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新章 青色の智姫
第244話 あと数日
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残り少ないアイヴォリー王国での学生生活。
シアンは寒くなってきた学園で今日も勉学に勤しんでいる。
「シアン様、もう少しでお別れですね」
お昼休み、プルネがシアンに話し掛けている。
「そうですね。私はそもそもモスグリネの王女ですから、昔結んだ約束がなければ、アイヴォリー王国にやって来ることはありませんでしたよ」
にこりと微笑みながら、シアンはプルネに言葉を返している。
モスグリネからアイヴォリーへと留学生を出すのは、昔に王族同士が話し合って決めたことだ。
当時のモスグリネ王国の中は新興の国とあってか設備が不足しており、隣国であるアイヴォリーへと助力を求めたというのが発端なのだそうだ。
そして、なぜかそれは変更されることなく今まで続いている。そのおかげで、シアンはこうやって前世で通った学園で学ぶことができたというわけだ。
「そう、この制度があったからこそ、私はあなた方と出会えたんですよ」
シアンはにこりと微笑んでいる。
ただ、お昼のサンドイッチを手に持ちながらだったし、口にはパンくずがついているのでちょっとしまらなかった。
「……シアン様、嬉しいのですが、お口についておりますよ」
「えっ? あっ、本当ですね。うふふふ」
ブランチェスカの指摘で、口元のパンくずに気が付いたシアンは、笑ってごまかしていた。
「そういえば、シアン様はライト殿下の婚約者でしたね。ご結婚はなさるおつもりなのですか?」
「断る理由もありませんし、親同士が決めたことですからそのつもりですね。ブランチェスカ様は、嫌なのですか?」
シアンが質問に返すと、ブランチェスカは首を左右に激しく振っている。
「まさか、そんなわけがあるはずないじゃないですか。ライト殿下とシアン様が治められるアイヴォリー王国。ふふっ、とても楽しみでございますとも」
真面目な表情で返してきたかと思ったら、最後はこれでもかという笑顔を見せていた。
これにはシアンはもちろん、プルネもつい笑ってしまう。
「私のことはいいとして、お二人は将来的にどうなさるおつもりです?」
シアンはここで、プルネとブランチェスカの二人に問い返す。
二人はお互いの顔を見合うと、くすっと笑ってシアンの顔を見る。
「私たちは、シアン様お付きの侍女を目指すつもりです」
「もしそれがダメであっても、できる限りお近くで仕えさせて頂きたく考えております」
「二人とも……」
自分に仕えようという姿勢を見せているプルネとブランチェスカの姿勢に、シアンは思わず感動してしまう。
学園に入ってからの長い付き合いなだけに、ただ純粋に嬉しかったのだ。
だが、数日後には六年次生の卒業式と同時に、シアンの送別会も開かれることになっている。
泣いても笑っても、アイヴォリー王国のサンフレア学園所属の学生であるという肩書きはそこで終わりを迎える。
なまじ前世の記憶があるせいで、ただただ寂しさしか感じない。
だけど、できることなら笑ってモスグリネに帰ろう。心に強く誓うシアンなのであった。
その頃、自室で仕事をしていたペシエラのところを訪れる人物がいた。
「あら、お姉様。ちゃんと門から入ってこられましたかしら」
誰かと思えば、チェリシアだった。
「ご挨拶ね。いつも不法侵入しているみたいな言い方しないで欲しいわね」
ペシエラの出迎えの挨拶に、チェリシアは苦笑いを浮かべている。
反論じゃなくて笑っているのは、しょっちゅう瞬間移動魔法で直接部屋に来ているからだ。実績がある以上、反論ができるわけがないというわけだ。
「今日の用事はシアンのことかしら?」
「ご明察。もう三日後くらいでしょ。だから、サプライズを用意しておきたいと思ってね」
仕事をしながら対応してくるペシエラに、チェリシアは内容をぺらぺらと明かしている。
「だそうよ。どうせ、あなたも同じ考えで来たんでしょうけれどね、ケットシー」
「げっ」
ペシエラの言葉を聞いて、きょろきょろと部屋の中を見回すチェリシア。その一角には確かにケットシーの姿があった。
まったく、いつの間に部屋の中に入ってきたのだろうか。
「はっはっはっ、チェリシアくんがやってくるのに合わせて紛れてみたんだけど、君には無駄だったようだね。さすがペシエラくんだよ」
「ふざけている場合ですか。シアンのためのサプライズを考えているのなら、時間が惜しいですわ。さっさと話を始めて下さらないかしらね」
「せっかちだね、ペシエラくんは。そういうのだったら、手を止めてからいえばいいだろうに」
「仕事ですからね、後回しとは行きませんわよ」
忙しく手を動かしながらも、ペシエラは話に加わる気満々である。
「まったく、早めに用意しようと思っていましたのに。誰ですの、こんなに仕事を増やした人は!」
部屋の中にペシエラの怒りの声が響き渡っていた。これにはチェリシアとケットシーも苦笑いである。
シアンがモスグリネへと戻る日は着実と近付いている。
それぞれの思惑を胸に、その日へのカウントダウンは進んでいた。
シアンは寒くなってきた学園で今日も勉学に勤しんでいる。
「シアン様、もう少しでお別れですね」
お昼休み、プルネがシアンに話し掛けている。
「そうですね。私はそもそもモスグリネの王女ですから、昔結んだ約束がなければ、アイヴォリー王国にやって来ることはありませんでしたよ」
にこりと微笑みながら、シアンはプルネに言葉を返している。
モスグリネからアイヴォリーへと留学生を出すのは、昔に王族同士が話し合って決めたことだ。
当時のモスグリネ王国の中は新興の国とあってか設備が不足しており、隣国であるアイヴォリーへと助力を求めたというのが発端なのだそうだ。
そして、なぜかそれは変更されることなく今まで続いている。そのおかげで、シアンはこうやって前世で通った学園で学ぶことができたというわけだ。
「そう、この制度があったからこそ、私はあなた方と出会えたんですよ」
シアンはにこりと微笑んでいる。
ただ、お昼のサンドイッチを手に持ちながらだったし、口にはパンくずがついているのでちょっとしまらなかった。
「……シアン様、嬉しいのですが、お口についておりますよ」
「えっ? あっ、本当ですね。うふふふ」
ブランチェスカの指摘で、口元のパンくずに気が付いたシアンは、笑ってごまかしていた。
「そういえば、シアン様はライト殿下の婚約者でしたね。ご結婚はなさるおつもりなのですか?」
「断る理由もありませんし、親同士が決めたことですからそのつもりですね。ブランチェスカ様は、嫌なのですか?」
シアンが質問に返すと、ブランチェスカは首を左右に激しく振っている。
「まさか、そんなわけがあるはずないじゃないですか。ライト殿下とシアン様が治められるアイヴォリー王国。ふふっ、とても楽しみでございますとも」
真面目な表情で返してきたかと思ったら、最後はこれでもかという笑顔を見せていた。
これにはシアンはもちろん、プルネもつい笑ってしまう。
「私のことはいいとして、お二人は将来的にどうなさるおつもりです?」
シアンはここで、プルネとブランチェスカの二人に問い返す。
二人はお互いの顔を見合うと、くすっと笑ってシアンの顔を見る。
「私たちは、シアン様お付きの侍女を目指すつもりです」
「もしそれがダメであっても、できる限りお近くで仕えさせて頂きたく考えております」
「二人とも……」
自分に仕えようという姿勢を見せているプルネとブランチェスカの姿勢に、シアンは思わず感動してしまう。
学園に入ってからの長い付き合いなだけに、ただ純粋に嬉しかったのだ。
だが、数日後には六年次生の卒業式と同時に、シアンの送別会も開かれることになっている。
泣いても笑っても、アイヴォリー王国のサンフレア学園所属の学生であるという肩書きはそこで終わりを迎える。
なまじ前世の記憶があるせいで、ただただ寂しさしか感じない。
だけど、できることなら笑ってモスグリネに帰ろう。心に強く誓うシアンなのであった。
その頃、自室で仕事をしていたペシエラのところを訪れる人物がいた。
「あら、お姉様。ちゃんと門から入ってこられましたかしら」
誰かと思えば、チェリシアだった。
「ご挨拶ね。いつも不法侵入しているみたいな言い方しないで欲しいわね」
ペシエラの出迎えの挨拶に、チェリシアは苦笑いを浮かべている。
反論じゃなくて笑っているのは、しょっちゅう瞬間移動魔法で直接部屋に来ているからだ。実績がある以上、反論ができるわけがないというわけだ。
「今日の用事はシアンのことかしら?」
「ご明察。もう三日後くらいでしょ。だから、サプライズを用意しておきたいと思ってね」
仕事をしながら対応してくるペシエラに、チェリシアは内容をぺらぺらと明かしている。
「だそうよ。どうせ、あなたも同じ考えで来たんでしょうけれどね、ケットシー」
「げっ」
ペシエラの言葉を聞いて、きょろきょろと部屋の中を見回すチェリシア。その一角には確かにケットシーの姿があった。
まったく、いつの間に部屋の中に入ってきたのだろうか。
「はっはっはっ、チェリシアくんがやってくるのに合わせて紛れてみたんだけど、君には無駄だったようだね。さすがペシエラくんだよ」
「ふざけている場合ですか。シアンのためのサプライズを考えているのなら、時間が惜しいですわ。さっさと話を始めて下さらないかしらね」
「せっかちだね、ペシエラくんは。そういうのだったら、手を止めてからいえばいいだろうに」
「仕事ですからね、後回しとは行きませんわよ」
忙しく手を動かしながらも、ペシエラは話に加わる気満々である。
「まったく、早めに用意しようと思っていましたのに。誰ですの、こんなに仕事を増やした人は!」
部屋の中にペシエラの怒りの声が響き渡っていた。これにはチェリシアとケットシーも苦笑いである。
シアンがモスグリネへと戻る日は着実と近付いている。
それぞれの思惑を胸に、その日へのカウントダウンは進んでいた。
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