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新章 青色の智姫
第170話 三国王妃
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ゆっくり落ち着く間もなく、年末祭を数日後に控えた日のこと。シアンは着飾らされてしまう。
「何ごとなのですか?」
シアンはスミレに確認する。
「国賓がいらっしゃるのです。シアン様もご参列なさるようにとの国王陛下と王妃様からのお達しでございます」
スミレ以外にも数名のメイドの手によって、いつも以上に飾りのついたドレスを着せられ、髪も整えられていく。
実に王女様らしい気品を兼ね備えたところで、護衛の兵士とともに謁見の間へと移動する。
謁見の間に到着したシアンだが、他の面々よりも遅れてしまっていたようだ。
「お、お待たせ致しました。シアン・モスグリネ、ただいま参りました」
「シアン、わたくしの隣に立ちなさい」
「は、はい。それでは失礼致します」
ペシエラに言われてすぐさま移動するシアン。隣にはペシエラの娘であるダイアが立っていた。
しばらく待っていると、到着を知らせる兵士が入ってくる。
「そうですか。では、ご案内下さい」
「はっ!」
シルヴァノが許可を出すと、兵士は再び外へと出ていく。
戻ってきた兵士に連れられて現れたのは、二人の女性だった。
「お母様!?」
思わず声を上げてしまうシアンである。
やって来たのはロゼリア・マゼンダ・モスグリネ王妃と、見たことのない女性だった。
アイヴォリーに王族にも負けない白っぽい金髪をなびかせた女性に、思わずみんなが見惚れたものである。
「ロゼリア・マゼンダ・モスグリネでございます」
「パール・ムーでございます。突然の訪問、お詫び申し上げます」
二人とも名乗ると、少し騒がしくなる。
「ムー……。なるほど、あなたがムー王国の王妃ですか」
「ムー王国、実在していたのですわね」
「はい。あまり表舞台には出ずにひっそりしていますからね」
普通に取れば失礼な言葉ではあるものの、パールはにっこりと微笑んでいた。
ここまで驚くというのも仕方はない。隣国であるモスグリネであるならまだしも、山を挟んだアイヴォリーまではやって来ることはなかったのだから。
それに加えて、ムー王国もいろいろ事情があって情報を伏せさせていた。多少の取引があるモスグリネ王国は仕方なくではあるが、必要以上に情報を広めなかったのである。
「やって来た理由については、まああとで大人たちだけでお話致しましょう」
パールはにこりと微笑んでいる。
顔合わせが終わると、国王と王妃は揃って別室に移っていく。
シアンたちはこれにて解散となってしまった。
あれだけしっかりと準備をしたというのに、出番はたったのこれだけである。なんとも拍子抜けだった。
ライトとダイアと別れたシアンは自室へと戻る。
「ふぅ……。まさかこれで終わりとは思わなかったですね」
「お疲れ様でございました、シアン様」
自室の椅子でくつろぐシアンの元に、紅茶を持ってスミレがやって来た。
「お母様とも顔合わせだけ。シルヴァノ陛下とペシエラ様たちとお話の真っ最中ですか……」
淹れられた紅茶を飲みながら、シアンはぶつぶつといっている。
「仕方ありませんよ。話している内容は、子どもにあまり聞かせるものではないでしょうから」
「スミレ、何か知っているような口っぷりですね」
スミレが話す内容を聞いて、シアンはジト目を向けている。
だが、そんな睨むような視線に動じるようなスミレではなかった。
「私とてそもそもは幻獣です。能力の多くを封印されたとはいえ、基本的な能力は人間とは比べ物になりませんからね」
「答えになってないですよ、スミレ」
シアンは額に手を当てて呆れてしまう。シアンの侍女となって十四年とはいえ、やっぱり幻獣ゆえにどこか人とずれているようである。
「それにしても、ムー王国が動いたということは、やはりトパゼリアも動くのでしょうかね」
「はっはっはっ。その通りだよ、スミレくん」
「ケットシー……。またどこからともなく現れますね」
「幻獣は基本的に突然現れるものなのだよ。クロノア……スミレくんで経験済みだろう?」
「それはまぁ、確かに」
ケットシーに確認を求められて、スミレにちらりと視線を向けながら頷くシアンである。
「それはそれとして、何の用なのですか」
「つれないなぁ。君にも情報を持ってきたというのに」
「頼んでませんけど?」
ケットシーの言葉に、シアンは怒ったようにツッコミを入れている。
「まったく、人の世界に馴染んでいるあなたが、どうしてそうも人の心を無視した行動を取るのですか……」
スミレにまでこう言われる始末である。
「はっはっはっ、ボクは猫だからね」
ところが、まったくこたえることなくケットシーは笑い飛ばしていた。
シアンたちはまったくもって頭が痛い。
「それはそうと、話が終わってからになるけれど、ロゼリアくんが君と会いたがっているようだよ。多分この部屋に来るから準備はしておいた用がいいよ」
「なぜそれを最初に言わないのですか、この意地悪猫は困ったものですね!」
ケットシーからの爆弾発言に、シアンは顔を歪めながら文句を言い始める。
「はっはっはっ、そういう反応が面白いからだよ。それじゃ、伝えることは伝えたから、ボクはいくよ」
「もう来ないで下さい!」
「そうはいかないねぇ。君はどのみちボクの力が必要になるだろうからね。それじゃ、今日のところはこれで失礼するよ」
ケットシーは笑いながら、のっしのっしとシアンの部屋から出ていく。
うるさいのが出ていった静かになった部屋の中では、シアンが大きくため息をつきながら俯いて黙り込むのだった。
「何ごとなのですか?」
シアンはスミレに確認する。
「国賓がいらっしゃるのです。シアン様もご参列なさるようにとの国王陛下と王妃様からのお達しでございます」
スミレ以外にも数名のメイドの手によって、いつも以上に飾りのついたドレスを着せられ、髪も整えられていく。
実に王女様らしい気品を兼ね備えたところで、護衛の兵士とともに謁見の間へと移動する。
謁見の間に到着したシアンだが、他の面々よりも遅れてしまっていたようだ。
「お、お待たせ致しました。シアン・モスグリネ、ただいま参りました」
「シアン、わたくしの隣に立ちなさい」
「は、はい。それでは失礼致します」
ペシエラに言われてすぐさま移動するシアン。隣にはペシエラの娘であるダイアが立っていた。
しばらく待っていると、到着を知らせる兵士が入ってくる。
「そうですか。では、ご案内下さい」
「はっ!」
シルヴァノが許可を出すと、兵士は再び外へと出ていく。
戻ってきた兵士に連れられて現れたのは、二人の女性だった。
「お母様!?」
思わず声を上げてしまうシアンである。
やって来たのはロゼリア・マゼンダ・モスグリネ王妃と、見たことのない女性だった。
アイヴォリーに王族にも負けない白っぽい金髪をなびかせた女性に、思わずみんなが見惚れたものである。
「ロゼリア・マゼンダ・モスグリネでございます」
「パール・ムーでございます。突然の訪問、お詫び申し上げます」
二人とも名乗ると、少し騒がしくなる。
「ムー……。なるほど、あなたがムー王国の王妃ですか」
「ムー王国、実在していたのですわね」
「はい。あまり表舞台には出ずにひっそりしていますからね」
普通に取れば失礼な言葉ではあるものの、パールはにっこりと微笑んでいた。
ここまで驚くというのも仕方はない。隣国であるモスグリネであるならまだしも、山を挟んだアイヴォリーまではやって来ることはなかったのだから。
それに加えて、ムー王国もいろいろ事情があって情報を伏せさせていた。多少の取引があるモスグリネ王国は仕方なくではあるが、必要以上に情報を広めなかったのである。
「やって来た理由については、まああとで大人たちだけでお話致しましょう」
パールはにこりと微笑んでいる。
顔合わせが終わると、国王と王妃は揃って別室に移っていく。
シアンたちはこれにて解散となってしまった。
あれだけしっかりと準備をしたというのに、出番はたったのこれだけである。なんとも拍子抜けだった。
ライトとダイアと別れたシアンは自室へと戻る。
「ふぅ……。まさかこれで終わりとは思わなかったですね」
「お疲れ様でございました、シアン様」
自室の椅子でくつろぐシアンの元に、紅茶を持ってスミレがやって来た。
「お母様とも顔合わせだけ。シルヴァノ陛下とペシエラ様たちとお話の真っ最中ですか……」
淹れられた紅茶を飲みながら、シアンはぶつぶつといっている。
「仕方ありませんよ。話している内容は、子どもにあまり聞かせるものではないでしょうから」
「スミレ、何か知っているような口っぷりですね」
スミレが話す内容を聞いて、シアンはジト目を向けている。
だが、そんな睨むような視線に動じるようなスミレではなかった。
「私とてそもそもは幻獣です。能力の多くを封印されたとはいえ、基本的な能力は人間とは比べ物になりませんからね」
「答えになってないですよ、スミレ」
シアンは額に手を当てて呆れてしまう。シアンの侍女となって十四年とはいえ、やっぱり幻獣ゆえにどこか人とずれているようである。
「それにしても、ムー王国が動いたということは、やはりトパゼリアも動くのでしょうかね」
「はっはっはっ。その通りだよ、スミレくん」
「ケットシー……。またどこからともなく現れますね」
「幻獣は基本的に突然現れるものなのだよ。クロノア……スミレくんで経験済みだろう?」
「それはまぁ、確かに」
ケットシーに確認を求められて、スミレにちらりと視線を向けながら頷くシアンである。
「それはそれとして、何の用なのですか」
「つれないなぁ。君にも情報を持ってきたというのに」
「頼んでませんけど?」
ケットシーの言葉に、シアンは怒ったようにツッコミを入れている。
「まったく、人の世界に馴染んでいるあなたが、どうしてそうも人の心を無視した行動を取るのですか……」
スミレにまでこう言われる始末である。
「はっはっはっ、ボクは猫だからね」
ところが、まったくこたえることなくケットシーは笑い飛ばしていた。
シアンたちはまったくもって頭が痛い。
「それはそうと、話が終わってからになるけれど、ロゼリアくんが君と会いたがっているようだよ。多分この部屋に来るから準備はしておいた用がいいよ」
「なぜそれを最初に言わないのですか、この意地悪猫は困ったものですね!」
ケットシーからの爆弾発言に、シアンは顔を歪めながら文句を言い始める。
「はっはっはっ、そういう反応が面白いからだよ。それじゃ、伝えることは伝えたから、ボクはいくよ」
「もう来ないで下さい!」
「そうはいかないねぇ。君はどのみちボクの力が必要になるだろうからね。それじゃ、今日のところはこれで失礼するよ」
ケットシーは笑いながら、のっしのっしとシアンの部屋から出ていく。
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