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第153話 国境を越えて
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イリスたちに挨拶をした私たちは、商業ギルドに寄ってから出かけます。
それというのも、ミサエラさんには伝えておかないといけないと思ったからです。
ミサエラさんからは「気を付けて行ってくるように」とだけ言われました。ただ、その表情から察するにとても心配そうな様子が伝わってきましたね。
「では、アマリス様、ルーチェ、出掛けますよ」
「はい、お姉様」
私はラッシュバードに乗って街を出発します。
目的地は隣国であるアムス王国にある港町マソルです。
「フォレ、ラニ。大変でしょうけれど、頑張って下さいね」
「ブフェーッ!」
私が声をかけますと、二羽とも大きな声で返事をしてきました。言葉、完全に通じていますよね。
今回、私の方のラッシュバードたちはみんなお留守番となりました。街にやって来るまでに、アマリス様とルーチェでフォレとラニに乗って来ていたからです。
これ以上ラッシュバードを増やすと、いろいろと問題が起きそうでしたから、私はルーチェの乗るラッシュバード、ラニの背中にお邪魔しています。
二人分の体重がのしかかっても、ラニはしれっとした表情をしています。重くないようですね。
魔法かばんの中に入れたものは、どういう理屈か知りませんが、重量がなくなってしまいます。まったく理屈は分かりませんが、なぜかそうなるんです。
ですので、ラニにかかる負担は、私とルーチェの体重と服の重みだけです。ラッシュバードには鞍はつけておりませんのでね。
途中、道行く人たちからは驚いた顔で見られます。魔物であるラッシュバードが、街道のど真ん中を軽快に疾走していくんです。驚くのも無理はないでしょう。
街を出て一日にもしないうちに、私たちは国境に差し掛かります。いかにあの街が国境に近いのかがよく分かりますね。
国境に近付きますと、私はアマリス様に頭からショールをかぶって頂きました。
なぜかって?
一般人でしたらそうでもありませんが、国境警備兵ともなれば王族の顔をよく知っているのですよ。遠めで見かけただけでも騒ぎますからね。
だからこそ、こうやって顔を隠してもらったのです。
まあ、ラッシュバードに乗っている時点で絞られてしまいますけれどね。
「えっと、次は……」
国境の兵士たちが順番に国境を越える人たちを調べています。
そんな中、何かひそひそと話す姿が見えますね。もしや気付かれたのでは?
そう思った瞬間、兵士たちが私たちに近付いてきました。
「失礼致します。ウィルソン公爵家のレイチェル嬢とルーチェ嬢とお見受けいたしますが……」
なんてことでしょうか。近付いてきた理由は、私たちの方でした。
ですが、こうやって声をかけてきたということは、この混雑を突破できるということです。ならば、ここは乗らせて頂きましょう。
「はい、その通りです」
「ってことは、こちらのお方は……」
私が正直に答えますと、兵士たちがごくりと息をのみながら、私たちと一緒にいるお方を見ています。
私たちと一緒にいると、分かってしまうのですね。怖いですね。
「はい、わたくしですよ」
アマリス様が、頭にかぶったフードをちらりと持ち上げて返事をします。
その顔を見て、兵士たちはびっくりしていますね。
「やはり、アマリス王女殿下でございましたか。ここから先は別の国です。危険を承知で向かわれるのですか?」
アマリス様だと見るや、どうやら引き返すように説得をしようとしているみたいですね。
まぁそれもそうですね。護衛がいませんもの。
いるのは私とルーチェ、それと二羽のラッシュバードです。心配になるのも頷けます。
「大丈夫です。お姉様がいらっしゃいますし、この子たちもいますから」
「ブフェーッ!」
アマリス様が隣にいるフォレを撫でますと、フォレは任せろといわんばかりに鳴いています。
ですが、兵士たちは心配そうに見ています。
「大丈夫でございます。私がきっと守ってみせますから。なんといっても、私のわがままで、今回は隣国にお邪魔するのですからね」
「そ、そうですか。ですが……」
私が説得を試みようにも、兵士たちはごねた様子を見せています。
困りましたね。こんなところで時間を取っているわけには参りませんのに。
私は、唸ってしまいます。
「私たちは、レチェ商会の営業のために隣国に向かうのです。商人ということで、ここは通して頂けませんか?」
私たちは必死にお願いをします。
「分かりました。ですが、陛下や殿下方には報告させて頂きますからね。何かあっては困りますのでね」
「はい、十分承知しております」
兵士たちをどうにか説得して、国王陛下たちに報告することと引き換えに国境の通過をなんとか勝ち取りました。
並んで待っておられる方々には申し訳ございませんが、私たちは検問を無事に突破しまして、隣国アムスの領土に足を踏み入れました。
調べた限り、マソルの街までは馬車で四日ほどかかります。フォレとラニの足ならば、一日ちょっとあれば到着できるでしょう。
「さあ、フォレ、ラニ。マソルの街に向けて出発ですよ」
「ブェフェーッ!」
私が声をかけますと、フォレとラニは元気よく返事をして走り出します。
さあ、待っていて下さい、海産物たち。
このレイチェル・ウィルソンが、今からあなたたちを手に入れに向かいますからね。
心の中でにやつきながら、私は二人を連れてマソルの街への道を急いだのです。
それというのも、ミサエラさんには伝えておかないといけないと思ったからです。
ミサエラさんからは「気を付けて行ってくるように」とだけ言われました。ただ、その表情から察するにとても心配そうな様子が伝わってきましたね。
「では、アマリス様、ルーチェ、出掛けますよ」
「はい、お姉様」
私はラッシュバードに乗って街を出発します。
目的地は隣国であるアムス王国にある港町マソルです。
「フォレ、ラニ。大変でしょうけれど、頑張って下さいね」
「ブフェーッ!」
私が声をかけますと、二羽とも大きな声で返事をしてきました。言葉、完全に通じていますよね。
今回、私の方のラッシュバードたちはみんなお留守番となりました。街にやって来るまでに、アマリス様とルーチェでフォレとラニに乗って来ていたからです。
これ以上ラッシュバードを増やすと、いろいろと問題が起きそうでしたから、私はルーチェの乗るラッシュバード、ラニの背中にお邪魔しています。
二人分の体重がのしかかっても、ラニはしれっとした表情をしています。重くないようですね。
魔法かばんの中に入れたものは、どういう理屈か知りませんが、重量がなくなってしまいます。まったく理屈は分かりませんが、なぜかそうなるんです。
ですので、ラニにかかる負担は、私とルーチェの体重と服の重みだけです。ラッシュバードには鞍はつけておりませんのでね。
途中、道行く人たちからは驚いた顔で見られます。魔物であるラッシュバードが、街道のど真ん中を軽快に疾走していくんです。驚くのも無理はないでしょう。
街を出て一日にもしないうちに、私たちは国境に差し掛かります。いかにあの街が国境に近いのかがよく分かりますね。
国境に近付きますと、私はアマリス様に頭からショールをかぶって頂きました。
なぜかって?
一般人でしたらそうでもありませんが、国境警備兵ともなれば王族の顔をよく知っているのですよ。遠めで見かけただけでも騒ぎますからね。
だからこそ、こうやって顔を隠してもらったのです。
まあ、ラッシュバードに乗っている時点で絞られてしまいますけれどね。
「えっと、次は……」
国境の兵士たちが順番に国境を越える人たちを調べています。
そんな中、何かひそひそと話す姿が見えますね。もしや気付かれたのでは?
そう思った瞬間、兵士たちが私たちに近付いてきました。
「失礼致します。ウィルソン公爵家のレイチェル嬢とルーチェ嬢とお見受けいたしますが……」
なんてことでしょうか。近付いてきた理由は、私たちの方でした。
ですが、こうやって声をかけてきたということは、この混雑を突破できるということです。ならば、ここは乗らせて頂きましょう。
「はい、その通りです」
「ってことは、こちらのお方は……」
私が正直に答えますと、兵士たちがごくりと息をのみながら、私たちと一緒にいるお方を見ています。
私たちと一緒にいると、分かってしまうのですね。怖いですね。
「はい、わたくしですよ」
アマリス様が、頭にかぶったフードをちらりと持ち上げて返事をします。
その顔を見て、兵士たちはびっくりしていますね。
「やはり、アマリス王女殿下でございましたか。ここから先は別の国です。危険を承知で向かわれるのですか?」
アマリス様だと見るや、どうやら引き返すように説得をしようとしているみたいですね。
まぁそれもそうですね。護衛がいませんもの。
いるのは私とルーチェ、それと二羽のラッシュバードです。心配になるのも頷けます。
「大丈夫です。お姉様がいらっしゃいますし、この子たちもいますから」
「ブフェーッ!」
アマリス様が隣にいるフォレを撫でますと、フォレは任せろといわんばかりに鳴いています。
ですが、兵士たちは心配そうに見ています。
「大丈夫でございます。私がきっと守ってみせますから。なんといっても、私のわがままで、今回は隣国にお邪魔するのですからね」
「そ、そうですか。ですが……」
私が説得を試みようにも、兵士たちはごねた様子を見せています。
困りましたね。こんなところで時間を取っているわけには参りませんのに。
私は、唸ってしまいます。
「私たちは、レチェ商会の営業のために隣国に向かうのです。商人ということで、ここは通して頂けませんか?」
私たちは必死にお願いをします。
「分かりました。ですが、陛下や殿下方には報告させて頂きますからね。何かあっては困りますのでね」
「はい、十分承知しております」
兵士たちをどうにか説得して、国王陛下たちに報告することと引き換えに国境の通過をなんとか勝ち取りました。
並んで待っておられる方々には申し訳ございませんが、私たちは検問を無事に突破しまして、隣国アムスの領土に足を踏み入れました。
調べた限り、マソルの街までは馬車で四日ほどかかります。フォレとラニの足ならば、一日ちょっとあれば到着できるでしょう。
「さあ、フォレ、ラニ。マソルの街に向けて出発ですよ」
「ブェフェーッ!」
私が声をかけますと、フォレとラニは元気よく返事をして走り出します。
さあ、待っていて下さい、海産物たち。
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