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新章 青色の智姫
第50話 城に戻ったシアン
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友だちっぽい相手ができたことで、幸先の良いスタートを切れたと感じたシアン。
その日の夜の食事の席でも、シルヴァノとペシエラどころか、ライトとダイアにまで学園の印象を聞かれる始末だった。
「楽しそうだと思いましたわ。プルネ・コーラル伯爵令嬢とブランチェスカ・クロッツ子爵令嬢と仲良くなりました」
「おや、プルネもそういう年だったのか」
シアンが仲良くなった人物の名前を挙げると、やっぱりプルネの名前に反応していた。
「アイリスの子どもですわね。四人居ますけれど、プルネは確か次女でしたわね」
ペシエラが考え込むようにして反応している。その姿を見て、首を思わず傾げてしまうシアンである。
「王妃殿下?」
「……ニーズヘッグの方の影響が大きいから、子どもたちは何かと手を焼くみたいなことを言っていたことを思い出しましてね。シアン、今日は大丈夫でしたか?」
「はい、特に問題はございませんでした。ガレン先生から呼び出しを受けたくらいです」
「……」
シアンの返答に、黙り込んでしまうペシエラだった。
「そうですか……。あの先生ってば、わたくしたちの時みたいな事を……」
そして、額を押さえて首を左右に振り始めた。自分たちも呼び出された事を思い出したからである。
「そういえば、途中で黒髪の男子生徒に声を掛けられましたわ。学園長の話を同じ場で聞いていたような口ぶりでしたわね」
「黒髪か。なら、同級生とするならミドナイト男爵家の息子だろう」
聞いたことがない家名が出てきた。ノワール伯爵家ではなかったらしい。
「ミドナイト家も代々騎士の家系なんだ。ノワール伯爵家ほどではないけれど、戦いがあればそれなりに武勲を上げてきたたたき上げの家なのですよ」
シルヴァノがわざわざ説明をしてくれる。武勲を上げても爵位は上がらなかったらしい。
「武勲を上げ続けていたのなら、伯爵家でもおかしくないのでは?」
ペシエラが指摘をするが、シルヴァノは首を横に振っていた。
「本人たちが昇爵を断り続けているんですよ。戦場に出ることを生きがいにている節があって、父上たちも頭を抱えたそうだ」
なんともまぁ、いわゆる前線大好きな一族ということなのだろう。
そんな一族の人物に絡まれたとあっては、シアンは何か嫌な予感がしてしまうのだった。
「学園では合宿があるし、あとは学園祭かな。多分率先して参加して目立とうとするだろうね」
シルヴァノはおかしそうに笑っていた。
「僕も興味ありますね、そのミドナイト男爵家というものに」
ライトがかなり興味を示してしまったようだ。ちょうど剣術訓練を受けている最中とあって、戦いたい意欲に満ち触れているからだ。
ダイアの方は興味なさげに食事を続けている。剣も魔法もできるペシエラの娘ではあるものの、女性の方は不思議と魔法に傾倒してしまうものなのだ。
「ダイアも無関係というわけには参りませんわよ。来年はオフライトやシェイディアの子どもも入学しますし、ミドナイト男爵家は年子で妹がいるらしいですから、顔を合わせることになりますよ。お茶会でもお会いしたでしょう?」
「うっ……。痛いのは嫌いなんですけれどね……」
露骨に嫌な顔をするダイアである。おそらくはお茶会での事でも思い出したのだろう。
それにしても、痛いというのはどういう意味の痛いなのだろうか。思わず首を傾げてしまうシアンだった。
「そうは言いましてもね、彼女はダイアの護衛騎士候補。避けて通るわけには参りませんよ」
「そ、そうなのですね」
ペシエラに驚愕の事実を告げられ、ダイアは完全に手を止めて下を向いてしまった。騎士が嫌いなのだろうか。
なんともいえない雰囲気になったものの、シルヴァノが咳払いをして話を戻す。
「入学そうそう友だちができたのはいい傾向ですね。異国の地で一人で過ごすのですから、これで少しは不安も和らぐ事だろうね」
「はい。お気遣い誠にありがとうございます」
食事の手を止めて、頭を軽く下げるシアン。
「何か問題がございましたら、すぐにわたくしたちに報告して下さいな。王家特権というわけではございませんけれど、すぐに対処致しますので」
「王妃殿下もありがとうございます」
話が一段落すると、ようやく食事が再開される。
何度となく食べたけれど、ついついアイヴォリーの食事を懐かしく感じてしまうシアン。
大体チェリシアが大暴れしたせいで、シェリアで獲れた魚もカイスで収穫された作物も新鮮なまま運ばれてくる。なにせ今日も食卓にのぼっているくらいである。
学園生活が始まり、食を堪能したことで、改めてアイヴォリー王国へ戻ってきたんだなと実感するシアン。
食事を終えて自室代わりになった客間へ移動すると、シアンは服を着替えてポンとベッドへとお行儀悪く飛び込む。
「お母様の同級生たちの子どもたちと一緒に学ぶというのは、なんとも不思議な感覚ですね」
ごろんと天蓋を眺めながら呟くシアン。なにせ自分が子どものよう見ていた人物たちの子ども世代と同級生になるのだ。普通に考えればおかしな話である。
「私はうまくやっていけますでしょうかね。少し不安になってしまいます」
寝返りを打って真剣に悩み始めるシアン。
「悩んでも仕方ありませんよ。そういうことは忘れて普通に接すればいいんですよ、シアン様」
様子を見に来たスミレにつっ込まれるシアン。
「……それもそうですね。せっかく生まれ変わったのですし、変に考え込むのはやめておきましょう」
ベッドにもぐりこんで眠る準備をするシアン。
「おやすみなさい」
「ええ、お休みなさいませ、シアン様」
シアンはそのままあれこれ考えるのをやめて眠りについたのだった。
その日の夜の食事の席でも、シルヴァノとペシエラどころか、ライトとダイアにまで学園の印象を聞かれる始末だった。
「楽しそうだと思いましたわ。プルネ・コーラル伯爵令嬢とブランチェスカ・クロッツ子爵令嬢と仲良くなりました」
「おや、プルネもそういう年だったのか」
シアンが仲良くなった人物の名前を挙げると、やっぱりプルネの名前に反応していた。
「アイリスの子どもですわね。四人居ますけれど、プルネは確か次女でしたわね」
ペシエラが考え込むようにして反応している。その姿を見て、首を思わず傾げてしまうシアンである。
「王妃殿下?」
「……ニーズヘッグの方の影響が大きいから、子どもたちは何かと手を焼くみたいなことを言っていたことを思い出しましてね。シアン、今日は大丈夫でしたか?」
「はい、特に問題はございませんでした。ガレン先生から呼び出しを受けたくらいです」
「……」
シアンの返答に、黙り込んでしまうペシエラだった。
「そうですか……。あの先生ってば、わたくしたちの時みたいな事を……」
そして、額を押さえて首を左右に振り始めた。自分たちも呼び出された事を思い出したからである。
「そういえば、途中で黒髪の男子生徒に声を掛けられましたわ。学園長の話を同じ場で聞いていたような口ぶりでしたわね」
「黒髪か。なら、同級生とするならミドナイト男爵家の息子だろう」
聞いたことがない家名が出てきた。ノワール伯爵家ではなかったらしい。
「ミドナイト家も代々騎士の家系なんだ。ノワール伯爵家ほどではないけれど、戦いがあればそれなりに武勲を上げてきたたたき上げの家なのですよ」
シルヴァノがわざわざ説明をしてくれる。武勲を上げても爵位は上がらなかったらしい。
「武勲を上げ続けていたのなら、伯爵家でもおかしくないのでは?」
ペシエラが指摘をするが、シルヴァノは首を横に振っていた。
「本人たちが昇爵を断り続けているんですよ。戦場に出ることを生きがいにている節があって、父上たちも頭を抱えたそうだ」
なんともまぁ、いわゆる前線大好きな一族ということなのだろう。
そんな一族の人物に絡まれたとあっては、シアンは何か嫌な予感がしてしまうのだった。
「学園では合宿があるし、あとは学園祭かな。多分率先して参加して目立とうとするだろうね」
シルヴァノはおかしそうに笑っていた。
「僕も興味ありますね、そのミドナイト男爵家というものに」
ライトがかなり興味を示してしまったようだ。ちょうど剣術訓練を受けている最中とあって、戦いたい意欲に満ち触れているからだ。
ダイアの方は興味なさげに食事を続けている。剣も魔法もできるペシエラの娘ではあるものの、女性の方は不思議と魔法に傾倒してしまうものなのだ。
「ダイアも無関係というわけには参りませんわよ。来年はオフライトやシェイディアの子どもも入学しますし、ミドナイト男爵家は年子で妹がいるらしいですから、顔を合わせることになりますよ。お茶会でもお会いしたでしょう?」
「うっ……。痛いのは嫌いなんですけれどね……」
露骨に嫌な顔をするダイアである。おそらくはお茶会での事でも思い出したのだろう。
それにしても、痛いというのはどういう意味の痛いなのだろうか。思わず首を傾げてしまうシアンだった。
「そうは言いましてもね、彼女はダイアの護衛騎士候補。避けて通るわけには参りませんよ」
「そ、そうなのですね」
ペシエラに驚愕の事実を告げられ、ダイアは完全に手を止めて下を向いてしまった。騎士が嫌いなのだろうか。
なんともいえない雰囲気になったものの、シルヴァノが咳払いをして話を戻す。
「入学そうそう友だちができたのはいい傾向ですね。異国の地で一人で過ごすのですから、これで少しは不安も和らぐ事だろうね」
「はい。お気遣い誠にありがとうございます」
食事の手を止めて、頭を軽く下げるシアン。
「何か問題がございましたら、すぐにわたくしたちに報告して下さいな。王家特権というわけではございませんけれど、すぐに対処致しますので」
「王妃殿下もありがとうございます」
話が一段落すると、ようやく食事が再開される。
何度となく食べたけれど、ついついアイヴォリーの食事を懐かしく感じてしまうシアン。
大体チェリシアが大暴れしたせいで、シェリアで獲れた魚もカイスで収穫された作物も新鮮なまま運ばれてくる。なにせ今日も食卓にのぼっているくらいである。
学園生活が始まり、食を堪能したことで、改めてアイヴォリー王国へ戻ってきたんだなと実感するシアン。
食事を終えて自室代わりになった客間へ移動すると、シアンは服を着替えてポンとベッドへとお行儀悪く飛び込む。
「お母様の同級生たちの子どもたちと一緒に学ぶというのは、なんとも不思議な感覚ですね」
ごろんと天蓋を眺めながら呟くシアン。なにせ自分が子どものよう見ていた人物たちの子ども世代と同級生になるのだ。普通に考えればおかしな話である。
「私はうまくやっていけますでしょうかね。少し不安になってしまいます」
寝返りを打って真剣に悩み始めるシアン。
「悩んでも仕方ありませんよ。そういうことは忘れて普通に接すればいいんですよ、シアン様」
様子を見に来たスミレにつっ込まれるシアン。
「……それもそうですね。せっかく生まれ変わったのですし、変に考え込むのはやめておきましょう」
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