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新章 青色の智姫
第145話 顔を合わせる王妃たち
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「へえ、女子学生が勝ち進んでいるとはね。ふふっ、ペシエラを思い出しますね」
「お母様?!」
貴賓席に姿を見せたロゼリアに、シアンが驚いている。
今日はダイアと一緒に王族用の席から試合を観戦しているのである。
「あら、シアン。こっちに来ていますのね」
「ええ。クラスを手伝おうと思ったのですか、プルネからフューシャの応援をするように言われましてね」
「フューシャ? ああ、アイリスの長女ですね」
「ちょうど今からですよ。これに勝つと、ガーネットと戦うことになるんです」
「ああ、先程の赤髪の子ですね。赤い髪で剣を振りかざす。ふふっ、学生の時を思い出しますね」
ロゼリアは自分が学生だった頃を思い出して笑っている。
あの時もペシエラと二人で武術大会に参加していたので、自分たちの状況に重なってしまうようだった。
シアンとロゼリアが話をしていると、ライトがやってきた。
「ダイア、いないと思ったらここにいたんだね。探したよ」
「お兄様。申し訳ありません、シアン様と先に約束をしてしまいましたので」
「申し訳ございません、ライト様」
「いや、別に咎めているわけではないよ。ただ、伝言だけは欲しかったかなと思っただけだ」
ライトはそういいながら笑っていた。
その様子を見ながら、ロゼリアも笑っている。
「シアン様、フューシャ様の出番ですよ」
「あら、本当ですね。プルネの代わりに応援しませんと」
にこりと笑って応援するシアンたち。その目の前でフューシャは無事に勝つことができたのだった。
「すごい……。相手の方、フューシャ様の上の四年次生ですよね?」
「私も戦って思ったのですが、去年とは明らかに違っていますね」
「ふむ……。あの力は私は覚えがありますね」
「えっ」
シアンとダイアが話をする横で、ロゼリアがぽつりと呟く。
「あれは、厄災の暗龍の力……。そういえば、ニーズヘッグの娘ですものね。その力を持っていても不思議ではありませんか」
「や、厄災の暗龍? なんですか、それは」
「あら、伝わっていないかしら」
ダイアが疑問をぶつけてきたので、ロゼリアは思わず驚いてしまった。
「時折魔物を発生させる瘴気だまりができることは知っているでしょう?」
「はい、魔物氾濫ですよね」
ダイアが答えるとこくりとロゼリアは頷く。
「その瘴気だまりが時々大きくなりすぎて、とんでもない化け物を生み出すことがあるのですよ。その中のひとつが厄災の暗龍なのです」
「なんと……」
両手で口を押えて驚くダイア。
「まあ、もう厄災の暗龍は出てくることはないのですけれどね」
「それは、どうしてですか?」
「だって、その厄災の暗龍の名前はニーズヘッグ。アイリスの夫の名前ですもの」
「えっ!?」
ロゼリアがいうと、ダイアが固まった。厄災の暗龍が王国内で普通に生活していることに驚きを隠せるわけがなかった。
「私とペシエラ、それとチェリシアの三人で討伐しましたからね、厄災の暗龍は。それに、彼はそもそもアイリス……のご先祖様にべた惚れしていましたから」
「ほへー……」
王女らしからぬ呆然とした顔を、ダイアはついついしまう。
シアンは対照的に静かに聞いていた。なぜなら、侍女時代にそのことを聞いていたからだ。
まったく動じないシアンを見て、ロゼリアは思わずクスッとなってしまった。
その目前では、さらに試合が進んでいく。さすがに準々決勝ともなれば、相当の実力者たちが残っている。その試合は実に見応えがあった。
「さあ、いよいよ準決勝。最初の戦いはフューシャとガーネットの戦いですね」
準決勝が始まるとあって、シアンがずいぶんと興奮していた。
「ふふっ、シアンってばさすが私とペイルの子ですわね」
「お、お母様……」
ロゼリアに言われて、シアンは思わず恥ずかしさで顔を真っ赤にしてしまう。
魔法の名門アクアマリン子爵家の四女であったはずなのに、剣術の戦いに興奮してしまうとは、かなり自分らしくないと思ったからだ。
「ふむ。モスグリネの騎士たちには申し訳ないけれど、この学生たちからシアンの護衛を選ぶのも悪くないかしらね」
「お母様?!」
ロゼリアの思わぬ発言に、シアンどころかダイアやライトも驚いていた。
「あら、ロゼリアったらなに勝手なことを言っていますのかしら」
そこに、聞いたことのある声が近付いてきた。
驚いて振り返ってみると、そこにいたのは王妃ペシエラだった。
「ロゼリアが来ていると聞いて、仕事をさっさと片付けてきましたのよ。久しぶりですわね」
「ふふっ、相変わらずの有能っぷりね、ペシエラ」
「まぁ、自分を卑下しないことですわね、ロゼリア」
交わしている言葉はどことなくとげとげしいのに、なぜか雰囲気はとても和やかだった。どうしてだろうかと首を傾げるライトとダイアだが、シアンだけはなんとなくだけど分かっていた。
「さて、女子学生同士の準決勝ですか。なかなか考えられない対戦ですわね」
「まったくね。準決勝まで進むような女子学生なんて、私たちの時ではペシエラくらいしか考えられなかったものね」
「わたくしも努力はしましたもの。当然ですわ」
ペシエラは淡々と話してはいるものの、その口角が少し上がっているようだった。
「あ、始まりますよ」
ダイアの声で再び武台に目を向けると、フューシャとガーネットが互いに剣を握って構えていた。
女子学生同士の準決勝が、間もなく始まろうとしているのだった。
「お母様?!」
貴賓席に姿を見せたロゼリアに、シアンが驚いている。
今日はダイアと一緒に王族用の席から試合を観戦しているのである。
「あら、シアン。こっちに来ていますのね」
「ええ。クラスを手伝おうと思ったのですか、プルネからフューシャの応援をするように言われましてね」
「フューシャ? ああ、アイリスの長女ですね」
「ちょうど今からですよ。これに勝つと、ガーネットと戦うことになるんです」
「ああ、先程の赤髪の子ですね。赤い髪で剣を振りかざす。ふふっ、学生の時を思い出しますね」
ロゼリアは自分が学生だった頃を思い出して笑っている。
あの時もペシエラと二人で武術大会に参加していたので、自分たちの状況に重なってしまうようだった。
シアンとロゼリアが話をしていると、ライトがやってきた。
「ダイア、いないと思ったらここにいたんだね。探したよ」
「お兄様。申し訳ありません、シアン様と先に約束をしてしまいましたので」
「申し訳ございません、ライト様」
「いや、別に咎めているわけではないよ。ただ、伝言だけは欲しかったかなと思っただけだ」
ライトはそういいながら笑っていた。
その様子を見ながら、ロゼリアも笑っている。
「シアン様、フューシャ様の出番ですよ」
「あら、本当ですね。プルネの代わりに応援しませんと」
にこりと笑って応援するシアンたち。その目の前でフューシャは無事に勝つことができたのだった。
「すごい……。相手の方、フューシャ様の上の四年次生ですよね?」
「私も戦って思ったのですが、去年とは明らかに違っていますね」
「ふむ……。あの力は私は覚えがありますね」
「えっ」
シアンとダイアが話をする横で、ロゼリアがぽつりと呟く。
「あれは、厄災の暗龍の力……。そういえば、ニーズヘッグの娘ですものね。その力を持っていても不思議ではありませんか」
「や、厄災の暗龍? なんですか、それは」
「あら、伝わっていないかしら」
ダイアが疑問をぶつけてきたので、ロゼリアは思わず驚いてしまった。
「時折魔物を発生させる瘴気だまりができることは知っているでしょう?」
「はい、魔物氾濫ですよね」
ダイアが答えるとこくりとロゼリアは頷く。
「その瘴気だまりが時々大きくなりすぎて、とんでもない化け物を生み出すことがあるのですよ。その中のひとつが厄災の暗龍なのです」
「なんと……」
両手で口を押えて驚くダイア。
「まあ、もう厄災の暗龍は出てくることはないのですけれどね」
「それは、どうしてですか?」
「だって、その厄災の暗龍の名前はニーズヘッグ。アイリスの夫の名前ですもの」
「えっ!?」
ロゼリアがいうと、ダイアが固まった。厄災の暗龍が王国内で普通に生活していることに驚きを隠せるわけがなかった。
「私とペシエラ、それとチェリシアの三人で討伐しましたからね、厄災の暗龍は。それに、彼はそもそもアイリス……のご先祖様にべた惚れしていましたから」
「ほへー……」
王女らしからぬ呆然とした顔を、ダイアはついついしまう。
シアンは対照的に静かに聞いていた。なぜなら、侍女時代にそのことを聞いていたからだ。
まったく動じないシアンを見て、ロゼリアは思わずクスッとなってしまった。
その目前では、さらに試合が進んでいく。さすがに準々決勝ともなれば、相当の実力者たちが残っている。その試合は実に見応えがあった。
「さあ、いよいよ準決勝。最初の戦いはフューシャとガーネットの戦いですね」
準決勝が始まるとあって、シアンがずいぶんと興奮していた。
「ふふっ、シアンってばさすが私とペイルの子ですわね」
「お、お母様……」
ロゼリアに言われて、シアンは思わず恥ずかしさで顔を真っ赤にしてしまう。
魔法の名門アクアマリン子爵家の四女であったはずなのに、剣術の戦いに興奮してしまうとは、かなり自分らしくないと思ったからだ。
「ふむ。モスグリネの騎士たちには申し訳ないけれど、この学生たちからシアンの護衛を選ぶのも悪くないかしらね」
「お母様?!」
ロゼリアの思わぬ発言に、シアンどころかダイアやライトも驚いていた。
「あら、ロゼリアったらなに勝手なことを言っていますのかしら」
そこに、聞いたことのある声が近付いてきた。
驚いて振り返ってみると、そこにいたのは王妃ペシエラだった。
「ロゼリアが来ていると聞いて、仕事をさっさと片付けてきましたのよ。久しぶりですわね」
「ふふっ、相変わらずの有能っぷりね、ペシエラ」
「まぁ、自分を卑下しないことですわね、ロゼリア」
交わしている言葉はどことなくとげとげしいのに、なぜか雰囲気はとても和やかだった。どうしてだろうかと首を傾げるライトとダイアだが、シアンだけはなんとなくだけど分かっていた。
「さて、女子学生同士の準決勝ですか。なかなか考えられない対戦ですわね」
「まったくね。準決勝まで進むような女子学生なんて、私たちの時ではペシエラくらいしか考えられなかったものね」
「わたくしも努力はしましたもの。当然ですわ」
ペシエラは淡々と話してはいるものの、その口角が少し上がっているようだった。
「あ、始まりますよ」
ダイアの声で再び武台に目を向けると、フューシャとガーネットが互いに剣を握って構えていた。
女子学生同士の準決勝が、間もなく始まろうとしているのだった。
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