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新章 青色の智姫
第175話 後始末
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倒れ込む女王を見ながら、ペシエラは疑問を感じている。
「なぜ急にあんな化け物になったのかしら……」
ペシエラが呟くと、ケットシーがゆっくりと女王に近付いていく。
「こいつのせいさ。こういう禁術を使った連中は、過去にボクも見たことはあるよ」
ケットシーが女王の胸部を指差す。ペシエラが女王の胸を見ると、破れた服の下からきらりと光る宝石のようなものが見える。
「なんですの、これ……。体に直接宝石を埋め込んでいる……?」
「そう、これが禁術のひとつさ。自分の体にデーモンハートを埋め込むことによって、より他のデーモンハートに耐性を持たせるのさ。それに加えて、これによってデーモンハートの力を扱えるようになるのさ。その結果がさっきの醜悪な化け物ってわけさ」
「信じられませんわ」
ペシエラは思わず口を押えてしまう。それでもアイヴォリーの王妃であり、一度戦争を経験した身からすると目を背けることは決してなかった。
「それだけ、アイヴォリー王国に取り込まれたかつての栄華に執着してるのさ。モスグリネ王国との仲違いを狙うのも、そのためさ」
「なんてやつらなの……」
「それが、デーモンハートに魅入られた者の末路というわけさ」
ケットシーはフェンリルに睨まれて縮こまる部下たちの方を見る。
開かない細い目に睨まれた部下たちは、思わず震え上がっていた。
「さて、君たちのリーダーはこの通りだ。まだ戦うつもりかい?」
ケットシーが問い掛けると、部下たちはぶるぶると震えながら首を横に振っていた。
「そうかいそうかい。通常侵略行為を仕掛けたら極刑になるものだが、君たちの応答次第じゃ考えてあげてもいいよ」
「ほ、本当か?!」
ケットシーの声に、部下の一部が声を上げる。
「ちょっとケットシー。勝手に決めないでくれませんこと? ここはアイヴォリー、わたくしと陛下が決めることですわよ」
「ああ、そうだったね。いやぁ、すまないすまない」
ペシエラが指摘すると、悪気をまったく感じない表情でケットシーはおどけていた。相変わらず憎たらしい幻獣である。
「さてと、ペシエラくんはシアンくんを連れて帰ってくれたまえ。フェンリル、その男たちのことを頼むよ。ボクはこいつに用があるからね」
「分かった。だが、お前の考えることはろくでもなさそうだからな。あとで確認させてもらうぞ」
「はっはっはっ、そんなに信用ないかね」
「日頃の行いだ」
フェンリルは男たちを腰まで氷漬けにして、そのまま引っ張って走り去っていく。その速度が速いために、かなり涙目になっていたのはいうまでもない話だった。
走り去っていくフェンリルを見送ると、ケットシーはペシエラとシアンへと視線を向ける。
「さて、さすがに王妃と王女を残して去るほどボクも薄情ではないよ。それにこいつもそろそろ目を覚ますだろうから、一緒に喚く姿でも見ようじゃないか」
「悪趣味ですわね……」
「うん……」
「シアン、目が覚めましたのね」
魔法を慎重に使ったせいか、気を失ってしまっていたシアンが目を覚ます。
「はっ、ペシエラ様。どうなりましたか?!」
気を失ってしまっていたために、状況が把握できていないシアン。隣にいたペシエラに状況を確認している。
「ええ、無事に女王の暴走はおさまりましたわ。ただ、この猫に任せるのは心配なのですのよね」
「失敬な。ボクだってやる時はきちんとやるのだよ?」
ペシエラの言い分に笑顔のまま怒るケットシーである。
騒がしくしていると、ぐるぐる巻きに拘束された女王がようやく目を覚ます。
「ぐっ、一体これはどういうことだ!」
「やあ、目が覚めたかい。デーモンハートに魅入られし愚かな人間」
「お前は誰だ!」
「いやだなぁ、商業の取引相手くらい覚えておくものだよ」
「……モスグリネの商業組合のやつか。猫など知らん!」
ケットシーが残念そうに嘆くも、女王はまったく知らないといった様子だった。
「つれないなぁ。まぁ、この状況でいつまでその強気が保てるかな」
「ぐっ!」
女王は動こうとするも、がっちり縛られているために動けない。魔法を使おうとしてもうまくいかない。焦ってバタバタと動いている。
「なぜ、なぜ魔法が使えない! くそっ、くそっ!」
「君の魔法の根源たるデーモンハートが浄化されてしまったからね。いくら頑張っても魔法は使えないよ。残念だったね」
にこやかな笑顔のまま、女王にずいっと顔を近付けるケットシーである。そのあまりの不気味さに、強気な女王さえも思わず顔を背けてしまう。
「さて、女王を失ったトパゼリアがこれからどうなるか楽しみだね。なんといっても、アイヴォリー国内で禁忌のデーモンハートを使ったのだからね」
「猫ごときが、うるさいものだな」
「ふん、なんとでも言えばいいさ。幻獣であるボクを相手にそこまで言えるのは数が少ない。そういう意味では、ボクは君に興味があるよ」
女王に対して吐き捨てると、ケットシーはペシエラたちに振り返る。
「それじゃ、戻るとしようか」
「そうですわね。シアン、立てますかしら」
「は、はい。なんとか」
シアンはふらつきながらも立ち上がる。さすがに厳しそうだったので、結局再び座らせてエアリアルボードを発動する。
「では、一足先に戻りますわ」
「ボクもすぐに向かう。頼んだよ」
会話を終わらせると、ペシエラはシアンを連れて戻っていったのだった。
「なぜ急にあんな化け物になったのかしら……」
ペシエラが呟くと、ケットシーがゆっくりと女王に近付いていく。
「こいつのせいさ。こういう禁術を使った連中は、過去にボクも見たことはあるよ」
ケットシーが女王の胸部を指差す。ペシエラが女王の胸を見ると、破れた服の下からきらりと光る宝石のようなものが見える。
「なんですの、これ……。体に直接宝石を埋め込んでいる……?」
「そう、これが禁術のひとつさ。自分の体にデーモンハートを埋め込むことによって、より他のデーモンハートに耐性を持たせるのさ。それに加えて、これによってデーモンハートの力を扱えるようになるのさ。その結果がさっきの醜悪な化け物ってわけさ」
「信じられませんわ」
ペシエラは思わず口を押えてしまう。それでもアイヴォリーの王妃であり、一度戦争を経験した身からすると目を背けることは決してなかった。
「それだけ、アイヴォリー王国に取り込まれたかつての栄華に執着してるのさ。モスグリネ王国との仲違いを狙うのも、そのためさ」
「なんてやつらなの……」
「それが、デーモンハートに魅入られた者の末路というわけさ」
ケットシーはフェンリルに睨まれて縮こまる部下たちの方を見る。
開かない細い目に睨まれた部下たちは、思わず震え上がっていた。
「さて、君たちのリーダーはこの通りだ。まだ戦うつもりかい?」
ケットシーが問い掛けると、部下たちはぶるぶると震えながら首を横に振っていた。
「そうかいそうかい。通常侵略行為を仕掛けたら極刑になるものだが、君たちの応答次第じゃ考えてあげてもいいよ」
「ほ、本当か?!」
ケットシーの声に、部下の一部が声を上げる。
「ちょっとケットシー。勝手に決めないでくれませんこと? ここはアイヴォリー、わたくしと陛下が決めることですわよ」
「ああ、そうだったね。いやぁ、すまないすまない」
ペシエラが指摘すると、悪気をまったく感じない表情でケットシーはおどけていた。相変わらず憎たらしい幻獣である。
「さてと、ペシエラくんはシアンくんを連れて帰ってくれたまえ。フェンリル、その男たちのことを頼むよ。ボクはこいつに用があるからね」
「分かった。だが、お前の考えることはろくでもなさそうだからな。あとで確認させてもらうぞ」
「はっはっはっ、そんなに信用ないかね」
「日頃の行いだ」
フェンリルは男たちを腰まで氷漬けにして、そのまま引っ張って走り去っていく。その速度が速いために、かなり涙目になっていたのはいうまでもない話だった。
走り去っていくフェンリルを見送ると、ケットシーはペシエラとシアンへと視線を向ける。
「さて、さすがに王妃と王女を残して去るほどボクも薄情ではないよ。それにこいつもそろそろ目を覚ますだろうから、一緒に喚く姿でも見ようじゃないか」
「悪趣味ですわね……」
「うん……」
「シアン、目が覚めましたのね」
魔法を慎重に使ったせいか、気を失ってしまっていたシアンが目を覚ます。
「はっ、ペシエラ様。どうなりましたか?!」
気を失ってしまっていたために、状況が把握できていないシアン。隣にいたペシエラに状況を確認している。
「ええ、無事に女王の暴走はおさまりましたわ。ただ、この猫に任せるのは心配なのですのよね」
「失敬な。ボクだってやる時はきちんとやるのだよ?」
ペシエラの言い分に笑顔のまま怒るケットシーである。
騒がしくしていると、ぐるぐる巻きに拘束された女王がようやく目を覚ます。
「ぐっ、一体これはどういうことだ!」
「やあ、目が覚めたかい。デーモンハートに魅入られし愚かな人間」
「お前は誰だ!」
「いやだなぁ、商業の取引相手くらい覚えておくものだよ」
「……モスグリネの商業組合のやつか。猫など知らん!」
ケットシーが残念そうに嘆くも、女王はまったく知らないといった様子だった。
「つれないなぁ。まぁ、この状況でいつまでその強気が保てるかな」
「ぐっ!」
女王は動こうとするも、がっちり縛られているために動けない。魔法を使おうとしてもうまくいかない。焦ってバタバタと動いている。
「なぜ、なぜ魔法が使えない! くそっ、くそっ!」
「君の魔法の根源たるデーモンハートが浄化されてしまったからね。いくら頑張っても魔法は使えないよ。残念だったね」
にこやかな笑顔のまま、女王にずいっと顔を近付けるケットシーである。そのあまりの不気味さに、強気な女王さえも思わず顔を背けてしまう。
「さて、女王を失ったトパゼリアがこれからどうなるか楽しみだね。なんといっても、アイヴォリー国内で禁忌のデーモンハートを使ったのだからね」
「猫ごときが、うるさいものだな」
「ふん、なんとでも言えばいいさ。幻獣であるボクを相手にそこまで言えるのは数が少ない。そういう意味では、ボクは君に興味があるよ」
女王に対して吐き捨てると、ケットシーはペシエラたちに振り返る。
「それじゃ、戻るとしようか」
「そうですわね。シアン、立てますかしら」
「は、はい。なんとか」
シアンはふらつきながらも立ち上がる。さすがに厳しそうだったので、結局再び座らせてエアリアルボードを発動する。
「では、一足先に戻りますわ」
「ボクもすぐに向かう。頼んだよ」
会話を終わらせると、ペシエラはシアンを連れて戻っていったのだった。
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