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新章 青色の智姫
第159話 逃走事件、決着
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「はあ、はあ……」
魔法を放ったシアンは、肩で大きく息をしている。その顔はかなりきつそうな感じに見える。
それもそうだろう。なにせ三属性を混ぜ合わせて放つという、前代未聞な魔法の使い方をしたからだ。
きれいに混ぜ合わさるように調整をしなければならなかったので、土属性はライから補助を受けたとはいえ、とても繊細な魔法の使い方だったがゆえにダメージが大きいのである。
「よくやったね、シアンくん」
ケットシーはまとっていた装備をしまうと、シアンを労いに近付いていく。まったくもっていつもの細めで胡散くさいケットシーが帰ってきた。
「まったく、三属性を、重ね合わせるなんて……。無茶にもほどがあります」
「いやぁ、君の魔法センスを信じた上での作戦だよ。うん、うまくいってよかった。はっはっはっ」
両手を膝に当てて、まだ呼吸が荒いシアンは、眉間にしわを寄せて実につらそうな顔でケットシーに文句を言っている。
「それはそうと、こいつらどうするのよ」
「そうです。こっちのアッサギー・オニオールもですよ。デーモンハートを使って他国というか自身にとっては自国の王女を殺そうとしたんです、極刑は免れないでしょうね」
「うん、そうだね。まぁこっちに来ているだろうペシエラくんやチェリシアくんに任せるしかない。ライ、君の魔法なら運ぶことは可能だろう?」
ライとスミレの話を受けて、ケットシーは頷いているものの、判断はアイヴォリーに任せることにしているようだ。
「はいはい、人使いが荒いわね。ケットシー、あんたは私の幼馴染みで立場が上だからってあまり偉そうにしないでよね」
「はっはっはっ、ボクだってそこまでライをこき使うつもりはないさ。今の所属国家は別々なんだしね」
「今こき使ってるじゃないのよ……」
わけの分からない言い訳をするケットシーだが、実際今現在ライをこき使っているのは事実だった。
「まぁ、集まっているだろうオニオール子爵領の領都まで運びますか。今だと私くらいしかできないでしょうしね」
すべてを押し付けられてイライラしているライではあるが、今はそういうことができるのは自分だけなので、しぶしぶ土魔法を使って怪しい連中を一か所に集めている。もちろん、気絶してるアッサギー・オニオールもだ。
ライが文句を言いながら作業をしている横で、ケットシーがスミレに近付いていく。
「やあ、クロノア。いや、今はスミレといった方がいいね。ちょっといいかい?」
「なんでしょうか、ケットシー」
スミレが露骨に嫌な顔をしてケットシーに対応している。そもそも幻獣時代からスミレはケットシーが苦手である。
「いやぁ、スミレくん。今、幻獣の力を使ってたね。時を操る能力、シアンくんを守ろうとして発動させていたね」
「そ、そんなことは……」
ケットシーがしっかりと把握していて、スミレは戸惑っている。本当にこの猫の幻獣の感知能力は計り知れないし、彼の不気味さを強調していた。
「まぁ一瞬だけだったしね。ボクじゃなければ見逃していたと思うよ。はっはっはっはっ」
「ケットシー、笑ってないであんたも手伝って。一人じゃやっぱり厳しいわよ」
スミレを前に笑うケットシーに、一人で怪しい連中の対応をしているライが怒っていた。
人ところに集めるまではできたものの、ここから移動させるのが厳しそうだったのだ。
「ふむ、しょうがないね。それじゃ、ライはシアンくんたちをお願いするよ。ボクがひとっ走り人を呼んでくるとしよう」
状況を確認したケットシーは、そうとだけ言うとすっと姿をかき消した。
神獣や幻獣たちはそのほとんどが使える瞬間移動魔法である。スミレだって幻獣時代にはこれを駆使してシアンお手伝いをしていたのだ。
「はあ……。ケットシーは胡散くさいですけれど、いざという時にはとても頼りになります。今は彼に任せるしかないですからね。人を連れて戻ってくるまで待ちましょう」
「ええ、それしかないわね」
ライはもごもごとしている男たちを見ながら、もう一度大きなため息をついたのだった。
結局ケットシーがひとを連れて戻ってきたのは、それから一日が経っていた。
今いる場所がモスグリネとの国境に近く、ペシエラたちが滞在していた領都から遠かったためだ。
騎士や兵士を連れてやってきたペシエラは、目の前の光景に驚いたという。
なにせ、つるでぐるぐる巻きに捕縛された男たちがごちゃごちゃと一か所にまとめ上げられていたのだから。
「ペシエラ様……」
「シアン、勝手に来たことは後で叱らせてもらいますけれど、今回はよく頑張りましたね。あとは大人であるわたくしたちに任せて下さい」
「はい……」
一日経って回復していたシアンではあるが、さすがに勝手に出てきたとあってペシエラの前ではおとなしくしていた。
「スミレ、あなたもですよ。使用人であるあなたが止めなくてどうするんですか」
「も、申し訳ございません」
スミレも素直に謝罪していた。
こうして、アッサギー・オニオールたちはペシエラの指揮する騎士たちによって連行されたのであった。
シアンとスミレは城に戻ったところでペシエラからくどくどと説教されはしたものの、しばらく謹慎という処分だけで済んだのだった。
魔法を放ったシアンは、肩で大きく息をしている。その顔はかなりきつそうな感じに見える。
それもそうだろう。なにせ三属性を混ぜ合わせて放つという、前代未聞な魔法の使い方をしたからだ。
きれいに混ぜ合わさるように調整をしなければならなかったので、土属性はライから補助を受けたとはいえ、とても繊細な魔法の使い方だったがゆえにダメージが大きいのである。
「よくやったね、シアンくん」
ケットシーはまとっていた装備をしまうと、シアンを労いに近付いていく。まったくもっていつもの細めで胡散くさいケットシーが帰ってきた。
「まったく、三属性を、重ね合わせるなんて……。無茶にもほどがあります」
「いやぁ、君の魔法センスを信じた上での作戦だよ。うん、うまくいってよかった。はっはっはっ」
両手を膝に当てて、まだ呼吸が荒いシアンは、眉間にしわを寄せて実につらそうな顔でケットシーに文句を言っている。
「それはそうと、こいつらどうするのよ」
「そうです。こっちのアッサギー・オニオールもですよ。デーモンハートを使って他国というか自身にとっては自国の王女を殺そうとしたんです、極刑は免れないでしょうね」
「うん、そうだね。まぁこっちに来ているだろうペシエラくんやチェリシアくんに任せるしかない。ライ、君の魔法なら運ぶことは可能だろう?」
ライとスミレの話を受けて、ケットシーは頷いているものの、判断はアイヴォリーに任せることにしているようだ。
「はいはい、人使いが荒いわね。ケットシー、あんたは私の幼馴染みで立場が上だからってあまり偉そうにしないでよね」
「はっはっはっ、ボクだってそこまでライをこき使うつもりはないさ。今の所属国家は別々なんだしね」
「今こき使ってるじゃないのよ……」
わけの分からない言い訳をするケットシーだが、実際今現在ライをこき使っているのは事実だった。
「まぁ、集まっているだろうオニオール子爵領の領都まで運びますか。今だと私くらいしかできないでしょうしね」
すべてを押し付けられてイライラしているライではあるが、今はそういうことができるのは自分だけなので、しぶしぶ土魔法を使って怪しい連中を一か所に集めている。もちろん、気絶してるアッサギー・オニオールもだ。
ライが文句を言いながら作業をしている横で、ケットシーがスミレに近付いていく。
「やあ、クロノア。いや、今はスミレといった方がいいね。ちょっといいかい?」
「なんでしょうか、ケットシー」
スミレが露骨に嫌な顔をしてケットシーに対応している。そもそも幻獣時代からスミレはケットシーが苦手である。
「いやぁ、スミレくん。今、幻獣の力を使ってたね。時を操る能力、シアンくんを守ろうとして発動させていたね」
「そ、そんなことは……」
ケットシーがしっかりと把握していて、スミレは戸惑っている。本当にこの猫の幻獣の感知能力は計り知れないし、彼の不気味さを強調していた。
「まぁ一瞬だけだったしね。ボクじゃなければ見逃していたと思うよ。はっはっはっはっ」
「ケットシー、笑ってないであんたも手伝って。一人じゃやっぱり厳しいわよ」
スミレを前に笑うケットシーに、一人で怪しい連中の対応をしているライが怒っていた。
人ところに集めるまではできたものの、ここから移動させるのが厳しそうだったのだ。
「ふむ、しょうがないね。それじゃ、ライはシアンくんたちをお願いするよ。ボクがひとっ走り人を呼んでくるとしよう」
状況を確認したケットシーは、そうとだけ言うとすっと姿をかき消した。
神獣や幻獣たちはそのほとんどが使える瞬間移動魔法である。スミレだって幻獣時代にはこれを駆使してシアンお手伝いをしていたのだ。
「はあ……。ケットシーは胡散くさいですけれど、いざという時にはとても頼りになります。今は彼に任せるしかないですからね。人を連れて戻ってくるまで待ちましょう」
「ええ、それしかないわね」
ライはもごもごとしている男たちを見ながら、もう一度大きなため息をついたのだった。
結局ケットシーがひとを連れて戻ってきたのは、それから一日が経っていた。
今いる場所がモスグリネとの国境に近く、ペシエラたちが滞在していた領都から遠かったためだ。
騎士や兵士を連れてやってきたペシエラは、目の前の光景に驚いたという。
なにせ、つるでぐるぐる巻きに捕縛された男たちがごちゃごちゃと一か所にまとめ上げられていたのだから。
「ペシエラ様……」
「シアン、勝手に来たことは後で叱らせてもらいますけれど、今回はよく頑張りましたね。あとは大人であるわたくしたちに任せて下さい」
「はい……」
一日経って回復していたシアンではあるが、さすがに勝手に出てきたとあってペシエラの前ではおとなしくしていた。
「スミレ、あなたもですよ。使用人であるあなたが止めなくてどうするんですか」
「も、申し訳ございません」
スミレも素直に謝罪していた。
こうして、アッサギー・オニオールたちはペシエラの指揮する騎士たちによって連行されたのであった。
シアンとスミレは城に戻ったところでペシエラからくどくどと説教されはしたものの、しばらく謹慎という処分だけで済んだのだった。
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