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新章 青色の智姫
第165話 モスグリネ王国にて
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アイヴォリー王城にケットシーとフェンリルがやってきた頃、モスグリネの王城には思ってもみなかった来客があった。
「これはこれは、ムー王国の王妃。よくぞモスグリネの王城へ」
「ええ、お久しぶりですね。ペイル・モスグリネ国王陛下」
ペイルがムーの王妃を迎えて挨拶をしている。ロゼリアは「誰?」という顔をしている。
「そういえば、ロゼリアは初めて見るか。まあ、俺もアイヴォリーでの留学を終えてからしか会っていないのだがな」
困り顔のロゼリアを見て、ペイルが説明を始める。
「こちらの女性は隣国ムー王国の王妃でパール・ムー王妃殿下だ。俺たちとほぼ年は変わらない」
「これは、パール・ムー王妃殿下。お初にお目にかかります、ペイル陛下の伴侶でありますロゼリア・マゼンダ・モスグリネでございます」
ペイルの紹介を受けて、ロゼリアが挨拶をしている。
「これはご丁寧に。ご紹介に預かりました、パール・ムーでございます」
パールも挨拶を返し、お互いに頭を下げている。
「それにしてもパール王妃。今回はなぜモスグリネに?」
挨拶を終えたところで、ペイルが質問を投げかけている。
パールは嫌な素振りも見せず、笑顔でその質問に答え始める。
「今回はアイヴォリーの年末祭に顔を出す予定です。隣国の友好国ですから、一度くらいご挨拶をしておきたいと思いましてね」
「なるほど、そういうことですか」
パールの説明を聞いて、ペイルは納得していた。
「どうだろうか、ロゼリア。君もご一緒して里帰りをしてみては」
「よろしいのですか、陛下」
ペイルの唐突な申し出に、ロゼリアは驚いている。
「なに、娘のシアンも来年が留学最後の年になる。それを前に激励をしてあげてもいいんじゃないかな」
「……そうでございますね。分かりました、私もご一緒致しましょう」
あれよあれよという間に、ロゼリアはパールに付き添って祖国に帰省することになったのだった。
「ふふっ、これで道中は楽しくなりそうですね」
決定を目の前で見ていたパールが、意味ありげに笑っている。だが、ロゼリアはペイルといろいろと話しており、この様子に気が付くことはなかった。
話を終えて客間へと移動してきたパールは、部屋のソファーに座り込む。
さすが王妃の泊まる部屋とあって、設備はとても豪華である。
「さて、予定通りにロゼリア王妃を同行させられましたね」
「はい、その通りでございますね。王妃様」
パールの侍女は無表情で返事をしている。
「ミル、トパゼリアの動きはどうなっているかしら」
「はい、私の精霊によりますと、女王自らが出立なさったようでございます」
「……そうですか。まったく、国の基盤もまだ不十分でしょうに、ずいぶんと思い切った行動に出ていますね」
「ええ、まったくでございます」
ミルと呼ばれた侍女の報告に、パールはかなり困った様子を見せていた。
「このモスグリネ王国のシアン王女様が留学をされている今だからこそ、アイヴォリーを混乱に陥れるのに絶好の機会と見ているのでしょう。ただ、あちら側にとって神獣使いの存在は予想外でしたでしょうけれどね」
「ええ、そうですね。神獣使いベルの子孫。彼女の存在で、アイヴォリー王国は今や神獣や幻獣などが多く集う場所になっています。それを知らないとなると、なんとも愚かしい話ですね」
「まったくでございます」
王妃の言葉に頷くミルの周りには、なにやら光の球がちらちらとうろついている。これがミルの言う精霊だろう。
「トパゼリアは、アイヴォリーの地にあるかつての土地に執着しています。ここまで何度も失敗を繰り返してきたのですから、もはや手段を選ばないということなのでしょうね」
「だと存じます。女王自らが出るなど、普通なら考えられない話ですからね」
ミルとの話に一区切りをつけた王妃は、大きくため息をつく。
「夫に心配をさせまいと、詳細は伏せてきました。ですが、今となっては少々ばかり後悔しております」
「仕方ございませんよ。この地に降り立ったムーの正式な血を引き継いでいらっしゃるのは、王妃様なのですから。あの時から現地の者として仕えてきた一族として、この身に代えても王妃様をお守り致します」
ため息をつくパールに対して、ミルは跪いて宣誓する。
どうやら二人の間には、相当強い絆があるようだった。
「ええ、ありがとう、ミル」
話を終えた二人は、翌日に備えてしっかりと休んだのだった。
モスグリネ王城に一泊して、いよいよアイヴォリー王国へと向けて出発する。
ムー王国からやって来たパールたちの一向の後方に、ロゼリアの乗るモスグリネの馬車と騎士団が隊列が加わる。
「それでは行ってまいります」
「ああ、シルヴァノやペシエラたちによろしくな。あと、娘の様子も連絡してくれ」
「承知致しましたわ」
ペイルとロゼリアは、いろいろとやり取りをしていた。当然ながら、娘であるシアンのことをかなり案じているようだった。
ペイルが見守る中、パールやロゼリアたちはヴィフレアを出発する。
他国の王族が参加することとなったアイヴォリーの年末祭。はたしてなにごともなく終われるのであろうか。
「これはこれは、ムー王国の王妃。よくぞモスグリネの王城へ」
「ええ、お久しぶりですね。ペイル・モスグリネ国王陛下」
ペイルがムーの王妃を迎えて挨拶をしている。ロゼリアは「誰?」という顔をしている。
「そういえば、ロゼリアは初めて見るか。まあ、俺もアイヴォリーでの留学を終えてからしか会っていないのだがな」
困り顔のロゼリアを見て、ペイルが説明を始める。
「こちらの女性は隣国ムー王国の王妃でパール・ムー王妃殿下だ。俺たちとほぼ年は変わらない」
「これは、パール・ムー王妃殿下。お初にお目にかかります、ペイル陛下の伴侶でありますロゼリア・マゼンダ・モスグリネでございます」
ペイルの紹介を受けて、ロゼリアが挨拶をしている。
「これはご丁寧に。ご紹介に預かりました、パール・ムーでございます」
パールも挨拶を返し、お互いに頭を下げている。
「それにしてもパール王妃。今回はなぜモスグリネに?」
挨拶を終えたところで、ペイルが質問を投げかけている。
パールは嫌な素振りも見せず、笑顔でその質問に答え始める。
「今回はアイヴォリーの年末祭に顔を出す予定です。隣国の友好国ですから、一度くらいご挨拶をしておきたいと思いましてね」
「なるほど、そういうことですか」
パールの説明を聞いて、ペイルは納得していた。
「どうだろうか、ロゼリア。君もご一緒して里帰りをしてみては」
「よろしいのですか、陛下」
ペイルの唐突な申し出に、ロゼリアは驚いている。
「なに、娘のシアンも来年が留学最後の年になる。それを前に激励をしてあげてもいいんじゃないかな」
「……そうでございますね。分かりました、私もご一緒致しましょう」
あれよあれよという間に、ロゼリアはパールに付き添って祖国に帰省することになったのだった。
「ふふっ、これで道中は楽しくなりそうですね」
決定を目の前で見ていたパールが、意味ありげに笑っている。だが、ロゼリアはペイルといろいろと話しており、この様子に気が付くことはなかった。
話を終えて客間へと移動してきたパールは、部屋のソファーに座り込む。
さすが王妃の泊まる部屋とあって、設備はとても豪華である。
「さて、予定通りにロゼリア王妃を同行させられましたね」
「はい、その通りでございますね。王妃様」
パールの侍女は無表情で返事をしている。
「ミル、トパゼリアの動きはどうなっているかしら」
「はい、私の精霊によりますと、女王自らが出立なさったようでございます」
「……そうですか。まったく、国の基盤もまだ不十分でしょうに、ずいぶんと思い切った行動に出ていますね」
「ええ、まったくでございます」
ミルと呼ばれた侍女の報告に、パールはかなり困った様子を見せていた。
「このモスグリネ王国のシアン王女様が留学をされている今だからこそ、アイヴォリーを混乱に陥れるのに絶好の機会と見ているのでしょう。ただ、あちら側にとって神獣使いの存在は予想外でしたでしょうけれどね」
「ええ、そうですね。神獣使いベルの子孫。彼女の存在で、アイヴォリー王国は今や神獣や幻獣などが多く集う場所になっています。それを知らないとなると、なんとも愚かしい話ですね」
「まったくでございます」
王妃の言葉に頷くミルの周りには、なにやら光の球がちらちらとうろついている。これがミルの言う精霊だろう。
「トパゼリアは、アイヴォリーの地にあるかつての土地に執着しています。ここまで何度も失敗を繰り返してきたのですから、もはや手段を選ばないということなのでしょうね」
「だと存じます。女王自らが出るなど、普通なら考えられない話ですからね」
ミルとの話に一区切りをつけた王妃は、大きくため息をつく。
「夫に心配をさせまいと、詳細は伏せてきました。ですが、今となっては少々ばかり後悔しております」
「仕方ございませんよ。この地に降り立ったムーの正式な血を引き継いでいらっしゃるのは、王妃様なのですから。あの時から現地の者として仕えてきた一族として、この身に代えても王妃様をお守り致します」
ため息をつくパールに対して、ミルは跪いて宣誓する。
どうやら二人の間には、相当強い絆があるようだった。
「ええ、ありがとう、ミル」
話を終えた二人は、翌日に備えてしっかりと休んだのだった。
モスグリネ王城に一泊して、いよいよアイヴォリー王国へと向けて出発する。
ムー王国からやって来たパールたちの一向の後方に、ロゼリアの乗るモスグリネの馬車と騎士団が隊列が加わる。
「それでは行ってまいります」
「ああ、シルヴァノやペシエラたちによろしくな。あと、娘の様子も連絡してくれ」
「承知致しましたわ」
ペイルとロゼリアは、いろいろとやり取りをしていた。当然ながら、娘であるシアンのことをかなり案じているようだった。
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