逆行令嬢と転生ヒロイン

未羊

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新章 青色の智姫

第160話 城に戻りて反省会

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 アッサギー・オニオールはアイヴォリーの王城へと連れ戻され、再度謹慎処分が下る。彼を連れ出した男たちは牢屋に放り込まれた。
 アイヴォリー王国のオニオール家は今回の失態が重く見られ、男爵位に降爵処分となった。また、モスグリネ王国のオニオール家に関しては、ペイルとロゼリアがすでに動いており、調査が始まっている。最も軽い処分でも取り潰しは免れないだろう。
「あの、シアン王女殿下。ちょっとよろしいでしょうか」
 アイヴォリーの城に戻って謹慎処分中のシアンの元に、ワッケギー・オニオールが訪ねてきた。
「許可は頂いております。少しお話をさせて頂きたいのです」
「そうですか。スミレ、開けて差し上げなさい」
「畏まりました」
 ワッケギーが兵士に付き添われて姿を見せる。
 部屋に入って扉が閉じられると、ワッケギーはその場でシアンに対して土下座を始める。あまりにも突然のことで、シアンはびっくりしていた。
「本当に今回は申し訳ございませんでした。いとこのせいで危険な目に遭わせてしまいまして。温情のおかげでこのように生きていられることを、誠に感謝致します」
 本気で申し訳なく思っていることが伝わってくる。
「おそらくご存じと思いますが、オニオール家は昔からアイヴォリー王国を快く思っておりませんでした。最近はトパゼリアからの執拗な催促もあり、このような事態を引き起こしてしまったのです」
「まあ……。ということは、やはり本気でアイヴォリー王国に牙をむくつもりでしたのね」
「……はい。去年も今年も、夏合宿でことを起こそうとしておりました。俺としては乗り気ではなかったのですが、アッサギーにはどうしても逆らえずに……」
 話をするワッケギーの体が小刻みに震えている。
「俺は本当に反省しております。ですが、心のどこかで、アイヴォリー王国に対する憎悪が時折ささやくんです。だから、アッサギーの話に乗りかけたのだと……」
 床に顔がつくくらいに頭を深く下げるワッケギー。その反省具合がよく伝わってくる。
 シアンは、彼の態度を見てアイリスとその兄であるヴィオレスのことが脳裏に浮かぶ。
 あの二人も、デーモンハートの精神汚染を受けていた一族の末裔だ。ヴィオレスはそうでもなかったが、アイリスは小さい頃から裏家業に手を染めていた。シアンの目には、ワッケギーとアイリスの姿とどうしても重なってくる。
 シアンはスミレと顔を見合わせる。スミレも対応には困っているようだった。
「ワッケギー、お話は分かりました。私の命を狙ったことへの反省で私に話をしたのでしょうが、ここはアイヴォリーで、あなたはアイヴォリー王国の貴族。国王陛下と王妃殿下にお話をした方がよろしいと思いますよ」
「は、はい……」
 シアンは悩んだ挙句、ワッケギーを優しく諭している。
「大丈夫ですよ。これから先、トパゼリアに耳を貸さなければいいのです。ペシエラ様ならおそらく分かって下さると思いますわ。アイリス様という前例もございますしね」
「アイリス・コーラル……。その名は俺も聞いたことがあります。同じ学年のプルネ・コーラルの母親ですよね」
「ええ、そうですよ。アイリス様も、その昔王族に剣を向けたとかいう話を聞いたことがあります。ですので、あなたもしっかり反省をするのなら助かる可能性がございます」
 シアンから話を聞かされたワッケギーは、顔を上げて黙り込んでいる。
「……分かりました。俺たちオニオール家は心を入れ替えて、アイヴォリー王家の臣下として再出発します」
 シアンに対してこう告げると、ワッケギーは立ち上がる。
「この決意、陛下たちにも伝えて参ります。俺たちの持つトパゼリアの情報もお渡しします。ありがとうございました!」
 ワッケギーは深々と頭を下げて、兵士に付き添われながらシアンの部屋を出ていく。
 その時の表情は、本当に何か吹っ切れたかのように晴れやかな顔をしていた。
 出ていく姿を見送ったシアンは、部屋の中のソファーに気が抜けたかのように勢いよく座り込む。
「ふぅ、これで国内の反乱分子の心配はないかしらね」
「どうでしょうかね。モスグリネのオニオール家の問題が残っておりますし、間違いなくこれからもトパゼリアからの攻撃にさらされるでしょうからね」
「ですよねぇ……。はあ、学園に通う私では、対処は難しいですね」
「それこそ、国王陛下や王妃殿下にお任せした方がよろしいと存じます。シアン様は前世の記憶があるとはいえ、まだ十四歳の少女なのですから」
「ええ、そうですね……」
 ソファーに深くもたれ掛かりながら、天井を見上げるシアン。手でその顔を押さえながら、どうしたものかと悩んでいる。
「今回ケットシーに言われて気が付いた私の魔法の特異性も気になりますし、ひとつ片付いても、それ以上に気になることが増えて困ったものですね……」
「まったくですね。ケットシーももう少し気配りができればよかったですのに……」
 実に嫌そうな顔をしながら話をするスミレである。ケットシーとクロノアは昔っからこうなのである。
「とはいえ、二週間の謹慎処分です。今はゆっくりししましょうか」
「承知致しました」
 まだまだ問題は山積しているものの、シアンはその日は気疲れのせいか早めに休んだのだった。
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