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第180話 ソースです
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私は野菜をぐつぐつと煮込んで、塩とワインビネガーとりんごの果汁を加えたものを、こしていきます。
うっすら作り方が記憶にありましたので、これで作り方は間違っていないと思います。ただ、材料の不足は否めませんね。こちらの世界では手に入るものが少なすぎるのです。
「う~ん、まあいい感じでしょうかね」
『主、ボクたちも味を見させてもらっていい?』
「ええ、いいですわよ。精霊の口に合うかは分かりませんけれど」
作りたてのソースを小皿に取り分けて、私はノームに味を見てもらいます。
『う~ん、変な味だね』
「覚えている限りの材料を煮詰めただけですからね。ここから熟成させて、ようやく完成ですよ」
『そうなんだ。なら、その熟成っていうのはボクたちに任せて』
「よろしいのですか?」
『任せて。ほどいい感じにしてみせるよ』
私はノームの言葉を信じて、ソースの熟成を任せます。
時間としてはおおよそ三か月ほど経ったくらいを指定します。ノームはにっこりと笑って、野菜を煮詰めた瓶を取り囲みました。
『ううう、え~いっ!』
仲間を集めてまで不思議な踊りを踊ったノームたちですが、その中心にあった瓶には外見上何の変化もありません。
しばらく踊っていたノームたちの動きが止まります。
『これで大丈夫なはずだよ。確認してみて』
「え、ええ。分かりました」
私は瓶のふたを開けて、中身を確認します。スプーンでひとすくいして、小皿に取ります。
においは、確かに前世でかいだことがあるようなものです。問題は味ですね。
「あ、いい感じですね」
絶対的な調味料の不足でどうなるかと思いましたが、塩とワインビネガーだけでもどうにかなりましたね。本当なら胡椒とか唐辛子も欲しかったのですが、見つかりませんでしたからしょうがありません。
『主、これで何をするの?』
「お料理を作るんですよ。これがあると、料理の幅がさらに広がりますからね」
『ふ~ん、そうなんだ』
基本的に食事をしないためか、ノームは興味がなさそうですね。
ですが、これがありますとシチューなどを作ることもできます。もう少し量を作って、リキシルおじ様のお屋敷に持ち込んでみましょうか。私のような素人より、職業料理人の方がきっともっといろいろ作って下さるはずですからね。
ひとまず、ノームの協力で私の背の半分程度の瓶に入るソースをよっつほどこしらえました。このうちのふたつをリキシルおじ様のところへと持っていくことにします。
私は瓶を魔法かばんにしまい込みますと、みんなに挨拶をしてすぐさまリキシルおじ様の屋敷へと急ぎました。
スピードに乗って、久しぶりにリキシルおじ様のお屋敷にやってきました。ここに来るのは、公爵領に住むようになった時以来ですかね。おじさまの方から来られることはありましたが、私が出向くことはありませんでしたもの。
当然ながら、門番の方は慌てたように私をお屋敷の中に案内します。
「おお、レイチェル。今日はどうしたのかな?」
「リキシルおじ様、お久しぶりでございます。本日は、料理長にご用がありまして、お伺いさせていただきました」
「ほう、料理長にか。あやつなら今は厨房にいるはずだ。邪魔しないように気をつけておくれよ」
「はい、ありがとうございます」
居場所を聞き出しまして、私はすぐさま移動をします。
厨房で一人背の高い帽子をかぶった方がいらっしゃいますが、その方が料理長ですね。
「おや、レイチェルお嬢様。本日はどうなされたのですか」
さすがは長くこの公爵家に仕える料理長。久しぶりの私を見ても驚くどころか普通に接してこられましたね。
「料理長。本日はこれをお持ちしました。どうぞ、お使いください」
「おやおや、なんでしょうか」
私は魔法かばんから大きな瓶をひとつ出します。魔法かばんのこともあって、料理長は驚いたような表情をしてられますね。
ひとまずそれは放っておきまして、一緒に持ってきた小皿とひしゃくを使って、中身を料理長に味見してもらいます。
「ずいぶんと黒っぽい色の液体ですな。なんですかなこれは」
「まあまあ、味わってみて下さい」
「分かりました。レイチェルお嬢様のご用意されたものでしたら……」
なんとも半信半疑な顔をされますね。得体の知れないものなら仕方ありませんか。
ところが、一口含んだ料理長は、表情がみるみる変わっていきます。
「なるほど、セロリ、にんじん、玉ねぎ、りんご、塩とワインビネガーといったところでしょうか」
怖いですね。使った材料を全部当てられてしまいましたよ。さすが料理人、なめてかかっては痛い目に遭いますね。
「よく分かりましたね」
「これでも、料理人ですからね。はっはっはっ」
料理長は笑っています。
「なるほど、これを私に下さるのですか?」
「はい、その通りです。煮詰めてこしただけのものですが、料理長ならきっとうまく使って下さると思いましてね」
「これはありがとうございます。レイチェルお嬢様からの贈り物ですので、大切に使わせて頂きます」
「いえ、早く使い切って下さいね。いつでも作れますから」
「はははっ、これまたご冗談を」
料理長が信じてくれない感じですので、私は残ってる瓶も全部取り出します。さすがにこうなると料理長も黙ってしまいました。
これだけあるのですから、じゃんじゃん使っていただいて構わないのですよ。
「私も新しい味の開発に頑張りますので、時々情報交換を致しませんか?」
「しょ、承知致しました。頑張らせて頂きます」
並べられた瓶を眺めて、料理長が表情を青ざめさせています。
ひとまず、瓶をひとつだけ置いていきますと、二週間後にまた来るとだけ約束して私はその場を立ち去りました。
さあ、頑張ってソースを広めていくこととしましょう。
私はちょっと楽しみに笑ってしまうのでした。
うっすら作り方が記憶にありましたので、これで作り方は間違っていないと思います。ただ、材料の不足は否めませんね。こちらの世界では手に入るものが少なすぎるのです。
「う~ん、まあいい感じでしょうかね」
『主、ボクたちも味を見させてもらっていい?』
「ええ、いいですわよ。精霊の口に合うかは分かりませんけれど」
作りたてのソースを小皿に取り分けて、私はノームに味を見てもらいます。
『う~ん、変な味だね』
「覚えている限りの材料を煮詰めただけですからね。ここから熟成させて、ようやく完成ですよ」
『そうなんだ。なら、その熟成っていうのはボクたちに任せて』
「よろしいのですか?」
『任せて。ほどいい感じにしてみせるよ』
私はノームの言葉を信じて、ソースの熟成を任せます。
時間としてはおおよそ三か月ほど経ったくらいを指定します。ノームはにっこりと笑って、野菜を煮詰めた瓶を取り囲みました。
『ううう、え~いっ!』
仲間を集めてまで不思議な踊りを踊ったノームたちですが、その中心にあった瓶には外見上何の変化もありません。
しばらく踊っていたノームたちの動きが止まります。
『これで大丈夫なはずだよ。確認してみて』
「え、ええ。分かりました」
私は瓶のふたを開けて、中身を確認します。スプーンでひとすくいして、小皿に取ります。
においは、確かに前世でかいだことがあるようなものです。問題は味ですね。
「あ、いい感じですね」
絶対的な調味料の不足でどうなるかと思いましたが、塩とワインビネガーだけでもどうにかなりましたね。本当なら胡椒とか唐辛子も欲しかったのですが、見つかりませんでしたからしょうがありません。
『主、これで何をするの?』
「お料理を作るんですよ。これがあると、料理の幅がさらに広がりますからね」
『ふ~ん、そうなんだ』
基本的に食事をしないためか、ノームは興味がなさそうですね。
ですが、これがありますとシチューなどを作ることもできます。もう少し量を作って、リキシルおじ様のお屋敷に持ち込んでみましょうか。私のような素人より、職業料理人の方がきっともっといろいろ作って下さるはずですからね。
ひとまず、ノームの協力で私の背の半分程度の瓶に入るソースをよっつほどこしらえました。このうちのふたつをリキシルおじ様のところへと持っていくことにします。
私は瓶を魔法かばんにしまい込みますと、みんなに挨拶をしてすぐさまリキシルおじ様の屋敷へと急ぎました。
スピードに乗って、久しぶりにリキシルおじ様のお屋敷にやってきました。ここに来るのは、公爵領に住むようになった時以来ですかね。おじさまの方から来られることはありましたが、私が出向くことはありませんでしたもの。
当然ながら、門番の方は慌てたように私をお屋敷の中に案内します。
「おお、レイチェル。今日はどうしたのかな?」
「リキシルおじ様、お久しぶりでございます。本日は、料理長にご用がありまして、お伺いさせていただきました」
「ほう、料理長にか。あやつなら今は厨房にいるはずだ。邪魔しないように気をつけておくれよ」
「はい、ありがとうございます」
居場所を聞き出しまして、私はすぐさま移動をします。
厨房で一人背の高い帽子をかぶった方がいらっしゃいますが、その方が料理長ですね。
「おや、レイチェルお嬢様。本日はどうなされたのですか」
さすがは長くこの公爵家に仕える料理長。久しぶりの私を見ても驚くどころか普通に接してこられましたね。
「料理長。本日はこれをお持ちしました。どうぞ、お使いください」
「おやおや、なんでしょうか」
私は魔法かばんから大きな瓶をひとつ出します。魔法かばんのこともあって、料理長は驚いたような表情をしてられますね。
ひとまずそれは放っておきまして、一緒に持ってきた小皿とひしゃくを使って、中身を料理長に味見してもらいます。
「ずいぶんと黒っぽい色の液体ですな。なんですかなこれは」
「まあまあ、味わってみて下さい」
「分かりました。レイチェルお嬢様のご用意されたものでしたら……」
なんとも半信半疑な顔をされますね。得体の知れないものなら仕方ありませんか。
ところが、一口含んだ料理長は、表情がみるみる変わっていきます。
「なるほど、セロリ、にんじん、玉ねぎ、りんご、塩とワインビネガーといったところでしょうか」
怖いですね。使った材料を全部当てられてしまいましたよ。さすが料理人、なめてかかっては痛い目に遭いますね。
「よく分かりましたね」
「これでも、料理人ですからね。はっはっはっ」
料理長は笑っています。
「なるほど、これを私に下さるのですか?」
「はい、その通りです。煮詰めてこしただけのものですが、料理長ならきっとうまく使って下さると思いましてね」
「これはありがとうございます。レイチェルお嬢様からの贈り物ですので、大切に使わせて頂きます」
「いえ、早く使い切って下さいね。いつでも作れますから」
「はははっ、これまたご冗談を」
料理長が信じてくれない感じですので、私は残ってる瓶も全部取り出します。さすがにこうなると料理長も黙ってしまいました。
これだけあるのですから、じゃんじゃん使っていただいて構わないのですよ。
「私も新しい味の開発に頑張りますので、時々情報交換を致しませんか?」
「しょ、承知致しました。頑張らせて頂きます」
並べられた瓶を眺めて、料理長が表情を青ざめさせています。
ひとまず、瓶をひとつだけ置いていきますと、二週間後にまた来るとだけ約束して私はその場を立ち去りました。
さあ、頑張ってソースを広めていくこととしましょう。
私はちょっと楽しみに笑ってしまうのでした。
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