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新章 青色の智姫
第64話 長期休みの前の一大イベント
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あっという間に時間は過ぎ、夏休み前の試験の時期がやって来た。
座学と実技で行われる試験は、多くの学生たちの頭を悩ませる半年に一度やって来るイベントである。
しかし、実技の方は自分の実力を見せつけられるとあって、楽しみにしている学生もいるようだった。いろいろな思いを胸に、学生たちは期末試験に挑むのだ。
試験の日の朝、シアンも張り切った様子で城門までやって来ていた。
「それでは行ってまいります」
「シアン、確認するけれど実技試験は両方受けるつもりかしら」
「はい、そのつもりでございます」
見送りに来たペシエラと少し話をするシアン。心配してやって来たのかと思いきや、ペシエラの表情はそうでもなかった。
「ふふ、ペイルとロゼリアの娘ですものね。そのくらいはやってもらわないと、むしろ困りますわ」
自信たっぷりに笑うペシエラ。
「では、いってらっしゃいな」
「はい、行ってまいります」
改めて出発の挨拶をすると、シアンは馬車に乗り込んで学園へと向かっていった。
学園に着くと、午前中は座学の試験のために、学生たちは教室に集まる。
試験中は腕を動かす音と唸り声しか響かない。本当に静かなものである。
昼食を挟むと、いよいよ実技試験へと移る。
学生たちの数が多いので、効率的に試験を行うために学生は半々に分けられて武術試験と魔法試験が行われる。もちろん、片方だけしか受けない学生もいるので、そういった学生は試験を終えた時点で帰宅ができる。
シアンたち三人は両方を受けるので、長々と試験に臨まなければならないというわけだった。
「シアン様、私だけ武術試験が先になってしまいました……」
「仕方ありませんね。頑張ってきて下さい、プルネ」
コーラル伯爵家次女であるプルネだけが、どういうわけが武術試験を先に受けることになった。なので、シアンとブランチェスカとは離れ離れになって淋しそうな顔をしていた。
「離れ離れになったのは仕方ありませんし、だからといって試験が手加減してくれるわけではないですからね。さて、頑張りましょうか、ブランチェスカ」
「はい、シアン様」
プルネと別れて、シアンはブランチェスカとともに魔法試験の会場へと向かう。
シアンが受ける魔法試験の会場には、いくつかの的が並べられていた。
試験の内容は実に単純。魔法を使って的をすべて壊せばいい。特殊な魔法がかかっているので、壊してもすぐに修復される。そのため、まったく遠慮は要らないのである。
この魔法試験、ペシエラが初めて受けた時には会場にド派手な雷を落として驚かせたとかいう記録が残っている。シアンの記憶の中にもロゼリアからの伝聞ではあるものの、しっかりと残っている。
強力な光魔法の使い手であるペシエラだからこそできた芸当だ。さすがに今回はそんな人物はいないだろう。
「よし、全員揃ったな。この魔法試験の担当は、私ガレンが行う。的は修復されるから、全力でぶっ壊してくれて構わないぞ」
なんと、魔法試験の教官はやっぱりというかガレンだった。彼の正体を考えれば、適役という他ないだろう。
試験は爵位に関係なく家名の順番に行われる。なので、先にブランチェスカが魔法試験に臨むこととなった。
「うう、私の魔法で行けるかしら」
「大丈夫ですよ。普段の授業での事を思い出して、落ち着いていけばいいですよ」
「頑張ります、シアン様」
ブランチェスカは不安げな表情で会場の真ん中へと歩いていく。
ブランチェスカの得意属性は土だ。派手さでいえばそれほどではないが、攻防のバランスの取れた属性である。
ここまでブランチェスカが不安になるのは、ここまでの学生たちが的の破壊にかなり苦戦していたということもある。あとは彼女の性格も影響しているというもの。
しかし、シアンからの励ましもあって、ブランチェスカは覚悟を決める。
「では、ブランチェスカ・クロッツ、始めなさい」
「はい」
ブランチェスカが右手を前に突き出す。そして、集中して魔力を手のひらに集めると、ブランチェスカの前にはいくつもの土の塊が出現していた。
ブランチェスカの魔法に、少しどよめきが起きる。
「五つ?」
「あんなに一気に出せるものなのか?」
そう、彼女が魔法で出現させた土の塊は、握り拳より少し大きいくらいのものが五つなのだ。魔法の技術が不十分なら一つ出すだけでも大変だし、少々慣れたからといっても同時に五つはちょっと多いのである。
「ストーンショット!」
ブランチェスカが叫ぶと、土の塊が的へと向けて発射される。
かなり重めの音がして的にぶつかったが、的は壊れることはなかった。
「ああ、ダメでしたか」
壊れなかったので残念がるブランチェスカ。
ところが、よく見てみると土の塊がぶつかったところが大きく凹んでいる。その状態を見ながら、ガレンと補佐をする教官たちが点数をつけていく。
「よし、交代だ。ブランチェスカ・クロッツ、下がっていいぞ」
「は、はい」
試験を終えたブランチェスカは、ちょっと落ち込んだ様子で下がっていったのだった。
座学と実技で行われる試験は、多くの学生たちの頭を悩ませる半年に一度やって来るイベントである。
しかし、実技の方は自分の実力を見せつけられるとあって、楽しみにしている学生もいるようだった。いろいろな思いを胸に、学生たちは期末試験に挑むのだ。
試験の日の朝、シアンも張り切った様子で城門までやって来ていた。
「それでは行ってまいります」
「シアン、確認するけれど実技試験は両方受けるつもりかしら」
「はい、そのつもりでございます」
見送りに来たペシエラと少し話をするシアン。心配してやって来たのかと思いきや、ペシエラの表情はそうでもなかった。
「ふふ、ペイルとロゼリアの娘ですものね。そのくらいはやってもらわないと、むしろ困りますわ」
自信たっぷりに笑うペシエラ。
「では、いってらっしゃいな」
「はい、行ってまいります」
改めて出発の挨拶をすると、シアンは馬車に乗り込んで学園へと向かっていった。
学園に着くと、午前中は座学の試験のために、学生たちは教室に集まる。
試験中は腕を動かす音と唸り声しか響かない。本当に静かなものである。
昼食を挟むと、いよいよ実技試験へと移る。
学生たちの数が多いので、効率的に試験を行うために学生は半々に分けられて武術試験と魔法試験が行われる。もちろん、片方だけしか受けない学生もいるので、そういった学生は試験を終えた時点で帰宅ができる。
シアンたち三人は両方を受けるので、長々と試験に臨まなければならないというわけだった。
「シアン様、私だけ武術試験が先になってしまいました……」
「仕方ありませんね。頑張ってきて下さい、プルネ」
コーラル伯爵家次女であるプルネだけが、どういうわけが武術試験を先に受けることになった。なので、シアンとブランチェスカとは離れ離れになって淋しそうな顔をしていた。
「離れ離れになったのは仕方ありませんし、だからといって試験が手加減してくれるわけではないですからね。さて、頑張りましょうか、ブランチェスカ」
「はい、シアン様」
プルネと別れて、シアンはブランチェスカとともに魔法試験の会場へと向かう。
シアンが受ける魔法試験の会場には、いくつかの的が並べられていた。
試験の内容は実に単純。魔法を使って的をすべて壊せばいい。特殊な魔法がかかっているので、壊してもすぐに修復される。そのため、まったく遠慮は要らないのである。
この魔法試験、ペシエラが初めて受けた時には会場にド派手な雷を落として驚かせたとかいう記録が残っている。シアンの記憶の中にもロゼリアからの伝聞ではあるものの、しっかりと残っている。
強力な光魔法の使い手であるペシエラだからこそできた芸当だ。さすがに今回はそんな人物はいないだろう。
「よし、全員揃ったな。この魔法試験の担当は、私ガレンが行う。的は修復されるから、全力でぶっ壊してくれて構わないぞ」
なんと、魔法試験の教官はやっぱりというかガレンだった。彼の正体を考えれば、適役という他ないだろう。
試験は爵位に関係なく家名の順番に行われる。なので、先にブランチェスカが魔法試験に臨むこととなった。
「うう、私の魔法で行けるかしら」
「大丈夫ですよ。普段の授業での事を思い出して、落ち着いていけばいいですよ」
「頑張ります、シアン様」
ブランチェスカは不安げな表情で会場の真ん中へと歩いていく。
ブランチェスカの得意属性は土だ。派手さでいえばそれほどではないが、攻防のバランスの取れた属性である。
ここまでブランチェスカが不安になるのは、ここまでの学生たちが的の破壊にかなり苦戦していたということもある。あとは彼女の性格も影響しているというもの。
しかし、シアンからの励ましもあって、ブランチェスカは覚悟を決める。
「では、ブランチェスカ・クロッツ、始めなさい」
「はい」
ブランチェスカが右手を前に突き出す。そして、集中して魔力を手のひらに集めると、ブランチェスカの前にはいくつもの土の塊が出現していた。
ブランチェスカの魔法に、少しどよめきが起きる。
「五つ?」
「あんなに一気に出せるものなのか?」
そう、彼女が魔法で出現させた土の塊は、握り拳より少し大きいくらいのものが五つなのだ。魔法の技術が不十分なら一つ出すだけでも大変だし、少々慣れたからといっても同時に五つはちょっと多いのである。
「ストーンショット!」
ブランチェスカが叫ぶと、土の塊が的へと向けて発射される。
かなり重めの音がして的にぶつかったが、的は壊れることはなかった。
「ああ、ダメでしたか」
壊れなかったので残念がるブランチェスカ。
ところが、よく見てみると土の塊がぶつかったところが大きく凹んでいる。その状態を見ながら、ガレンと補佐をする教官たちが点数をつけていく。
「よし、交代だ。ブランチェスカ・クロッツ、下がっていいぞ」
「は、はい」
試験を終えたブランチェスカは、ちょっと落ち込んだ様子で下がっていったのだった。
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