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新章 青色の智姫
第281話 トパゼリアに到着
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「おお、よく来たな、シアンよ」
「ご無沙汰しております、女王陛下」
懸念していた襲撃もなく、無事にトパゼリアの王都に到着したシアンたちは、早速ティールたちに出会えていた。
セージとセラドンの二人はまだ王都にいて、一緒になってシアンたちを出迎えていた。
「久しぶりだな」
「セージ殿下、セラドン殿下。確かアイヴォリー王国に留学なさるはずなのでは?」
シアンはびっくりして二人に状況の確認をしている。
「ちょうど準備をしているところですよ。ただ、両国間の感情はそうよろしくないので、準備が入念になってしまいましてね」
「年末祭の頃には到着できるようにはしているが、いかんせん初めてのことだらけでな」
「なるほど、分かります」
事情を聞いたシアンは、つい笑顔を浮かべてしまっていた。
「初めてでございますね、トパゼリアの女王。私はモスグリネ王国、王妃であるロゼリアと申します」
「おお、シアンの母君か。なるほど、どことなく似ておるな」
「そうでしょうか」
お互いにくすりと笑い合うロゼリアとティールである。
「それと、そちらの少女も初めて見るな。名はなんと申す」
「ヒスイ・ネフライトと申します。お初にお目にかかります、女王陛下」
きっちりと淑女の挨拶を決めるヒスイである。その姿に、ティールも満足そうだった。
「そうか。妾がトパゼリア女王、ティール・トパゼリアである。新興国ゆえ、なにかと不備があるやもしれんが、できる限りもてなさせてもらおう。なにぶん、他国の王族を迎え入れるなど初めてなのでな」
なんとも驚くべきことを言い放つティールである。
「そうだ。デーモンハートがあちこちにあるから、あとで伝える場所以外には出歩かないでほしい。妾たちでなければ、気が触れかねん代物だからな」
「よくそんなに集めましたね……」
「仕方あるまい。妾たちの一族の力の源なのだからな。ちなみに今の妾も平気で触れる。浄化されたとはいえ、この胸の宝石はデーモンハート。それゆえに平気なのかもしれぬな」
ティールは胸元に輝く宝石に触れながら、柔らかい笑みを浮かべていた。
「セージ、セラドン、お前たちは部屋に戻れ。元々挨拶だけの予定だったしな」
「しかし、母上」
「準備があるであろう? そもそも、シアンたちの案内は妾がすることになっておる。さっさと戻るのだ」
「……承知致しました」
セージとセラドンは、渋々ティールに言われた通り、留学のための準備を始めていた。
セラドンの方がひとつ下ではあるが、いろいろあって同時期にさせた方がいいだろうということで、一緒にアイヴォリー王国に向かうことになったらしい。
ティールの息子たちと別れたシアンたちは、ティールに案内されて客間へとやって来る。
「初めてゆえに分からぬが、ひとまず一番広いいい部屋を用意させてもらった。気に入ってもらえるといいのだがな」
「お気遣いありがとうございます。他国ゆえに一緒の方がこの子たちも安心するでしょうから、それでよかったと思います」
ティールの言葉に、ロゼリアはそのように返しておいた。これにはティールはひと安心といった様子である。
部屋に通されたシアンたちは、その部屋の中を見て驚いていた。
自分たちだって王族なのでいい部屋に住んではいるのだが、ティールの用意した部屋は想像以上にいい部屋だったのだ。
「すまないな。妾と同等のものを集めさせたのだが、そのせいで統一感がなくてな。見苦しい部屋で申し訳ないが、我慢してもらいたい」
「いや……、私には十分です」
こういうのはヒスイだった。
それというのも、ヒスイの目にあるものが留まったからだ。
「これ、魔導書ですよね。いいんですか、こんな部屋に堂々と置いてしまって」
「いや、構わんと思ったよ。そちらのでっかい猫がいたであろう? そやつから『魔導書は喜ばれる』というアドバイスをもらったのでな。ただ、トパゼリアの書物にはデーモンハートに関する書物が多いゆえに、慎重にならざるを得なかったがな」
「デーモンハートに関する書物もあるのですか?」
シアンが食いついていた。
「うむ。妾が胸に埋め込んでいるのもその研究の成果のひとつだ。ただ、性格が酷く歪むという結果は、身をもって体験しておる。あまりお勧めはできんぞ?」
ティールは機密になりそうなこともぺらぺらと話している。相手がシアンだからこそ、信用しているというわけなのだ。
「魔法一門の者として、とても気になります。滞在中に読ませて頂くことはできますか?」
「無論、構わぬぞ。分からぬことの多い石だからな、扱いにだけは気を付けておくれ」
「もちろんですとも! くうう、ついて来てよかったです」
ヒスイの雰囲気が、なんだかいつもと違う。ずいぶんと浮かれてしまっているように見えるのは気のせいだろうか。
部屋に案内してもらったシアンたちは、やることがあるというティールと別れて部屋の中でくつろぎ始める。
初めてやって来たトパゼリア。今のところは何も起きずに実に平和なものだ。
しかし、デーモンハートを扱っている国である以上、油断というものはできない。
どのような国か見極めるために、シアンたちのトパゼリア視察はひとまず和やかに始まったのだった。
「ご無沙汰しております、女王陛下」
懸念していた襲撃もなく、無事にトパゼリアの王都に到着したシアンたちは、早速ティールたちに出会えていた。
セージとセラドンの二人はまだ王都にいて、一緒になってシアンたちを出迎えていた。
「久しぶりだな」
「セージ殿下、セラドン殿下。確かアイヴォリー王国に留学なさるはずなのでは?」
シアンはびっくりして二人に状況の確認をしている。
「ちょうど準備をしているところですよ。ただ、両国間の感情はそうよろしくないので、準備が入念になってしまいましてね」
「年末祭の頃には到着できるようにはしているが、いかんせん初めてのことだらけでな」
「なるほど、分かります」
事情を聞いたシアンは、つい笑顔を浮かべてしまっていた。
「初めてでございますね、トパゼリアの女王。私はモスグリネ王国、王妃であるロゼリアと申します」
「おお、シアンの母君か。なるほど、どことなく似ておるな」
「そうでしょうか」
お互いにくすりと笑い合うロゼリアとティールである。
「それと、そちらの少女も初めて見るな。名はなんと申す」
「ヒスイ・ネフライトと申します。お初にお目にかかります、女王陛下」
きっちりと淑女の挨拶を決めるヒスイである。その姿に、ティールも満足そうだった。
「そうか。妾がトパゼリア女王、ティール・トパゼリアである。新興国ゆえ、なにかと不備があるやもしれんが、できる限りもてなさせてもらおう。なにぶん、他国の王族を迎え入れるなど初めてなのでな」
なんとも驚くべきことを言い放つティールである。
「そうだ。デーモンハートがあちこちにあるから、あとで伝える場所以外には出歩かないでほしい。妾たちでなければ、気が触れかねん代物だからな」
「よくそんなに集めましたね……」
「仕方あるまい。妾たちの一族の力の源なのだからな。ちなみに今の妾も平気で触れる。浄化されたとはいえ、この胸の宝石はデーモンハート。それゆえに平気なのかもしれぬな」
ティールは胸元に輝く宝石に触れながら、柔らかい笑みを浮かべていた。
「セージ、セラドン、お前たちは部屋に戻れ。元々挨拶だけの予定だったしな」
「しかし、母上」
「準備があるであろう? そもそも、シアンたちの案内は妾がすることになっておる。さっさと戻るのだ」
「……承知致しました」
セージとセラドンは、渋々ティールに言われた通り、留学のための準備を始めていた。
セラドンの方がひとつ下ではあるが、いろいろあって同時期にさせた方がいいだろうということで、一緒にアイヴォリー王国に向かうことになったらしい。
ティールの息子たちと別れたシアンたちは、ティールに案内されて客間へとやって来る。
「初めてゆえに分からぬが、ひとまず一番広いいい部屋を用意させてもらった。気に入ってもらえるといいのだがな」
「お気遣いありがとうございます。他国ゆえに一緒の方がこの子たちも安心するでしょうから、それでよかったと思います」
ティールの言葉に、ロゼリアはそのように返しておいた。これにはティールはひと安心といった様子である。
部屋に通されたシアンたちは、その部屋の中を見て驚いていた。
自分たちだって王族なのでいい部屋に住んではいるのだが、ティールの用意した部屋は想像以上にいい部屋だったのだ。
「すまないな。妾と同等のものを集めさせたのだが、そのせいで統一感がなくてな。見苦しい部屋で申し訳ないが、我慢してもらいたい」
「いや……、私には十分です」
こういうのはヒスイだった。
それというのも、ヒスイの目にあるものが留まったからだ。
「これ、魔導書ですよね。いいんですか、こんな部屋に堂々と置いてしまって」
「いや、構わんと思ったよ。そちらのでっかい猫がいたであろう? そやつから『魔導書は喜ばれる』というアドバイスをもらったのでな。ただ、トパゼリアの書物にはデーモンハートに関する書物が多いゆえに、慎重にならざるを得なかったがな」
「デーモンハートに関する書物もあるのですか?」
シアンが食いついていた。
「うむ。妾が胸に埋め込んでいるのもその研究の成果のひとつだ。ただ、性格が酷く歪むという結果は、身をもって体験しておる。あまりお勧めはできんぞ?」
ティールは機密になりそうなこともぺらぺらと話している。相手がシアンだからこそ、信用しているというわけなのだ。
「魔法一門の者として、とても気になります。滞在中に読ませて頂くことはできますか?」
「無論、構わぬぞ。分からぬことの多い石だからな、扱いにだけは気を付けておくれ」
「もちろんですとも! くうう、ついて来てよかったです」
ヒスイの雰囲気が、なんだかいつもと違う。ずいぶんと浮かれてしまっているように見えるのは気のせいだろうか。
部屋に案内してもらったシアンたちは、やることがあるというティールと別れて部屋の中でくつろぎ始める。
初めてやって来たトパゼリア。今のところは何も起きずに実に平和なものだ。
しかし、デーモンハートを扱っている国である以上、油断というものはできない。
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