逆行令嬢と転生ヒロイン

未羊

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最終章 乙女ゲーム後

第337話 自業自得だよ

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 ロゼリアたちから怒られた翌日、チェリシアはすぐにお詫びの品々を持って王都のマゼンダ侯爵邸を訪れた。
 当然の事ながら、こっ酷く怒られた。それくらいの事をしているのだから仕方ない。しかも、無断で王族にまでお目通しをしていればなおさらである。
 生産品を持ち込んだりして誠心誠意謝ったので、とにかく次からはちゃんと自分たちにも話を通してくれと念書まで書かされたが、一応は許された。とにかく終わった後のヴァミリオとカーマイルはぐったりしていた。お疲れ様である。
 その後に振る舞った料理は好評だったというが、チェリシアはとりあえずは今回の事で懲りたようである。
 ただ、その週の終わりにはきちんとした説明を求められたので、スノールビーの状況をレポートにまとめて丸一日掛けて二人に説明した。
 この二人が把握していたのは視察もした温泉宿の事だけであり、それ以外の事はほぼチェリシアの独断である。特にスノーシェードと温水による除雪装置は知らない事だった。改めてこの転生者はやり過ぎである。ヴァミリオとカーマイルは、感心するどころか呆れていた。国家機密レベルの技術なのだから、当然の反応である。
 チェリシアとしては、雪かきが面倒だからとして作り上げた技術だったが、この世界では扱いが違いすぎたようである。反省。
 チェリシアからのレポートを受け取ったヴァミリオとカーマイルは、翌日から早速スノールビーの視察へと向かった。さすがにあれこれ勝手にされたので、自分たちの目で見ないわけにはいかなくなってしまったのだ。
 この期間というより、卒業までは絶対商会の仕事はするなと、きつくチェリシアに言い聞かせる事も忘れなかった。ただでさえチェリシアの座学の成績は落第すれすれであったという前科があるのだから、これは当然の流れ。勉強をさぼってきたチェリシアが全面的に悪い。しょぼくれていたが、悪いのはチェリシアなのである。重要なので復唱である。
 それから三週間が経つと、スノールビーに視察に行っていたヴァミリオとカーマイルが戻ってきた。戻ってきた二人は、ロゼリアにすぐに愚痴をぶちまけたらしい。想像の斜め上の状況になっていたからだ。
 その視察の内容はこういう様子だったらしい。
 冬の時期が終わって街道の状況がよくなると、王族からの触れ回りもあった事から視察に向かった商人たちが村に集まっていたのだ。そこへちょうど領主であるヴァミリオたちが来た事で、いろいろと質問を受けたらしい。直前にチェリシアから説明されていた事もあって、質問自体にはすんなりと答えられたヴァミリオたち。王族が絡んだ事で、予想以上の状況になっていたようだ。嬉しい悲鳴なのか有難迷惑なのか、ヴァミリオたちの心境は複雑である。
 温泉宿と温水畑の整備、村の区画整理、街道の整備は驚くべき状況になっていた。村は知らない間に拡張されており、そこへ入村希望者たちが家を建てていた。どうやら、既存との村人と同じ区画の中では衝突もあるだろうからと、村長たちの家を挟んだ反対側に移住者用の区画を整備したらしい。これもチェリシアの入れ知恵(ライ提案)だそうだ。
 ずいぶんと勝手な事をしてくれたようだが、村の事を考えていたようでそこは素直に感心した。ただ、鉱山方向への整備がなされていないようなので、ここからは本来の領主による仕事というものである。
 こんな感じで、視察の一週間でできるだけの事はしてきた模様。税に関してはまた夏にでも状況を見て決めるとの事になった。
「いやな、ロゼリア。本当にめちゃくちゃだよ、チェリシアくんは」
 ヴァミリオが頭を抱えている様子に、ロゼリアもさすがにチェリシアの肩を持つ気にはなれない。
「とはいえ、あの寒村だった場所があれだけの賑わいになるわけだから、提案と能力は認めざるを得ないな」
 カーマイルもカーマイルで、困った顔をしながらチェリシアの事は評価している。ただ、婚約者として妻に迎えるので、その後の事を気にかけている節はある。あのアイディア暴走娘を止められる自信は、カーマイルにもロゼリアにもあまりないのだ。
「領地が豊かになるのはいいのですけれど、本当にチェリシアには自重してもらいませんとね。ペシエラとキャノルにしっかり伝えておきます」
「頼むよ、ロゼリア」
 マゼンダ家の中には、もはや諦観すら漂っていた。何と言っても女王経験者で圧の強いペシエラですら制御できないのだから。
 だが、翌日。
「お姉様、マゼンダ侯爵家から正式に抗議が来ましたので、年内は家と学園以外への行動は禁止致しますわ。年末パーティーだけは許可しますけれど」
 ペシエラが青筋を浮かべながら、笑顔でチェリシアに通達している。
「ええ、そんな殺生な……」
「ええもああもありませんわよ。どれだけ勝手な事をしたと思ってらっしゃるんです! お父様は怒っていませんでしたが、頭を抱えてらっしゃいましたわ。テレポートも禁止。昨夜の内にキャノルに頼んで、お姉様にはある細工をさせて頂きましたわ」
 ペシエラが手に何かを持っている。それは魔法銀で作られた、チャットフォンに似た何かだった。
「じーぴーえすでしたっけ? この魔法銀の板がお姉様の魔力を感知して、この板に現在地を表示するのですわ」
 魔法銀の板には『ハウライト・コーラル伯爵邸』の文字と周辺地図が映し出されている。
「ひぃっ!」
 それに対してチェリシアは悲鳴を上げた。知らない間に監視される事になっていれば当然こうなる。
「自身のこれまでの行動を反省して下さいませ。私もさすがにここまではしたくありませんでしたわ」
「そんなぁ……」
 チェリシアは泣き崩れていたが、ペシエラは容赦しなかった。これもすべては自業自得なのである。キャノルに促されて、チェリシアはぐずりながらも学園へ行く準備をしたのであった。
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