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第144話 逃げるが勝ちです
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精霊王様が私たちを見ています。
「本来なら、精霊界を知った者は、記憶を消して追い返すところなのだが……」
厳しい視線を私たちに向けています。
「お前たちはいろいろと特殊な事情を抱えすぎている。記憶を消そうとしてもいろいろと影響が出て面倒なことになりそうだ」
どういうことでしょうかね。
それにしても私を見ながら大きなため息をつくのはやめてもらいたいのですか?
「何を言う。お前が最大の問題なのだ、小娘」
精霊王様が私を見ながら文句を言ってきます。
ですが、追い返してもらえるのなら、今はその方がよいかと思います。
「精霊王様、ひとまず今日のところは帰して頂けませんでしょうか」
ダメ元で私は精霊王様に尋ねてみます。
ええ、それは疑わしい目で見られていますよ。怖いですね。
「外にはアンドリュー殿下が指揮してこられた騎士や兵士たちがたくさんいらっしゃるんです。長い時間姿が見えられないとなると、大騒ぎになると思うんですね。ですので、今すぐ私たちを外の世界に帰して下さいませんか?」
私はにっこりと微笑んで訴えますが、精霊王様からはずっとジト目を向けられています。まったく冷や汗しか出てこないんですが、困りましたね。
必死にお願いしていますと、精霊王様は再び大きなため息をついています。
「仕方あるまい。今日のところは帰らせようではないか」
精霊王様は、頭に手を当てながら、不服そうな表情で私の頼みを聞いて下さいました。
しかし、ものすごく私のことを睨んでいらっしゃいます。だから怖いんですってば。
「人間どもの時間で明日、お前の住んでいるところに邪魔することにする。王族の二人とそこの小僧はもちろんだが、そこのマリナとかいう小娘も同席させるのだ、いいな?」
たくさん条件が付けられてしまいましたが、精霊界から帰してもらえるのならと、私たちは条件をのむことにしました。
マサさんを除く精霊の騎士たちに囲まれながら、私たちは精霊界を発つことになりました。
その際、マリナさんが何度もマサさんへと振り返っていましたが、精霊王様に首根っこをつかまれては、どうしようもありません。ひとまず私たちは、精霊界から人間界へと戻ったのでした。
七色の石のところに戻ってきました。
出口まで付き添っていた精霊の騎士たちの姿はなく、私たち五人だけが立っている状態です。
「殿下! アンドリュー殿下!」
「アマリス王女様も、よくご無事で!」
今でも夢じゃないかとぼーっとしていましたら、騎士たちの呼ぶ声で私たちは現実へと引き戻されます。
私たちは騎士たちに付き添われる形で、私の経営する食堂へと戻っていきました。
街に戻りますと、騎士たちは宿屋を取りそちらで宿泊、アンドリュー殿下たちは私の食堂の宿舎へとやって来ることになりました。
アマリス様も実は初めてになる食堂での滞在です。そのためか、目がものすごく輝いています。
「レイチェルの経営する食堂か。一度食べに来たが、とてもおいしかったな。また食べられる日が来るとは思ってもみなかったよ」
「あっ、殿下ずるいぞ。王都でも最近は話題になっているからな」
「そうかそうか。平民の情報網は遅いものな」
「くそっ、こういう時だけ王族面か!」
「王族面とはひどいな。本物の王族に向かって。やはりお前は側近にふさわしくないな」
「あっ、ちょっ!」
アンドリュー殿下とワイルズはとても仲がよさそうですね。これだけ軽口を叩き合えるとはすばらしいですね。
「レイチェル、こいつと私は別に仲はよくないぞ。こいつが勝手に絡んでくるんでうんざりしているんだ」
「くっ、事実だけに反論できねえ!」
漫才のような掛け合いに、私はつい笑ってしまいます。
私はアマリス様に目を向けます。
「アクエリアスは来ていないのですね」
「はい。仕事のできる方ですので、使用人たちを取りまとめる立場になっています。本人は「なんで私が」と文句を言いながらも、まんざらでもないようですよ」
「ははは……、さすができる方は違いますね」
アクエリアスの現状を聞いて、私は苦笑いです。
『アクエリアスも楽しそうにやってるんだね。文句を言うということは、楽しんでるってこと。本当に嫌なら黙って出ていくからね、彼女は』
「そうなんですね。でも、分かりますね。すっごく照れ屋さんなんですよ」
ノームの言葉に、アマリス様は笑っています。
「そういえば、鳥小屋だけ別に建て直したのですね」
「ええ、数が増えますから、手狭になる前に広くしておいたんです。明日はウィルくんにもこっちに来てもらいませんとね」
「ウィルくんとはどなたですか?」
知らない名前が出てきたので、アマリス様が私に尋ねてきます。
「鳥小屋にいた大きな方の男の子です。小さい方はジルくんといいます」
「そうなのですね。でも、明日連れてくるということは、精霊界にあったひずみに関係があるのですか?」
アマリス様の質問に、私は首を縦に振ります。
関係ありありですからね。ウィルくんは。
でも、詳しい話は明日ですね。今日のところは、もうゆっくり休んでもらいましょう。
食堂の中に入ると、アンドリュー殿下のことを知っているイリスがものすごく驚いていました。
ですが、それ以外は特に混乱もなく、私たちは精霊界から無事に戻ってこれたのでした。
「本来なら、精霊界を知った者は、記憶を消して追い返すところなのだが……」
厳しい視線を私たちに向けています。
「お前たちはいろいろと特殊な事情を抱えすぎている。記憶を消そうとしてもいろいろと影響が出て面倒なことになりそうだ」
どういうことでしょうかね。
それにしても私を見ながら大きなため息をつくのはやめてもらいたいのですか?
「何を言う。お前が最大の問題なのだ、小娘」
精霊王様が私を見ながら文句を言ってきます。
ですが、追い返してもらえるのなら、今はその方がよいかと思います。
「精霊王様、ひとまず今日のところは帰して頂けませんでしょうか」
ダメ元で私は精霊王様に尋ねてみます。
ええ、それは疑わしい目で見られていますよ。怖いですね。
「外にはアンドリュー殿下が指揮してこられた騎士や兵士たちがたくさんいらっしゃるんです。長い時間姿が見えられないとなると、大騒ぎになると思うんですね。ですので、今すぐ私たちを外の世界に帰して下さいませんか?」
私はにっこりと微笑んで訴えますが、精霊王様からはずっとジト目を向けられています。まったく冷や汗しか出てこないんですが、困りましたね。
必死にお願いしていますと、精霊王様は再び大きなため息をついています。
「仕方あるまい。今日のところは帰らせようではないか」
精霊王様は、頭に手を当てながら、不服そうな表情で私の頼みを聞いて下さいました。
しかし、ものすごく私のことを睨んでいらっしゃいます。だから怖いんですってば。
「人間どもの時間で明日、お前の住んでいるところに邪魔することにする。王族の二人とそこの小僧はもちろんだが、そこのマリナとかいう小娘も同席させるのだ、いいな?」
たくさん条件が付けられてしまいましたが、精霊界から帰してもらえるのならと、私たちは条件をのむことにしました。
マサさんを除く精霊の騎士たちに囲まれながら、私たちは精霊界を発つことになりました。
その際、マリナさんが何度もマサさんへと振り返っていましたが、精霊王様に首根っこをつかまれては、どうしようもありません。ひとまず私たちは、精霊界から人間界へと戻ったのでした。
七色の石のところに戻ってきました。
出口まで付き添っていた精霊の騎士たちの姿はなく、私たち五人だけが立っている状態です。
「殿下! アンドリュー殿下!」
「アマリス王女様も、よくご無事で!」
今でも夢じゃないかとぼーっとしていましたら、騎士たちの呼ぶ声で私たちは現実へと引き戻されます。
私たちは騎士たちに付き添われる形で、私の経営する食堂へと戻っていきました。
街に戻りますと、騎士たちは宿屋を取りそちらで宿泊、アンドリュー殿下たちは私の食堂の宿舎へとやって来ることになりました。
アマリス様も実は初めてになる食堂での滞在です。そのためか、目がものすごく輝いています。
「レイチェルの経営する食堂か。一度食べに来たが、とてもおいしかったな。また食べられる日が来るとは思ってもみなかったよ」
「あっ、殿下ずるいぞ。王都でも最近は話題になっているからな」
「そうかそうか。平民の情報網は遅いものな」
「くそっ、こういう時だけ王族面か!」
「王族面とはひどいな。本物の王族に向かって。やはりお前は側近にふさわしくないな」
「あっ、ちょっ!」
アンドリュー殿下とワイルズはとても仲がよさそうですね。これだけ軽口を叩き合えるとはすばらしいですね。
「レイチェル、こいつと私は別に仲はよくないぞ。こいつが勝手に絡んでくるんでうんざりしているんだ」
「くっ、事実だけに反論できねえ!」
漫才のような掛け合いに、私はつい笑ってしまいます。
私はアマリス様に目を向けます。
「アクエリアスは来ていないのですね」
「はい。仕事のできる方ですので、使用人たちを取りまとめる立場になっています。本人は「なんで私が」と文句を言いながらも、まんざらでもないようですよ」
「ははは……、さすができる方は違いますね」
アクエリアスの現状を聞いて、私は苦笑いです。
『アクエリアスも楽しそうにやってるんだね。文句を言うということは、楽しんでるってこと。本当に嫌なら黙って出ていくからね、彼女は』
「そうなんですね。でも、分かりますね。すっごく照れ屋さんなんですよ」
ノームの言葉に、アマリス様は笑っています。
「そういえば、鳥小屋だけ別に建て直したのですね」
「ええ、数が増えますから、手狭になる前に広くしておいたんです。明日はウィルくんにもこっちに来てもらいませんとね」
「ウィルくんとはどなたですか?」
知らない名前が出てきたので、アマリス様が私に尋ねてきます。
「鳥小屋にいた大きな方の男の子です。小さい方はジルくんといいます」
「そうなのですね。でも、明日連れてくるということは、精霊界にあったひずみに関係があるのですか?」
アマリス様の質問に、私は首を縦に振ります。
関係ありありですからね。ウィルくんは。
でも、詳しい話は明日ですね。今日のところは、もうゆっくり休んでもらいましょう。
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ですが、それ以外は特に混乱もなく、私たちは精霊界から無事に戻ってこれたのでした。
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