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新章 青色の智姫
第164話 獣の来襲
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後期末試験も無事に終わり、冬休みに突入する。
アイヴォリー王国の中は雪がちらつき始めており、今年はかなり冷えそうな感じである。
「はあ、アイヴォリーにいられるのもあと一年ですか」
「早いですよね、シアン様」
部屋に閉じこもって雪が舞う外を眺めているシアン。シアン・アクアマリン時代でもこれほどの雪が降った光景というのはあまり記憶になかった。
「やあ、シアンくん」
ため息をついていると、部屋の外から聞き慣れた声が聞こえてくる。
「ケットシーですか。なんですか、一体」
シアンではなくスミレが反応して扉に近付いていく。
扉を開けてみれば、予想通りにケットシーが立っていた。ただ、隣には見たことのない大きな犬が座っている。
「あら、それは……」
「久しいな、我だ」
「やっぱりフェンリルですか。どうしたんですか、こんなところに来て……」
誰かと思えば、アイリスの祖先の故郷を守ることを決めたフェンリルだった。
大きな犬が喋っているので、普通なら驚くところだろう。だが、隣ででかい猫が喋っているので違和感がないというものだった。他にも元魔物が居るので、アイヴォリーではあまり珍しい光景ではなくなっていたのだ。
「フェンリルが来たから雪が降っているんですね。全体でも珍しい氷属性の神獣ですからね」
「久しいな、クロノア。すっかりメイドが板についていないか?」
「うるさいですね。私は罰で仕方なくこうしているんです。本当ならこんなに人間に関わることなんてありませんのに……」
フェンリルの言葉を受けて、露骨なまでに不機嫌になるスミレ。
「ふふふ、こんなに表情が豊かなクロノアは貴重だよね」
「ケットシー?」
お腹を抱えて笑うケットシーをスミレが鋭くにらんでいる。
「ケットシー、そのくらいにしておけ。いい加減にここに来た理由を話したらどうだ」
「うん、そうだね。これはボクたちから直接君たちに言いたいことだからね。ああ、もちろんペシエラくんたちにも伝えてあるよ」
「なんなんですか、もったいぶらずに話して下さい」
くすくすと笑うケットシーに、さすがに怒りが抑えきれないシアンである。
「分かった分かった。フェンリルが来ているのもこれが理由なんだよ」
ケットシーは部屋の中に入ってきて勝手に椅子に座る。ケットシーの行動に呆れるシアンとスミレだが、話くらいは聞いてあげようじゃないかと、二人もテーブルを囲む。
フェンリルはケットシーの隣にやって来て座り、いよいよケットシーは用件を話し始めた。
「……というわけなんだ。モスグリネの北にあるムー王国の王妃様が、アイヴォリーの年末祭にやって来られるんだ」
「モスグリネの北に、国があったのですね」
「おや、シアンくん。知らないとは意外だね」
シアンの反応を見て、ケットシーはからかうような驚き方をする。
「シアン様って意外と外交に興味がおありではないんですよ。モスグリネの西側の国すら存じ上げませんからね」
「スミレ、はっきり言わないで」
「申し訳ございません」
ばつが悪そうなシアンに対して、スミレは淡々と謝っていた。
「ついでに言うと、トパゼリアの方にも動きがある。いよいよこの大局的な二国が顔を合わせるかもしれないってわけなんだ」
「やめてくれませんかね。因縁じみたケンカを他国を巻き込むような形でして欲しくないですよ」
けらけらと笑うような態度で話すケットシーに、シアンは頭が痛そうに顔を押さえながら苦言を呈している。
「まぁ冗談だよ。ボクたちが絡む時点でそんなことはさせないさ。ああ、ムー王国の王妃様は単純に挨拶に来られるだけだよ。実に平和的だから安心しておくれ」
「……つまり」
「そう、ムーとトパゼリアが鉢合わせになるのはたまたまさ。ボクが間に挟まっているんだ。トパゼリアをムーに到達なんてさせないからね」
けらけらと笑うケットシー。頼りにはなるが、やはりどこか胡散くさい猫である。
「それはそれとして、なんでフェンリルまでいるのかしら」
確かにそうだった。話だけ聞いていればケットシーだけで十分だろう。
「我がいる理由は、ほぼトパゼリア対策だな。奴らは南の暖かい気候の場所に住んでいる。我の属性でもって奴らの動きを鈍らせるのが目的だ」
「なるほど、そういうわけですか」
理由になんとなく納得がいくシアンである。
「まぁ、そういうわけだ。シアンくんたちはいつも通りにしてくれればいいよ。こういう問題はボクたち大人の仕事だからね」
「あの、人生経験だけなら私も負けてませんが?」
ケットシーの言い分に、シアンが怒っている。
「だったら、三属性をもっときちんと使いこなしておくれ。君の特殊な三属性はカギになりそうだからね」
ケットシーは顔をにやけさせながらシアンに課題を出している。
この言い分に、さすがのシアンも黙り込んでしまう。
「それじゃ、ボクはいったん失礼するよ。伝えることは伝えたからね」
「我も行くぞ。ずいぶんと可愛い娘になったものだな、シアン、クロノア。はっはっはっはっ」
揃って笑いながら退場していくケットシーとフェンリル。その姿にシアンとスミレはただ茫然と見送るだけだった。
アイヴォリー王国の中は雪がちらつき始めており、今年はかなり冷えそうな感じである。
「はあ、アイヴォリーにいられるのもあと一年ですか」
「早いですよね、シアン様」
部屋に閉じこもって雪が舞う外を眺めているシアン。シアン・アクアマリン時代でもこれほどの雪が降った光景というのはあまり記憶になかった。
「やあ、シアンくん」
ため息をついていると、部屋の外から聞き慣れた声が聞こえてくる。
「ケットシーですか。なんですか、一体」
シアンではなくスミレが反応して扉に近付いていく。
扉を開けてみれば、予想通りにケットシーが立っていた。ただ、隣には見たことのない大きな犬が座っている。
「あら、それは……」
「久しいな、我だ」
「やっぱりフェンリルですか。どうしたんですか、こんなところに来て……」
誰かと思えば、アイリスの祖先の故郷を守ることを決めたフェンリルだった。
大きな犬が喋っているので、普通なら驚くところだろう。だが、隣ででかい猫が喋っているので違和感がないというものだった。他にも元魔物が居るので、アイヴォリーではあまり珍しい光景ではなくなっていたのだ。
「フェンリルが来たから雪が降っているんですね。全体でも珍しい氷属性の神獣ですからね」
「久しいな、クロノア。すっかりメイドが板についていないか?」
「うるさいですね。私は罰で仕方なくこうしているんです。本当ならこんなに人間に関わることなんてありませんのに……」
フェンリルの言葉を受けて、露骨なまでに不機嫌になるスミレ。
「ふふふ、こんなに表情が豊かなクロノアは貴重だよね」
「ケットシー?」
お腹を抱えて笑うケットシーをスミレが鋭くにらんでいる。
「ケットシー、そのくらいにしておけ。いい加減にここに来た理由を話したらどうだ」
「うん、そうだね。これはボクたちから直接君たちに言いたいことだからね。ああ、もちろんペシエラくんたちにも伝えてあるよ」
「なんなんですか、もったいぶらずに話して下さい」
くすくすと笑うケットシーに、さすがに怒りが抑えきれないシアンである。
「分かった分かった。フェンリルが来ているのもこれが理由なんだよ」
ケットシーは部屋の中に入ってきて勝手に椅子に座る。ケットシーの行動に呆れるシアンとスミレだが、話くらいは聞いてあげようじゃないかと、二人もテーブルを囲む。
フェンリルはケットシーの隣にやって来て座り、いよいよケットシーは用件を話し始めた。
「……というわけなんだ。モスグリネの北にあるムー王国の王妃様が、アイヴォリーの年末祭にやって来られるんだ」
「モスグリネの北に、国があったのですね」
「おや、シアンくん。知らないとは意外だね」
シアンの反応を見て、ケットシーはからかうような驚き方をする。
「シアン様って意外と外交に興味がおありではないんですよ。モスグリネの西側の国すら存じ上げませんからね」
「スミレ、はっきり言わないで」
「申し訳ございません」
ばつが悪そうなシアンに対して、スミレは淡々と謝っていた。
「ついでに言うと、トパゼリアの方にも動きがある。いよいよこの大局的な二国が顔を合わせるかもしれないってわけなんだ」
「やめてくれませんかね。因縁じみたケンカを他国を巻き込むような形でして欲しくないですよ」
けらけらと笑うような態度で話すケットシーに、シアンは頭が痛そうに顔を押さえながら苦言を呈している。
「まぁ冗談だよ。ボクたちが絡む時点でそんなことはさせないさ。ああ、ムー王国の王妃様は単純に挨拶に来られるだけだよ。実に平和的だから安心しておくれ」
「……つまり」
「そう、ムーとトパゼリアが鉢合わせになるのはたまたまさ。ボクが間に挟まっているんだ。トパゼリアをムーに到達なんてさせないからね」
けらけらと笑うケットシー。頼りにはなるが、やはりどこか胡散くさい猫である。
「それはそれとして、なんでフェンリルまでいるのかしら」
確かにそうだった。話だけ聞いていればケットシーだけで十分だろう。
「我がいる理由は、ほぼトパゼリア対策だな。奴らは南の暖かい気候の場所に住んでいる。我の属性でもって奴らの動きを鈍らせるのが目的だ」
「なるほど、そういうわけですか」
理由になんとなく納得がいくシアンである。
「まぁ、そういうわけだ。シアンくんたちはいつも通りにしてくれればいいよ。こういう問題はボクたち大人の仕事だからね」
「あの、人生経験だけなら私も負けてませんが?」
ケットシーの言い分に、シアンが怒っている。
「だったら、三属性をもっときちんと使いこなしておくれ。君の特殊な三属性はカギになりそうだからね」
ケットシーは顔をにやけさせながらシアンに課題を出している。
この言い分に、さすがのシアンも黙り込んでしまう。
「それじゃ、ボクはいったん失礼するよ。伝えることは伝えたからね」
「我も行くぞ。ずいぶんと可愛い娘になったものだな、シアン、クロノア。はっはっはっはっ」
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