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第十章 乙女ゲーム最終年
第320話 落第を回避せよ
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ところがどっこい、翌日に学園へ出向くと、チェリシアは一気に現実に引き戻された。
「うう、年次末試験か……」
そう、年に二回行われる期末試験である。なにせ学業は散々なチェリシアだ。魔法は得意だからどうにかなるが、問題は筆記試験。座学を苦手としているので、これまでもギリギリで突破してきていた。一夜漬けに近いところはあるが、頑張ればどうにかなるのはヒロイン補正なのかも知れない。
しかし、さすがに三年次の年次末試験は、今までとは同じようにいきそうになかった。
「さすがに私も呆れてしまいますわよ」
この世界にも過去問のようなものはある。試しに親世代の問題を解かせてみたのだが、まぁ酷い有様だった。これにはペシエラもアイリスも呆れて物が言えないようである。
「まったく、あれこれ発想は素晴らしいものがございますけれど、さすがに貴族としての最低限の知識が無いのは頂けませんわ」
「……うう、泣きたい」
「泣きたいのはこちらですわよ、お姉様」
さすがペシエラ、容赦がない。
ちなみにペシエラは、逆行前でも座学の成績は良かった。パープリアの手によっていろいろと悪い事を吹き込まれたとはいえ、素直にコーラルの家を支えるべく勉強は頑張った結果である。だからこそ、女王として素晴らしい能力を発揮できたのだ。異世界の魂が宿っているとはいえ、基本的にはそのペシエラと同じなのだから、頑張ればできるはずである。頑張れば、だが。
「まったく、乙女げえむとやらでいうところの最終局面だというのに、ここで落第なんてやらかしたらましたら、今まで積み上げてきたものが無意味になってしまいますわ」
こう言って、ペシエラはチェリシアを睨みつける。妹のただならぬ表情に、チェリシアは震え上がる。
「というわけで、年次末試験が終わるまでは商会関連の作業は全部禁止ですわよ、お姉様」
「そ、そんなぁ~……」
ペシエラが笑顔で告げた言葉に、チェリシアはその場で泣きながら崩れ落ちたのだった。自業自得である。横ではアイリスがひたすら苦笑いの状態で立ち続けていた。
というわけで、翌日からチェリシアは猛勉強となった。学園の座学は、まじめに取り組んでいれば普通に半分ほどは取れて、落第は余裕で回避可能なのである。それが落第寸前まで落ち込むとあれば、授業への姿勢を疑われる事態となってしまうのだ。
しかしながら、気が付けば冬の一の月もほぼ終わり。試験のある冬の二の月の十日までもう少しであった。果たして間に合うのだろうか。
「間に合う、間に合わないじゃありませんわ。間に合わせるのです」
ペシエラは鬼教師となっていた。
チェリシアは前世では農業系は真面目に取り組んでいたので、理系の成績はまあいい方だった。しかし、文系科目は絶望的だったのだ。貴族の習う座学は、その文系相当のもの。苦手意識が先行してなおざりになっていたのだ。
(あああ……、ペシエラの笑顔が怖いわ)
チェリシアは半べそ状態である。だが、誰もが状況を分かっているので、助けてくれる者は居ない。結果で示すしかないのである。
それにである。ここで落第しようものなら、婚約者であるカーマイルにも迷惑がかかってしまう。その事を悪い顔のペシエラから聞かされたチェリシアは、本気で勉強を頑張っているのである。だが、この三年次の年次末試験は、そんな付け焼き刃で通用するのだろうか。いよいよ試験の日を迎えた。
「うう、詰め込めるだけ頑張ったんだから、無事に突破してみせるわよ」
「本来は理解までがセットなのですが、今回は仕方ありませんわね。ですが、翌年次の事も考えて、しっかりと理解して下さいませ、お姉様」
ペシエラからのダメ出しが飛んできた。
「うう、分かりましたよう……」
なんとも情けない顔のチェリシア。侯爵家に嫁ぐ事になるのだから、もう少しどっしりと構えてもらいたいものである。
「とはいえ、この短期間で頑張ったと思いますよ、チェリシア」
アイリスが慰めてくる。
「そうですわ、お姉様。とにかく、しっかり結果を出して下さいませ。これからも商会の仕事に打ち込みたいのでしたらね」
ペシエラも言い方はきついが励ましてくれている。なんだかんだと言って、姉妹の絆は強いのである。
「うん、頑張る」
チェリシアは二人の励ましに反応するが、まだ半べそ状態だった。
三人そろって気合いを入れると、試験の行われる部屋へと向かう。部屋の中は他の学生も気合い十分。というかぶつぶつ言っていて少し怖い。
「あら、チェリシアたちじゃないの。……というか、チェリシアは大丈夫なのかしら?」
先に座っていたロゼリアにまで心配されるチェリシア。相当に追い込まれているのが分かる。
「大丈夫だと思いますわよ。ただ、今までさぼっていた分のツケが回ってきているだけですわ」
ロゼリアの疑問に答えたのはペシエラだった。
「私がしっかりと勉強を見ましたので、とりあえず、年次末試験は大丈夫……と思いたいですわね」
チェリシアを見たペシエラは、少しだけ不安になった。もう顔が泣きそうで泣きそうで、追い詰められているのがよく分かるからだ。
「はぁ、お姉様、終わったら私が手料理を用意しますから、とりあえず落ち着いて下さいませ」
「ペ、ペシエラの手料理?! なら、頑張っちゃうわよ!」
「チェリシアったら……」
ペシエラの食べ物で釣る作戦が成功して、アイリスが引いていた。ロゼリアも呆れて言葉を失っている。
「さて、試験を始めます。皆さん席に着いて」
教師が入ってきて、学生たちはがたがたと慌ただしく席に着いた。
泣こうが喚こうが、いよいよ三年次の年次末試験が始まろうとしていた。果たしてチェリシアたちは無事にクリアできるのであろうか。
「うう、年次末試験か……」
そう、年に二回行われる期末試験である。なにせ学業は散々なチェリシアだ。魔法は得意だからどうにかなるが、問題は筆記試験。座学を苦手としているので、これまでもギリギリで突破してきていた。一夜漬けに近いところはあるが、頑張ればどうにかなるのはヒロイン補正なのかも知れない。
しかし、さすがに三年次の年次末試験は、今までとは同じようにいきそうになかった。
「さすがに私も呆れてしまいますわよ」
この世界にも過去問のようなものはある。試しに親世代の問題を解かせてみたのだが、まぁ酷い有様だった。これにはペシエラもアイリスも呆れて物が言えないようである。
「まったく、あれこれ発想は素晴らしいものがございますけれど、さすがに貴族としての最低限の知識が無いのは頂けませんわ」
「……うう、泣きたい」
「泣きたいのはこちらですわよ、お姉様」
さすがペシエラ、容赦がない。
ちなみにペシエラは、逆行前でも座学の成績は良かった。パープリアの手によっていろいろと悪い事を吹き込まれたとはいえ、素直にコーラルの家を支えるべく勉強は頑張った結果である。だからこそ、女王として素晴らしい能力を発揮できたのだ。異世界の魂が宿っているとはいえ、基本的にはそのペシエラと同じなのだから、頑張ればできるはずである。頑張れば、だが。
「まったく、乙女げえむとやらでいうところの最終局面だというのに、ここで落第なんてやらかしたらましたら、今まで積み上げてきたものが無意味になってしまいますわ」
こう言って、ペシエラはチェリシアを睨みつける。妹のただならぬ表情に、チェリシアは震え上がる。
「というわけで、年次末試験が終わるまでは商会関連の作業は全部禁止ですわよ、お姉様」
「そ、そんなぁ~……」
ペシエラが笑顔で告げた言葉に、チェリシアはその場で泣きながら崩れ落ちたのだった。自業自得である。横ではアイリスがひたすら苦笑いの状態で立ち続けていた。
というわけで、翌日からチェリシアは猛勉強となった。学園の座学は、まじめに取り組んでいれば普通に半分ほどは取れて、落第は余裕で回避可能なのである。それが落第寸前まで落ち込むとあれば、授業への姿勢を疑われる事態となってしまうのだ。
しかしながら、気が付けば冬の一の月もほぼ終わり。試験のある冬の二の月の十日までもう少しであった。果たして間に合うのだろうか。
「間に合う、間に合わないじゃありませんわ。間に合わせるのです」
ペシエラは鬼教師となっていた。
チェリシアは前世では農業系は真面目に取り組んでいたので、理系の成績はまあいい方だった。しかし、文系科目は絶望的だったのだ。貴族の習う座学は、その文系相当のもの。苦手意識が先行してなおざりになっていたのだ。
(あああ……、ペシエラの笑顔が怖いわ)
チェリシアは半べそ状態である。だが、誰もが状況を分かっているので、助けてくれる者は居ない。結果で示すしかないのである。
それにである。ここで落第しようものなら、婚約者であるカーマイルにも迷惑がかかってしまう。その事を悪い顔のペシエラから聞かされたチェリシアは、本気で勉強を頑張っているのである。だが、この三年次の年次末試験は、そんな付け焼き刃で通用するのだろうか。いよいよ試験の日を迎えた。
「うう、詰め込めるだけ頑張ったんだから、無事に突破してみせるわよ」
「本来は理解までがセットなのですが、今回は仕方ありませんわね。ですが、翌年次の事も考えて、しっかりと理解して下さいませ、お姉様」
ペシエラからのダメ出しが飛んできた。
「うう、分かりましたよう……」
なんとも情けない顔のチェリシア。侯爵家に嫁ぐ事になるのだから、もう少しどっしりと構えてもらいたいものである。
「とはいえ、この短期間で頑張ったと思いますよ、チェリシア」
アイリスが慰めてくる。
「そうですわ、お姉様。とにかく、しっかり結果を出して下さいませ。これからも商会の仕事に打ち込みたいのでしたらね」
ペシエラも言い方はきついが励ましてくれている。なんだかんだと言って、姉妹の絆は強いのである。
「うん、頑張る」
チェリシアは二人の励ましに反応するが、まだ半べそ状態だった。
三人そろって気合いを入れると、試験の行われる部屋へと向かう。部屋の中は他の学生も気合い十分。というかぶつぶつ言っていて少し怖い。
「あら、チェリシアたちじゃないの。……というか、チェリシアは大丈夫なのかしら?」
先に座っていたロゼリアにまで心配されるチェリシア。相当に追い込まれているのが分かる。
「大丈夫だと思いますわよ。ただ、今までさぼっていた分のツケが回ってきているだけですわ」
ロゼリアの疑問に答えたのはペシエラだった。
「私がしっかりと勉強を見ましたので、とりあえず、年次末試験は大丈夫……と思いたいですわね」
チェリシアを見たペシエラは、少しだけ不安になった。もう顔が泣きそうで泣きそうで、追い詰められているのがよく分かるからだ。
「はぁ、お姉様、終わったら私が手料理を用意しますから、とりあえず落ち着いて下さいませ」
「ペ、ペシエラの手料理?! なら、頑張っちゃうわよ!」
「チェリシアったら……」
ペシエラの食べ物で釣る作戦が成功して、アイリスが引いていた。ロゼリアも呆れて言葉を失っている。
「さて、試験を始めます。皆さん席に着いて」
教師が入ってきて、学生たちはがたがたと慌ただしく席に着いた。
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