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新章 青色の智姫
第112話 魔法の可能性
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学園祭後のお茶会から数日後のこと……。
「あは、あははは!」
プルネが楽しそうに笑っていた。
「驚いたわ。私よりに先に乗り物の魔法を使いこなしてしまいますとは……」
「楽しいですね、シアン様」
そう、先日のお茶会で話題に出たエアリアルボードのような乗り物を、闇魔法で作り上げてしまったのだ。もしかしたら、プルネは天才かもしれない。
今はブランチェスカの家にやって来て、そこで闇の乗り物のお披露目をしているところなのだ。
ただ、大きさとしては人一人が乗れる程度の大きさで、全員で移動するというにはまったく足りなかった。
「シャドウボードと名付けましょうかね、シアン様」
「え、ええ。それでいいと思いますよ」
安直なネーミングではあるものの、風属性のエアリアルボードもほぼそのままなので問題ないと思われる。
「現状はプルネ様だけの魔法ですのね。素晴らしいですわ」
「えへへへ……」
ブランチェスカが褒めると、プルネはものすごく照れて恥ずかしそうに顔を赤くしていた。
「むぅぅ……、風魔法の使い手としては、私も負けていられませんね。お母様たち同様にエアリアルボードをマスターしませんと」
「ファイト、です」
プルンとブランチェスカに励まされるシアンだった。
庭に移って練習をするものの、シアンが最も得意とするのは水魔法。なかなかうまくいくことはなかった。
「はぁ、風魔法のモスグリネの生まれですのに、どうしてできませんのかしら……」
風は集められるものの、それが形になることはなかった。ただ風が渦巻いているだけで、とても上に物を乗せられるような状態ではなかった。
「だ、大丈夫ですよ、シアン様。きっといつかできるようになりますって」
プルネが拳を握りながらシアンを励ましている。
その様子を困った顔で見ているブランチェスカである。
「いっそのこと、シアン様の得意な属性で作られてみてはどうでしょうかね。一つできてしまえば応用が利くかもしれませんし」
「それよ、ブランチェスカ様!」
苦言を呈すブランチェスカに、プルネが大声で食いついてくる。思わずびびって身を引いてしまうブランチェスカだった。
「水属性がお得意なのでしたら、水属性でやればいいんです。早速やっちゃいましょう」
「そんな軽いノリでいいのですかね……」
顔をずいっと近付けてくるプルネに、シアンが珍しくたじろいでいる。自分ができたということもあって、そこそこ調子に乗っているようだった。
とはいえ、試してみる価値はありそうだ。
チェリシアの受け売りではないが、自分たちの周りに存在している空気の中には、水蒸気という形で水分が存在している。
言ってしまえば水も宙に浮けるという話になる。ならば、水を集めたものでも宙に浮けるのではないか、そういう考えに至ったのだ。
シアンは集中して、目の前に自分の魔力を集めていく。最も得意な属性である水の魔法。それをトレイのような形に固めるようにイメージするのだ。
やがて、水の塊となったシアンの魔力が、その目の前でぐにゃぐにゃと形を変えていく。
(もう少し……。意識を集中させるのですよ)
今のままではただの水のクッションでしかない。しかも、そのまま中に入りこめてしまいそうな感じの柔軟性だ。乗り物にしてもクッションにしても、中に潜れてしまっては意味がない。シアンはさらに意識を集中させていく。
結局、この日のシアンは水の乗り物を完成させることはできなかった。どうしても中に落ち込まないための膜が作れなかったのだ。
プルネに後れを取ってしまったことに地味にショックを受けながら、シアンは城へと戻っていった。
食事の際にちらりとその話をペシエラにすると、夕食の後にペシエラの部屋に呼ばれた。一体何の話なのだろうか。
「よく来ましたね、シアン」
「ペシエラ様、一体どのようなご用件なのでしょうか」
ペシエラに呼ばれたシアンは、緊張した面持ちでペシエラを見ている。
質問に答えることなくペシエラはシアンとの間に距離を取っていく。そして、すぐさまなにやら魔法を発動させていた。
ペシエラの目の前にエアリアルボードが出現する。
「こういうものを作ろうというわけですわよね?」
ペシエラの質問に、黙ったままこくりと頷くシアン。
次の瞬間、ペシエラの目の前のエアリアルボードは消え、続けて水の円盤が出現した。
「さしずめ、アクアボードといったところでしょうかね。さすがのわたくしでも、水魔法で乗り物を作るのは少し厳しいですわね」
そうは言うものの、ペシエラはいとも簡単に水魔法で乗り物を作ってしまっていた。これが才能の差なのか。
「触ってごらんなさい」
「はい、お言葉に甘えさせて頂きます」
ペシエラの作り出した水の塊を、おそるおそる触るシアン。ぷにぷにとした感触と、ひんやりとした心地よさを兼ね備えた、とんでもないものだった。
「冷たくて気持ちいい……」
「ふむ、冷たいのであれば冬にはちょっと不向きかもしれませんわね。そこは要改善といったところですわね」
シアンの感想を聞いて、ペシエラはちょっと考え込んでいた。
「ペシエラ様、ありがとうございました。私、頑張ってみます」
「ええ、参考になったのであるならよかったですわ」
シアンは一礼して自分の部屋へと戻っていった。
シアンを見送ったペシエラは、楽しそうにくすくすと笑いながらしばらくたたずんでいた。
「あは、あははは!」
プルネが楽しそうに笑っていた。
「驚いたわ。私よりに先に乗り物の魔法を使いこなしてしまいますとは……」
「楽しいですね、シアン様」
そう、先日のお茶会で話題に出たエアリアルボードのような乗り物を、闇魔法で作り上げてしまったのだ。もしかしたら、プルネは天才かもしれない。
今はブランチェスカの家にやって来て、そこで闇の乗り物のお披露目をしているところなのだ。
ただ、大きさとしては人一人が乗れる程度の大きさで、全員で移動するというにはまったく足りなかった。
「シャドウボードと名付けましょうかね、シアン様」
「え、ええ。それでいいと思いますよ」
安直なネーミングではあるものの、風属性のエアリアルボードもほぼそのままなので問題ないと思われる。
「現状はプルネ様だけの魔法ですのね。素晴らしいですわ」
「えへへへ……」
ブランチェスカが褒めると、プルネはものすごく照れて恥ずかしそうに顔を赤くしていた。
「むぅぅ……、風魔法の使い手としては、私も負けていられませんね。お母様たち同様にエアリアルボードをマスターしませんと」
「ファイト、です」
プルンとブランチェスカに励まされるシアンだった。
庭に移って練習をするものの、シアンが最も得意とするのは水魔法。なかなかうまくいくことはなかった。
「はぁ、風魔法のモスグリネの生まれですのに、どうしてできませんのかしら……」
風は集められるものの、それが形になることはなかった。ただ風が渦巻いているだけで、とても上に物を乗せられるような状態ではなかった。
「だ、大丈夫ですよ、シアン様。きっといつかできるようになりますって」
プルネが拳を握りながらシアンを励ましている。
その様子を困った顔で見ているブランチェスカである。
「いっそのこと、シアン様の得意な属性で作られてみてはどうでしょうかね。一つできてしまえば応用が利くかもしれませんし」
「それよ、ブランチェスカ様!」
苦言を呈すブランチェスカに、プルネが大声で食いついてくる。思わずびびって身を引いてしまうブランチェスカだった。
「水属性がお得意なのでしたら、水属性でやればいいんです。早速やっちゃいましょう」
「そんな軽いノリでいいのですかね……」
顔をずいっと近付けてくるプルネに、シアンが珍しくたじろいでいる。自分ができたということもあって、そこそこ調子に乗っているようだった。
とはいえ、試してみる価値はありそうだ。
チェリシアの受け売りではないが、自分たちの周りに存在している空気の中には、水蒸気という形で水分が存在している。
言ってしまえば水も宙に浮けるという話になる。ならば、水を集めたものでも宙に浮けるのではないか、そういう考えに至ったのだ。
シアンは集中して、目の前に自分の魔力を集めていく。最も得意な属性である水の魔法。それをトレイのような形に固めるようにイメージするのだ。
やがて、水の塊となったシアンの魔力が、その目の前でぐにゃぐにゃと形を変えていく。
(もう少し……。意識を集中させるのですよ)
今のままではただの水のクッションでしかない。しかも、そのまま中に入りこめてしまいそうな感じの柔軟性だ。乗り物にしてもクッションにしても、中に潜れてしまっては意味がない。シアンはさらに意識を集中させていく。
結局、この日のシアンは水の乗り物を完成させることはできなかった。どうしても中に落ち込まないための膜が作れなかったのだ。
プルネに後れを取ってしまったことに地味にショックを受けながら、シアンは城へと戻っていった。
食事の際にちらりとその話をペシエラにすると、夕食の後にペシエラの部屋に呼ばれた。一体何の話なのだろうか。
「よく来ましたね、シアン」
「ペシエラ様、一体どのようなご用件なのでしょうか」
ペシエラに呼ばれたシアンは、緊張した面持ちでペシエラを見ている。
質問に答えることなくペシエラはシアンとの間に距離を取っていく。そして、すぐさまなにやら魔法を発動させていた。
ペシエラの目の前にエアリアルボードが出現する。
「こういうものを作ろうというわけですわよね?」
ペシエラの質問に、黙ったままこくりと頷くシアン。
次の瞬間、ペシエラの目の前のエアリアルボードは消え、続けて水の円盤が出現した。
「さしずめ、アクアボードといったところでしょうかね。さすがのわたくしでも、水魔法で乗り物を作るのは少し厳しいですわね」
そうは言うものの、ペシエラはいとも簡単に水魔法で乗り物を作ってしまっていた。これが才能の差なのか。
「触ってごらんなさい」
「はい、お言葉に甘えさせて頂きます」
ペシエラの作り出した水の塊を、おそるおそる触るシアン。ぷにぷにとした感触と、ひんやりとした心地よさを兼ね備えた、とんでもないものだった。
「冷たくて気持ちいい……」
「ふむ、冷たいのであれば冬にはちょっと不向きかもしれませんわね。そこは要改善といったところですわね」
シアンの感想を聞いて、ペシエラはちょっと考え込んでいた。
「ペシエラ様、ありがとうございました。私、頑張ってみます」
「ええ、参考になったのであるならよかったですわ」
シアンは一礼して自分の部屋へと戻っていった。
シアンを見送ったペシエラは、楽しそうにくすくすと笑いながらしばらくたたずんでいた。
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