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最終章 乙女ゲーム後
第341話 六年次後半
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学園最終学年次も、あっという間に時が過ぎていく。
学園祭の出し物も、四年次以降はほぼ固定。それでも相変わらずの人だかりであった。特にマゼンダ商会でしかできない『記念撮影』は好評だった。
武術大会も、ペシエラやオフライトは殿堂入りを果たしてしまい、ロゼリアとプラティナ、シェイディア、そしてシルヴァノの四人が参加となった。
ロゼリアだって腕を上げたのだが、シェイディアはそれ以上に腕を上げており、予選で当たったがために予選敗退していた。
「うう、悔しいわね。ですが、さすがは騎士団の副団長の娘、ますます腕を上げたわね」
言葉の節々から悔しさが滲み出ていた。
アイリスの兄のヴィオレスは、一切武術大会に出てこなかった。普段訓練ばかりで単純にお祭りを楽しみたいと、マゼンダ商会に顔を出しているのが目撃された。
「あら、ヴィオレス様。アイリスでしたら訓練場で観戦してますよ。ロゼリアが参加してますからね」
チェリシアが話し掛けると、ヴィオレスはどうにも落ち着かない様子だ。
「そうか。どうだ、アイリスの調子は」
「ええ、伯爵令嬢として申し分ないですよ。むしろ私の方が疑わしいくらいに。……ととっ、これは内緒でお願いしますね」
どうやらアイリスの様子を聞きに来たようである。あんな事があったが、やはり血のつながった妹、兄として気にならないわけがないのである。
「ははっ、そうか。元気でやってるなら別にいい。私も女王直属の騎士団を目指しているから、いずれよく顔を合わせる事になるかもな」
「まあ、そうなんですね。でも、そのご様子では、まだご内密にってところなんでしょうね」
「まあそうだな。妹が悪事に手を染めていた事もあるし、どうしてもそこが許せなくてな。今は王国のために役立っているとはいえ、やはり割り切れないんだよ」
「……なるほど。では、現状は私の胸三寸に納めておきますね」
ヴィオレスの事情を聞いたチェリシアは、胸に手を当てながらそう伝えておいた。
「妹の事も含めて感謝するよ。あいつが立ち直れたのは君たちのおかげなんだからな」
ヴィオレスはこうとだけ伝えると、マゼンダ商会のブースを去っていった。なんだかんだで不器用な兄である。チェリシアはその後姿を微笑ましく見送った。
武術大会の決勝戦はシルヴァノとシェイディアの戦いだった。さすがにペシエラを直に見た六年次生相手では、他の学年の学生ではまったく歯が立たなかったのである。ちなみにプラティナはシェイディアに負けた。
次期国王である王子シルヴァノと殿堂入りを果たしたオフライトの双子の妹シェイディアの戦いは白熱したが、やはり剣術バカのシェイディアが優勝を果たした。シルヴァノは魔法も使って応戦したのだが、剣術だけで圧倒されてしまう。これによって六年次の武術大会の優勝者は、シェイディアと決まったのだ。
「いやはや、さすがあのオフライトの双子だけはありますね。兄に劣らぬ剣捌き、ついていくのが精一杯でした」
「オフライトと比べられるのは癪ですが、お褒め頂き光栄です」
シェイディアは、兄と比べられて少し不機嫌になった。だが、王子に褒められたのでそこは素直に受け取っていた。
こうして、六年次の学園祭も平和のうちに幕を閉じた。
そして、冬の月を迎える。
サンフレア学園の六年次生は、この冬の一の月の頭で卒業をしてしまう。
秋の月から行われていた卒業式の準備はすっかり終わりが近付き、学園の大講堂はそのための飾りつけで覆われていた。特に今年は、シルヴァノ王子とその婚約者のペシエラが卒業するとあって、例年以上に気合いの入った飾りつけになっている。飾りつけの指導を行う教員たちもかなり熱が入っているようだ。
「ガレン先生も突っ立ってないで手伝って下さい」
教員たち総出の中で、何もしていないガレンに対して声を掛ける教員。
「いやはやすまないですね。なかなかに楽しい学生たちが一気に卒業するとあって、少々感傷に浸ってしまいましたよ」
「それは分かりますけれど、学園長が張り切り過ぎたせいで飾り付けが間に合わないんです。さっさと手を貸して下さい。明日までに終わらせないと減給とか言ってるんですからね!」
どうやら学園長による大号令のせいらしい。王族が関わっているのなら、気持ちも分からなくはないものである。
「おっと、それは困りますね。ささっ、どこをどうすればいいのですか」
「とりあえず、そっちの端を持ってて下さい」
「分かりました」
精霊王オリジンも、学園内ではただの一教員ガレンである。忙しなく動く人間たちの姿を見てにっこにこにしているので、周りの教員からは人が変わるたびに怒られていた。さすが精霊の王様、人とは感覚が違うのだ。
感慨深い卒業式まではもう数日。あの面白い学生たちが入学してきた日の事をつい先日のように思い出して、ガレンは再び笑っている。
長かったようで短かったサンフレア学園での六年間。その卒業式を翌日に迎えた日の夜、アイヴォリー王国に雪が舞った。王国のあちこちを白く彩ったその雪は、まるで新たな門出を祝福しているように朝日を浴びて輝いていた。
学園祭の出し物も、四年次以降はほぼ固定。それでも相変わらずの人だかりであった。特にマゼンダ商会でしかできない『記念撮影』は好評だった。
武術大会も、ペシエラやオフライトは殿堂入りを果たしてしまい、ロゼリアとプラティナ、シェイディア、そしてシルヴァノの四人が参加となった。
ロゼリアだって腕を上げたのだが、シェイディアはそれ以上に腕を上げており、予選で当たったがために予選敗退していた。
「うう、悔しいわね。ですが、さすがは騎士団の副団長の娘、ますます腕を上げたわね」
言葉の節々から悔しさが滲み出ていた。
アイリスの兄のヴィオレスは、一切武術大会に出てこなかった。普段訓練ばかりで単純にお祭りを楽しみたいと、マゼンダ商会に顔を出しているのが目撃された。
「あら、ヴィオレス様。アイリスでしたら訓練場で観戦してますよ。ロゼリアが参加してますからね」
チェリシアが話し掛けると、ヴィオレスはどうにも落ち着かない様子だ。
「そうか。どうだ、アイリスの調子は」
「ええ、伯爵令嬢として申し分ないですよ。むしろ私の方が疑わしいくらいに。……ととっ、これは内緒でお願いしますね」
どうやらアイリスの様子を聞きに来たようである。あんな事があったが、やはり血のつながった妹、兄として気にならないわけがないのである。
「ははっ、そうか。元気でやってるなら別にいい。私も女王直属の騎士団を目指しているから、いずれよく顔を合わせる事になるかもな」
「まあ、そうなんですね。でも、そのご様子では、まだご内密にってところなんでしょうね」
「まあそうだな。妹が悪事に手を染めていた事もあるし、どうしてもそこが許せなくてな。今は王国のために役立っているとはいえ、やはり割り切れないんだよ」
「……なるほど。では、現状は私の胸三寸に納めておきますね」
ヴィオレスの事情を聞いたチェリシアは、胸に手を当てながらそう伝えておいた。
「妹の事も含めて感謝するよ。あいつが立ち直れたのは君たちのおかげなんだからな」
ヴィオレスはこうとだけ伝えると、マゼンダ商会のブースを去っていった。なんだかんだで不器用な兄である。チェリシアはその後姿を微笑ましく見送った。
武術大会の決勝戦はシルヴァノとシェイディアの戦いだった。さすがにペシエラを直に見た六年次生相手では、他の学年の学生ではまったく歯が立たなかったのである。ちなみにプラティナはシェイディアに負けた。
次期国王である王子シルヴァノと殿堂入りを果たしたオフライトの双子の妹シェイディアの戦いは白熱したが、やはり剣術バカのシェイディアが優勝を果たした。シルヴァノは魔法も使って応戦したのだが、剣術だけで圧倒されてしまう。これによって六年次の武術大会の優勝者は、シェイディアと決まったのだ。
「いやはや、さすがあのオフライトの双子だけはありますね。兄に劣らぬ剣捌き、ついていくのが精一杯でした」
「オフライトと比べられるのは癪ですが、お褒め頂き光栄です」
シェイディアは、兄と比べられて少し不機嫌になった。だが、王子に褒められたのでそこは素直に受け取っていた。
こうして、六年次の学園祭も平和のうちに幕を閉じた。
そして、冬の月を迎える。
サンフレア学園の六年次生は、この冬の一の月の頭で卒業をしてしまう。
秋の月から行われていた卒業式の準備はすっかり終わりが近付き、学園の大講堂はそのための飾りつけで覆われていた。特に今年は、シルヴァノ王子とその婚約者のペシエラが卒業するとあって、例年以上に気合いの入った飾りつけになっている。飾りつけの指導を行う教員たちもかなり熱が入っているようだ。
「ガレン先生も突っ立ってないで手伝って下さい」
教員たち総出の中で、何もしていないガレンに対して声を掛ける教員。
「いやはやすまないですね。なかなかに楽しい学生たちが一気に卒業するとあって、少々感傷に浸ってしまいましたよ」
「それは分かりますけれど、学園長が張り切り過ぎたせいで飾り付けが間に合わないんです。さっさと手を貸して下さい。明日までに終わらせないと減給とか言ってるんですからね!」
どうやら学園長による大号令のせいらしい。王族が関わっているのなら、気持ちも分からなくはないものである。
「おっと、それは困りますね。ささっ、どこをどうすればいいのですか」
「とりあえず、そっちの端を持ってて下さい」
「分かりました」
精霊王オリジンも、学園内ではただの一教員ガレンである。忙しなく動く人間たちの姿を見てにっこにこにしているので、周りの教員からは人が変わるたびに怒られていた。さすが精霊の王様、人とは感覚が違うのだ。
感慨深い卒業式まではもう数日。あの面白い学生たちが入学してきた日の事をつい先日のように思い出して、ガレンは再び笑っている。
長かったようで短かったサンフレア学園での六年間。その卒業式を翌日に迎えた日の夜、アイヴォリー王国に雪が舞った。王国のあちこちを白く彩ったその雪は、まるで新たな門出を祝福しているように朝日を浴びて輝いていた。
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