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新章 青色の智姫
第166話 雪が降る原因
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今年のアイヴォリー王国はやたらと雪が降る。例年でも冬の時期にはそこそこ降るものだが、今年はやたらと多い。
「これって、フェンリルだけっていうわけじゃなさそうですね」
「そうですね。フェンリルは神獣ですし、その気になればまったく降らせないことも可能です。もしかしたら、魔物が潜んでいるかも知れませんね」
「ちょっとマゼンダ商会に顔を出してみましょうか。あそこなら何か分かるかもしれません」
「承知致しました。では、支度致しましょう」
シアンはスミレの手伝いで服を着替え、用意された馬車でマゼンダ商会へと向かう。
マゼンダ商会へと向かう道中、王都の中は人がたくさん出ており、雪かきをしながら年末祭の準備を進めていた。
年末祭は毎年アイヴォリーで行われているお祭りだ。その年一年間を労い、新しい年を迎えるお祭りで、城では三日三晩のパーティーも行われる。
国を挙げてのお祭りともあって、王都の民たちも準備には余念がないというわけだった。
だが、今年は今までに経験したことのないくらいの雪が降っているために、少々ばかり準備に手間取っているようである。
「そういえば、シアン・アクアマリン時代にも、これだけ雪が降った年がありましたね」
「そうなのですね」
「ええ、時渡りの秘法を発動させる、前の年でしたかね。あれが原因で、元アイヴォリー王国の地はどこもかしこも多くの者が飢えたものです。かくいう私は無事でしたけれど」
「なるほど、そのようなことがあったのですか」
シアンが話す内容に、スミレはあまり関心がないようだった。というのも、そもそもが時の幻獣であるスミレなのだ。元々人間たちの話には無関心が過ぎるのである。
今でこそ、シアンをきちんと見守るように言われているために少々関心を持っているという状況だ。幻獣もその本質は簡単には変えられないものなのである。
それに加えて、シアンが話している内容も、時渡りの秘法が発動したことで失われた時間軸の話である。つまりは、現状においてはどうでもいい話ということだった。
「シアン様、そろそろマゼンダ商会に到着します」
「分かりました。降りる準備をしましょう」
マゼンダ商会に到着して、馬車を降りて中へと移動していくシアン。スミレも同行して入口に向かうと、先触れを出していたこともあってアメジスタが待っていた。
「お待ちしておりました、シアン様。ここよりこのアメジスタがご案内致します」
「よろしくお願いします」
アメジスタに連れられて中へと移動するシアンたちは、商会長室に案内される。そこにいたのはチェリシア・コーラル・マゼンダとライとケットシーだった。
「なぜケットシーまでいるのですか」
「酷いなぁ、商談をしているところに君たちが来ただけじゃないか」
「チェリシア様、それは事実で?」
「ええ、そうですね。これだけ雪が多いと交通が大変ですから、そこを含めて話をしていたところですよ」
シアンが尋ねると、チェリシアは淡々と答えていた。商人モードなのか普段のどこかぶっ飛んだ様子は鳴りを潜めているようだ。
「それにしても、シアンくんはなぜここに来たんだい?」
ケットシーが分かってますよというような顔をしながら質問をしてくる。相変わらず、意地の悪い猫である。
「ええ、雪がこれだけ降っている原因を何か知らないかと思いましてね」
「さすがの私でも、これだけの雪は降らせられないわよ。私たちの方だって困っているんだから」
シアンが尋ねると、チェリシアが頭を抱えて答えている。珍しい光景である。
「言っておくけど、フェンリルは原因じゃないよ。発端はそうだけど、今継続させているのは別の存在だ」
一方、ケットシーの方は何かを知っているというような発言をしている。その顔が向く先をシアンが確認すると、ライをじっと見ているようだった。
「ケットシー? 私は原因じゃないわよ。ただ、知っている魔力なのは認めるけど」
ケットシーの視線に気が付いたライが慌てたように発言している。
「あら、ライってばこれの原因分かっているのかしら」
チェリシアがにこにこと笑っている。
「私だって元妖精ですよ。妖精仲間にこういういたずら好きなのがいますからね。たぶん彼女だと思いますよ」
「ほうほう、その妖精が暴走している理由はなにかな」
ライが答えると、ケットシーが迫っていく。
「フェンリル様に刺激されたんだと思いますよ。でも、この規模は明らかにおかしいとは思いますけれどね」
「ふむ……。ならば探りに行く必要があるかな。ただ、年末祭の時期で忙しいから、全員が時間を割けるわけじゃないけどね」
ケットシーがシアンの方をじっと見ている。
「えっ、私がですか?」
「悪いけど、こいつを連れて探りに行っておくれ。このままじゃ商売あがったりだからね」
「私もぉ?!」
ケットシーの言い分に、ライもひどい顔で驚いている。
「それはそうだ。君の知り合いなのだろう?」
「うぐ……」
ケットシーの指摘に、ライは反論を封じられてしまう。
「わ、分かりましたよ。私が案内をしますから、シアン様もついてきて下さい」
渋々了承するライである。
「じゃあ、三人に任せて、ボクたちは商談の続きといこうじゃないか。じゃあ、頼んだよ」
ケットシーは相変わらず胡散くさい表情で笑っている。
こうした事態になってしまい、安易に首を突っ込んだことを後悔するシアンなのであった。
「これって、フェンリルだけっていうわけじゃなさそうですね」
「そうですね。フェンリルは神獣ですし、その気になればまったく降らせないことも可能です。もしかしたら、魔物が潜んでいるかも知れませんね」
「ちょっとマゼンダ商会に顔を出してみましょうか。あそこなら何か分かるかもしれません」
「承知致しました。では、支度致しましょう」
シアンはスミレの手伝いで服を着替え、用意された馬車でマゼンダ商会へと向かう。
マゼンダ商会へと向かう道中、王都の中は人がたくさん出ており、雪かきをしながら年末祭の準備を進めていた。
年末祭は毎年アイヴォリーで行われているお祭りだ。その年一年間を労い、新しい年を迎えるお祭りで、城では三日三晩のパーティーも行われる。
国を挙げてのお祭りともあって、王都の民たちも準備には余念がないというわけだった。
だが、今年は今までに経験したことのないくらいの雪が降っているために、少々ばかり準備に手間取っているようである。
「そういえば、シアン・アクアマリン時代にも、これだけ雪が降った年がありましたね」
「そうなのですね」
「ええ、時渡りの秘法を発動させる、前の年でしたかね。あれが原因で、元アイヴォリー王国の地はどこもかしこも多くの者が飢えたものです。かくいう私は無事でしたけれど」
「なるほど、そのようなことがあったのですか」
シアンが話す内容に、スミレはあまり関心がないようだった。というのも、そもそもが時の幻獣であるスミレなのだ。元々人間たちの話には無関心が過ぎるのである。
今でこそ、シアンをきちんと見守るように言われているために少々関心を持っているという状況だ。幻獣もその本質は簡単には変えられないものなのである。
それに加えて、シアンが話している内容も、時渡りの秘法が発動したことで失われた時間軸の話である。つまりは、現状においてはどうでもいい話ということだった。
「シアン様、そろそろマゼンダ商会に到着します」
「分かりました。降りる準備をしましょう」
マゼンダ商会に到着して、馬車を降りて中へと移動していくシアン。スミレも同行して入口に向かうと、先触れを出していたこともあってアメジスタが待っていた。
「お待ちしておりました、シアン様。ここよりこのアメジスタがご案内致します」
「よろしくお願いします」
アメジスタに連れられて中へと移動するシアンたちは、商会長室に案内される。そこにいたのはチェリシア・コーラル・マゼンダとライとケットシーだった。
「なぜケットシーまでいるのですか」
「酷いなぁ、商談をしているところに君たちが来ただけじゃないか」
「チェリシア様、それは事実で?」
「ええ、そうですね。これだけ雪が多いと交通が大変ですから、そこを含めて話をしていたところですよ」
シアンが尋ねると、チェリシアは淡々と答えていた。商人モードなのか普段のどこかぶっ飛んだ様子は鳴りを潜めているようだ。
「それにしても、シアンくんはなぜここに来たんだい?」
ケットシーが分かってますよというような顔をしながら質問をしてくる。相変わらず、意地の悪い猫である。
「ええ、雪がこれだけ降っている原因を何か知らないかと思いましてね」
「さすがの私でも、これだけの雪は降らせられないわよ。私たちの方だって困っているんだから」
シアンが尋ねると、チェリシアが頭を抱えて答えている。珍しい光景である。
「言っておくけど、フェンリルは原因じゃないよ。発端はそうだけど、今継続させているのは別の存在だ」
一方、ケットシーの方は何かを知っているというような発言をしている。その顔が向く先をシアンが確認すると、ライをじっと見ているようだった。
「ケットシー? 私は原因じゃないわよ。ただ、知っている魔力なのは認めるけど」
ケットシーの視線に気が付いたライが慌てたように発言している。
「あら、ライってばこれの原因分かっているのかしら」
チェリシアがにこにこと笑っている。
「私だって元妖精ですよ。妖精仲間にこういういたずら好きなのがいますからね。たぶん彼女だと思いますよ」
「ほうほう、その妖精が暴走している理由はなにかな」
ライが答えると、ケットシーが迫っていく。
「フェンリル様に刺激されたんだと思いますよ。でも、この規模は明らかにおかしいとは思いますけれどね」
「ふむ……。ならば探りに行く必要があるかな。ただ、年末祭の時期で忙しいから、全員が時間を割けるわけじゃないけどね」
ケットシーがシアンの方をじっと見ている。
「えっ、私がですか?」
「悪いけど、こいつを連れて探りに行っておくれ。このままじゃ商売あがったりだからね」
「私もぉ?!」
ケットシーの言い分に、ライもひどい顔で驚いている。
「それはそうだ。君の知り合いなのだろう?」
「うぐ……」
ケットシーの指摘に、ライは反論を封じられてしまう。
「わ、分かりましたよ。私が案内をしますから、シアン様もついてきて下さい」
渋々了承するライである。
「じゃあ、三人に任せて、ボクたちは商談の続きといこうじゃないか。じゃあ、頼んだよ」
ケットシーは相変わらず胡散くさい表情で笑っている。
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