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新章 青色の智姫
第303話 改良の余地あり
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シアンが魔力を流すと、魔力測定器がまばゆく光る。
「えっえっ、これって?!」
あまりにも明るい光なものだから、シアンはものすごく戸惑っている。
「十秒経ったわ。離してもらって大丈夫よ」
チェリシアの声がして、シアンはそっと測定器の魔石から手を離す。
まばゆい光は一瞬でおさまり、魔石の上に魔力量が表示される。
『32768』
その数値は、ペイルの実に百倍近い数値だった。
「なんとなく半端な感じね」
「二の十五乗ね。なんでこんな数値が出たのかしら」
「二の十五乗? なに、それ」
チェリシアの言葉の意味が分からず、ロゼリアはつい尋ねてしまう。
「意味としてはそのままよ。二を十五回かけた数字ってこと」
チェリシアはしれっと答えている。農業系に進んだ割には、意外と計算が得意なようだ。
「でも、そんなものかしらね。ヒスイちゃんにテストしてもらった時も一万は超えていたから、性能自体は問題なさそうだわ」
チェリシアは満足げに笑いながら、測定機に布をかぶせていく。
「ちょっと、私には測らせてくれないの?」
「完成はしたけど、これはまだ試作機なのよ。今のシアンの魔力測定で、魔石にひびが入ってしまったわ。そこにロゼリアの魔力を流したら、魔石が砕けちゃうわ」
「そ、それは困るわね……」
さすがに魔石が砕けると聞いて、ロゼリアは身を引いていた。
割れてその場で崩れるならいいのだが、大抵こういう場合は勢いよく弾け飛ぶからだ。
弾け飛んでしまえば、この場の全員が無事で済む保証がどこにもない。それゆえ、チェリシアの言葉であっさりと引き下がったのだ。
「やっぱり、ちゃんと耐久性を持たせるのなら、魔石の純度が高い方がいいわね。トパゼリアに商談に行こうかしら」
魔力測定器を眺めながら、チェリシアはぶつぶつと言い始める。どうも不完全に終わってしまったのが相当悔しかったようだ。
「とりあえず、これは地下の宝物庫に運ばせてもらうわよ」
「いや、それは困るわね」
「えっ」
チェリシアに宝物庫に加えることを断られると、ロゼリアはペイルと顔を見合わせている。
「これはネフライト家に預かってもらうわ。私がいなくても魔法一門であるネフライト家に預けておけば、きっと完成してくれるでしょうからね」
チェリシアはこんなことを言いながら、ヒスイの顔を見つめている。あまりにもじっと見つめてくるものだから、ヒスイも思わず驚いてしまう程だった。
「わ、分かりました。私でよければ、この魔力測定器、完成させてみせましょう」
チェリシアは別にヒスイにやってもらうために言ったわけではないのだが、ヒスイは責任感からかそのように感じ取ってしまったようだ。
とはいえ、チェリシアと一緒に魔力測定器を作ってきたのだから、まあいっかとチェリシアは思ったのだ。
「さて、それじゃ私は帰るわね。年末祭のための料理、頑張って作らなきゃいけないから」
「悪かったわね、こんな時期に呼び出しちゃって」
「いやいや、いい気分転換になったから、私は気にしないわよ」
忙しいところを呼び出してしまったことに、ロゼリアは反省している。ところが、チェリシアはまったく気にしていないらしい。
その無邪気そうな笑顔には、ロゼリアも少し安心してしまう。
「チェリシア」
「なによ、ペイル陛下」
「シルヴァノとペシエラによろしく伝えておいてくれ」
「そのくらい構いませんよ。私たちの仲ですからね」
最後にペイルから頼まれごとをして、チェリシアは瞬間移動魔法でモスグリネ王城から姿を消したのだった。
チェリシアが姿を消せば、ようやくペイルはひと息ついていた。
「はあ、相変わらずの自由っぷりだな」
「それがチェリシアなんですよ。ケットシーに比べればまだマシです」
「それは思いますね」
どうやらペイルは、チェリシアに苦手意識を持っているようである。そのせいなのか、ほとんど話をしていなかった。
ところが、ロゼリアとシアンにこんな風に言われてしまう始末である。
王子同士の付き合いで一緒にいることのなかったペイルと、友人枠でしょっちゅう一緒にいたロゼリアとその侍女だったシアンとでは、感じ方が違うのは当然なのである。
「あ、あの……」
ヒスイがおどおどしながらも声をかけてくる。
「なにかな、ヒスイ・ネフライト」
声をかけられたので、さっきまでの態度はどこへやら、シャキッと王様モードに戻ったペイルが返事をする。
「この魔力測定器は、私がもらって帰ってもよろしいでしょうか」
「ああ、チェリシアがそう言ってたんだから、そうしてもらって構わない。必要なものがあればケットシーに言いつけてやるから、シアンか父君を通して注文を出してくれればいいぞ」
「あ、ありがとう存じます」
申し出に対してあっさり許可をもらえたことで、ヒスイは淑女の仕草をしながらお礼を述べていた。
こうして、地下宝物庫にあった魔力測定器は、チェリシアとヒスイの手によって改良された型が製造された。
それは更なる改良が必要だったのだが、二人ならきっと成し遂げてくれるだろう。
不思議とそう思えてしまうシアンたちなのだった。
「えっえっ、これって?!」
あまりにも明るい光なものだから、シアンはものすごく戸惑っている。
「十秒経ったわ。離してもらって大丈夫よ」
チェリシアの声がして、シアンはそっと測定器の魔石から手を離す。
まばゆい光は一瞬でおさまり、魔石の上に魔力量が表示される。
『32768』
その数値は、ペイルの実に百倍近い数値だった。
「なんとなく半端な感じね」
「二の十五乗ね。なんでこんな数値が出たのかしら」
「二の十五乗? なに、それ」
チェリシアの言葉の意味が分からず、ロゼリアはつい尋ねてしまう。
「意味としてはそのままよ。二を十五回かけた数字ってこと」
チェリシアはしれっと答えている。農業系に進んだ割には、意外と計算が得意なようだ。
「でも、そんなものかしらね。ヒスイちゃんにテストしてもらった時も一万は超えていたから、性能自体は問題なさそうだわ」
チェリシアは満足げに笑いながら、測定機に布をかぶせていく。
「ちょっと、私には測らせてくれないの?」
「完成はしたけど、これはまだ試作機なのよ。今のシアンの魔力測定で、魔石にひびが入ってしまったわ。そこにロゼリアの魔力を流したら、魔石が砕けちゃうわ」
「そ、それは困るわね……」
さすがに魔石が砕けると聞いて、ロゼリアは身を引いていた。
割れてその場で崩れるならいいのだが、大抵こういう場合は勢いよく弾け飛ぶからだ。
弾け飛んでしまえば、この場の全員が無事で済む保証がどこにもない。それゆえ、チェリシアの言葉であっさりと引き下がったのだ。
「やっぱり、ちゃんと耐久性を持たせるのなら、魔石の純度が高い方がいいわね。トパゼリアに商談に行こうかしら」
魔力測定器を眺めながら、チェリシアはぶつぶつと言い始める。どうも不完全に終わってしまったのが相当悔しかったようだ。
「とりあえず、これは地下の宝物庫に運ばせてもらうわよ」
「いや、それは困るわね」
「えっ」
チェリシアに宝物庫に加えることを断られると、ロゼリアはペイルと顔を見合わせている。
「これはネフライト家に預かってもらうわ。私がいなくても魔法一門であるネフライト家に預けておけば、きっと完成してくれるでしょうからね」
チェリシアはこんなことを言いながら、ヒスイの顔を見つめている。あまりにもじっと見つめてくるものだから、ヒスイも思わず驚いてしまう程だった。
「わ、分かりました。私でよければ、この魔力測定器、完成させてみせましょう」
チェリシアは別にヒスイにやってもらうために言ったわけではないのだが、ヒスイは責任感からかそのように感じ取ってしまったようだ。
とはいえ、チェリシアと一緒に魔力測定器を作ってきたのだから、まあいっかとチェリシアは思ったのだ。
「さて、それじゃ私は帰るわね。年末祭のための料理、頑張って作らなきゃいけないから」
「悪かったわね、こんな時期に呼び出しちゃって」
「いやいや、いい気分転換になったから、私は気にしないわよ」
忙しいところを呼び出してしまったことに、ロゼリアは反省している。ところが、チェリシアはまったく気にしていないらしい。
その無邪気そうな笑顔には、ロゼリアも少し安心してしまう。
「チェリシア」
「なによ、ペイル陛下」
「シルヴァノとペシエラによろしく伝えておいてくれ」
「そのくらい構いませんよ。私たちの仲ですからね」
最後にペイルから頼まれごとをして、チェリシアは瞬間移動魔法でモスグリネ王城から姿を消したのだった。
チェリシアが姿を消せば、ようやくペイルはひと息ついていた。
「はあ、相変わらずの自由っぷりだな」
「それがチェリシアなんですよ。ケットシーに比べればまだマシです」
「それは思いますね」
どうやらペイルは、チェリシアに苦手意識を持っているようである。そのせいなのか、ほとんど話をしていなかった。
ところが、ロゼリアとシアンにこんな風に言われてしまう始末である。
王子同士の付き合いで一緒にいることのなかったペイルと、友人枠でしょっちゅう一緒にいたロゼリアとその侍女だったシアンとでは、感じ方が違うのは当然なのである。
「あ、あの……」
ヒスイがおどおどしながらも声をかけてくる。
「なにかな、ヒスイ・ネフライト」
声をかけられたので、さっきまでの態度はどこへやら、シャキッと王様モードに戻ったペイルが返事をする。
「この魔力測定器は、私がもらって帰ってもよろしいでしょうか」
「ああ、チェリシアがそう言ってたんだから、そうしてもらって構わない。必要なものがあればケットシーに言いつけてやるから、シアンか父君を通して注文を出してくれればいいぞ」
「あ、ありがとう存じます」
申し出に対してあっさり許可をもらえたことで、ヒスイは淑女の仕草をしながらお礼を述べていた。
こうして、地下宝物庫にあった魔力測定器は、チェリシアとヒスイの手によって改良された型が製造された。
それは更なる改良が必要だったのだが、二人ならきっと成し遂げてくれるだろう。
不思議とそう思えてしまうシアンたちなのだった。
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