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新章 青色の智姫
第238話 呼ばれた理由
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ガレンとケットシーに対して、たった一人で立ち向かわなければならなくなったシアン。
正直言ってまともに相手ができる気がしないシアンは、焦りの色がはっきりと浮かんでいた。
「ケットシー、頼んでおいたことはしてくれたかな?」
「まったく、人使いが荒いね。ボクの方が立場は上なんだから、少しは気を遣ってくれてもいいじゃないか」
「お前が気を遣うやつだったらな」
ケットシーが文句を言っていると、ガレンはきっぱりと正論でやり返していた。さすがは精霊王、若輩の幻獣など赤子の手をひねるようなものである。
「しょうがない。それじゃ出ておいで」
ガレンに言われてやむなくケットシーは誰かを呼び出している。
その声に反応して出てきたのは、なんとスミレだった。
「えっ、スミレ。なんでここにいるのですか」
「……ケットシーに拉致されました。まったく、幻獣の力があれば、ケットシーなんかに捕まらなかったのに」
「はっはっはっ、それは自業自得だよ、スミレくん。しっかり反省するんだね」
「くっ」
ケットシーに笑われて、スミレはとても悔しそうに眉間にしわを寄せている。
自分よりも若くて格下になるケットシーに捕まったことが、相当に屈辱だったようだ。
しかし、その状態をいつまでも放っておくわけにはいかない。
シアンはガレンへとしっかりと向き合う。
「ガレン先生。いえ、精霊王オリジン。なぜ、私たちをここに集めたのですか」
理由を直接問い質している。
シアンの質問に、ガレンはあごを触りながら少し顔をにやつかせている。
あまりにも苛立つので、シアンは思わず王女でなければ殴りかかりたいと思ってしまった。そのくらいに気分の悪い顔なのである。
「からかうのはこのくらいにして、本題に入ろうか」
ガレンは質問には答えず、シアンから少し離れるように、後ろを向いたまま少し歩く。
おもむろに振り向いたかと思うと、かなり真剣な表情をシアンへと向けていた。その表情は少し怒っているようにも見えた。
「君は、時渡りの秘法のことを他人に話したようだね」
シアンへと投げかけられた言葉は、先日のシアンの行動についてだった。
さすがは精霊王。よそで起きたできごともしっかり把握済みというわけらしい。
「ええ。本当は時渡りの秘法のことは黙っていようと思いましたけれど、もうなんだか黙っておけなくなりましてね」
シアンはガレンの質問にそのように返す。
本来シアンはアトランティス帝国のことなどだけを話すつもりだったのだが、年老いても頑張る兄の姿を見ていると黙っていられなくなってしまったのだという。過去に自分がしてしまった様々なことに対する罪滅ぼしが、急にしたくなってしまったというわけだ。
「そうか。それで、きちんと全部打ち明けてきたのかな?」
「はい。家を飛び出した理由についてもしっかりと」
シアンがしっかりと答えると、ガレンは黙り込んでしまった。
「はっはっはっ、シアンくんは正直なタイプだからね。なるほど、スミレくんとは相性がいいわけだ。スミレくんはどっちかいうと口が堅いからね」
ケットシーが笑っていると、スミレがギロリと睨みを利かせている。
だが、この程度で止まらないのがケットシーである。睨まれても笑っていた。
「クロノアが禁忌を冒してでも魂を守って転生させたからな。時渡りの秘法の呪縛からはとっくに解放されているというわけか。自分から暴露しても何の影響もないとはな」
ガレンはじっとシアンを見ている。
あまりにも凝視するものだから、シアンは思わず身を引いてしまう。
「うむ、確認はしてみたが、特に時渡りの秘法の影響はなさそうだな」
ガレンはそのように言うと、ようやくシアンから少し距離を取った。
「えっ、もしかしてガレン先生って、それを確認するためにわざわざ私を呼び出されたのですか?」
驚いた表情でガレンを見つめている。
「ああ、その通りだよ」
ガレンはあっけらかんとした表情で答える。
「それだけのために、こんな厳重な状態の中に呼び出されたのですか」
「当たり前だ。時渡りの秘法は禁訪中の禁法。そんなものを使ったという話が外部に出てみなさい。一体どのような騒ぎになるか……」
シアンの反応を見て、ガレンは額に手を当てている。
当事者がそんな認識でどうすると言っているような感じだった。
「まったく、マーリンだけではなくペシエラとチェリシアにも打ち明けたことで、ちょっと意識が緩んでいかないかね」
「うっ……。も、申し訳ございません」
呆れるガレンに、シアンは心から謝罪していた。
「なるほどですね。私たちがこうやって集められた理由がようやくわかりました。全員時渡りの秘法に直接かかわった人たちですものね」
「えっ?」
スミレが話した内容に、思わず目が点になってしまうシアンである。
発動させたシアンと、効果を発動させたスミレことクロノアならまだしも、ケットシーとガレンは一体どこでかかわったというのだろうか。
なんとも謎が謎を呼ぶ発言である。
どうやらシアンは、もうしばらくの間学園から帰れそうにないのであった。
正直言ってまともに相手ができる気がしないシアンは、焦りの色がはっきりと浮かんでいた。
「ケットシー、頼んでおいたことはしてくれたかな?」
「まったく、人使いが荒いね。ボクの方が立場は上なんだから、少しは気を遣ってくれてもいいじゃないか」
「お前が気を遣うやつだったらな」
ケットシーが文句を言っていると、ガレンはきっぱりと正論でやり返していた。さすがは精霊王、若輩の幻獣など赤子の手をひねるようなものである。
「しょうがない。それじゃ出ておいで」
ガレンに言われてやむなくケットシーは誰かを呼び出している。
その声に反応して出てきたのは、なんとスミレだった。
「えっ、スミレ。なんでここにいるのですか」
「……ケットシーに拉致されました。まったく、幻獣の力があれば、ケットシーなんかに捕まらなかったのに」
「はっはっはっ、それは自業自得だよ、スミレくん。しっかり反省するんだね」
「くっ」
ケットシーに笑われて、スミレはとても悔しそうに眉間にしわを寄せている。
自分よりも若くて格下になるケットシーに捕まったことが、相当に屈辱だったようだ。
しかし、その状態をいつまでも放っておくわけにはいかない。
シアンはガレンへとしっかりと向き合う。
「ガレン先生。いえ、精霊王オリジン。なぜ、私たちをここに集めたのですか」
理由を直接問い質している。
シアンの質問に、ガレンはあごを触りながら少し顔をにやつかせている。
あまりにも苛立つので、シアンは思わず王女でなければ殴りかかりたいと思ってしまった。そのくらいに気分の悪い顔なのである。
「からかうのはこのくらいにして、本題に入ろうか」
ガレンは質問には答えず、シアンから少し離れるように、後ろを向いたまま少し歩く。
おもむろに振り向いたかと思うと、かなり真剣な表情をシアンへと向けていた。その表情は少し怒っているようにも見えた。
「君は、時渡りの秘法のことを他人に話したようだね」
シアンへと投げかけられた言葉は、先日のシアンの行動についてだった。
さすがは精霊王。よそで起きたできごともしっかり把握済みというわけらしい。
「ええ。本当は時渡りの秘法のことは黙っていようと思いましたけれど、もうなんだか黙っておけなくなりましてね」
シアンはガレンの質問にそのように返す。
本来シアンはアトランティス帝国のことなどだけを話すつもりだったのだが、年老いても頑張る兄の姿を見ていると黙っていられなくなってしまったのだという。過去に自分がしてしまった様々なことに対する罪滅ぼしが、急にしたくなってしまったというわけだ。
「そうか。それで、きちんと全部打ち明けてきたのかな?」
「はい。家を飛び出した理由についてもしっかりと」
シアンがしっかりと答えると、ガレンは黙り込んでしまった。
「はっはっはっ、シアンくんは正直なタイプだからね。なるほど、スミレくんとは相性がいいわけだ。スミレくんはどっちかいうと口が堅いからね」
ケットシーが笑っていると、スミレがギロリと睨みを利かせている。
だが、この程度で止まらないのがケットシーである。睨まれても笑っていた。
「クロノアが禁忌を冒してでも魂を守って転生させたからな。時渡りの秘法の呪縛からはとっくに解放されているというわけか。自分から暴露しても何の影響もないとはな」
ガレンはじっとシアンを見ている。
あまりにも凝視するものだから、シアンは思わず身を引いてしまう。
「うむ、確認はしてみたが、特に時渡りの秘法の影響はなさそうだな」
ガレンはそのように言うと、ようやくシアンから少し距離を取った。
「えっ、もしかしてガレン先生って、それを確認するためにわざわざ私を呼び出されたのですか?」
驚いた表情でガレンを見つめている。
「ああ、その通りだよ」
ガレンはあっけらかんとした表情で答える。
「それだけのために、こんな厳重な状態の中に呼び出されたのですか」
「当たり前だ。時渡りの秘法は禁訪中の禁法。そんなものを使ったという話が外部に出てみなさい。一体どのような騒ぎになるか……」
シアンの反応を見て、ガレンは額に手を当てている。
当事者がそんな認識でどうすると言っているような感じだった。
「まったく、マーリンだけではなくペシエラとチェリシアにも打ち明けたことで、ちょっと意識が緩んでいかないかね」
「うっ……。も、申し訳ございません」
呆れるガレンに、シアンは心から謝罪していた。
「なるほどですね。私たちがこうやって集められた理由がようやくわかりました。全員時渡りの秘法に直接かかわった人たちですものね」
「えっ?」
スミレが話した内容に、思わず目が点になってしまうシアンである。
発動させたシアンと、効果を発動させたスミレことクロノアならまだしも、ケットシーとガレンは一体どこでかかわったというのだろうか。
なんとも謎が謎を呼ぶ発言である。
どうやらシアンは、もうしばらくの間学園から帰れそうにないのであった。
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