令嬢を断罪してエンディングを迎える。そして、その後はペイルが自国に帰ってしまうが、その後の展開がエピローグとして語られる。ゲームであればその間に告白イベントもあるのだが、現実としてはすでに婚約者として相手が定まっている。不安要素もほとんど叩き潰した状態だ。後は無事にその時を乗り越えるだけである。
ロゼリアたちにとって、本当に気の抜けない期間はまだ続くのだった。
「というわけでございます。パープリアの残党が王都で動いておりましたので、ラルクたちと協力して全員ぶっ飛ばしておきました」
ニーズヘッグからの報告を受けて、ロゼリアたちは驚くと同時に呆れていた。
「まだ動いてましたのね、奴らって」
「はい。ただ、処刑されたあの男どもが取りまとめ役だったらしく、統率も取れていない上に、少人数でちまちまやって来ましてね。かえって鬱陶しかったですね」
首筋を押さえながら、頭を左右に振るニーズヘッグ。コキコキと音が鳴っているので、だいぶお疲れのようだ。
「本当にご苦労様。おかげで学園祭が無事に終わったわ」
「ええ。写真撮影も思ったより反響があったし、そのために作った紙も取引の目処が立ちそうよ」
ロゼリアはほっと一息していて、対照的にチェリシアは商魂たくましく息を巻いていた。チェリシアって本来はヒロインだったような気がするのだが、どうしてこうなった。
それにしても、ペシエラは史上最年少で武術大会を制したとあって、終わった後はかなり注目の的だった。そもそもシルヴァノの婚約者となって注目度が上がっていたのに、さらに高まってしまった。
このままでは生活に支障が出るという事で、すぐさま王子だけではなく、国王女王両名の連名で命令が出されたほどである。破れば降爵(男爵なら爵位剥奪)の危険性すらある。おそらくこれで過剰な接触は避けられるはず。
「まぁ、それでも近寄って来るようであれば、最悪、手打ちにしてもよろしいですわよね」
ペシエラはすました顔で怖い事を言っている。逆行前に戦争まで経験したので、武力行使すらいとわないようになっているのだ。さすが死線を潜り抜けてきた女王経験者である。
それにしても、思えばこの三年間で初めて学園祭が無事に終了できたので、今年は実にやり切った充実感がある。本当にこの日は、どこかいつもの緊張がなくなっていた。とはいえ、この学園祭の四日間の売上と在庫の変動のチェックは欠かせない。のんびりとした空気の中、午前中はこれだけで時間が過ぎていった。
食事を挟んで午後を迎えれば、プラティナとシェイディアが尋ねてきた。学園祭の労いのようである。
この時、チェリシアはちょうどいいと思って、自分が撮ったものやアイリスたちの撮影魔法から切り取った写真を二人に渡しておいた。プラティナもシェイディアも、実にカッコいい場面が切り取られていて満足している。だがしかし、やはり優勝したペシエラの写真が一番いいようである。写真魔法も次の写真を撮るまでなら何枚でも複製できるようになったので、それによって焼き増しされた写真である。まだ十枚くらいあるらしい。
「あの、オフ、オフライト様のはございますか?」
プラティナが前のめりでチェリシアに迫ってくる。そういえば婚約者でしたね。
「ええ、ございますよ、少々お待ち下さい」
チェリシアはごそごそと写真の束からオフライトの写真を探し出す。
「あった、これですね」
チェリシアが取り出したのは、対ペシエラ戦で風の渦に突っ込むオフライトを写したものだった。その風を切り裂いて進む姿はなんともかっこよかった。
「まぁ、素晴らしい……」
その写真を受け取ったプラティナはうっとりしていた。この分ならプラティナとオフライトの仲は心配なさそうである。
「はぁ、写真魔法って便利ですわね。こうやってお姿を留めておけるだなんて、羨ましい限りですわ」
プラティナは写真を見ながら呟いている。
「この写真魔法は光属性の魔法なので、適性がない事には使えないのが難点でございます。現状は私とペシエラの二人だけの専売特許ですね」
チェリシアはしれっとそういう風に答えておいた。本当はカメラを作っているのだが、いろいろ問題があるという事で生産中止になっている。だから、カメラの存在は秘密にしておいた。知られたら、間違いなく詰め寄られるだろう。
「それにしても、今年は無事に学園祭が終われてよかったですね。去年は途中で中止でしたし」
「ええ、まったくね」
シェイディアがほっとした表情で言うと、ロゼリアはそれに同意する。しかし、実際のところは事件が起きなかっただけで、裏ではいろいろ起きていたわけだが、それを知るのはロゼリアたちと王族だけである。パープリアの残党はだいぶ潰したので、これからはもっと安全になる事だろう。
というわけで、令嬢たちの学園祭後の労いのお茶会は、ほのぼのした話題に終始したのである。本当に平和というのはいいものだ。
乙女ゲームの最終イベントは年末の年越しパーティーだ。ここでヒロインと男性陣が集まって、悪役令嬢を断罪してエンディングを迎える。そして、その後はペイルが自国に帰ってしまうが、その後の展開がエピローグとして語られる。ゲームであればその間に告白イベントもあるのだが、現実としてはすでに婚約者として相手が定まっている。不安要素もほとんど叩き潰した状態だ。後は無事にその時を乗り越えるだけである。
ロゼリアたちにとって、本当に気の抜けない期間はまだ続くのだった。
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