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新章 青色の智姫
第179話 白の衝撃な宣言
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年明けまであと三日。年末祭も五日目を迎えている。
この日も空には雪が舞っている。
「お兄様、雪が舞っていますよ」
「ああ、そうだね。そんな窓際にいて寒くないかい?」
「平気です。氷属性の適性が高いので、寒さはへっちゃらなんですよ」
「そうかい。僕も氷属性持ちだけど、寒さはダメだね」
にこやかに笑いながら答えるダイアに対して、眉をひそめながらライトは話している。
シルヴァノとペシエラの子どもとはいえ、ペシエラの方の全属性はどちらも引き継がなかった。アイヴォリー王家は光ともう一つの属性を持ち合わせるが、大抵は氷属性であり、二人もそれに従った属性を持っているのだ。
「それにしても、そろそろ婚約者を決めないとね」
「そうですわね。私たち、年が明ければ十四歳ですものね。お父様もお母様も少々過保護で、なかなかお決めにならないようですものね」
アイヴォリー王家の王子王女である二人は十三歳。貴族社会であるなら、婚約者候補の一人や二人はいそうな年頃だ。しかし、二人ともそろってそういった話はない。
ところが、そう思っているのは二人だけ。
実は、ペシエラはチャットフォンを使って、しばしばロゼリアと話をしていた。
どちらも子どもがちょうど男女一人ずつということもあって、お互いに嫁がせ合うのはどうかという方向で話が進んでいたのである。
国通しの重要な決まりごとの話し合いなので、秘密裏に進めているのである。
しかし、その間に誰かアプローチしてきて大変なことにならないのかとは考えなかったのだろうか。
不思議な自信があったのだろうが、王子王女たちの周りには意外とそういった浮いた話は実際にまったくというほど出てこなかった。
「ライト殿下、ダイア王女殿下、お食事の準備ができました」
「分かった。すぐに向かう」
今日はパーティーは特にないので、普通の昼食だ。使用人に呼ばれた二人は、すぐさま食堂へと向かった。
食堂にやって来ると、普段見ない人物が姿を見せていた。
「お母様」
ほぼ同時に食堂へとやって来たシアンが叫ぶ。
お母様と叫んだとおり、そこにいたのはロゼリアだった。
「それに、モーフまで。どうなさったのですか」
なんとまぁ、ロゼリアが息子であるモーフを連れてアイヴォリーの城を訪れていた。
犯人はさらに隣にいたピンク髪の女性だ。
「チェリシアおば様……。どうしてここにいらっしゃるのですか」
ライトが少々呆れたように話し掛けている。
「いやぁ、ペシエラからの依頼で、ロゼリアを連れてきたのよ。私の魔法を使えば、両国間の移動なんて一瞬だからね」
「チェリシアおば様ったら……」
ダイアも反応に困っている様子である。
「全員揃っておりますね」
「お、お母様!」
そこへペシエラがパールを連れてやって来た。ちなみにシルヴァノは接待中のために不在である。国王というのは大変なのだ。
「ロゼリア、ペイル陛下とはお話は済みまして?」
「ええ、あの人も納得の上でこちらに来ております」
ペシエラが問い掛けると、ロゼリアは淡々とした表情で受け答えをしている。
一体何の話をしているのだろうか。王子王女たちは揃って首を傾げているようだった。
ひとまず全員が席に着いて、昼食が振る舞われる。
アイヴォリー王国のあちこちから届いた食材を使い、王族らしい豪華な食事が振る舞われる。
「ええ、アイヴォリーの食事は素晴らしいですね」
「ムー王妃がお気に召して下さって光栄ですわ」
パールが褒めると、ペシエラはお礼を言っている。こういったやり取りも社交というものだ。
「私が嫁ぐ前から比べると、さらに改善されているわね。ふふっ、みんな頑張ってくれているのね」
「大体はお姉様のせいですわよ」
ロゼリアが微笑んでいると、ペシエラはちらりとチェリシアを見る。ペシエラからの視線に、チェリシアは得意げに笑っていた。
親たちのやり取りを見て、シアンたちもつい笑ってしまう。間に漂う雰囲気が、なかなか穏やかなものだったからだ。
そうこうと話をしながら、食事が進んでいく。
そろそろ締めかという頃になると、食事の雰囲気が少し変わった。
(何なのかしら。少し空気が重くなった?)
父親のペイル譲りの風属性の適正のせいか、場の雰囲気をひしひしと感じ取るシアンである。
顔を上げてよく見てみると、ペシエラとロゼリアの表情が少し真剣になっているように見えた。
「さて、本題に入りますわ」
ペシエラが口を開くと、場の空気がさらに変わる。
「ロゼリア、改めてお聞きしますけれど、本当にペイル陛下との間で話の決着はつきましたわよね?」
「ええ、もちろんです。ペシエラこそ、シルヴァノ陛下との話し合いは大丈夫かしら」
「もちろんですわ。こちらも円満に話し合いは終わりましたわよ」
会話をした二人はお互いにこくりと頷き合う。
話の内容がまったくつかめずに、シアンは少し不安を感じ始めた。よくよく思えば、モーフがここに来ている理由すらも分からなかったのだ。
しばらくの沈黙ののち、ペシエラが衝撃の内容を口にする。
「わたくしの息子ライトの婚約者としてシアン・モスグリネ、ダイアの婚約者としてモーフ・モスグリネを指名致しますわ」
食事の席での婚約者発表だった。
この日も空には雪が舞っている。
「お兄様、雪が舞っていますよ」
「ああ、そうだね。そんな窓際にいて寒くないかい?」
「平気です。氷属性の適性が高いので、寒さはへっちゃらなんですよ」
「そうかい。僕も氷属性持ちだけど、寒さはダメだね」
にこやかに笑いながら答えるダイアに対して、眉をひそめながらライトは話している。
シルヴァノとペシエラの子どもとはいえ、ペシエラの方の全属性はどちらも引き継がなかった。アイヴォリー王家は光ともう一つの属性を持ち合わせるが、大抵は氷属性であり、二人もそれに従った属性を持っているのだ。
「それにしても、そろそろ婚約者を決めないとね」
「そうですわね。私たち、年が明ければ十四歳ですものね。お父様もお母様も少々過保護で、なかなかお決めにならないようですものね」
アイヴォリー王家の王子王女である二人は十三歳。貴族社会であるなら、婚約者候補の一人や二人はいそうな年頃だ。しかし、二人ともそろってそういった話はない。
ところが、そう思っているのは二人だけ。
実は、ペシエラはチャットフォンを使って、しばしばロゼリアと話をしていた。
どちらも子どもがちょうど男女一人ずつということもあって、お互いに嫁がせ合うのはどうかという方向で話が進んでいたのである。
国通しの重要な決まりごとの話し合いなので、秘密裏に進めているのである。
しかし、その間に誰かアプローチしてきて大変なことにならないのかとは考えなかったのだろうか。
不思議な自信があったのだろうが、王子王女たちの周りには意外とそういった浮いた話は実際にまったくというほど出てこなかった。
「ライト殿下、ダイア王女殿下、お食事の準備ができました」
「分かった。すぐに向かう」
今日はパーティーは特にないので、普通の昼食だ。使用人に呼ばれた二人は、すぐさま食堂へと向かった。
食堂にやって来ると、普段見ない人物が姿を見せていた。
「お母様」
ほぼ同時に食堂へとやって来たシアンが叫ぶ。
お母様と叫んだとおり、そこにいたのはロゼリアだった。
「それに、モーフまで。どうなさったのですか」
なんとまぁ、ロゼリアが息子であるモーフを連れてアイヴォリーの城を訪れていた。
犯人はさらに隣にいたピンク髪の女性だ。
「チェリシアおば様……。どうしてここにいらっしゃるのですか」
ライトが少々呆れたように話し掛けている。
「いやぁ、ペシエラからの依頼で、ロゼリアを連れてきたのよ。私の魔法を使えば、両国間の移動なんて一瞬だからね」
「チェリシアおば様ったら……」
ダイアも反応に困っている様子である。
「全員揃っておりますね」
「お、お母様!」
そこへペシエラがパールを連れてやって来た。ちなみにシルヴァノは接待中のために不在である。国王というのは大変なのだ。
「ロゼリア、ペイル陛下とはお話は済みまして?」
「ええ、あの人も納得の上でこちらに来ております」
ペシエラが問い掛けると、ロゼリアは淡々とした表情で受け答えをしている。
一体何の話をしているのだろうか。王子王女たちは揃って首を傾げているようだった。
ひとまず全員が席に着いて、昼食が振る舞われる。
アイヴォリー王国のあちこちから届いた食材を使い、王族らしい豪華な食事が振る舞われる。
「ええ、アイヴォリーの食事は素晴らしいですね」
「ムー王妃がお気に召して下さって光栄ですわ」
パールが褒めると、ペシエラはお礼を言っている。こういったやり取りも社交というものだ。
「私が嫁ぐ前から比べると、さらに改善されているわね。ふふっ、みんな頑張ってくれているのね」
「大体はお姉様のせいですわよ」
ロゼリアが微笑んでいると、ペシエラはちらりとチェリシアを見る。ペシエラからの視線に、チェリシアは得意げに笑っていた。
親たちのやり取りを見て、シアンたちもつい笑ってしまう。間に漂う雰囲気が、なかなか穏やかなものだったからだ。
そうこうと話をしながら、食事が進んでいく。
そろそろ締めかという頃になると、食事の雰囲気が少し変わった。
(何なのかしら。少し空気が重くなった?)
父親のペイル譲りの風属性の適正のせいか、場の雰囲気をひしひしと感じ取るシアンである。
顔を上げてよく見てみると、ペシエラとロゼリアの表情が少し真剣になっているように見えた。
「さて、本題に入りますわ」
ペシエラが口を開くと、場の空気がさらに変わる。
「ロゼリア、改めてお聞きしますけれど、本当にペイル陛下との間で話の決着はつきましたわよね?」
「ええ、もちろんです。ペシエラこそ、シルヴァノ陛下との話し合いは大丈夫かしら」
「もちろんですわ。こちらも円満に話し合いは終わりましたわよ」
会話をした二人はお互いにこくりと頷き合う。
話の内容がまったくつかめずに、シアンは少し不安を感じ始めた。よくよく思えば、モーフがここに来ている理由すらも分からなかったのだ。
しばらくの沈黙ののち、ペシエラが衝撃の内容を口にする。
「わたくしの息子ライトの婚約者としてシアン・モスグリネ、ダイアの婚約者としてモーフ・モスグリネを指名致しますわ」
食事の席での婚約者発表だった。
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