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新章 青色の智姫
第117話 何事もなく年末
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学園祭が終わった後は特に何も問題なく、あっという間に年末を迎える。
いつぞやから年末のパーティーの時期には特別なケーキを食べる習慣が根付いてしまったアイヴォリー王国。今年も王城内では大きくて真っ白なケーキが振る舞われている。
「このケーキを食べる習慣は、お姉様のせいですわよ」
「ああ、やっぱりなんですね」
ペシエラの隣にその子どもたちと一緒に座らされるシアンは、ペシエラの愚痴を聞かされていた。
チェリシアが異世界からの転生者というのはそこそこ王族内では広がっているし、シアンも前世があるだけに信じられる話であった。
そのチェリシアの前世にあった『クリスマス』という習慣が、このアイヴォリー王国にもすっかり定着してしまっているのだ。
「ケーキにはマゼンダ侯爵領やコーラル伯爵領のフルーツがふんだんに使われていますからね。小麦とクリームは他の方の領地のものですけれども」
ケーキを王妃自らが切り分けながら、説明をしている。
「わたくしのコーラル伯爵領に関してはいろいろ言われることはございますけれど、そもそもコーラル領は広すぎますのよ。東側のどれだけの範囲を持ってると思ってますのかしらね」
険しい表情をしているペシエラ。これは相当に貴族たちから言いがかりをつけられているのだろう。
「このケーキはパーティーの席では出ないのですね」
「ええ。お姉様が言うには個別の家で家族そろって食べるというのが基本なのだそうですわよ」
「そうなのですね」
ケーキをもぐもぐと食べながら、シアンはペシエラの話を聞いている。
「年末の三日間はお城の中でのパーティーが続きますから、その時にはまた別の料理を振る舞わせて頂きますわ」
「それって、ペシエラ様も腕を振る舞われるような言い方じゃないですか……」
シアンが困惑した表情を浮かべながら言葉を返している。
「その通りですよ、シアン様」
「へ?」
ライトとダイアから同時に言われて、真顔で驚くシアン。
「その通りですわよ。料理の一部は私とお姉様とで作らさせて頂いていますの。鶏肉とサーモンはお姉様が作られてますのよ」
「チェリシア様は理解できますけれど、ペシエラ様もですのね」
眉をぴくぴくとさせながら、シアンは驚いたように話している。
「皆様の頑張りを労うもの、国のトップに立つ者の役目。わたくしが声を出しても威圧にしかなりませんから、料理という形で提供させて頂いておりますわ」
話すペシエラの表情は、まったくいつも通りで崩れなかった。
「ということは、今回のこのケーキも……」
「ええ、その通り。わたくしが腕を振るわせて頂きましたわ」
ペシエラの言葉を聞いて、目を丸くしてしまうシアンである。
シアンは前世でロゼリアの侍女をしていたのだが、料理というものにはそれほど親しんでこなかった。ここまで作れるかと聞かれたら、なかなかはいとは言えないくらいの腕前である。
自分以上の料理を作れてしまうペシエラには、ただただ驚くしかなかった。一国の王妃がこれだけの料理が作れるなんて、誰が信じられようか。
「母上の料理はとてもおいしいですよ。私も大好物ですからね」
「ええ、私も気に入っております」
ライトとダイアもこの通りである。家族補正を入れてもここまでの笑顔で褒めるなんてことは、相当気に入っている証拠なのだった。
「そういうわけですから、あさってからの年末パーティーも楽しみにしておいて下さいませ」
「わ、分かりました。楽しみにさせて頂きます」
ペシエラは普通に話しているだけなのに、圧倒されてしまうシアン。その威圧感に、笑顔がとても引きつっていた。
シアンたちの話が落ち着いた頃、ダイアがふと外を見て何かに気が付く。
「あ、雪ですよ」
ダイアの言葉を聞いて、シアンたちも窓の外へと視線を向ける。
窓の外では、白いものがちらほらと舞っているようだ。
窓に近付いて外を見るペシエラ。まるで警戒するかのような目で外の上下左右をじっくりと確認している。
「ええ、確かに雪のようですわね。この分でしたら、朝には積もっているでしょう」
カーテンを閉めながら、くるりと振り返って笑顔で話すペシエラである。
「ええ、積もるんですか? それだったら、雪だるまとか作れるかしら」
笑顔を浮かべたダイアが、両手を胸の前に当てながら願望のように呟いている。
「あまり積もってもらっては、私は困りますね。明日も訓練があるんですよ。滑ってこけるようなことがあれば、騎士たちのいい笑いものです」
「まぁ、お兄様ったら」
あまりに正直にライトが言うものだから、ダイアは口に手を当てて笑っている。つられるようにしてもシアンもつい笑ってしまっていた。
「酷いですね、二人とも。どうしてそんなに笑うんですか」
かなり笑うものだから、ライトは文句を言っている。
「だって、尻餅をつくお兄様を想像してしまって……、うふふふふ」
「ダメですわよ、ダイア様。笑い過ぎて、ぷっ」
「シアン様もですよ」
結局、シアンとダイアの笑いはしばらくおさまることはなかった。
そんなこんなの楽しい雰囲気の中、学園生活一年目が暮れようとしていた。
いつぞやから年末のパーティーの時期には特別なケーキを食べる習慣が根付いてしまったアイヴォリー王国。今年も王城内では大きくて真っ白なケーキが振る舞われている。
「このケーキを食べる習慣は、お姉様のせいですわよ」
「ああ、やっぱりなんですね」
ペシエラの隣にその子どもたちと一緒に座らされるシアンは、ペシエラの愚痴を聞かされていた。
チェリシアが異世界からの転生者というのはそこそこ王族内では広がっているし、シアンも前世があるだけに信じられる話であった。
そのチェリシアの前世にあった『クリスマス』という習慣が、このアイヴォリー王国にもすっかり定着してしまっているのだ。
「ケーキにはマゼンダ侯爵領やコーラル伯爵領のフルーツがふんだんに使われていますからね。小麦とクリームは他の方の領地のものですけれども」
ケーキを王妃自らが切り分けながら、説明をしている。
「わたくしのコーラル伯爵領に関してはいろいろ言われることはございますけれど、そもそもコーラル領は広すぎますのよ。東側のどれだけの範囲を持ってると思ってますのかしらね」
険しい表情をしているペシエラ。これは相当に貴族たちから言いがかりをつけられているのだろう。
「このケーキはパーティーの席では出ないのですね」
「ええ。お姉様が言うには個別の家で家族そろって食べるというのが基本なのだそうですわよ」
「そうなのですね」
ケーキをもぐもぐと食べながら、シアンはペシエラの話を聞いている。
「年末の三日間はお城の中でのパーティーが続きますから、その時にはまた別の料理を振る舞わせて頂きますわ」
「それって、ペシエラ様も腕を振る舞われるような言い方じゃないですか……」
シアンが困惑した表情を浮かべながら言葉を返している。
「その通りですよ、シアン様」
「へ?」
ライトとダイアから同時に言われて、真顔で驚くシアン。
「その通りですわよ。料理の一部は私とお姉様とで作らさせて頂いていますの。鶏肉とサーモンはお姉様が作られてますのよ」
「チェリシア様は理解できますけれど、ペシエラ様もですのね」
眉をぴくぴくとさせながら、シアンは驚いたように話している。
「皆様の頑張りを労うもの、国のトップに立つ者の役目。わたくしが声を出しても威圧にしかなりませんから、料理という形で提供させて頂いておりますわ」
話すペシエラの表情は、まったくいつも通りで崩れなかった。
「ということは、今回のこのケーキも……」
「ええ、その通り。わたくしが腕を振るわせて頂きましたわ」
ペシエラの言葉を聞いて、目を丸くしてしまうシアンである。
シアンは前世でロゼリアの侍女をしていたのだが、料理というものにはそれほど親しんでこなかった。ここまで作れるかと聞かれたら、なかなかはいとは言えないくらいの腕前である。
自分以上の料理を作れてしまうペシエラには、ただただ驚くしかなかった。一国の王妃がこれだけの料理が作れるなんて、誰が信じられようか。
「母上の料理はとてもおいしいですよ。私も大好物ですからね」
「ええ、私も気に入っております」
ライトとダイアもこの通りである。家族補正を入れてもここまでの笑顔で褒めるなんてことは、相当気に入っている証拠なのだった。
「そういうわけですから、あさってからの年末パーティーも楽しみにしておいて下さいませ」
「わ、分かりました。楽しみにさせて頂きます」
ペシエラは普通に話しているだけなのに、圧倒されてしまうシアン。その威圧感に、笑顔がとても引きつっていた。
シアンたちの話が落ち着いた頃、ダイアがふと外を見て何かに気が付く。
「あ、雪ですよ」
ダイアの言葉を聞いて、シアンたちも窓の外へと視線を向ける。
窓の外では、白いものがちらほらと舞っているようだ。
窓に近付いて外を見るペシエラ。まるで警戒するかのような目で外の上下左右をじっくりと確認している。
「ええ、確かに雪のようですわね。この分でしたら、朝には積もっているでしょう」
カーテンを閉めながら、くるりと振り返って笑顔で話すペシエラである。
「ええ、積もるんですか? それだったら、雪だるまとか作れるかしら」
笑顔を浮かべたダイアが、両手を胸の前に当てながら願望のように呟いている。
「あまり積もってもらっては、私は困りますね。明日も訓練があるんですよ。滑ってこけるようなことがあれば、騎士たちのいい笑いものです」
「まぁ、お兄様ったら」
あまりに正直にライトが言うものだから、ダイアは口に手を当てて笑っている。つられるようにしてもシアンもつい笑ってしまっていた。
「酷いですね、二人とも。どうしてそんなに笑うんですか」
かなり笑うものだから、ライトは文句を言っている。
「だって、尻餅をつくお兄様を想像してしまって……、うふふふふ」
「ダメですわよ、ダイア様。笑い過ぎて、ぷっ」
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結局、シアンとダイアの笑いはしばらくおさまることはなかった。
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