逆行令嬢と転生ヒロイン

未羊

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新章 青色の智姫

第144話 学園祭四日目(二年目)

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 翌日、予告通りにロゼリアが学園祭に姿を見せる。
 それをチェリシアが出迎える。
「一国の王妃が護衛もつけずに何やってるのよ」
 一人で現れたロゼリアに、チェリシアが呆れていた。あのチェリシアが呆れるというのは相当な話だった。
「学園祭の時期だというのを思い出して、慌てて来たからよ。調整がつけられなかったわ」
「まったく、お母様ったら」
 ぱたぱたとシアンが走ってくる。クラスの出し物の手伝いをしていて遅れたのである。
「シアン、元気そうね」
「はい、お母様」
 立ち止まって淑女の挨拶をするシアン。その姿をロゼリアは嬉しそうに見ている。
「では、チェリシア。今日の案内は頼みますよ」
「任せてよ」
「シアン、また後で会いましょう」
「はい」
 チェリシアに連れられて、ロゼリアは学園の中へと入っていく。
 久しぶりに会った母親の元気そうな姿に、シアンはほっとしていた。
「さて、私はフューシャの応援に向かいますか」
 シアンは背伸びをすると、武術大会の行われる闘技場へと向かっていった。

「で、チェリシア」
「何かしら、ロゼリア」
 学園内を案内しながら、ロゼリアに質問される。
「今年の学園祭は、何か怪しい動きはあったかしら」
「特に何も。ライとルゼ、アイリスの侍女であるキャノルを使って調べてるけど、特に何もないわね」
「そう。トパゼリアが怪しい動きを見せているから、警戒はしてたのですけれどね」
 あっけらかんと答えるチェリシアを見て、ロゼリアは少し安心をしていた。
「学園祭は今日までだけど、最後まで油断はできないわね。私たちの時だって、最終日にめちゃくちゃにされたじゃないのよ」
「そうだったわね」
 自分たちの時のことを思い出して、チェリシアは眉間にしわを寄せている。
「まあ、今は武術大会の会場に死角はないわ。私が作ったカメラが、闘技場内のあちこちを映し出して城の兵士たちが監視しているもの。あのペシエラが目をつけた兵士たちだから、そうそう逆らうことはできないわ」
「ふふっ、そうね」
 チェリシアの説明を聞きながら、ロゼリアは笑っている。
「それにしても、学園の様子は相変わらず、変わりがないようね」
「おう、ロゼリアじゃないか」
「ガレン先生」
 ひょこっと現れたガレンに、ロゼリアはちょっと驚いている。
「老けましたわね」
「おいおい、いきなりそこを突いてくるか?」
 ロゼリアの言葉についつい笑ってしまうガレンである。
「まっ、俺も人間のふりを続けているからな。人間のように年を取っていかなきゃ、怪しいってもんだろ」
「そうですね」
 腕を組んでじっと見てくるガレンの態度に、ロゼリアはつい笑ってしまった。
「それはそれとして、俺の方でも警戒はしているが、現状変なのは入ってきていない。だが、片付けも入れればまだ学園祭は終わらないから、完全に撤収が終わるまでは油断できないぜ」
「そうですか……。まぁそうですね」
 ガレンの指摘にハッとするロゼリアである。
「どのみち、私は娘と話をしたいのでしばらく滞在しますから、その間は私も少し探らせてもらいますけどね」
「護衛なしで来て、よくやるもんだぜ」
 ガレンは呆れたように肘を張っていた。
「今日も王子王女は全員闘技場で武術大会だ。一番警戒するならそこだろうな」
「ですかしらね。では、私は闘技場に向かいます。チェリシア、学園内の他の場所はよろしく頼むわよ」
「了解、任せておいて」
 ロゼリアはチェリシアと別れて、ガレンと一緒に闘技場へと向かっていった。

 闘技場では、ちょうどガーネットとシキの戦いが行われていた。
 現状では学園最強と言われるガーネットと、騎士を親に持つ今年入学したてのシキの戦いは、今大会でかなり注目の的となっていた。
 両者の剣が激しくぶつかり合う。
 さすがは騎士であるオフライトを父に持つシキは、その一撃一撃が正確で重い。
 一方のガーネットも、それをきちんと捌いている。一進一退の攻防が続いており、どちらが勝つのまったく分からない状況となっていた。
「さすがは噂に聞くガーネット嬢。俺と互角、いやそれ以上の戦いをするとは噂は本当だったのですな」
「甘く見てもらっては困りますよ。ようやくアッシュ様がいなくなったのです。今年こそ、私は優勝を頂くのです!」
 ガーネットの目がすっと細くなり、攻撃の手が一気に激しくなる。
「くっ、まだまだ本気でなかったというわけですか」
「様子を見ていただけですよ。これで決着をつけさせてもらいます!」
 状況が一変する。ガーネットの剣が速さを増し、一気にシキは防戦一方となってしまう。
 ガーネットの剣は決して大振りではなく、素早い動きで隙を小さくして畳みかける剣のようだ。それでいて一撃が重い。力で優位だったはずのシキは、一気に武台の端っこまで追い詰められてしまった。
「やれやれ、これは失礼した。君は本物だったようだな」
「ありがとうございます。いずれ騎士団でご一緒致しましょう」
 大振りの一撃を放ち、その剣を受けたシキはそのまま場外へと弾き飛ばされてしまった。
「勝者! ガーネット・ザクロース!」
 審判による勝ち名乗りが行われると、会場の中は一気に盛り上がったのであった。
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