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新章 青色の智姫
第245話 あと二日
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自分の送別会まであと二日。
その日のシアンはというと……。
「ダメですね、集中力が足りていません。瞬間移動魔法というのはそれだけ高度な魔法なのです。初めて使う時はしっかりとイメージを確立させませんと、時空の狭間に捕らわれてしまいます」
「うう、思ったより難しいですね。これを平然と使ってられるペシエラ様やチェリシア様って一体……」
瞬間移動魔法を身につけようとして、シアンはスミレから特訓を受けていた。
自分でいきなり試すわけにはいかないので、木くずを使って練習している。
物質を別の地点に移すというイメージトレーニングをしっかりと身につけないと、スミレのいう通り、移動中に事故を起こして元に戻れなくなってしまうことがあるのだ。
そうなってしまうと、同じ魔法を使いこなせる人物に助けてもらわないと二度と現実に戻れなくなる。実にそれだけリスキーな魔法なのだ。
つまり、それをいきなり使いこなしていたあの二人は、本当に規格外だったというわけである。
スミレの特訓はかなり厳しい。さすがのシアンも苦戦を強いられてしまっている。
しかし、身につけるといった以上、途中で放り出すことはしたくない。
シアンはスミレの特訓にしっかりとついていっていた。
学園から戻った短い時間ではあったものの、シアンはすっかり疲れ切っていた。
「はっきりいって、甘く見ていました。たったこれだけの時間なのに、ここまで疲れてしまうだなんて……」
その場に座り込んでしまい、呼吸を荒くしながら反省を口にしていた。
「魔力の練り具合はかなり上達してきましたね。さすがはアクアマリン子爵の正統な後継者だっただけのことはあります」
「それはもう昔のことです。今の私は、モスグリネ王国の王女なのです」
息も絶え絶えではあるものの、きりっとした表情でしっかりとスミレに言い返している。
「そうでしたね」
シアンの言いっぷりに、スミレはつい不敵に笑ってしまう。
「では、汗を流しましたら、夕食のに備えて着替えましょう。シアン様がやる気でしたら、私は根気強く魔法の面倒を見て差し上げますから」
「分かりました。望むところですよ」
静かに提案するスミレに、シアンはきりっとした笑顔で答えていた。
シアンの決意にスミレも満足したように笑っていた。
夕食を終えて、シアンが部屋に戻ってくる。
しばらくくつろいでいると、なにやら部屋の外が騒がしくなる。
なんだろうと思って扉の方を見ていていると、扉が二回叩かれる。
「シアン、いるかしら」
ノックの音に続いて聞こえてきたのは、チェリシアの声だった。
「まったく、君もせっかちだね」
「当たり前でしょ。もう二日前よ、今日しなきゃいつやるのよ」
ついでにケットシーの声も聞こえてきた。
「はい、いますよ。入ってきて下さい」
聞こえてくるやり取りにくすくすと笑いながら、シアンは二人を部屋に招き入れる。
「ごめんね、こんな時間に来ちゃって」
「まったく、このボクまで引っ張ってくるとは、君は相変わらずだね」
話す内容なバラバラな二人だ。どうやら、直前まで別行動をしていたと思われる。
「大丈夫ですよ。もう講義も終わりましたし、少し遅くまで起きていても影響はありませんから」
シアンはひとまず手厚く二人をもてなす。
スミレが紅茶を淹れている間、シアンは二人を座らせて話を聞く。
「何の用でいらしたのでしょうか」
質問に対して、二人は顔を見合わせている。
一度頷いたかと思えば、再びシアンの顔をじっと見てきた。
「明後日、シアンは送別会でモスグリネに戻ることになるでしょ」
「だから、ボクたちがちょっとした贈り物を用意してきたというわけだよ」
チェリシアが立ち上がり、収納空間へと手を突っ込んでいる。
「今日はこれのために、わざわざ遠出してきたんだからね。まったく、持って行ってるかと思ったら実家にあるから驚いたわよ」
チェリシアの説明に、シアンがこてんと首を傾げている。何の話か分からないのだからしょうがない。
「一応ロゼリアには許可は取ったし、今のシアンなら体格がほぼ一緒だから大丈夫だと思うのよね」
ぶつぶつと言いながら、チェリシアが収納空間からなにやら大きなものを取り出してテーブルの脇に置く。
取り出されたものを見て、シアンはすぐさまそれが何か分かったようだ。
「それは、お母様のドレスですね」
「ザッツライト」
シアンが言い当てると、チェリシアはウィンクしながら答えていた。
「ドレスはドレスだけど、いつのドレスかも分かるわよね?」
シアンの転生のことも知っているチェリシアなので、こんなことを言えるのだ。
「もちろん分かりますよ。どれだけあの日のことが印象に残っていると思っているんですか」
当たり前ですよという表情を見せている。
そう、チェリシアが取り出してきたドレス、それは逆行後の学園の卒業式でロゼリアが着ていたドレスだった。
チェリシアはわざわざシアンがサンフレア学園を去る時に合わせて、母親の卒業式のドレスを探し出してきたのだった。
その日のシアンはというと……。
「ダメですね、集中力が足りていません。瞬間移動魔法というのはそれだけ高度な魔法なのです。初めて使う時はしっかりとイメージを確立させませんと、時空の狭間に捕らわれてしまいます」
「うう、思ったより難しいですね。これを平然と使ってられるペシエラ様やチェリシア様って一体……」
瞬間移動魔法を身につけようとして、シアンはスミレから特訓を受けていた。
自分でいきなり試すわけにはいかないので、木くずを使って練習している。
物質を別の地点に移すというイメージトレーニングをしっかりと身につけないと、スミレのいう通り、移動中に事故を起こして元に戻れなくなってしまうことがあるのだ。
そうなってしまうと、同じ魔法を使いこなせる人物に助けてもらわないと二度と現実に戻れなくなる。実にそれだけリスキーな魔法なのだ。
つまり、それをいきなり使いこなしていたあの二人は、本当に規格外だったというわけである。
スミレの特訓はかなり厳しい。さすがのシアンも苦戦を強いられてしまっている。
しかし、身につけるといった以上、途中で放り出すことはしたくない。
シアンはスミレの特訓にしっかりとついていっていた。
学園から戻った短い時間ではあったものの、シアンはすっかり疲れ切っていた。
「はっきりいって、甘く見ていました。たったこれだけの時間なのに、ここまで疲れてしまうだなんて……」
その場に座り込んでしまい、呼吸を荒くしながら反省を口にしていた。
「魔力の練り具合はかなり上達してきましたね。さすがはアクアマリン子爵の正統な後継者だっただけのことはあります」
「それはもう昔のことです。今の私は、モスグリネ王国の王女なのです」
息も絶え絶えではあるものの、きりっとした表情でしっかりとスミレに言い返している。
「そうでしたね」
シアンの言いっぷりに、スミレはつい不敵に笑ってしまう。
「では、汗を流しましたら、夕食のに備えて着替えましょう。シアン様がやる気でしたら、私は根気強く魔法の面倒を見て差し上げますから」
「分かりました。望むところですよ」
静かに提案するスミレに、シアンはきりっとした笑顔で答えていた。
シアンの決意にスミレも満足したように笑っていた。
夕食を終えて、シアンが部屋に戻ってくる。
しばらくくつろいでいると、なにやら部屋の外が騒がしくなる。
なんだろうと思って扉の方を見ていていると、扉が二回叩かれる。
「シアン、いるかしら」
ノックの音に続いて聞こえてきたのは、チェリシアの声だった。
「まったく、君もせっかちだね」
「当たり前でしょ。もう二日前よ、今日しなきゃいつやるのよ」
ついでにケットシーの声も聞こえてきた。
「はい、いますよ。入ってきて下さい」
聞こえてくるやり取りにくすくすと笑いながら、シアンは二人を部屋に招き入れる。
「ごめんね、こんな時間に来ちゃって」
「まったく、このボクまで引っ張ってくるとは、君は相変わらずだね」
話す内容なバラバラな二人だ。どうやら、直前まで別行動をしていたと思われる。
「大丈夫ですよ。もう講義も終わりましたし、少し遅くまで起きていても影響はありませんから」
シアンはひとまず手厚く二人をもてなす。
スミレが紅茶を淹れている間、シアンは二人を座らせて話を聞く。
「何の用でいらしたのでしょうか」
質問に対して、二人は顔を見合わせている。
一度頷いたかと思えば、再びシアンの顔をじっと見てきた。
「明後日、シアンは送別会でモスグリネに戻ることになるでしょ」
「だから、ボクたちがちょっとした贈り物を用意してきたというわけだよ」
チェリシアが立ち上がり、収納空間へと手を突っ込んでいる。
「今日はこれのために、わざわざ遠出してきたんだからね。まったく、持って行ってるかと思ったら実家にあるから驚いたわよ」
チェリシアの説明に、シアンがこてんと首を傾げている。何の話か分からないのだからしょうがない。
「一応ロゼリアには許可は取ったし、今のシアンなら体格がほぼ一緒だから大丈夫だと思うのよね」
ぶつぶつと言いながら、チェリシアが収納空間からなにやら大きなものを取り出してテーブルの脇に置く。
取り出されたものを見て、シアンはすぐさまそれが何か分かったようだ。
「それは、お母様のドレスですね」
「ザッツライト」
シアンが言い当てると、チェリシアはウィンクしながら答えていた。
「ドレスはドレスだけど、いつのドレスかも分かるわよね?」
シアンの転生のことも知っているチェリシアなので、こんなことを言えるのだ。
「もちろん分かりますよ。どれだけあの日のことが印象に残っていると思っているんですか」
当たり前ですよという表情を見せている。
そう、チェリシアが取り出してきたドレス、それは逆行後の学園の卒業式でロゼリアが着ていたドレスだった。
チェリシアはわざわざシアンがサンフレア学園を去る時に合わせて、母親の卒業式のドレスを探し出してきたのだった。
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