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新章 青色の智姫
第104話 クライvsガーネット
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観戦をした結果、もう言葉にもならなかった。圧倒的過ぎた。
「話になってませんね」
「相手が可哀想でしたね」
アッシュは六年次生、対戦相手は二年次生とはいえ、実力の差は歴然過ぎた。
開始早々一瞬で踏み込んで、相手の眼前で剣をピタリと止めていた。本物で振り抜いていたら、それはもう分かり切った結果というものだ。
「昼食の直前に見るものではありませんでしたね」
アイリスも苦笑いだった。
「それではお昼としましょうか」
「はい、お母様」
アイリスの言葉に応じて、シアンたちは闘技場から移動したのだった。
お昼は当然ながら、マゼンダ商会の裏側。
「お父様、お母様、いらしてたのですね」
「やあ、チェリシア。お前の手紙を読んでやって来たよ」
「あら、チェリシア様がお呼びになられたのですね」
プラウスが声を掛ければ、シアンが驚いたようにチェリシアを見ている。
「ええ。でも、ちょっと遅かったですね。フューシャもプルネも昨日で出番終わっちゃいましたからね」
「いやぁ、アイリスから聞かされた時はショックだったね。孫娘の活躍を見れなかったかと思うと、悔しくてたまらない」
チェリシアがお昼の準備をしながら話していると、プラウスは両腕を組んで悔しがっていた。そのくらいに見たかったようだ。
「なら、また来年ですよ、お父様」
「ふむ、私も長生きせねばな」
手を腰に当てて笑うプラウスに、サルモアもつられて口元を隠しながら笑っていた。
「で、おば様は何を作ってらっしゃいますか?」
「うん? ああ、これね。お好み焼きよ」
「お好み焼き?」
聞いたことがない単語に、アイリスの子どもたちは首を伸ばして覗き込もうとする。前世のあるシアンも知らないようで、同じように覗き込んでいる。
「久しぶりにお前のお好み焼きが食べられるのか。それは実に楽しみだな」
プラウスは笑いながら用意された席に座る。それを合図にみんな順番に座っていった。
しばらくするとお好み焼きができ上がり、久しぶりにコーラル家が揃って食事を楽しんだのだ。シアンはその姿にちょっと感動を覚えたのだった。
午後に入ると、再び武術大会の会場へ。
クライとガーネットの試合を見るためだ。
四回戦まで進んで、クライは唯一残った一年次生。その注目はかなり高いようだった。
「クライ様、頑張ってね」
プルネは声援を送っている。
武台にはクライとガーネットが上がり、お互いにじっと見つめ合っている。
「君は親が騎士団の一員らしいね、クライ・ミドナイト」
「ああ、だからこそ、俺はこの戦いに勝つ」
「ふっ、威勢だけはいいな。だが、上には上がいるということを思い知るといいよ。もし私に勝ったとしても、決勝では必ずあいつに跳ね返される」
剣をぎゅっと握りしめるクライに、ガーネットは淡々と話し掛けている。
「壁が高いほど、壊しがいがあるってものだ。まずはガーネット・ザクロース、あんたという壁を壊してやる」
「ふっ、やってみるがいい」
揃ってかちゃりと構えたところで、試合開始の合図が響き渡る。
同時に踏み込んで突っ込んでいく。
ガキン!
剣と剣がぶつかり合い、大きな金属音が会場いっぱいに響き渡る。
必死な形相で剣を押すクライに対し、まだまだ余裕がありそうな表情のガーネット。男女の差はまったく感じられないし、女性であるガーネットの方が強いようだ。
「力は十分、スピードもある。これは将来が楽しみな子だな」
「くっそ……。なんで笑ってられるんだよ」
クライはガーネットの様子を見て、歯を食いしばっている。
「さて、一度仕切り直しかな」
ガーネットは剣を払って数歩下がる。クライは急に弾かれたので体勢を崩してしまい、よろめきながら下がっていく。
その無防備な状態にもかかわらず、ガーネットは攻撃を仕掛けない。万全の体勢の相手と戦いたいようだ。
「くっ、なめやがって……」
「なめちゃいないさ。私は、ちゃんと戦いたいだけさ。不意打ちなど、実力のない者がするものだからな」
ギリッと歯を食いしばるクライに対して、ガーネットは見下すような視線で言い放つ。
「私は、強者との戦いを望むだけだ。相手の全力を正面から受けて叩き潰す。これぞ強者のあるべき姿だ」
ガーネットの気迫が一気に膨れ上がる。クライは踏ん張って耐えてはいるが、あまりの強さに心が折れてしまいそうだ。
明らかな実力差を感じながらも、どうにか一矢報いようとクライは剣を強く握る。
「そうか。だったら、お望みどおりにやってやる。この一撃を食らってみろ!」
クライは剣を振り上げてガーネットへと突っ込んでいく。軽く跳び上がって、ガーネットへと斬りつける。
「くらえっ!」
クライは叫ぶ。
受け立つガーネットはまったく身じろぎもしない。ただ、立ち尽くすのみ。
横薙ぎ一閃。
クライの剣が振り下ろされた瞬間に、ガーネットが動く。
「勝者、ガーネット・ザクロース!」
クライの持つ剣は場外へと弾き飛ばされ、クライは目の前に剣を突きつけられていた。
勝敗は一瞬で決したのだった。
「話になってませんね」
「相手が可哀想でしたね」
アッシュは六年次生、対戦相手は二年次生とはいえ、実力の差は歴然過ぎた。
開始早々一瞬で踏み込んで、相手の眼前で剣をピタリと止めていた。本物で振り抜いていたら、それはもう分かり切った結果というものだ。
「昼食の直前に見るものではありませんでしたね」
アイリスも苦笑いだった。
「それではお昼としましょうか」
「はい、お母様」
アイリスの言葉に応じて、シアンたちは闘技場から移動したのだった。
お昼は当然ながら、マゼンダ商会の裏側。
「お父様、お母様、いらしてたのですね」
「やあ、チェリシア。お前の手紙を読んでやって来たよ」
「あら、チェリシア様がお呼びになられたのですね」
プラウスが声を掛ければ、シアンが驚いたようにチェリシアを見ている。
「ええ。でも、ちょっと遅かったですね。フューシャもプルネも昨日で出番終わっちゃいましたからね」
「いやぁ、アイリスから聞かされた時はショックだったね。孫娘の活躍を見れなかったかと思うと、悔しくてたまらない」
チェリシアがお昼の準備をしながら話していると、プラウスは両腕を組んで悔しがっていた。そのくらいに見たかったようだ。
「なら、また来年ですよ、お父様」
「ふむ、私も長生きせねばな」
手を腰に当てて笑うプラウスに、サルモアもつられて口元を隠しながら笑っていた。
「で、おば様は何を作ってらっしゃいますか?」
「うん? ああ、これね。お好み焼きよ」
「お好み焼き?」
聞いたことがない単語に、アイリスの子どもたちは首を伸ばして覗き込もうとする。前世のあるシアンも知らないようで、同じように覗き込んでいる。
「久しぶりにお前のお好み焼きが食べられるのか。それは実に楽しみだな」
プラウスは笑いながら用意された席に座る。それを合図にみんな順番に座っていった。
しばらくするとお好み焼きができ上がり、久しぶりにコーラル家が揃って食事を楽しんだのだ。シアンはその姿にちょっと感動を覚えたのだった。
午後に入ると、再び武術大会の会場へ。
クライとガーネットの試合を見るためだ。
四回戦まで進んで、クライは唯一残った一年次生。その注目はかなり高いようだった。
「クライ様、頑張ってね」
プルネは声援を送っている。
武台にはクライとガーネットが上がり、お互いにじっと見つめ合っている。
「君は親が騎士団の一員らしいね、クライ・ミドナイト」
「ああ、だからこそ、俺はこの戦いに勝つ」
「ふっ、威勢だけはいいな。だが、上には上がいるということを思い知るといいよ。もし私に勝ったとしても、決勝では必ずあいつに跳ね返される」
剣をぎゅっと握りしめるクライに、ガーネットは淡々と話し掛けている。
「壁が高いほど、壊しがいがあるってものだ。まずはガーネット・ザクロース、あんたという壁を壊してやる」
「ふっ、やってみるがいい」
揃ってかちゃりと構えたところで、試合開始の合図が響き渡る。
同時に踏み込んで突っ込んでいく。
ガキン!
剣と剣がぶつかり合い、大きな金属音が会場いっぱいに響き渡る。
必死な形相で剣を押すクライに対し、まだまだ余裕がありそうな表情のガーネット。男女の差はまったく感じられないし、女性であるガーネットの方が強いようだ。
「力は十分、スピードもある。これは将来が楽しみな子だな」
「くっそ……。なんで笑ってられるんだよ」
クライはガーネットの様子を見て、歯を食いしばっている。
「さて、一度仕切り直しかな」
ガーネットは剣を払って数歩下がる。クライは急に弾かれたので体勢を崩してしまい、よろめきながら下がっていく。
その無防備な状態にもかかわらず、ガーネットは攻撃を仕掛けない。万全の体勢の相手と戦いたいようだ。
「くっ、なめやがって……」
「なめちゃいないさ。私は、ちゃんと戦いたいだけさ。不意打ちなど、実力のない者がするものだからな」
ギリッと歯を食いしばるクライに対して、ガーネットは見下すような視線で言い放つ。
「私は、強者との戦いを望むだけだ。相手の全力を正面から受けて叩き潰す。これぞ強者のあるべき姿だ」
ガーネットの気迫が一気に膨れ上がる。クライは踏ん張って耐えてはいるが、あまりの強さに心が折れてしまいそうだ。
明らかな実力差を感じながらも、どうにか一矢報いようとクライは剣を強く握る。
「そうか。だったら、お望みどおりにやってやる。この一撃を食らってみろ!」
クライは剣を振り上げてガーネットへと突っ込んでいく。軽く跳び上がって、ガーネットへと斬りつける。
「くらえっ!」
クライは叫ぶ。
受け立つガーネットはまったく身じろぎもしない。ただ、立ち尽くすのみ。
横薙ぎ一閃。
クライの剣が振り下ろされた瞬間に、ガーネットが動く。
「勝者、ガーネット・ザクロース!」
クライの持つ剣は場外へと弾き飛ばされ、クライは目の前に剣を突きつけられていた。
勝敗は一瞬で決したのだった。
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