ラミアプリンセスは配信者

未羊

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SCENE027 お姉さんはショック

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 ダンジョン管理局から依頼を受けたという探索者が、僕のダンジョンにやってきたらしい。
 入口近くまでの短絡路を通って、僕とバトラーは日下さんと一緒に入口までやってきた。
 僕はどんな人が来たんだろうと緊張した様子でいたけれど、立っていた女性の姿と名前から、すぐに思い出してしまった。

「そうか、衣織お姉さんですか、お久しぶりですね」

 目の前にいた女性の顔に少し見覚えがあったんだ。
 妹の瞳と一緒に時々遊んでもらっていた、近所のお姉さんだ。家自体は離れているんだけど、両親のほとんどが学生の頃の先輩後輩の関係だったということで、時々遊んでもらってたんだ。今も付き合いがあって、瞳の話では僕の行方不明の際に心配で様子を見に来てくれたらしい。

「ほ、本当に瞬くんなのか? だって、君は男の子だろう……?」

「そうですね。でも、今の僕はラミアプリンセス。見ての通りの女の子ですよ」

「な、なんてこった……」

 衣織お姉さんは、額に手を置いて、天井に顔を向けてしまった。

「なるほど、配信で君を見た瞬間に庇護欲が湧いてきたのはそういうわけか。納得がいったよ。いや、久しぶりに出会ったらモンスターになっているとか、物語でもそうあることじゃないぞ」

「はははっ、僕もそう思いますよ」

 なんともすっきりしない表情をしている衣織お姉さんだけど、僕はついおかしくて笑ってしまっていた。
 谷地さんと日下さんは、ぎょっとした顔で僕たちの様子を見ているようだ。

「これはこれは、まさかプリンセスのお知り合いの方でしたか」

「お前は誰だ?」

 バトラーが声をかけると、衣織お姉さんの声が険しい感じに変わった。バトラーは純粋なモンスターだから、警戒をしてしまうよね。

「我の名はバトラー。プリンセスの忠実な執事でございます。よもや、プリンセスのお知り合いの方だとは思いませんでしたな」

「お前か、瞬をこのような姿にしたのは」

「その通りでございます。我は長らく、このダンジョンのマスターにふさわしい方を待ち続けておりました。それがたまたまプリンセスだったというわけですな」

 睨みつけている衣織お姉さんに対して、バトラーは淡々と話を続けている。これが人間とモンスターの感性の違いなんだろうなと思わされる。
 僕の感覚はまだ人間寄りだけど、これはどっちにも味方ができない状況な感じがするよ。

「まあまあ、ケンカはしないで下さいよ。これからこのダンジョンの運営を一緒に行う仲間なんですからね」

「そうでしたな。我よりもレベルの低い女に、いつまでも構ってはおられませんぞ」

「なんだと、この蛇ごときが」

 バトラー、なんでそんな煽るようなこと言うんだよ。それと衣織お姉さんも真に受けすぎ!
 ちょっと突けば争いが起こりそうで、僕はすっごく怖かった。

「ストップ、ストップ。ほら、ダンジョンのことで話をするんだから、場所を変えようよ、ね?」

 ここは僕が間に入って止めるしかないと、大声で二人の間に文字通り割って入った。二人の視線がすっごく怖いよ。

「プリンセスがそこまで仰られるのでしたら、仕方ありませんな。いやはや、モンスターの本能といいますか、探索者相手になるとついムキになってしまいますな」

「すまなかったな、瞬。弟のように可愛がっていたのに、モンスターに取られたことでいらだってしまっていたようだ」

 互いに謝っているようには思えないけれど、僕に対して反省を口にしているのなら、まあいいかなとすることにした。

「とりあえず、一番奥まで案内しますから、ついてきて下さい」

 気持ちを切り替えて、僕は衣織お姉さんをダンジョンの一番奥まで案内することにした。
 一階層を一番奥まで行くと部屋があり、中には十体のキラーアントが群れている。
 バトラーがギロリと睨むと、キラーアントたちは僕たちに近付いてくることはなかった。

「モンスターが怯むということは、バトラーとやらはそれだけ強いということか」

「そうですぞ。我はダンジョンマスターを迎えて仕えるべく、ずっと鍛えて参りました。レベルは71ですぞ」

「レベルって概念があるのか……」

「強さの指標になりますからな」

「なるほど」

 衣織お姉さんは、バトラーの話に納得がいっているようだ。
 そう言っている間に、階段を降りて二階層に入る。この二階層はただ広い空間で、モンスターも罠も存在してない状態だ。
 奥に向かって低くなっているし、空間も広い。どのようなダンジョンにしようか、考え中なんだよね。

「ここから降りて三階層ですね。少し進めば僕たちの住むボス部屋に到着します」

「短いな」

「まあ、無人ダンジョン時代から短かったですし、僕もほとんどいじれてませんからね。初心者用のダンジョンにするにも、どうしたらいいのか考え中なんですよ」

「そっか」

 僕の言葉に、衣織お姉さんは淡々と反応していた。

「さあ、着きましたよ。ここが僕たちの住まいであるボス部屋です」

 僕が部屋に到着して説明を入れた瞬間だった。

「ちょっと、衣織お姉さん?!」

 なんてことなんだろうか。
 ボス部屋に到着した瞬間、衣織お姉ちゃんがバトラーに向けて斬りかかっていっていた。
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