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新章 青色の智姫
第88話 潮風に吹かれて
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「んん~、ご飯がおいしい」
この上ない笑顔でもりもりとお昼を食べるプルネである。
「まったく、はしたないですよプルネ」
「えへへへ」
フューシャに口を拭われながら、プルネはにこにこと笑っている。
塩を精製することで、魔法の訓練をしたシアンたち。今はその後のお昼の真っ最中である。疲れ切ったせいなのか、とてもおいしく感じる。
アイリスたちの子どもは全部で四人居るものの、家族仲はとてもよさそうだ。プルネとフューシャたちのやり取りを見ながらそう思うシアンなのであった。
「それにしても、ずいぶんと魔法の扱いが上手になりましたわね、アイリス」
「さすがにお姉様やペシエラに遅れは取りたくありませんもの。自分自身でもここまで闇魔法に適性があるとは思ってみませんでしたけれどね」
「闇魔法が光を吸収するから、それを応用して塩を集めるだなんて、よく思いついたものよね」
「えへへへ」
チェリシアやペシエラから褒められて、嬉しそうに笑うアイリスである。アイリスの闇魔法への適性が上がったのは、間違いなく夫であるニーズヘッグのせいだろう。
ニーズヘッグは厄災の暗龍とも呼ばれる闇属性のドラゴン型の幻獣である。そして、母親であるアイリスもデーモンハートに魅了されたパープリアの一族ゆえに、闇属性に対して親和性を持っている。
そんな両親から生まれた子どもたちが闇属性の適性を持っていないわけがなく、プルネは魔力検定の結果でもしっかり闇属性の適性を示されていた。姉のフューシャも同じようにやっていたから、闇属性の適性で間違いないだろう。
塩作りの様子を見てみても器用に魔法を扱うのはいい事なのだが、シアンにはやはり合宿の時の様子が引っ掛かってしまっていた。
「シアン王女殿下、どうなさったのですか?」
突然、アイリスが声を掛けてきた。
「あ、いえ、なんでもございません」
ごまかすシアンだが、アイリスはどうも気になるのか首を傾げていた。
「ほ、本当になんでもありませんから!」
シアンが再び強く発言すると、この時はアイリスは渋々引き下がっていた。
しかし、その後も食事中は気になるのかちらちらと視線を送ってきていた。
食事を終えると、一行は港へと向かっていく。チェリシアが事前に話をつけておいた船に乗せてもらうためだ。
船着き場に向かう最中、アイリスがゆっくりとシアンへと近付いて話し掛けてきた。
「シアン王女殿下」
「なんでしょうか、アイリス様」
急に話し掛けてきたものだから、警戒しながらアイリスに反応を見せるシアンである。
「私の娘に、何か気になることでもあるのでしょうか」
「……どうしてそう思われるのですか?」
アイリスの質問に答えず、逆に質問を返すシアン。ちょっと気まずいと考えたからだ。
「先程の食事の間、やたらとプルネのことを見ていらしたので、気になったのです。よろしければ、お話をお伺いしても?」
よく見ているものだ。確かにシアンはずいぶんとプルネに視線を向けていた。友人がゆえに気になるのだ。
自分のことをまじまじと見てくるアイリスに戸惑いながらも、シアンはどう答えるか考えている。そして、出した結論。
「分かりました。船に乗ってからお答えします」
結局答えることにしたものの、出港するまで待ってもらうことにしたのだった。
ひとまずの保留。これにはアイリスも納得して、シアンの手を引きながら改めて船着き場へと向かっていった。
ざざぁ……ん。
チェリシアが話をつけておいてくれた船に乗って、港湾内の遊覧が始まる。
初めて乗る船に、みんなが興奮している。
みんなのことはキャノルたち使用人に任せて、アイリスはシアンと船室の壁に寄り添うように隣り合って立っている。
「それでですが、うちの娘を見ていた理由は何なのでしょうか」
「報告は受けているとは思いますが、合宿でデーモンハートが使われた形跡がありました」
「ええ、聞いています。王女殿下は、ライから話を聞いたのでしょう?」
アイリスの問い掛けにこくりと頷くシアン。
「私の父方の家系がデーモンハートの影響を受けていたわけですからね。私はもちろん、子どもたちもその影響を受けないと言ったら間違いだと思いますよ」
深刻な表情のアイリス。
その表情を見たシアンは複雑な感情に襲われ、どう反応していいのか困ってしまう。
実家の呪縛から解き放たれたかと思われていたアイリスも、実は未だにその呪縛に囚われていたのだ。
(デーモンハート……。なんて恐ろしい石なのですか)
ことの深刻さに、シアンも思わず息を飲んでしまう。
そのまま下を向いてしまうシアンだったが、突然アイリスが手を打ったので、その大きな音に驚いて顔を上げる。
「海だからといっても、湿っぽい事はこのくらいにしておきましょう。せっかく旅行に来ているんですから、楽しくしなくっちゃ」
にこにことした表情で話すアイリスに、シアンもはっとして無言でこくりと頷く。
シアンはアイリスに手を引かれて、チェリシアやペシエラたちと合流する。
しばらくそのまま、船の上で潮風に当たりながら、のんびりとした船の時間を過ごしたのだった。
この上ない笑顔でもりもりとお昼を食べるプルネである。
「まったく、はしたないですよプルネ」
「えへへへ」
フューシャに口を拭われながら、プルネはにこにこと笑っている。
塩を精製することで、魔法の訓練をしたシアンたち。今はその後のお昼の真っ最中である。疲れ切ったせいなのか、とてもおいしく感じる。
アイリスたちの子どもは全部で四人居るものの、家族仲はとてもよさそうだ。プルネとフューシャたちのやり取りを見ながらそう思うシアンなのであった。
「それにしても、ずいぶんと魔法の扱いが上手になりましたわね、アイリス」
「さすがにお姉様やペシエラに遅れは取りたくありませんもの。自分自身でもここまで闇魔法に適性があるとは思ってみませんでしたけれどね」
「闇魔法が光を吸収するから、それを応用して塩を集めるだなんて、よく思いついたものよね」
「えへへへ」
チェリシアやペシエラから褒められて、嬉しそうに笑うアイリスである。アイリスの闇魔法への適性が上がったのは、間違いなく夫であるニーズヘッグのせいだろう。
ニーズヘッグは厄災の暗龍とも呼ばれる闇属性のドラゴン型の幻獣である。そして、母親であるアイリスもデーモンハートに魅了されたパープリアの一族ゆえに、闇属性に対して親和性を持っている。
そんな両親から生まれた子どもたちが闇属性の適性を持っていないわけがなく、プルネは魔力検定の結果でもしっかり闇属性の適性を示されていた。姉のフューシャも同じようにやっていたから、闇属性の適性で間違いないだろう。
塩作りの様子を見てみても器用に魔法を扱うのはいい事なのだが、シアンにはやはり合宿の時の様子が引っ掛かってしまっていた。
「シアン王女殿下、どうなさったのですか?」
突然、アイリスが声を掛けてきた。
「あ、いえ、なんでもございません」
ごまかすシアンだが、アイリスはどうも気になるのか首を傾げていた。
「ほ、本当になんでもありませんから!」
シアンが再び強く発言すると、この時はアイリスは渋々引き下がっていた。
しかし、その後も食事中は気になるのかちらちらと視線を送ってきていた。
食事を終えると、一行は港へと向かっていく。チェリシアが事前に話をつけておいた船に乗せてもらうためだ。
船着き場に向かう最中、アイリスがゆっくりとシアンへと近付いて話し掛けてきた。
「シアン王女殿下」
「なんでしょうか、アイリス様」
急に話し掛けてきたものだから、警戒しながらアイリスに反応を見せるシアンである。
「私の娘に、何か気になることでもあるのでしょうか」
「……どうしてそう思われるのですか?」
アイリスの質問に答えず、逆に質問を返すシアン。ちょっと気まずいと考えたからだ。
「先程の食事の間、やたらとプルネのことを見ていらしたので、気になったのです。よろしければ、お話をお伺いしても?」
よく見ているものだ。確かにシアンはずいぶんとプルネに視線を向けていた。友人がゆえに気になるのだ。
自分のことをまじまじと見てくるアイリスに戸惑いながらも、シアンはどう答えるか考えている。そして、出した結論。
「分かりました。船に乗ってからお答えします」
結局答えることにしたものの、出港するまで待ってもらうことにしたのだった。
ひとまずの保留。これにはアイリスも納得して、シアンの手を引きながら改めて船着き場へと向かっていった。
ざざぁ……ん。
チェリシアが話をつけておいてくれた船に乗って、港湾内の遊覧が始まる。
初めて乗る船に、みんなが興奮している。
みんなのことはキャノルたち使用人に任せて、アイリスはシアンと船室の壁に寄り添うように隣り合って立っている。
「それでですが、うちの娘を見ていた理由は何なのでしょうか」
「報告は受けているとは思いますが、合宿でデーモンハートが使われた形跡がありました」
「ええ、聞いています。王女殿下は、ライから話を聞いたのでしょう?」
アイリスの問い掛けにこくりと頷くシアン。
「私の父方の家系がデーモンハートの影響を受けていたわけですからね。私はもちろん、子どもたちもその影響を受けないと言ったら間違いだと思いますよ」
深刻な表情のアイリス。
その表情を見たシアンは複雑な感情に襲われ、どう反応していいのか困ってしまう。
実家の呪縛から解き放たれたかと思われていたアイリスも、実は未だにその呪縛に囚われていたのだ。
(デーモンハート……。なんて恐ろしい石なのですか)
ことの深刻さに、シアンも思わず息を飲んでしまう。
そのまま下を向いてしまうシアンだったが、突然アイリスが手を打ったので、その大きな音に驚いて顔を上げる。
「海だからといっても、湿っぽい事はこのくらいにしておきましょう。せっかく旅行に来ているんですから、楽しくしなくっちゃ」
にこにことした表情で話すアイリスに、シアンもはっとして無言でこくりと頷く。
シアンはアイリスに手を引かれて、チェリシアやペシエラたちと合流する。
しばらくそのまま、船の上で潮風に当たりながら、のんびりとした船の時間を過ごしたのだった。
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