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新章 青色の智姫
第247話 送別パーティー
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シアンのための送別パーティーの会場には、多くの貴族たちが集まっている。
その中にはプルネやフューシャたちコーラル家の面々やマーリンの姿もあった。
「おや、マーリン殿、このような席に珍しいですね。すっかり表舞台から引退して隠居されていると伺ったのですが」
マーリンに話し掛けているのは、ロゼリアの父親である前マゼンダ侯爵ヴァミリオ・マゼンダだった。
「そういうあなたこそ隠居なされたのでは?」
「何を言いますか。孫娘の姿を見に来て何が悪いというものでしょうかな」
「そういえばそうでしたな。これは失礼しました」
「なあに、この程度で怒るほど私はまだ短気にはなっておらぬよ。気にせんでくれ」
実に和やかな雰囲気で語り合う二人である。
この二人が語り合うのには理由がある。それはマゼンダ商会が取り扱う商品のひとつであるジャムである。
マゼンダ領で採れる果物と、アクアマリン領で採れる砂糖を使って作られるからだ。つまり、シアンの前世のことがなくても、双方の間には強いつながりがあるのである。
ちなみに、今回のパーティーの料理にも食材を提供していて、こういう場面では何かと活躍する両家なのである。
「それにしても、前三年間の留学ということで、我が娘が嫁いでいってからもうそんなに時が経ったのかと感慨深くなりますな」
「その気持ち、非常によく分かりますとも」
二人が話をしていると、楽団の演奏する音楽が変わる。
「おっ、この音楽は」
「いよいよ孫娘が出てくるのですな。節目のその姿、しかとその目に焼き付けねばなりませんな」
「ふふっ、ヴァミリオ殿もすっかりお爺ちゃんですな」
「ははは、そうですな」
少し笑い合った二人だったが、まもなく王族たちが登場するとあって、すぐに黙り込んだのだった。
楽団の演奏する厳かな曲とともに、いよいよ会場に王族たちが登場する。
シルヴァノとペシエラ、それとダイアの三人が先に登場する。続けてペイルとロゼリアが姿を見せる。
「おや、ライト殿下とシアン王女がおらぬな」
ロゼリアの姿に少しうるっときているヴァミリオの隣で、マーリンはつい呟いてしまう。
「当たり前じゃないか。本日の主役とその婚約者なのだからな」
すぐさまヴァミリオが指摘している。その顔は「もう呆けたのか」といっているようだった。
「そういえばそうだったな。やれやれ、ちょっと気がせいてしまったようだな」
さすがにマーリンもすぐに反省しているようだった。
短く話を終えた二人は、再び王族たちへと視線を向けた。
ペシエラたちから少し遅れること、いよいよシアンが姿を見せる。隣にはライトの姿があり、彼にエスコートされての登場のようだ。
その時のシアンの姿を見たヴァミリオはその装いを見て、思わず驚いてしまう。
それもそうだ。
登場したシアンが着ているドレスは、ロゼリアが卒業パーティーの際に着ていたドレスだったからだ。その場には、ヴァミリオも父親として参加していたので記憶に残っている。
髪形なども、当時のマゼンダのしていたものにかなり寄せてある。
あまりの衝撃に、ヴァミリオは思わず立ち尽くしてしまう。
「どうした、ヴァミリオ殿」
「ああ、あの時のロゼリアのドレスだ」
マーリンが様子のおかしいヴァミリオに声をかけるが、ヴァミリオはどういうわけか呼び掛けに反応しなかった。
「ふふ、お義父様、お気に召して頂けましたでしょうか」
「お前な、相変わらずサプライズが過ぎるんだ」
カーマイルとその妻チェリシアが姿を現す。
「これはカーマイル殿、チェリシア殿、お久しぶりでございますな」
「マーリン様、そう畏まらないで下さい。とりあえず今は詳しいお話は後です。これから陛下からのお言葉がありますし、好き勝手しているとペシエラに睨まれてしまいますからね」
チェリシアはこんなことを言っているが、すでにペシエラからじっと視線を向けられている。
(はいはい、そんなに見ないでよ。シルヴァノ陛下のお話は邪魔しませんよ)
ペシエラに対して、にへらと笑って返すチェリシアである。
無事に王族からの話が終わると、最後にシアンとライトがダンスを披露して終わりとなる。
王族の集まる場所の目の前のスペースは大きく空けられ、シアンとライトが壇上から降りてくる。
楽団が曲を演奏し始めると、二人のダンスが始まった。
さすが、最近は交流を深めていたこともあってか、ダンスの息がぴったりと合っている。
笑顔も絶えないそのダンスに、会場に集まった貴族たちはすっかり魅了されてしまっていた。
今、会場中の視線を独占している二人だが、それをまったく気にすることがないくらい二人はダンスに集中している。
将来の伴侶としてお互いを確かめ合うかのように。
ダンスを終えた二人に対して、会場中から惜しみのない盛大な拍手が送られる。
その拍手に答えるように、二人はそれぞれしっかりと頭を下げて挨拶をしている。
こうして、国中から祝福される中、シアンのアイヴォリーでの最後の夜を迎えたのだった。
その中にはプルネやフューシャたちコーラル家の面々やマーリンの姿もあった。
「おや、マーリン殿、このような席に珍しいですね。すっかり表舞台から引退して隠居されていると伺ったのですが」
マーリンに話し掛けているのは、ロゼリアの父親である前マゼンダ侯爵ヴァミリオ・マゼンダだった。
「そういうあなたこそ隠居なされたのでは?」
「何を言いますか。孫娘の姿を見に来て何が悪いというものでしょうかな」
「そういえばそうでしたな。これは失礼しました」
「なあに、この程度で怒るほど私はまだ短気にはなっておらぬよ。気にせんでくれ」
実に和やかな雰囲気で語り合う二人である。
この二人が語り合うのには理由がある。それはマゼンダ商会が取り扱う商品のひとつであるジャムである。
マゼンダ領で採れる果物と、アクアマリン領で採れる砂糖を使って作られるからだ。つまり、シアンの前世のことがなくても、双方の間には強いつながりがあるのである。
ちなみに、今回のパーティーの料理にも食材を提供していて、こういう場面では何かと活躍する両家なのである。
「それにしても、前三年間の留学ということで、我が娘が嫁いでいってからもうそんなに時が経ったのかと感慨深くなりますな」
「その気持ち、非常によく分かりますとも」
二人が話をしていると、楽団の演奏する音楽が変わる。
「おっ、この音楽は」
「いよいよ孫娘が出てくるのですな。節目のその姿、しかとその目に焼き付けねばなりませんな」
「ふふっ、ヴァミリオ殿もすっかりお爺ちゃんですな」
「ははは、そうですな」
少し笑い合った二人だったが、まもなく王族たちが登場するとあって、すぐに黙り込んだのだった。
楽団の演奏する厳かな曲とともに、いよいよ会場に王族たちが登場する。
シルヴァノとペシエラ、それとダイアの三人が先に登場する。続けてペイルとロゼリアが姿を見せる。
「おや、ライト殿下とシアン王女がおらぬな」
ロゼリアの姿に少しうるっときているヴァミリオの隣で、マーリンはつい呟いてしまう。
「当たり前じゃないか。本日の主役とその婚約者なのだからな」
すぐさまヴァミリオが指摘している。その顔は「もう呆けたのか」といっているようだった。
「そういえばそうだったな。やれやれ、ちょっと気がせいてしまったようだな」
さすがにマーリンもすぐに反省しているようだった。
短く話を終えた二人は、再び王族たちへと視線を向けた。
ペシエラたちから少し遅れること、いよいよシアンが姿を見せる。隣にはライトの姿があり、彼にエスコートされての登場のようだ。
その時のシアンの姿を見たヴァミリオはその装いを見て、思わず驚いてしまう。
それもそうだ。
登場したシアンが着ているドレスは、ロゼリアが卒業パーティーの際に着ていたドレスだったからだ。その場には、ヴァミリオも父親として参加していたので記憶に残っている。
髪形なども、当時のマゼンダのしていたものにかなり寄せてある。
あまりの衝撃に、ヴァミリオは思わず立ち尽くしてしまう。
「どうした、ヴァミリオ殿」
「ああ、あの時のロゼリアのドレスだ」
マーリンが様子のおかしいヴァミリオに声をかけるが、ヴァミリオはどういうわけか呼び掛けに反応しなかった。
「ふふ、お義父様、お気に召して頂けましたでしょうか」
「お前な、相変わらずサプライズが過ぎるんだ」
カーマイルとその妻チェリシアが姿を現す。
「これはカーマイル殿、チェリシア殿、お久しぶりでございますな」
「マーリン様、そう畏まらないで下さい。とりあえず今は詳しいお話は後です。これから陛下からのお言葉がありますし、好き勝手しているとペシエラに睨まれてしまいますからね」
チェリシアはこんなことを言っているが、すでにペシエラからじっと視線を向けられている。
(はいはい、そんなに見ないでよ。シルヴァノ陛下のお話は邪魔しませんよ)
ペシエラに対して、にへらと笑って返すチェリシアである。
無事に王族からの話が終わると、最後にシアンとライトがダンスを披露して終わりとなる。
王族の集まる場所の目の前のスペースは大きく空けられ、シアンとライトが壇上から降りてくる。
楽団が曲を演奏し始めると、二人のダンスが始まった。
さすが、最近は交流を深めていたこともあってか、ダンスの息がぴったりと合っている。
笑顔も絶えないそのダンスに、会場に集まった貴族たちはすっかり魅了されてしまっていた。
今、会場中の視線を独占している二人だが、それをまったく気にすることがないくらい二人はダンスに集中している。
将来の伴侶としてお互いを確かめ合うかのように。
ダンスを終えた二人に対して、会場中から惜しみのない盛大な拍手が送られる。
その拍手に答えるように、二人はそれぞれしっかりと頭を下げて挨拶をしている。
こうして、国中から祝福される中、シアンのアイヴォリーでの最後の夜を迎えたのだった。
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