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第142話 ひずみと精霊となんかいろいろ
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ワイルズのとんでもない一撃であっさりと戦闘は終わりましたが、どうも釈然としない気持ちで、私たちは精霊王様の接待を受けます。
アンドリュー殿下とアマリス様なんて、何をしに来たのかさっぱり分かりません。騎士や兵士を集めて、大騒ぎになっただけですよ。
なんとも重苦しい雰囲気の中、私たちはテーブルを囲んでいます。
マサさんたち精霊の騎士たちは、周りを固めるように立っていますので、なんとも物々しい雰囲気です。
「さて、どこから話したらいいのだろうかね」
精霊王様は紅茶を飲みながら、話を切り出し始めました。
「精霊王様、あの妙な魔力の塊は何だったのですか」
アンドリュー殿下が先陣を切ります。そりゃまあ、気になりますわよね。
ちなみに私は、ゲームで発生原因を知っていますが、この場は黙っておきます。あっ、精霊王様、私に視線を向けるんじゃないですよ。
まったく、思考を読めるという能力は厄介ですね。おかげで考えごとすらできません。困ったものですよ。頼みますから、私に話題を振らないで下さい。
精霊王様は私を見ながらにっこりと微笑んでいます。ええ、それはもう胡散くさい笑顔ですよ。
「あのひずみは、去年夏ごろから出現していたものでね。強い魔力を使い過ぎたことによって発生するものなんだ。本来ならば人間も精霊も、魔法をほどほどに使うから、普段は修正が早くできるんだが、どういうわけか今回は大きくなり続けていてね。去年の夏、部下である精霊の騎士たちを集めて塞ぎにかかっていたのだよ」
精霊王はこのように述べています。
その答えに、私は違和感を持ちます。
あれっ、これって本来ならゲームのラスボスの復活のサインじゃありませんでしたっけ?
と、とりあえず話を聞きましょう。
「今年に入ってからまた一段と大きくなってね。おや、そこの少女は思い当たる節がありそうだね」
そこまで話して、精霊王様が私に話を振ってきました。
やめてとお願いしたはずですが?!
「どうなんだい、レイチェル」
「えっと、あの、その……」
アンドリュー殿下に尋ねられまして、私は答えに窮してしまいます。
「ああ、もう。私の魔法ですか。ひずみ自体は私とは関係ないはずなんですが、一度開いた以降は私の魔法に反応してるっていうことでいいんですよね?!」
もうやけくそです。
ここまでくれば大体想像がつくと思います。
まず、ひずみ自体は魔王の復活が関係しています。二年目の夏で閉じられれば、魔王は弱体化して復活します。閉じられなければフルパワーで完全復活します。
ひずみは、魔王の器となる人物の負の感情によって徐々に大きくなり、ひずみから魔力を供給し始めます。放置しておくと魔王に対して魔力が供給され続けるので、パワーアップするんですね。
えっと、魔王の名前はウィルヒナーでしたっけ。
……ん? ウィルヒナー、ウィル……。
「ああ、ウィル君がそうでしたか……」
すべての謎が解けた私は、がくっと項垂れてしまいます。
「ど、どうしたんだい、レイチェル!」
「アンドリュー殿下、私には構わず、お話をお続けください。マサさんとマリナさんの関係について、まだ話が済んでおりませんからね」
「あ、ああ。そうだったな」
肘をついて頭を抱えているという、とても行儀の悪い姿ですけれど、今回ばかりは仕方ありません。
ええ、そうですよ。結局私のやらかしなんです。
なんでいつもこうなるんですかね、まったく。
私が一人唸っている間に、話が進んでいきます。
マサさんはここに集っている通り、そもそもは精霊の騎士を務めていました。
今から十四年ほど前らしいのですが、精霊界に迷い込んできたカリナさんと恋仲になり、反対を押し切って人間界にやって来たそうです。
その翌年に生まれたのがサリナさんで、そこから四年後に生まれたのがマリナさんだったそうです。
つまり、どっちも私より年下ですね。小さいのにしっかりしています。
初めは連れ戻そうとしていた精霊王様も、子どもが生まれたとあっては見逃すようにしたようです。
マリナさんが精霊たちの姿を見られるというのも、マサさんの血の方が濃かったからでしょうね。
「どうだろう。その子が望めば、精霊の力を開花させられると思うが」
話が進んでいくうちに、精霊王様はマリナさんを見ながらそんな提案をしています。
当然ながら、マリナさんは怖がっています。
精霊としての血が目覚めれば、人間でいられなくなる可能性はあります。ノームが他の人から見られないという事実があるゆえに、マリナさんにとっては恐怖でしょうね。
「大丈夫だ、マリナ。お父さんだって、お母さんたちには見えていただろう?」
「でも……」
マリナさんは悩みながら、どういうわけか私たちの方を見てきます。
どうやら、レチェ商会のみなさんのことを気にかけているみたいです。本当に優しい子ですよ。
「マリナさん、大丈夫ですよ。精霊の力が目覚めても、マリナさんはきっと変わりません。少なくとも、ここにいるみんなはそう信じていますよ」
私がこのように述べますと、アンドリュー殿下やアマリス様たちが、こくりと頷いています。
私のこの言葉が決め手になったようでして、マリナさんはぎゅっと拳に力を込めて、真剣な面持ちになります。
「分かりました。精霊王様、よろしくお願い致します」
マリナさんは、精霊の力を受け入れることにしたのです。
アンドリュー殿下とアマリス様なんて、何をしに来たのかさっぱり分かりません。騎士や兵士を集めて、大騒ぎになっただけですよ。
なんとも重苦しい雰囲気の中、私たちはテーブルを囲んでいます。
マサさんたち精霊の騎士たちは、周りを固めるように立っていますので、なんとも物々しい雰囲気です。
「さて、どこから話したらいいのだろうかね」
精霊王様は紅茶を飲みながら、話を切り出し始めました。
「精霊王様、あの妙な魔力の塊は何だったのですか」
アンドリュー殿下が先陣を切ります。そりゃまあ、気になりますわよね。
ちなみに私は、ゲームで発生原因を知っていますが、この場は黙っておきます。あっ、精霊王様、私に視線を向けるんじゃないですよ。
まったく、思考を読めるという能力は厄介ですね。おかげで考えごとすらできません。困ったものですよ。頼みますから、私に話題を振らないで下さい。
精霊王様は私を見ながらにっこりと微笑んでいます。ええ、それはもう胡散くさい笑顔ですよ。
「あのひずみは、去年夏ごろから出現していたものでね。強い魔力を使い過ぎたことによって発生するものなんだ。本来ならば人間も精霊も、魔法をほどほどに使うから、普段は修正が早くできるんだが、どういうわけか今回は大きくなり続けていてね。去年の夏、部下である精霊の騎士たちを集めて塞ぎにかかっていたのだよ」
精霊王はこのように述べています。
その答えに、私は違和感を持ちます。
あれっ、これって本来ならゲームのラスボスの復活のサインじゃありませんでしたっけ?
と、とりあえず話を聞きましょう。
「今年に入ってからまた一段と大きくなってね。おや、そこの少女は思い当たる節がありそうだね」
そこまで話して、精霊王様が私に話を振ってきました。
やめてとお願いしたはずですが?!
「どうなんだい、レイチェル」
「えっと、あの、その……」
アンドリュー殿下に尋ねられまして、私は答えに窮してしまいます。
「ああ、もう。私の魔法ですか。ひずみ自体は私とは関係ないはずなんですが、一度開いた以降は私の魔法に反応してるっていうことでいいんですよね?!」
もうやけくそです。
ここまでくれば大体想像がつくと思います。
まず、ひずみ自体は魔王の復活が関係しています。二年目の夏で閉じられれば、魔王は弱体化して復活します。閉じられなければフルパワーで完全復活します。
ひずみは、魔王の器となる人物の負の感情によって徐々に大きくなり、ひずみから魔力を供給し始めます。放置しておくと魔王に対して魔力が供給され続けるので、パワーアップするんですね。
えっと、魔王の名前はウィルヒナーでしたっけ。
……ん? ウィルヒナー、ウィル……。
「ああ、ウィル君がそうでしたか……」
すべての謎が解けた私は、がくっと項垂れてしまいます。
「ど、どうしたんだい、レイチェル!」
「アンドリュー殿下、私には構わず、お話をお続けください。マサさんとマリナさんの関係について、まだ話が済んでおりませんからね」
「あ、ああ。そうだったな」
肘をついて頭を抱えているという、とても行儀の悪い姿ですけれど、今回ばかりは仕方ありません。
ええ、そうですよ。結局私のやらかしなんです。
なんでいつもこうなるんですかね、まったく。
私が一人唸っている間に、話が進んでいきます。
マサさんはここに集っている通り、そもそもは精霊の騎士を務めていました。
今から十四年ほど前らしいのですが、精霊界に迷い込んできたカリナさんと恋仲になり、反対を押し切って人間界にやって来たそうです。
その翌年に生まれたのがサリナさんで、そこから四年後に生まれたのがマリナさんだったそうです。
つまり、どっちも私より年下ですね。小さいのにしっかりしています。
初めは連れ戻そうとしていた精霊王様も、子どもが生まれたとあっては見逃すようにしたようです。
マリナさんが精霊たちの姿を見られるというのも、マサさんの血の方が濃かったからでしょうね。
「どうだろう。その子が望めば、精霊の力を開花させられると思うが」
話が進んでいくうちに、精霊王様はマリナさんを見ながらそんな提案をしています。
当然ながら、マリナさんは怖がっています。
精霊としての血が目覚めれば、人間でいられなくなる可能性はあります。ノームが他の人から見られないという事実があるゆえに、マリナさんにとっては恐怖でしょうね。
「大丈夫だ、マリナ。お父さんだって、お母さんたちには見えていただろう?」
「でも……」
マリナさんは悩みながら、どういうわけか私たちの方を見てきます。
どうやら、レチェ商会のみなさんのことを気にかけているみたいです。本当に優しい子ですよ。
「マリナさん、大丈夫ですよ。精霊の力が目覚めても、マリナさんはきっと変わりません。少なくとも、ここにいるみんなはそう信じていますよ」
私がこのように述べますと、アンドリュー殿下やアマリス様たちが、こくりと頷いています。
私のこの言葉が決め手になったようでして、マリナさんはぎゅっと拳に力を込めて、真剣な面持ちになります。
「分かりました。精霊王様、よろしくお願い致します」
マリナさんは、精霊の力を受け入れることにしたのです。
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