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新章 青色の智姫
第302話 魔力測定器
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それから二日後のことだった。
「よし、できたわ」
チェリシアが満足そうに微笑んでいる。
「何ができたのよ、チェリシア」
眠そうに目をこすりながら、チェリシアに問いかけているのはロゼリアである。どうやら、完成したことが嬉しくてロゼリアの私室に突撃してきたらしい。
あまりにも大声で叫ぶものだから、ロゼリアは不機嫌な顔で目を擦りながらチェリシアに尋ねているというわけだ。
「ふふふっ、魔力測定器よ」
「ああ、あの微妙なできばえの……」
ようやくロゼリアの意識がはっきりしてくる。
チェリシアは「よくぞ聞いてくれました」と言わんばかりげな得意げな顔をしており、鼻息を荒くして胸を張っていた。
「まぁ、すぐにでも見せびらかしたいところだけど、ロゼリアだけに見せても仕方ないわね。ペイル陛下やシアン王女もお呼び下さいな。ヒスイちゃんとの研究成果、見せてあげますから」
「はいはい、分かりましたわよ。朝食の後にでも見てあげるから」
チェリシアのあまりにも自信たっぷりな態度に、ロゼリアは仕方なく応じることにした。
ロゼリアの返事を聞いたチェリシアは、一度服を着替えるために部屋へと戻っていったのだった。
「まったく、相変わらずよね……」
フリーダムなチェリシアの様子に、ため息が出るばかりだった。
朝食を終えたシアンたちは、チェリシアが泊まっている客間へとやって来る。
客間のテーブルの前には、チェリシアとヒスイが立っている。
「さあ、新型の魔力測定値のお披露目よ」
チェリシアは、相変わらずつつましい胸を張り続けている。
テーブルの上には、仰々しくも布に覆われた何かが置かれている。
「それじゃ、布を取るわよ。ヒスイちゃん、よろしく!」
「はい、チェリシア様」
シアンが初めて会った時には実にお堅いイメージのあったヒスイだが、今はにこにこの笑顔でチェリシアに従っている。
バサッと布を取り除くと、そこにはなんとも単純な構造の装置が置かれていた。
金属の土台の上に、球形の魔石が取り付けられている。ただそれだけだった。
「ただの魔法球じゃないのよ」
「いえ、よく見て下さい、お母様。魔法球の周りに魔力が渦巻いています」
「……何かあるのか?」
「あら、本当。うっすらだけど渦巻いているわね」
ロゼリアたちの反応を見て、チェリシアはふてぶてしい笑顔を見せている。
「さすがに宝珠はもったいなくて使えなかったけれど、私の持っている魔石をできる限り近い状態にして使ってあるわ」
聞いてもいないのに、チェリシアが説明を始めている。
「それで、台座の部分はルゼに作ってもらった魔法銀で、球体になっている魔石は一般的なウルフの魔石よ。十個くらいをまとめて魔力で変形させた上で、不純物を少し取り除いたものよ。宝珠までとはいかないけれど、純度が高い魔石になっているわ」
「は、はあ……」
ペイルとロゼリアは反応に困っている。ただ、シアンだけは目を輝かせてチェリシアの説明を聞いている。
さすがは魔法に対して造詣の深いアクアマリン子爵家の令嬢だっただけはある。
「それで、魔力の計測の基準だけど……、ヒスイちゃん、お願い」
「はい、チェリシア様」
すっかり助手扱いのヒスイである。
すっと前に出てきて、小さな魔石を一個取り出している。
「光れっ!」
ヒスイが魔力を込めると、魔石が光を放つ。
これは、魔石灯の要領だ。一般的な照明器具として普及している魔石灯。それをヒスイが実演しているのである。
「魔石灯のこの明かりを再現できるだけの魔力を十として数値化できるようにしたわ。まっ、そうすると小数点とか出てくるけど、第一位までは表示できるように調整したわよ」
「しょ、小数点……。そこまで考えるの?」
「あったり前じゃないの」
チェリシアははっきりと即答していた。
「それで、私の魔力をこれで測定すると……」
「いきなり無茶をさせるな。俺がやる」
チェリシアの魔力量ははっきり言って多い。やれば壊れかねないと判断したのか、この中では最も魔法が苦手なペイルが名乗り出ていた。
「魔石に手を当てて魔力を流せばいいんだな?」
「ええ、そうよ。十秒も流してもらえれば十分だわ」
「分かった」
使い方を確認してペイルが魔力を流す。
十秒が経過して手を離すと、魔石から光が放たれ、空中に何かが表示される。
『334』
「なんだ、この数値」
「これがペイル陛下の魔力量ね。魔石灯を三十三回点灯させられる程度の魔力っていうことね」
「魔石灯って、そんなに魔力を使うものなのか?」
「使うのよ」
想像していたよりも数値が悪かったのか、ペイルはとても不満げである。
これを見て、シアンも魔力を測りたがっている。
チェリシアがその様子に気が付いて、シアンに測定するように促している。
「大丈夫かしらね」
「大丈夫大丈夫。私が使っても壊れないんだから」
「そっちの心配もあるけれど、シアンの方も心配だわ」
「母親なんだから、信じてあげなさいって」
表情を曇らせるロゼリアに対して、チェリシアは明るく声をかけていた。
目の前ではシアンが魔力測定器に手を置いている。ひとつ深呼吸をすると、魔力を流し始める。
さて、シアンの魔力はいかほどなのだろうか。
全員が息をのんで見守っている。
「よし、できたわ」
チェリシアが満足そうに微笑んでいる。
「何ができたのよ、チェリシア」
眠そうに目をこすりながら、チェリシアに問いかけているのはロゼリアである。どうやら、完成したことが嬉しくてロゼリアの私室に突撃してきたらしい。
あまりにも大声で叫ぶものだから、ロゼリアは不機嫌な顔で目を擦りながらチェリシアに尋ねているというわけだ。
「ふふふっ、魔力測定器よ」
「ああ、あの微妙なできばえの……」
ようやくロゼリアの意識がはっきりしてくる。
チェリシアは「よくぞ聞いてくれました」と言わんばかりげな得意げな顔をしており、鼻息を荒くして胸を張っていた。
「まぁ、すぐにでも見せびらかしたいところだけど、ロゼリアだけに見せても仕方ないわね。ペイル陛下やシアン王女もお呼び下さいな。ヒスイちゃんとの研究成果、見せてあげますから」
「はいはい、分かりましたわよ。朝食の後にでも見てあげるから」
チェリシアのあまりにも自信たっぷりな態度に、ロゼリアは仕方なく応じることにした。
ロゼリアの返事を聞いたチェリシアは、一度服を着替えるために部屋へと戻っていったのだった。
「まったく、相変わらずよね……」
フリーダムなチェリシアの様子に、ため息が出るばかりだった。
朝食を終えたシアンたちは、チェリシアが泊まっている客間へとやって来る。
客間のテーブルの前には、チェリシアとヒスイが立っている。
「さあ、新型の魔力測定値のお披露目よ」
チェリシアは、相変わらずつつましい胸を張り続けている。
テーブルの上には、仰々しくも布に覆われた何かが置かれている。
「それじゃ、布を取るわよ。ヒスイちゃん、よろしく!」
「はい、チェリシア様」
シアンが初めて会った時には実にお堅いイメージのあったヒスイだが、今はにこにこの笑顔でチェリシアに従っている。
バサッと布を取り除くと、そこにはなんとも単純な構造の装置が置かれていた。
金属の土台の上に、球形の魔石が取り付けられている。ただそれだけだった。
「ただの魔法球じゃないのよ」
「いえ、よく見て下さい、お母様。魔法球の周りに魔力が渦巻いています」
「……何かあるのか?」
「あら、本当。うっすらだけど渦巻いているわね」
ロゼリアたちの反応を見て、チェリシアはふてぶてしい笑顔を見せている。
「さすがに宝珠はもったいなくて使えなかったけれど、私の持っている魔石をできる限り近い状態にして使ってあるわ」
聞いてもいないのに、チェリシアが説明を始めている。
「それで、台座の部分はルゼに作ってもらった魔法銀で、球体になっている魔石は一般的なウルフの魔石よ。十個くらいをまとめて魔力で変形させた上で、不純物を少し取り除いたものよ。宝珠までとはいかないけれど、純度が高い魔石になっているわ」
「は、はあ……」
ペイルとロゼリアは反応に困っている。ただ、シアンだけは目を輝かせてチェリシアの説明を聞いている。
さすがは魔法に対して造詣の深いアクアマリン子爵家の令嬢だっただけはある。
「それで、魔力の計測の基準だけど……、ヒスイちゃん、お願い」
「はい、チェリシア様」
すっかり助手扱いのヒスイである。
すっと前に出てきて、小さな魔石を一個取り出している。
「光れっ!」
ヒスイが魔力を込めると、魔石が光を放つ。
これは、魔石灯の要領だ。一般的な照明器具として普及している魔石灯。それをヒスイが実演しているのである。
「魔石灯のこの明かりを再現できるだけの魔力を十として数値化できるようにしたわ。まっ、そうすると小数点とか出てくるけど、第一位までは表示できるように調整したわよ」
「しょ、小数点……。そこまで考えるの?」
「あったり前じゃないの」
チェリシアははっきりと即答していた。
「それで、私の魔力をこれで測定すると……」
「いきなり無茶をさせるな。俺がやる」
チェリシアの魔力量ははっきり言って多い。やれば壊れかねないと判断したのか、この中では最も魔法が苦手なペイルが名乗り出ていた。
「魔石に手を当てて魔力を流せばいいんだな?」
「ええ、そうよ。十秒も流してもらえれば十分だわ」
「分かった」
使い方を確認してペイルが魔力を流す。
十秒が経過して手を離すと、魔石から光が放たれ、空中に何かが表示される。
『334』
「なんだ、この数値」
「これがペイル陛下の魔力量ね。魔石灯を三十三回点灯させられる程度の魔力っていうことね」
「魔石灯って、そんなに魔力を使うものなのか?」
「使うのよ」
想像していたよりも数値が悪かったのか、ペイルはとても不満げである。
これを見て、シアンも魔力を測りたがっている。
チェリシアがその様子に気が付いて、シアンに測定するように促している。
「大丈夫かしらね」
「大丈夫大丈夫。私が使っても壊れないんだから」
「そっちの心配もあるけれど、シアンの方も心配だわ」
「母親なんだから、信じてあげなさいって」
表情を曇らせるロゼリアに対して、チェリシアは明るく声をかけていた。
目の前ではシアンが魔力測定器に手を置いている。ひとつ深呼吸をすると、魔力を流し始める。
さて、シアンの魔力はいかほどなのだろうか。
全員が息をのんで見守っている。
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