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新章 青色の智姫
第282話 トパゼリアの秘密
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トパゼリアという国は、別の世界から飛ばされてきた転移人の子孫たちによって建国された国だ。
その転移人たちはかつてアトランティス帝国という国を築いていたが、元の世界に戻るために研究を行っているさなかに起きた不幸な事故により、デーモンハートという瘴気が結晶化した物質によって精神が汚染されてしまった。
それは長い年月をかけて少しずつ浄化されてはいたが、その多くはかつてのアトランティス帝国のあった土地へ強い執着を抱き続けている。
トパゼリアの国民たちが抱いているその執着も、女王として立ったティールが現地を訪れたことで少しずつ薄まりつつあった。
「街を見てきた感じでは、意外と落ち着いているようでしたね」
「あれでも、だいぶまともになったというものだぞ。アイヴォリーの者へは敵愾心むき出しだったからな。モスグリネとは取引をするものの、アイヴォリーとは取引したことはなかった。ロゼリアもシアンも、最近まで知らなかったであろう?」
「そ、それは確かに……」
ティールの言い分に頷いてしまう。
実際、二人がトパゼリアのことを知ったのは数年前だ。
「アイヴォリー王国の中で散々学園で騒ぎを起こしてきたのも妾たちだ。謝罪をしてもし足りぬというのは重々承知している。ゆえに、みなの寛大な心には感謝をしておる」
「ではやはり、私が学生だった頃の、二十年ほど昔の事件の数々も……」
「うむ。パープリアの連中の独断も多いが、力を貸したのは事実だ。奴らが持っていたデーモンハートや宝珠の類は、このトパゼリア地域の産物なのだからな」
「……そうなのですね」
ティールは悪びれた様子もなく過去の話をしている。
パープリア男爵と仲間の起こした事件として処理されていた一連の事件。裏ではトパゼリアが糸を引いていたというのだ。
正直、当事者として、ロゼリアもシアンも許せたものではない。逆行前の件もあるのでなおさらだ。
このなんとも言えない雰囲気に、一人事情の分からないヒスイは困惑をしている。
「そうだ。宝珠の作り方を見ていかぬか? あれ自体は別に良くも悪くもないものだ。デーモンハートを作用させたことで、あのような効果を持っただけなのだからな」
「それはどういう?」
「魔石にも魔法を込められるであろう? 宝珠はその魔石の純度を高めたものだ。魔石の純度が上がれば、純粋な魔力の結晶に近付く。先祖はそれを使ってはるか遠くの地への帰還を夢見たようなのだ。その際にデーモンハートを魔石と間違えて使ってしまったがゆえに、魔力爆発という帝国を一瞬で消滅させるほどの事故が起こってしまったのだよ。あれは本当に不幸な事故だったと、過去の記録には記してあった」
ティールからはいろいろと新しい事実が語られている。
故郷への強い想いが、不幸な事故を生み続けてきたのだ。その根本を知ると、ロゼリアもシアンも何も言えなくなってしまう。
「まあ、そう口をつぐむでない。長年の償いは、妾たちの持つ技術の提供で少しずつ償うとしようではないか。チェリシアといったか、妾たちの祖先と同じで別の世界から来たらしいな。あの者の発想力と、今の妾たちの技術をもってすれば、思わぬものが作れるやもしれぬ」
「チェリシアはまあ、喜ぶでしょうけれど……」
「時折暴走しますから、過去の二の舞になりかねなくて怖いですね……」
ティールの提案は魅力的ではあるものの、チェリシアの性格に難があると分かっているので、素直に喜べないロゼリアとシアンである。
「ほ、宝珠には興味があります。見せて頂けませんか?」
話に加われなかったヒスイが、頑張って声を出す。魔法一門として、魔石の上位の存在である宝珠に強い興味を示したのだ。
「うむ、いいぞ。では、すぐにでも案内しようではないか」
ティールは嬉しそうににっこりと微笑んでいる。
すぐさま、シアンたちを連れて城の地下へと移動していく。
「こんなところにあるのですか?」
「そうだ。宝珠の作製技術は妾たちアトランティス帝国の技術者たちの努力の結晶。簡単には外に出せたものではないからな。そなたたちは特別ぞ」
城の地下から長く続く廊下を進み、扉に突き当たる。
「この先が宝珠の製造場所だ。真上はトパゼリアの商業組合になっておる。ケットシーとかいうやかましい猫も上におるはずだ」
「そういえば、商業取引の交渉に来たとか言ってましたね、ケットシーは」
「目ざといあやつのことだ。今回はおそらく忍び込んでおろうな、くっくっくっ」
ティールはなぜか笑っている。親しい間柄でもなかろうに、なぜかそんな気がして仕方ないようなのである。
扉に向けて、ティールは自分の胸のデーモンハートを近付ける。次の瞬間、扉が開いて中に入れるようになった。
「では、案内する。デーモンハートも保管してあって危険ゆえ、妾から離れるではないぞ」
「分かりました」
「は、はいっ!」
さすがに純度の高いデーモンハートは危険すぎる。
それでなくても近付くだけで気分が悪くなるというものだ。
ティールについていくことしばらく、シアンたちはついに宝珠を作るという工房にたどり着いたのだった。
その転移人たちはかつてアトランティス帝国という国を築いていたが、元の世界に戻るために研究を行っているさなかに起きた不幸な事故により、デーモンハートという瘴気が結晶化した物質によって精神が汚染されてしまった。
それは長い年月をかけて少しずつ浄化されてはいたが、その多くはかつてのアトランティス帝国のあった土地へ強い執着を抱き続けている。
トパゼリアの国民たちが抱いているその執着も、女王として立ったティールが現地を訪れたことで少しずつ薄まりつつあった。
「街を見てきた感じでは、意外と落ち着いているようでしたね」
「あれでも、だいぶまともになったというものだぞ。アイヴォリーの者へは敵愾心むき出しだったからな。モスグリネとは取引をするものの、アイヴォリーとは取引したことはなかった。ロゼリアもシアンも、最近まで知らなかったであろう?」
「そ、それは確かに……」
ティールの言い分に頷いてしまう。
実際、二人がトパゼリアのことを知ったのは数年前だ。
「アイヴォリー王国の中で散々学園で騒ぎを起こしてきたのも妾たちだ。謝罪をしてもし足りぬというのは重々承知している。ゆえに、みなの寛大な心には感謝をしておる」
「ではやはり、私が学生だった頃の、二十年ほど昔の事件の数々も……」
「うむ。パープリアの連中の独断も多いが、力を貸したのは事実だ。奴らが持っていたデーモンハートや宝珠の類は、このトパゼリア地域の産物なのだからな」
「……そうなのですね」
ティールは悪びれた様子もなく過去の話をしている。
パープリア男爵と仲間の起こした事件として処理されていた一連の事件。裏ではトパゼリアが糸を引いていたというのだ。
正直、当事者として、ロゼリアもシアンも許せたものではない。逆行前の件もあるのでなおさらだ。
このなんとも言えない雰囲気に、一人事情の分からないヒスイは困惑をしている。
「そうだ。宝珠の作り方を見ていかぬか? あれ自体は別に良くも悪くもないものだ。デーモンハートを作用させたことで、あのような効果を持っただけなのだからな」
「それはどういう?」
「魔石にも魔法を込められるであろう? 宝珠はその魔石の純度を高めたものだ。魔石の純度が上がれば、純粋な魔力の結晶に近付く。先祖はそれを使ってはるか遠くの地への帰還を夢見たようなのだ。その際にデーモンハートを魔石と間違えて使ってしまったがゆえに、魔力爆発という帝国を一瞬で消滅させるほどの事故が起こってしまったのだよ。あれは本当に不幸な事故だったと、過去の記録には記してあった」
ティールからはいろいろと新しい事実が語られている。
故郷への強い想いが、不幸な事故を生み続けてきたのだ。その根本を知ると、ロゼリアもシアンも何も言えなくなってしまう。
「まあ、そう口をつぐむでない。長年の償いは、妾たちの持つ技術の提供で少しずつ償うとしようではないか。チェリシアといったか、妾たちの祖先と同じで別の世界から来たらしいな。あの者の発想力と、今の妾たちの技術をもってすれば、思わぬものが作れるやもしれぬ」
「チェリシアはまあ、喜ぶでしょうけれど……」
「時折暴走しますから、過去の二の舞になりかねなくて怖いですね……」
ティールの提案は魅力的ではあるものの、チェリシアの性格に難があると分かっているので、素直に喜べないロゼリアとシアンである。
「ほ、宝珠には興味があります。見せて頂けませんか?」
話に加われなかったヒスイが、頑張って声を出す。魔法一門として、魔石の上位の存在である宝珠に強い興味を示したのだ。
「うむ、いいぞ。では、すぐにでも案内しようではないか」
ティールは嬉しそうににっこりと微笑んでいる。
すぐさま、シアンたちを連れて城の地下へと移動していく。
「こんなところにあるのですか?」
「そうだ。宝珠の作製技術は妾たちアトランティス帝国の技術者たちの努力の結晶。簡単には外に出せたものではないからな。そなたたちは特別ぞ」
城の地下から長く続く廊下を進み、扉に突き当たる。
「この先が宝珠の製造場所だ。真上はトパゼリアの商業組合になっておる。ケットシーとかいうやかましい猫も上におるはずだ」
「そういえば、商業取引の交渉に来たとか言ってましたね、ケットシーは」
「目ざといあやつのことだ。今回はおそらく忍び込んでおろうな、くっくっくっ」
ティールはなぜか笑っている。親しい間柄でもなかろうに、なぜかそんな気がして仕方ないようなのである。
扉に向けて、ティールは自分の胸のデーモンハートを近付ける。次の瞬間、扉が開いて中に入れるようになった。
「では、案内する。デーモンハートも保管してあって危険ゆえ、妾から離れるではないぞ」
「分かりました」
「は、はいっ!」
さすがに純度の高いデーモンハートは危険すぎる。
それでなくても近付くだけで気分が悪くなるというものだ。
ティールについていくことしばらく、シアンたちはついに宝珠を作るという工房にたどり着いたのだった。
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