ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします

未羊

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第195話 妹たちの卒業パーティー

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 気が付けば、あっという間に一年が経ってしまいます。
 私は学園の卒業式の日に合わせて、王都に向かうことになりました。アマリス様とルーチェの晴れ姿を見ないわけにはまいりませんからね。
 私の商会はどうにか新しい人を雇い入れることができまして、王都に出向く算段がつきました。
 ワイルズの存在も大きいですね。なんですか、あの反則的なスペックは。
 ちなみに商会の防犯は、私がそのための魔道具を完成させて運用することにしました。魔力の消耗が大きいですが、商会で扱っているものを考えれば仕方ない措置ですよ。

「それでは、私は王都に行ってまいります。留守の間は頼みましたよ、イリス」

「はい、レチェ様。お気をつけて」

 出発の日、私は従業員たちに見送られながら、キンソンの街を出発しました。

 ラッシュバードのスピードに乗って、あっという間に王都に到着します。
 となると、私の向かう先はひとつ。そう、実家であるウィルソン公爵邸です。

「ただいま戻りました、お父様、お母様、ルーチェ」

「おお、よく戻ったね、レイチェル」

「あなたの活躍は聞いているわよ。あなたがそんなに多才だったなんて、私たちは驚きだわ」

 お父様もお母様も、私を快く出迎えて下さります。結局何があっても、親子というのは親子なのだなと感じさせられます。
 私はいい家族に恵まれましたね。

「お姉様、嬉しいです。事業が忙しいでしょうに、わざわざ来て頂けるなんて」

「可愛い妹のためになら、姉というのは少々の無茶をもしてしまうものなのですよ、ルーチェ」

「お姉様」

 私とルーチェはがっちりと抱き合います。
 本当に、どんなことがあってもルーチェの私への感情は変わりませんね。だからこそ、私もルーチェを大事にしていられるのですよ。もちろん、私に対して冷めていたとしても、私は大切にしたでしょうけれどね。

「ルーチェ、卒業と婚約おめでとう」

「お姉様、それはまだ早いですよ」

 私がお祝いをすると、ルーチェからマジレスされてしまいました。ふふっ、頭も本当にいい子です。

「それにしても、イリスもギルバートも戻ってこれなかったんだな」

「はい。二人とも今は重要な仕事をしておりますから。どうしても持ち場を離れられないのです」

「本当なら、レイチェルを一人で行動させてどうするんだといいたいところですが、それならば仕方ありませんね」

 お父様とお母様の心配はよく分かりますが、もう今さらです。私が単独行動をするなんて、これで何度目か分かりませんからね。
 この日の夜は家族で語らいながら、私は楽しく過ごさせていただきました。

 数日後、私たちはお城へと向かうこととなりました。
 ええ、アマリス様の卒業祝いのパーティーです。アンドリュー殿下とアマリス様は年子ですからね。二年連続でこういうことになるのです。
 それにしても、また私がお城にやって来ていることで、噂をなさっていらっしゃる方がいますね。私だって正式な招待客ですよ。私がいることに文句があるということは、王家に意見しているということに気が付いて下さいませ。

「さあ、お姉様。わたくしと踊りましょう」

 アンドリュー殿下、ルーチェと踊っていたアマリス様が、私に対して手を差し伸べてきます。
 予想はしていましたが、実際に手を差し伸べられるとびっくりしますね。ですが、もちろん私はその手を取ります。
 私とアマリス様が踊りますと、噂をしていた貴族たちは黙り込んだようです。
 魔法学園に入れませんでしたし、アンドリュー殿下との婚約は解消しました。ですが、私と王家との関係はいまだ良好なのですよ。まったく、去年もアンドリュー殿下と踊りましたのに、懲りない人たちですよね。

 私とアマリス様のダンスが終わりますと、私はルーチェに手招きされて移動します。アマリス様もついてこられます。
 ルーチェのところにやってきますと、そこには一人の女性がいらっしゃいました。宝石のように美しい青い髪と瞳が特徴の女性です。

「ルーチェ、その方は?」

 私は気になって声をかけます。

「先日お話しました、お姉様のところで働きたいという方です」

「あの、レイチェル様、初めまして。ルリ・ターコイズと申します。家は子爵です」

 ルリもターコイズも青色ですね。分かりやすい方です。

「私、三女ですので、好きにしてもいいと言われました。なので、商人を目指して、レイチェル様のところで働きたいと存じます。お雇い、いただけるでしょうか」

 ものすごく態度はおどおどとしています。けれど、言葉はしっかりとしていますね。
 見た目も悪くはありませんけれど、子爵家の三女ということであまり期待はかけられなかったのでしょうね。

「ルリ様はあまり運動はお得意ではありません。その代わり、魔法に関してはかなりの腕前でいらっしゃいます。お姉様の元にいらしたら、きっと能力を活かせると思いますのよ」

 アマリス様にこのように紹介されて、ルリ様はとても照れていますね。なんとも可愛らしいものです。
 そうですね。事業拡大のためには、私の代わりに魔道具を作ってもらえる方がいらっしゃらないと困ります。
 少し悩みましたけれど、私はルリ様を雇い入れることを了承しました。ルリ様はとても喜んでいらっしゃいますね。
 あとでターコイズ子爵家にご挨拶に向かいませんと。ご両親を説得しませんと、正式に決定はできませんから。
 仮ではありますけれど、新しい従業員をゲットですね。
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