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第169話 私はやり過ぎた
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あっという間に王都に到着してしまいます。
王都の入口でミサエラさんは兵士に何かを話しています。兵士は頷くと、馬に乗ってどこかに走り去っていきました。
「えっと、何をされたのでしょうか」
「レイチェルさんがご心配することではありませんよ。さあ、お城に向かいましょう」
「は、はい……」
ミサエラさんの勢いに私はずっとたじたじです。ここまで怖いミサエラさんは、本当に見た覚えがありません。
門を無事に通過した私たちは、お城へと向かってラッシュバードを走らせます。
普通なら、魔物が街の中を疾走しているので慌てそうなものです。ですが、ラッシュバードはお城や魔法学園で飼われていることが広まっているせいか、道行く人たちは実に落ち着いたものです。
人の行き交う大通りを抜け、私たちはお城に到着してしまいました。
「ああ、ここにまた来るなんて……」
「わたくしは嬉しいですね。ルーチェには悪いとはお思いますが、やはり、お姉様はお城にいるべきだと思うのです」
「私もそう思いますよ。私なんてまだまだ未熟ですから、王妃になるなんて不安で仕方ないです」
呆然とする私に対して、アマリス様もルーチェもやたらと持ち上げてきます。
ですけれど、私は入れて当然のような魔法学園に入れなかったのです。そんな汚点持ちを王族に迎えるわけにはいかないでしょう。
二人の期待には副えないと、私は首を左右に振ります。
「さあ、アマリス王女殿下。国王陛下のところまでご案内いただけますか」
「分かりました。お姉様の魔法のことをお伝えするんですよね。わたくしにお任せ下さい」
お城に着いたところで、アマリス様が門番に用件を伝えます。アマリス様から頼まれた門番は、ものすごく背筋を伸ばして元気よく返事をすると、そのままお城の中へと駆けていきました。
私たちの方に振り返ったかと思いますと、にこりと微笑んでいました。
お城の鳥小屋にイチたちを預けますと、私たちは謁見の間へと向かいます。どうやらアマリス様は、こちらを待ち合わせの場所として指定されたようです。陛下の執務室でもよかったと思われますが、仕方ありませんね。
謁見の間にたどり着きますが、すぐに入ることはできませんでした。陛下たちがいらしてないそうです。一国の王様ともなれば、それは忙しいに決まっていますからね。謁見の間の外で、私たちはしばらく待たされることになります。
どのくらい待ちましたでしょうか。ようやく謁見の間に入ることができました。
中に進みますと、国王陛下、王妃殿下、それとアンドリュー殿下の三人が待ち構えていました。よく見ますと、私の両親もいますね。なぜ、いるのでしょうか。
よくは分かりませんが、とりあえず陛下の前で跪きます。
「アマリス。私たちを集めて一体何の話だ」
国王陛下の第一声は、アマリス様への質問でした。
「お父様、今回用事があるのは私ではありません。こちらのキンソンの商業ギルドの副マスターでいらっしゃいますミサエラ様でいらっしゃいます」
「なに?」
「お久しゅうございます、国王陛下」
アマリス様に紹介されたミサエラさんは、なぜか国王にこんな挨拶をします。ミサエラさんはリキシルおじ様の妻ではありますが、そもそもは平民です。国王陛下とお会いすることはまずないはずです。
「おお、ミサエラか。そなたが話があるということは、またレイチェル絡みか」
「その通りでございます」
国王の反応を聞きまして、私は思わず顔をしかめてしまいます。『また』ってどういうことですかね。詳しくお聞かせ願いたいですね。
そうは思いますけれど、国王陛下たちの前ですので、私はぐっとこらえます。
「ミサエラ、詳しく聞かせてくれ」
「承知致しました」
国王からの問い掛けに、ミサエラさんは私のことをこれでもかと報告していきます。よっぽど今回のことは腹に据えかねたのか、ちょっと勢いがすごすぎませんでしょうかね。
「分かった分かった。とにかくレイチェルが無茶苦茶をしてくれたのはよく分かった。まったく、お前の娘はやりたい放題だな、ウィルソン公爵」
「まったくですな。田舎でゆっくりおとなしくしてくれると思っていたのですが、これはなんともいえない見込み違いでしたかね」
なんだか空気が怪しくなってきましたね、これは。
「とんでもない技術を他国で披露するとはな。まったく、公爵令嬢でなければどんな罰が下っていたか分からんぞ」
「も、申し訳ございません」
国王の言葉を聞いて、私は謝罪するしかなかった。なるほど、アムス王国のマソルでいろんな魔法を披露したのがよくなかったようですね。
とはいいましても、商売の取引上仕方ありませんでした。特に魔法かばんは説明しないことには使っていただけないですからね。
「悪いがレイチェル」
「はい、国王陛下」
「商会を継続させるのは認めるが、お前には騎士の監視をつけることにする。今後は何をするにしても商業ギルドや冒険者ギルドに必ず報告しろ。これ以上自由にさせると面倒になりそうだからな」
「そ、そんな……」
あれこれやらかしてきたツケが、今ここで回ってきてしまったようです。
私は、ウィズタリア王家の監視下に置かれることになってしまったのです。
王都の入口でミサエラさんは兵士に何かを話しています。兵士は頷くと、馬に乗ってどこかに走り去っていきました。
「えっと、何をされたのでしょうか」
「レイチェルさんがご心配することではありませんよ。さあ、お城に向かいましょう」
「は、はい……」
ミサエラさんの勢いに私はずっとたじたじです。ここまで怖いミサエラさんは、本当に見た覚えがありません。
門を無事に通過した私たちは、お城へと向かってラッシュバードを走らせます。
普通なら、魔物が街の中を疾走しているので慌てそうなものです。ですが、ラッシュバードはお城や魔法学園で飼われていることが広まっているせいか、道行く人たちは実に落ち着いたものです。
人の行き交う大通りを抜け、私たちはお城に到着してしまいました。
「ああ、ここにまた来るなんて……」
「わたくしは嬉しいですね。ルーチェには悪いとはお思いますが、やはり、お姉様はお城にいるべきだと思うのです」
「私もそう思いますよ。私なんてまだまだ未熟ですから、王妃になるなんて不安で仕方ないです」
呆然とする私に対して、アマリス様もルーチェもやたらと持ち上げてきます。
ですけれど、私は入れて当然のような魔法学園に入れなかったのです。そんな汚点持ちを王族に迎えるわけにはいかないでしょう。
二人の期待には副えないと、私は首を左右に振ります。
「さあ、アマリス王女殿下。国王陛下のところまでご案内いただけますか」
「分かりました。お姉様の魔法のことをお伝えするんですよね。わたくしにお任せ下さい」
お城に着いたところで、アマリス様が門番に用件を伝えます。アマリス様から頼まれた門番は、ものすごく背筋を伸ばして元気よく返事をすると、そのままお城の中へと駆けていきました。
私たちの方に振り返ったかと思いますと、にこりと微笑んでいました。
お城の鳥小屋にイチたちを預けますと、私たちは謁見の間へと向かいます。どうやらアマリス様は、こちらを待ち合わせの場所として指定されたようです。陛下の執務室でもよかったと思われますが、仕方ありませんね。
謁見の間にたどり着きますが、すぐに入ることはできませんでした。陛下たちがいらしてないそうです。一国の王様ともなれば、それは忙しいに決まっていますからね。謁見の間の外で、私たちはしばらく待たされることになります。
どのくらい待ちましたでしょうか。ようやく謁見の間に入ることができました。
中に進みますと、国王陛下、王妃殿下、それとアンドリュー殿下の三人が待ち構えていました。よく見ますと、私の両親もいますね。なぜ、いるのでしょうか。
よくは分かりませんが、とりあえず陛下の前で跪きます。
「アマリス。私たちを集めて一体何の話だ」
国王陛下の第一声は、アマリス様への質問でした。
「お父様、今回用事があるのは私ではありません。こちらのキンソンの商業ギルドの副マスターでいらっしゃいますミサエラ様でいらっしゃいます」
「なに?」
「お久しゅうございます、国王陛下」
アマリス様に紹介されたミサエラさんは、なぜか国王にこんな挨拶をします。ミサエラさんはリキシルおじ様の妻ではありますが、そもそもは平民です。国王陛下とお会いすることはまずないはずです。
「おお、ミサエラか。そなたが話があるということは、またレイチェル絡みか」
「その通りでございます」
国王の反応を聞きまして、私は思わず顔をしかめてしまいます。『また』ってどういうことですかね。詳しくお聞かせ願いたいですね。
そうは思いますけれど、国王陛下たちの前ですので、私はぐっとこらえます。
「ミサエラ、詳しく聞かせてくれ」
「承知致しました」
国王からの問い掛けに、ミサエラさんは私のことをこれでもかと報告していきます。よっぽど今回のことは腹に据えかねたのか、ちょっと勢いがすごすぎませんでしょうかね。
「分かった分かった。とにかくレイチェルが無茶苦茶をしてくれたのはよく分かった。まったく、お前の娘はやりたい放題だな、ウィルソン公爵」
「まったくですな。田舎でゆっくりおとなしくしてくれると思っていたのですが、これはなんともいえない見込み違いでしたかね」
なんだか空気が怪しくなってきましたね、これは。
「とんでもない技術を他国で披露するとはな。まったく、公爵令嬢でなければどんな罰が下っていたか分からんぞ」
「も、申し訳ございません」
国王の言葉を聞いて、私は謝罪するしかなかった。なるほど、アムス王国のマソルでいろんな魔法を披露したのがよくなかったようですね。
とはいいましても、商売の取引上仕方ありませんでした。特に魔法かばんは説明しないことには使っていただけないですからね。
「悪いがレイチェル」
「はい、国王陛下」
「商会を継続させるのは認めるが、お前には騎士の監視をつけることにする。今後は何をするにしても商業ギルドや冒険者ギルドに必ず報告しろ。これ以上自由にさせると面倒になりそうだからな」
「そ、そんな……」
あれこれやらかしてきたツケが、今ここで回ってきてしまったようです。
私は、ウィズタリア王家の監視下に置かれることになってしまったのです。
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