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新章 青色の智姫
第80話 対ウルフ
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だが、ことはそうやすやすとは運ばないものだった。
「ブランチェスカ様、ココナス様、構えて下さい!」
突如としてプルネの声が響き渡ったのだ。
その声が響くと同時にガサガサという音とともに、新たなウルフが飛び出してきたのだ。
「幸い数は一匹。私が対処しますので、援護をお願いします」
「分かりました」
プルネはスカートの中から素早く短剣を取り出すと、ウルフの攻撃をしっかりと防ぐ。さすがはアイリスの娘、いざとなったらしっかりと動けるのだ。
「ストーンブラスト!」
「バインドヴァイン!」
プルネが動きを止めたウルフに二人がかりで魔法を放つブランチェスカとココナス。だが、ウルフは危険を察知してすっと身を躱す。
だが、身を躱したはずのウルフの眉間に短剣が突き刺さっていた。
「お母様譲りの暗器の扱い、なめてもらっては困ります」
そう、二人の魔法を避けたウルフの着地タイミングを狙いすましたかのように、プルネの投てきが命中していたのだ。
普段を見るとおとなしそうなプルネが見せた意外な技術に、ブランチェスカとココナスは思わず息を飲んだ。
驚いて動きの止まっている二人とは対照的に、プルネはウルフに対して確実にとどめを刺すために魔法を使う。
「シャドウエッジ」
ズドンとウルフの脳天と心臓の二か所に突き刺さる闇の刃。
そして、そのウルフを見落としてにやりと笑うプルネの姿。
思わず「ひっ」と声を漏らしてしまうブランチェスカとココナスの二人だった。
「二人とも、戦いとなればこれくらいの無慈悲が必要になる時はあるんです。油断すれば、こうなるのは私たちの方なんですからね」
「え、ええ……」
いつもと違い淡々としているプルネの姿に、二人は完全に腰が引けていたのだった。
一方のシアンたちの方も大詰めだった。
六匹現れたウルフの群れは、残すは半分の三匹。しかし、転がっているウルフは二体なので、おそらくプルネがとどめを刺した個体は、最初の六匹の中のいながら、うまく隠れて移動した個体だったのだろう。
だが、必死に戦ったいるシアンたちはそれに気づいていないようだ。目の前のウルフ三匹を必死に倒そうともがいている。
「アースウォール!」
シアンは使える属性の中でも苦手な部類の土魔法を使ってウルフの行動範囲を狭めていく。ところが、ウルフはそれを足場に利用してクライとゴーエンを翻弄している。
「私の魔法を逆に利用するとは、なかなかやってくれますね」
イラッときたシアンは、ウルフが着地する瞬間を狙って新たな魔法を発動させる。
「トラップニードル!」
足場に利用されている土壁にウルフが足をついた瞬間、土の針を大量に発生させたのだ。
「ギャウン!」
さすがに素足のである足の裏は刺突に弱かった。残った三匹とも土の針を思い切り踏んでしまい、大きく体勢を崩す。
「さすがシアン王女殿下、やってくれたぜ」
「このチャンス、しっかりとものと致しましょう」
体勢を崩して地面に叩きつけられたウルフたちに、容赦なくクライとゴーエンの剣が襲い掛かる。
「よし、残り一匹!」
二人が同時にとどめを刺して、残り一匹に目を向ける。だが、その一匹は既にとんでもない姿になっていた。
「なんだありゃ……」
クライが見た素の光景とは、両足を土魔法で拘束され、頭部を水の球で完全に包み込まれたウルフの姿だった。
脱出しようともがこうにも、土魔法の拘束はきつく動けない。水の球で呼吸は阻害され、ウルフは徐々に動きが悪くなり、しまいには力なくその場に横たわってしまった。
「シアン王女殿下。なかなかに恐ろしい事をしますね」
「チェリシアさんの受け売りですわよ」
ゴーエンに言われて、とっさにそのように答えておくシアンだった。チェリシア、とんだ流れ弾である。きっとその頃のチェリシアはくしゃみをしていることだろう。
「一、二……、五。一匹足りないな」
「多分、残る一匹はこれのことですね」
「なんと、そちらに襲い掛かっていましたか。これは申し訳ありません」
プルネの声に反応して現場を確認したゴーエンが謝罪している。
「いえいえ、私もいい実戦訓練ができましたから、気にしないで下さい」
困った表情でゴーエンを許すプルネであるが、ウルフを倒す様子を見ていたブランチェスカとココナスはその様子を複雑な表情と気持ちで見守っていた。
「どうしましたか、ブランチェスカ、ココナス」
「いえ、なんでもございません」
手と首を同時に横に振る二人の態度に、こてんと首を傾げるシアンだった。
ひとまず、遭遇したウルフ六匹を無事撃破して、食材を手に入れたシアンたち。解体を終えるとゴーエンが魔法で不要な部分を燃やしつくしてくれた。唯一炎が使えるのが彼だけだったから仕方がない。
「よし、さっさとチェックポイント回って帰るぞ」
「おーっ」
クライが取り仕切るような形で、シアンたちはオリエンテーリングを再開する。
数か所のポイントを回ると、ちょうどいいタイミングで休憩ポイントに着くことができた。お腹もいい感じで空いていたので、シアンたちはここでお昼を取ることとなったのだった。
「ブランチェスカ様、ココナス様、構えて下さい!」
突如としてプルネの声が響き渡ったのだ。
その声が響くと同時にガサガサという音とともに、新たなウルフが飛び出してきたのだ。
「幸い数は一匹。私が対処しますので、援護をお願いします」
「分かりました」
プルネはスカートの中から素早く短剣を取り出すと、ウルフの攻撃をしっかりと防ぐ。さすがはアイリスの娘、いざとなったらしっかりと動けるのだ。
「ストーンブラスト!」
「バインドヴァイン!」
プルネが動きを止めたウルフに二人がかりで魔法を放つブランチェスカとココナス。だが、ウルフは危険を察知してすっと身を躱す。
だが、身を躱したはずのウルフの眉間に短剣が突き刺さっていた。
「お母様譲りの暗器の扱い、なめてもらっては困ります」
そう、二人の魔法を避けたウルフの着地タイミングを狙いすましたかのように、プルネの投てきが命中していたのだ。
普段を見るとおとなしそうなプルネが見せた意外な技術に、ブランチェスカとココナスは思わず息を飲んだ。
驚いて動きの止まっている二人とは対照的に、プルネはウルフに対して確実にとどめを刺すために魔法を使う。
「シャドウエッジ」
ズドンとウルフの脳天と心臓の二か所に突き刺さる闇の刃。
そして、そのウルフを見落としてにやりと笑うプルネの姿。
思わず「ひっ」と声を漏らしてしまうブランチェスカとココナスの二人だった。
「二人とも、戦いとなればこれくらいの無慈悲が必要になる時はあるんです。油断すれば、こうなるのは私たちの方なんですからね」
「え、ええ……」
いつもと違い淡々としているプルネの姿に、二人は完全に腰が引けていたのだった。
一方のシアンたちの方も大詰めだった。
六匹現れたウルフの群れは、残すは半分の三匹。しかし、転がっているウルフは二体なので、おそらくプルネがとどめを刺した個体は、最初の六匹の中のいながら、うまく隠れて移動した個体だったのだろう。
だが、必死に戦ったいるシアンたちはそれに気づいていないようだ。目の前のウルフ三匹を必死に倒そうともがいている。
「アースウォール!」
シアンは使える属性の中でも苦手な部類の土魔法を使ってウルフの行動範囲を狭めていく。ところが、ウルフはそれを足場に利用してクライとゴーエンを翻弄している。
「私の魔法を逆に利用するとは、なかなかやってくれますね」
イラッときたシアンは、ウルフが着地する瞬間を狙って新たな魔法を発動させる。
「トラップニードル!」
足場に利用されている土壁にウルフが足をついた瞬間、土の針を大量に発生させたのだ。
「ギャウン!」
さすがに素足のである足の裏は刺突に弱かった。残った三匹とも土の針を思い切り踏んでしまい、大きく体勢を崩す。
「さすがシアン王女殿下、やってくれたぜ」
「このチャンス、しっかりとものと致しましょう」
体勢を崩して地面に叩きつけられたウルフたちに、容赦なくクライとゴーエンの剣が襲い掛かる。
「よし、残り一匹!」
二人が同時にとどめを刺して、残り一匹に目を向ける。だが、その一匹は既にとんでもない姿になっていた。
「なんだありゃ……」
クライが見た素の光景とは、両足を土魔法で拘束され、頭部を水の球で完全に包み込まれたウルフの姿だった。
脱出しようともがこうにも、土魔法の拘束はきつく動けない。水の球で呼吸は阻害され、ウルフは徐々に動きが悪くなり、しまいには力なくその場に横たわってしまった。
「シアン王女殿下。なかなかに恐ろしい事をしますね」
「チェリシアさんの受け売りですわよ」
ゴーエンに言われて、とっさにそのように答えておくシアンだった。チェリシア、とんだ流れ弾である。きっとその頃のチェリシアはくしゃみをしていることだろう。
「一、二……、五。一匹足りないな」
「多分、残る一匹はこれのことですね」
「なんと、そちらに襲い掛かっていましたか。これは申し訳ありません」
プルネの声に反応して現場を確認したゴーエンが謝罪している。
「いえいえ、私もいい実戦訓練ができましたから、気にしないで下さい」
困った表情でゴーエンを許すプルネであるが、ウルフを倒す様子を見ていたブランチェスカとココナスはその様子を複雑な表情と気持ちで見守っていた。
「どうしましたか、ブランチェスカ、ココナス」
「いえ、なんでもございません」
手と首を同時に横に振る二人の態度に、こてんと首を傾げるシアンだった。
ひとまず、遭遇したウルフ六匹を無事撃破して、食材を手に入れたシアンたち。解体を終えるとゴーエンが魔法で不要な部分を燃やしつくしてくれた。唯一炎が使えるのが彼だけだったから仕方がない。
「よし、さっさとチェックポイント回って帰るぞ」
「おーっ」
クライが取り仕切るような形で、シアンたちはオリエンテーリングを再開する。
数か所のポイントを回ると、ちょうどいいタイミングで休憩ポイントに着くことができた。お腹もいい感じで空いていたので、シアンたちはここでお昼を取ることとなったのだった。
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