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新章 青色の智姫
第65話 普段は隠しておくもの
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魔法試験は、いよいよシアンの出番が回ってくる。
シアンまでの間に試験に臨んでいた学生たちも、やはり的の破壊にはかなり苦戦していたようだ。一部の学生は、当てることすらも難しかったくらいだ。
「次、シアン・モスグリネ」
「はい」
いよいよシアンの出番が回ってくる。その姿はだいぶ落ち着いた雰囲気を放っているようで、試験に臨んでいる学生たちがその姿に見とれているようだった。
シアンは目の前の的へと集中する。
(さて、どの属性でやりましょうかね)
シアンは三属性の使い手なので、どの属性で試験に臨むかまだ決めかねていた。
(まあ、面倒ですから全部見せますか)
結局決まらなかったので、持てる属性を全部見せることにしたのだった。
覚悟を決めて、シアンは右手を前へと突き出す。その次の瞬間、試験会場にどよめきが起こる。
シアンは魔法を的の数だけ生み出していたのだが、三属性を同時に出現させていたのだ。ちなみに的は五つしかないので、一属性だけ魔法弾が一つしか出ていない。
「すごい、三属性を同時に操るなんて……」
驚きの声が聞こえてくる。だが、シアンの耳には届いておらず、タイミングを見計らって魔法が的に向けて放たれた。
水と土の魔法が当たった的は大きく折れ曲がり、風の魔法の当たった的にいたってはずたずたに切り裂かれていた。異なる三属性を操りながらも、それぞれに等しく威力を持たせられていたのだ。
三属性を同時に操るという離れ業をやってのけたシアンは、うまくいった事に安堵の表情を見せていた。
「異なる三属性を操り、それに等しく魔力を込められる。さすが、といったところでしょうかね」
試験官を務めるガレンからは淡々とした評価を下されていた。
試験を終えて下がるシアン。会場はずっとどよめいている。
「さすがシアン様ですね。私も負けていられません」
「向上心があるのはいい事ですよ」
ブランチェスカが対抗心を燃やして意気込んでいるので、シアンはひとまず褒めておいた。
「さて、そろそろ終わって試験が交代になりますね。武術試験の心配をしませんと……」
「そうですね。あまり得意ではありませんから、こけないようにだけ気をつけませんとね」
自分たちが剣に振り回されて倒れ込む様を想像して、シアンとブランチェスカは思わず笑ってしまうのだった。
さて、一人だけ先に武術試験に回されていたプルネはというと。
「はあっ!」
「くっ、女子だと思ってなめていたな。これほどまでにやるようになっているとは」
よく知らない男子学生相手にかなり善戦していた。
「ふぅ、講義で見ていてもずいぶんと腕を上げたように見えたが、実際を見ると想像以上だな」
「まったくですね。私よりも腕前は上じゃないですかね」
試験を見守るクライとココナスはそのように感想を述べている。
実際、プルネの動きは相当なものだ。
なぜプルネの腕前がここまで伸びているかというと、剣術の講義を取ったと両親に報告した時に、隣に立っていたアイリスの侍女であるキャノルが指導を申し出てきたのである。
アイリスもそうだが、キャノルは元々は暗殺者である。暗器は当然ではあるものの、それ以外の武器にもそれなりの心得があったのだ。
ここでキャノルからの教えが活きてきている。
講義中は実力を隠すように言われていたのである。いざという時までは力を隠し、相手を油断させておく。暗殺者としての心得である。今日は実技試験なので、あえてのお披露目の場ということになったのだ。
「ぐわっ!」
プルネの思わぬ実力に、男子学生が吹き飛ばされてしまう。そして、気が付いた時には目の前に木剣が突きつけられていた。
「それまで」
決着がついたということで、試験官が模擬戦を止める。
実技試験は模擬戦形式ではあるものの、あくまでも試験だ。通常の決着のつけ方以外にも一定時間が経過することでも試験は終了するのだ。
「くっ、普段の講義中とまったく動きが違うじゃないか」
「申し訳ありません。実力はできる限り隠しておくように言われていましたので」
男子学生の言葉に、謝罪と理由を語るプルネである。
「いや、別に悪いことじゃないさ。見抜けなかった俺が未熟だったってわけだ。くそっ、騎士の道は遠いぜ」
驚いたことに、対戦相手だった男子学生はプルネを責めるのではなく、自分の未熟さを悔しがっている。その行動に思わず驚いてしまうプルネだった。
「あんな風に思えるやつがいるとはな。こればかりは俺らも見習わなきゃいけないな」
「なかなかいませんよ、ああいう人は」
プルネの実力は当然だが、対戦相手にも感心するクライとココナスだった。
「さて、そろそろ俺らの出番だ。さっさと準備をするぞ」
「プルネ嬢に負けていられませんね。私も今日まで頑張った成果を見せてやりますよ」
「そいつは楽しみだな」
実技試験に臨むクライとココナス。実力を隠していたプルネの真の力に触発されたのか、二人の気合いもかなり入っているようだった。
ちなみに、二人は見事に対戦相手となって、クライが一方的にココナスを下して試験を終えたのだった。
シアンまでの間に試験に臨んでいた学生たちも、やはり的の破壊にはかなり苦戦していたようだ。一部の学生は、当てることすらも難しかったくらいだ。
「次、シアン・モスグリネ」
「はい」
いよいよシアンの出番が回ってくる。その姿はだいぶ落ち着いた雰囲気を放っているようで、試験に臨んでいる学生たちがその姿に見とれているようだった。
シアンは目の前の的へと集中する。
(さて、どの属性でやりましょうかね)
シアンは三属性の使い手なので、どの属性で試験に臨むかまだ決めかねていた。
(まあ、面倒ですから全部見せますか)
結局決まらなかったので、持てる属性を全部見せることにしたのだった。
覚悟を決めて、シアンは右手を前へと突き出す。その次の瞬間、試験会場にどよめきが起こる。
シアンは魔法を的の数だけ生み出していたのだが、三属性を同時に出現させていたのだ。ちなみに的は五つしかないので、一属性だけ魔法弾が一つしか出ていない。
「すごい、三属性を同時に操るなんて……」
驚きの声が聞こえてくる。だが、シアンの耳には届いておらず、タイミングを見計らって魔法が的に向けて放たれた。
水と土の魔法が当たった的は大きく折れ曲がり、風の魔法の当たった的にいたってはずたずたに切り裂かれていた。異なる三属性を操りながらも、それぞれに等しく威力を持たせられていたのだ。
三属性を同時に操るという離れ業をやってのけたシアンは、うまくいった事に安堵の表情を見せていた。
「異なる三属性を操り、それに等しく魔力を込められる。さすが、といったところでしょうかね」
試験官を務めるガレンからは淡々とした評価を下されていた。
試験を終えて下がるシアン。会場はずっとどよめいている。
「さすがシアン様ですね。私も負けていられません」
「向上心があるのはいい事ですよ」
ブランチェスカが対抗心を燃やして意気込んでいるので、シアンはひとまず褒めておいた。
「さて、そろそろ終わって試験が交代になりますね。武術試験の心配をしませんと……」
「そうですね。あまり得意ではありませんから、こけないようにだけ気をつけませんとね」
自分たちが剣に振り回されて倒れ込む様を想像して、シアンとブランチェスカは思わず笑ってしまうのだった。
さて、一人だけ先に武術試験に回されていたプルネはというと。
「はあっ!」
「くっ、女子だと思ってなめていたな。これほどまでにやるようになっているとは」
よく知らない男子学生相手にかなり善戦していた。
「ふぅ、講義で見ていてもずいぶんと腕を上げたように見えたが、実際を見ると想像以上だな」
「まったくですね。私よりも腕前は上じゃないですかね」
試験を見守るクライとココナスはそのように感想を述べている。
実際、プルネの動きは相当なものだ。
なぜプルネの腕前がここまで伸びているかというと、剣術の講義を取ったと両親に報告した時に、隣に立っていたアイリスの侍女であるキャノルが指導を申し出てきたのである。
アイリスもそうだが、キャノルは元々は暗殺者である。暗器は当然ではあるものの、それ以外の武器にもそれなりの心得があったのだ。
ここでキャノルからの教えが活きてきている。
講義中は実力を隠すように言われていたのである。いざという時までは力を隠し、相手を油断させておく。暗殺者としての心得である。今日は実技試験なので、あえてのお披露目の場ということになったのだ。
「ぐわっ!」
プルネの思わぬ実力に、男子学生が吹き飛ばされてしまう。そして、気が付いた時には目の前に木剣が突きつけられていた。
「それまで」
決着がついたということで、試験官が模擬戦を止める。
実技試験は模擬戦形式ではあるものの、あくまでも試験だ。通常の決着のつけ方以外にも一定時間が経過することでも試験は終了するのだ。
「くっ、普段の講義中とまったく動きが違うじゃないか」
「申し訳ありません。実力はできる限り隠しておくように言われていましたので」
男子学生の言葉に、謝罪と理由を語るプルネである。
「いや、別に悪いことじゃないさ。見抜けなかった俺が未熟だったってわけだ。くそっ、騎士の道は遠いぜ」
驚いたことに、対戦相手だった男子学生はプルネを責めるのではなく、自分の未熟さを悔しがっている。その行動に思わず驚いてしまうプルネだった。
「あんな風に思えるやつがいるとはな。こればかりは俺らも見習わなきゃいけないな」
「なかなかいませんよ、ああいう人は」
プルネの実力は当然だが、対戦相手にも感心するクライとココナスだった。
「さて、そろそろ俺らの出番だ。さっさと準備をするぞ」
「プルネ嬢に負けていられませんね。私も今日まで頑張った成果を見せてやりますよ」
「そいつは楽しみだな」
実技試験に臨むクライとココナス。実力を隠していたプルネの真の力に触発されたのか、二人の気合いもかなり入っているようだった。
ちなみに、二人は見事に対戦相手となって、クライが一方的にココナスを下して試験を終えたのだった。
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