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第97話 楽できるところは楽をしましょう
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食堂の開店までかなり日にちが迫ってきました。
厨房の中には、いろいろと見慣れない設備が増えていきます。
一番頑張ったのは、食器洗浄機です。これがあるとないとでは、労働に明確な差が出てしまいますからね。食器洗いは重労働です。
冬場は特に水が冷たいですから、赤切れという地獄を見ることになりますからね。
従業員を守るためでしたら、そのためには労力を惜しみませんよ。
それ以外で大変といえば、クリームやバターでしょうか。シチューやパンに使いますからね。
これも魔石を使ってある程度自動化してしまいます。魔法は本当に便利でありがたいですね。
そのために、大量の魔石をギルドに発注したのは、さすがにやり過ぎましたかね。ギルバートの頑張りでは手に入る量が知れていますからね。頑張っては下さっていますが、農園をしながらの狩りは大変ですもの。使えるものは使うのです。
看板も設置して、最終的なチェックの段階に来た日のこと、ようやく完成した調理器具や設備を使ってもらうことにします。
「レチェ様、これは何でしょうか」
カリナさんが眺めているものは、バターを作るための撹拌機です。撹拌強度が高めですので、クリームには向きません。
「これは、バターを作るための装置です。お客様の数が多いと見込まれていますので、大量に作れるように大きくしたものになります。動作は確認済みですので、実演してみせましょう」
というわけでして、製造の実演を披露するために、私はバター製造機にミルクを注ぎます。
ふたをしっかりとして、中央ほどにある魔石に魔力を流します。
容器の中からは少しうるさい風の音が聞こえてきます。これで、中のミルクが撹拌されていることがよく分かるようになっています。
「この装置を使う際には、ふたを閉める時にきちんと音が鳴ったことを確認してください。カチッといっていないと、撹拌中にふたが飛びます」
実際にやらかしましたからね。
魔法を瞬間的に使わなければ、周囲をミルクまみれにするところでした。私の反射神経、頑張ってくれました。
しばらく待っていますと、音がしなくなります。
「さあ、これで完成ですよ。魔石の色が消えたら、ふたを開けてみて下さい」
「は、はい」
しばらくすると、風魔法を示す淡い緑色の光が消えます。それを確認してふたを開けると、中には見事なバターができていました。
「どうですか。これで他の作業をしながらバターを作ることができるんですよ」
「すごいですね。これが魔法なのですか。私のような庶民には想像がつきません」
一緒に見学していたティルさんたちも、魔道具の素晴らしさに感動しているようでしたね。
「さすがにパン作りだけは自動化できませんでしたけれどね。やはり職人が作ってこそだと思いましたから」
でき上がったバターを使って、夕食用のパンを作ることにします。
その途中の発酵の段階で、私は再びカリナさんたちを集めます。
「次はこれですね。全自動食器洗浄機です」
「え、と? ぜ、全自動?」
聞き慣れない言葉に、みなさんつまっていますね。ええ、全自動です、全自動。
「食器洗いは一番の重労働です。あかぎれの酷い手で食品を扱うわけには参りません。そこで、この食器洗浄機なのですよ」
「は、はあ……」
私は先程バターを作った撹拌機のほか、わざと洗わずに置いておいた食器などを並べていきます。
ああ、撹拌機ですけれど、魔石を外すのだけは忘れないで下さいね。洗浄力に耐え切れませんでしたのでね。
私は注意事項を告げながら、全自動食器洗浄機の実演を始めます。
底面と背面のない箱を前面から差し込みまして、最後に背面に板を差し込みます。台の前面にある魔石に触れると、石はなんと四色に輝きます。
火と水でお湯を生み出し、風で食器にお湯を吹きかけ、土でお湯が洗い流した汚れを取り除きます。
ちなみにですが、取り除いた汚れは農園で使うたい肥になるんですよ。我ながらうまく考えたと思います。
箱の中からは、箱の側面にお湯が当たる音が聞こえてきます。
このお湯も、温度設定には苦労しましたね。洗い終わった後の食器を触ってやけどもしたくらいですよ。微調整を重ねて、最適な状態を作りました。頑張りましたよ。
しばらくすると、お湯が当たる音が聞こえなくなります。それからしばらくすると、今度は魔石の色も消えます。
「さあ、終わったみたいですね。開けてみます」
私がこう告げますと、カリナさんたちは真剣な表情で食器洗浄機を眺めています。
背板を外し、箱を引きます。中からはほわっとした蒸気が上がります。
「お湯で洗っていましたので、ちょっと熱いですので気を付けて下さいね」
「はい」
私は一番汚れの酷いバター製造の撹拌機を取り出します。油汚れって簡単には落ちないですからね。
それがどうでしょう。指を擦りつけてみますと、べたついた感触はありません。きれいにバターの油が落ちているのです。
「すごい、これは大発明ですよ、レチェ様」
めちゃくちゃ褒めてきますね。前世にあった道具を魔法で再現してみただけなんですが、やはり存在しない世界だと、こういう反応になってしまうんですね。
「これでだいぶ作業は効率化が図れると思います。この食堂、絶対に繁盛させてみせましょう」
「はい!」
どうにか設備の増強は間に合いました。
残りは開店にあたって必要な食材の確保です。
商業ギルドへの確認はイリスに任せまして、私は一度農園に戻ってみることとしましょう。
厨房の中には、いろいろと見慣れない設備が増えていきます。
一番頑張ったのは、食器洗浄機です。これがあるとないとでは、労働に明確な差が出てしまいますからね。食器洗いは重労働です。
冬場は特に水が冷たいですから、赤切れという地獄を見ることになりますからね。
従業員を守るためでしたら、そのためには労力を惜しみませんよ。
それ以外で大変といえば、クリームやバターでしょうか。シチューやパンに使いますからね。
これも魔石を使ってある程度自動化してしまいます。魔法は本当に便利でありがたいですね。
そのために、大量の魔石をギルドに発注したのは、さすがにやり過ぎましたかね。ギルバートの頑張りでは手に入る量が知れていますからね。頑張っては下さっていますが、農園をしながらの狩りは大変ですもの。使えるものは使うのです。
看板も設置して、最終的なチェックの段階に来た日のこと、ようやく完成した調理器具や設備を使ってもらうことにします。
「レチェ様、これは何でしょうか」
カリナさんが眺めているものは、バターを作るための撹拌機です。撹拌強度が高めですので、クリームには向きません。
「これは、バターを作るための装置です。お客様の数が多いと見込まれていますので、大量に作れるように大きくしたものになります。動作は確認済みですので、実演してみせましょう」
というわけでして、製造の実演を披露するために、私はバター製造機にミルクを注ぎます。
ふたをしっかりとして、中央ほどにある魔石に魔力を流します。
容器の中からは少しうるさい風の音が聞こえてきます。これで、中のミルクが撹拌されていることがよく分かるようになっています。
「この装置を使う際には、ふたを閉める時にきちんと音が鳴ったことを確認してください。カチッといっていないと、撹拌中にふたが飛びます」
実際にやらかしましたからね。
魔法を瞬間的に使わなければ、周囲をミルクまみれにするところでした。私の反射神経、頑張ってくれました。
しばらく待っていますと、音がしなくなります。
「さあ、これで完成ですよ。魔石の色が消えたら、ふたを開けてみて下さい」
「は、はい」
しばらくすると、風魔法を示す淡い緑色の光が消えます。それを確認してふたを開けると、中には見事なバターができていました。
「どうですか。これで他の作業をしながらバターを作ることができるんですよ」
「すごいですね。これが魔法なのですか。私のような庶民には想像がつきません」
一緒に見学していたティルさんたちも、魔道具の素晴らしさに感動しているようでしたね。
「さすがにパン作りだけは自動化できませんでしたけれどね。やはり職人が作ってこそだと思いましたから」
でき上がったバターを使って、夕食用のパンを作ることにします。
その途中の発酵の段階で、私は再びカリナさんたちを集めます。
「次はこれですね。全自動食器洗浄機です」
「え、と? ぜ、全自動?」
聞き慣れない言葉に、みなさんつまっていますね。ええ、全自動です、全自動。
「食器洗いは一番の重労働です。あかぎれの酷い手で食品を扱うわけには参りません。そこで、この食器洗浄機なのですよ」
「は、はあ……」
私は先程バターを作った撹拌機のほか、わざと洗わずに置いておいた食器などを並べていきます。
ああ、撹拌機ですけれど、魔石を外すのだけは忘れないで下さいね。洗浄力に耐え切れませんでしたのでね。
私は注意事項を告げながら、全自動食器洗浄機の実演を始めます。
底面と背面のない箱を前面から差し込みまして、最後に背面に板を差し込みます。台の前面にある魔石に触れると、石はなんと四色に輝きます。
火と水でお湯を生み出し、風で食器にお湯を吹きかけ、土でお湯が洗い流した汚れを取り除きます。
ちなみにですが、取り除いた汚れは農園で使うたい肥になるんですよ。我ながらうまく考えたと思います。
箱の中からは、箱の側面にお湯が当たる音が聞こえてきます。
このお湯も、温度設定には苦労しましたね。洗い終わった後の食器を触ってやけどもしたくらいですよ。微調整を重ねて、最適な状態を作りました。頑張りましたよ。
しばらくすると、お湯が当たる音が聞こえなくなります。それからしばらくすると、今度は魔石の色も消えます。
「さあ、終わったみたいですね。開けてみます」
私がこう告げますと、カリナさんたちは真剣な表情で食器洗浄機を眺めています。
背板を外し、箱を引きます。中からはほわっとした蒸気が上がります。
「お湯で洗っていましたので、ちょっと熱いですので気を付けて下さいね」
「はい」
私は一番汚れの酷いバター製造の撹拌機を取り出します。油汚れって簡単には落ちないですからね。
それがどうでしょう。指を擦りつけてみますと、べたついた感触はありません。きれいにバターの油が落ちているのです。
「すごい、これは大発明ですよ、レチェ様」
めちゃくちゃ褒めてきますね。前世にあった道具を魔法で再現してみただけなんですが、やはり存在しない世界だと、こういう反応になってしまうんですね。
「これでだいぶ作業は効率化が図れると思います。この食堂、絶対に繁盛させてみせましょう」
「はい!」
どうにか設備の増強は間に合いました。
残りは開店にあたって必要な食材の確保です。
商業ギルドへの確認はイリスに任せまして、私は一度農園に戻ってみることとしましょう。
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