28 / 141
SCENE027 お姉さんはショック
しおりを挟む
ダンジョン管理局から依頼を受けたという探索者が、僕のダンジョンにやってきたらしい。
入口近くまでの短絡路を通って、僕とバトラーは日下さんと一緒に入口までやってきた。
僕はどんな人が来たんだろうと緊張した様子でいたけれど、立っていた女性の姿と名前から、すぐに思い出してしまった。
「そうか、衣織お姉さんですか、お久しぶりですね」
目の前にいた女性の顔に少し見覚えがあったんだ。
妹の瞳と一緒に時々遊んでもらっていた、近所のお姉さんだ。家自体は離れているんだけど、両親のほとんどが学生の頃の先輩後輩の関係だったということで、時々遊んでもらってたんだ。今も付き合いがあって、瞳の話では僕の行方不明の際に心配で様子を見に来てくれたらしい。
「ほ、本当に瞬くんなのか? だって、君は男の子だろう……?」
「そうですね。でも、今の僕はラミアプリンセス。見ての通りの女の子ですよ」
「な、なんてこった……」
衣織お姉さんは、額に手を置いて、天井に顔を向けてしまった。
「なるほど、配信で君を見た瞬間に庇護欲が湧いてきたのはそういうわけか。納得がいったよ。いや、久しぶりに出会ったらモンスターになっているとか、物語でもそうあることじゃないぞ」
「はははっ、僕もそう思いますよ」
なんともすっきりしない表情をしている衣織お姉さんだけど、僕はついおかしくて笑ってしまっていた。
谷地さんと日下さんは、ぎょっとした顔で僕たちの様子を見ているようだ。
「これはこれは、まさかプリンセスのお知り合いの方でしたか」
「お前は誰だ?」
バトラーが声をかけると、衣織お姉さんの声が険しい感じに変わった。バトラーは純粋なモンスターだから、警戒をしてしまうよね。
「我の名はバトラー。プリンセスの忠実な執事でございます。よもや、プリンセスのお知り合いの方だとは思いませんでしたな」
「お前か、瞬をこのような姿にしたのは」
「その通りでございます。我は長らく、このダンジョンのマスターにふさわしい方を待ち続けておりました。それがたまたまプリンセスだったというわけですな」
睨みつけている衣織お姉さんに対して、バトラーは淡々と話を続けている。これが人間とモンスターの感性の違いなんだろうなと思わされる。
僕の感覚はまだ人間寄りだけど、これはどっちにも味方ができない状況な感じがするよ。
「まあまあ、ケンカはしないで下さいよ。これからこのダンジョンの運営を一緒に行う仲間なんですからね」
「そうでしたな。我よりもレベルの低い女に、いつまでも構ってはおられませんぞ」
「なんだと、この蛇ごときが」
バトラー、なんでそんな煽るようなこと言うんだよ。それと衣織お姉さんも真に受けすぎ!
ちょっと突けば争いが起こりそうで、僕はすっごく怖かった。
「ストップ、ストップ。ほら、ダンジョンのことで話をするんだから、場所を変えようよ、ね?」
ここは僕が間に入って止めるしかないと、大声で二人の間に文字通り割って入った。二人の視線がすっごく怖いよ。
「プリンセスがそこまで仰られるのでしたら、仕方ありませんな。いやはや、モンスターの本能といいますか、探索者相手になるとついムキになってしまいますな」
「すまなかったな、瞬。弟のように可愛がっていたのに、モンスターに取られたことでいらだってしまっていたようだ」
互いに謝っているようには思えないけれど、僕に対して反省を口にしているのなら、まあいいかなとすることにした。
「とりあえず、一番奥まで案内しますから、ついてきて下さい」
気持ちを切り替えて、僕は衣織お姉さんをダンジョンの一番奥まで案内することにした。
一階層を一番奥まで行くと部屋があり、中には十体のキラーアントが群れている。
バトラーがギロリと睨むと、キラーアントたちは僕たちに近付いてくることはなかった。
「モンスターが怯むということは、バトラーとやらはそれだけ強いということか」
「そうですぞ。我はダンジョンマスターを迎えて仕えるべく、ずっと鍛えて参りました。レベルは71ですぞ」
「レベルって概念があるのか……」
「強さの指標になりますからな」
「なるほど」
衣織お姉さんは、バトラーの話に納得がいっているようだ。
そう言っている間に、階段を降りて二階層に入る。この二階層はただ広い空間で、モンスターも罠も存在してない状態だ。
奥に向かって低くなっているし、空間も広い。どのようなダンジョンにしようか、考え中なんだよね。
「ここから降りて三階層ですね。少し進めば僕たちの住むボス部屋に到着します」
「短いな」
「まあ、無人ダンジョン時代から短かったですし、僕もほとんどいじれてませんからね。初心者用のダンジョンにするにも、どうしたらいいのか考え中なんですよ」
「そっか」
僕の言葉に、衣織お姉さんは淡々と反応していた。
「さあ、着きましたよ。ここが僕たちの住まいであるボス部屋です」
僕が部屋に到着して説明を入れた瞬間だった。
「ちょっと、衣織お姉さん?!」
なんてことなんだろうか。
ボス部屋に到着した瞬間、衣織お姉ちゃんがバトラーに向けて斬りかかっていっていた。
入口近くまでの短絡路を通って、僕とバトラーは日下さんと一緒に入口までやってきた。
僕はどんな人が来たんだろうと緊張した様子でいたけれど、立っていた女性の姿と名前から、すぐに思い出してしまった。
「そうか、衣織お姉さんですか、お久しぶりですね」
目の前にいた女性の顔に少し見覚えがあったんだ。
妹の瞳と一緒に時々遊んでもらっていた、近所のお姉さんだ。家自体は離れているんだけど、両親のほとんどが学生の頃の先輩後輩の関係だったということで、時々遊んでもらってたんだ。今も付き合いがあって、瞳の話では僕の行方不明の際に心配で様子を見に来てくれたらしい。
「ほ、本当に瞬くんなのか? だって、君は男の子だろう……?」
「そうですね。でも、今の僕はラミアプリンセス。見ての通りの女の子ですよ」
「な、なんてこった……」
衣織お姉さんは、額に手を置いて、天井に顔を向けてしまった。
「なるほど、配信で君を見た瞬間に庇護欲が湧いてきたのはそういうわけか。納得がいったよ。いや、久しぶりに出会ったらモンスターになっているとか、物語でもそうあることじゃないぞ」
「はははっ、僕もそう思いますよ」
なんともすっきりしない表情をしている衣織お姉さんだけど、僕はついおかしくて笑ってしまっていた。
谷地さんと日下さんは、ぎょっとした顔で僕たちの様子を見ているようだ。
「これはこれは、まさかプリンセスのお知り合いの方でしたか」
「お前は誰だ?」
バトラーが声をかけると、衣織お姉さんの声が険しい感じに変わった。バトラーは純粋なモンスターだから、警戒をしてしまうよね。
「我の名はバトラー。プリンセスの忠実な執事でございます。よもや、プリンセスのお知り合いの方だとは思いませんでしたな」
「お前か、瞬をこのような姿にしたのは」
「その通りでございます。我は長らく、このダンジョンのマスターにふさわしい方を待ち続けておりました。それがたまたまプリンセスだったというわけですな」
睨みつけている衣織お姉さんに対して、バトラーは淡々と話を続けている。これが人間とモンスターの感性の違いなんだろうなと思わされる。
僕の感覚はまだ人間寄りだけど、これはどっちにも味方ができない状況な感じがするよ。
「まあまあ、ケンカはしないで下さいよ。これからこのダンジョンの運営を一緒に行う仲間なんですからね」
「そうでしたな。我よりもレベルの低い女に、いつまでも構ってはおられませんぞ」
「なんだと、この蛇ごときが」
バトラー、なんでそんな煽るようなこと言うんだよ。それと衣織お姉さんも真に受けすぎ!
ちょっと突けば争いが起こりそうで、僕はすっごく怖かった。
「ストップ、ストップ。ほら、ダンジョンのことで話をするんだから、場所を変えようよ、ね?」
ここは僕が間に入って止めるしかないと、大声で二人の間に文字通り割って入った。二人の視線がすっごく怖いよ。
「プリンセスがそこまで仰られるのでしたら、仕方ありませんな。いやはや、モンスターの本能といいますか、探索者相手になるとついムキになってしまいますな」
「すまなかったな、瞬。弟のように可愛がっていたのに、モンスターに取られたことでいらだってしまっていたようだ」
互いに謝っているようには思えないけれど、僕に対して反省を口にしているのなら、まあいいかなとすることにした。
「とりあえず、一番奥まで案内しますから、ついてきて下さい」
気持ちを切り替えて、僕は衣織お姉さんをダンジョンの一番奥まで案内することにした。
一階層を一番奥まで行くと部屋があり、中には十体のキラーアントが群れている。
バトラーがギロリと睨むと、キラーアントたちは僕たちに近付いてくることはなかった。
「モンスターが怯むということは、バトラーとやらはそれだけ強いということか」
「そうですぞ。我はダンジョンマスターを迎えて仕えるべく、ずっと鍛えて参りました。レベルは71ですぞ」
「レベルって概念があるのか……」
「強さの指標になりますからな」
「なるほど」
衣織お姉さんは、バトラーの話に納得がいっているようだ。
そう言っている間に、階段を降りて二階層に入る。この二階層はただ広い空間で、モンスターも罠も存在してない状態だ。
奥に向かって低くなっているし、空間も広い。どのようなダンジョンにしようか、考え中なんだよね。
「ここから降りて三階層ですね。少し進めば僕たちの住むボス部屋に到着します」
「短いな」
「まあ、無人ダンジョン時代から短かったですし、僕もほとんどいじれてませんからね。初心者用のダンジョンにするにも、どうしたらいいのか考え中なんですよ」
「そっか」
僕の言葉に、衣織お姉さんは淡々と反応していた。
「さあ、着きましたよ。ここが僕たちの住まいであるボス部屋です」
僕が部屋に到着して説明を入れた瞬間だった。
「ちょっと、衣織お姉さん?!」
なんてことなんだろうか。
ボス部屋に到着した瞬間、衣織お姉ちゃんがバトラーに向けて斬りかかっていっていた。
0
あなたにおすすめの小説
乗っ取られた家がさらに乗っ取られた。面白くなってきたので、このまま見守っていていいですか?
雪野原よる
恋愛
不幸な境遇の中で廃嫡され、救い出されて、国王の補佐官として働き始めた令嬢ユーザリア。追い出した側である伯爵家が次々と不幸に見舞われる中、国王とユーザリアの距離は近付いていき……
※このあらすじで多分嘘は言っていない
※シリアスの皮を被ったコメディです
※これで恋愛ものだと言い張る
怒らせてはいけない人々 ~雉も鳴かずば撃たれまいに~
美袋和仁
恋愛
ある夜、一人の少女が婚約を解消された。根も葉もない噂による冤罪だが、事を荒立てたくない彼女は従容として婚約解消される。
しかしその背後で爆音が轟き、一人の男性が姿を見せた。彼は少女の父親。
怒らせてはならない人々に繋がる少女の婚約解消が、思わぬ展開を導きだす。
なんとなくの一気書き。御笑覧下さると幸いです。
「婚約破棄された転生令嬢ですが、王城のメイド五百人に慕われるメイド長になりました。なお元婚約者は私のメイドに土下座中です」
まさき
恋愛
社畜OLの白瀬凛は、過労死した翌朝、異世界の侯爵令嬢アリア・ヴェルナーとして目を覚ました。
転生初日。
婚約者であるシュルツ公爵令息から、一方的に告げられる。
「君は無能だ。この婚約は破棄する」
行き場を失ったアリアが選んだのは、王城のメイドに志願すること。
前世でブラック企業に鍛えられた凛には、武器があった。
——人を動かす技術。業務を改善する知識。そして、折れない心。
雑用メイドからスタートした凛は、現代の知識を武器に王城を変えていく。
サボり魔、問題児、落ちこぼれ——誰もが見捨てたメイドたちが、次々と凛に懐いていく。
そして転生からわずか一年。
凛は王城に仕える500人のメイドを束ねる、史上最年少メイド長となっていた。
「——なぜ、君がここに」
国王主催の晩餐会。
青ざめた顔で立ち尽くす元婚約者の前で、500人のメイドたちが一斉に頭を下げる。
「アリア・ヴェルナー・メイド長。晩餐会の準備が整いました」
私を捨てたあの日、あなたの後悔も始まっていたのです。
——もう、遅いですけれど。
【完結】領主の妻になりました
青波鳩子
恋愛
「私が君を愛することは無い」
司祭しかいない小さな教会で、夫になったばかりのクライブにフォスティーヌはそう告げられた。
===============================================
オルティス王の側室を母に持つ第三王子クライブと、バーネット侯爵家フォスティーヌは婚約していた。
挙式を半年後に控えたある日、王宮にて事件が勃発した。
クライブの異母兄である王太子ジェイラスが、国王陛下とクライブの実母である側室を暗殺。
新たに王の座に就いたジェイラスは、異母弟である第二王子マーヴィンを公金横領の疑いで捕縛、第三王子クライブにオールブライト辺境領を治める沙汰を下した。
マーヴィンの婚約者だったブリジットは共犯の疑いがあったが確たる証拠が見つからない。
ブリジットが王都にいてはマーヴィンの子飼いと接触、画策の恐れから、ジェイラスはクライブにオールブライト領でブリジットの隔離監視を命じる。
捜査中に大怪我を負い、生涯歩けなくなったブリジットをクライブは密かに想っていた。
長兄からの「ブリジットの隔離監視」を都合よく解釈したクライブは、オールブライト辺境伯の館のうち豪華な別邸でブリジットを囲った。
新王である長兄の命令に逆らえずフォスティーヌと結婚したクライブは、本邸にフォスティーヌを置き、自分はブリジットと別邸で暮らした。
フォスティーヌに「別邸には近づくことを許可しない」と告げて。
フォスティーヌは「お飾りの領主の妻」としてオールブライトで生きていく。
ブリジットの大きな嘘をクライブが知り、そこからクライブとフォスティーヌの関係性が変わり始める。
========================================
*荒唐無稽の世界観の中、ふんわりと書いていますのでふんわりとお読みください
*約10万字で最終話を含めて全29話です
*他のサイトでも公開します
*10月16日より、1日2話ずつ、7時と19時にアップします
*誤字、脱字、衍字、誤用、素早く脳内変換してお読みいただけるとありがたいです
わんこ系婚約者の大誤算
甘寧
恋愛
女にだらしないワンコ系婚約者と、そんな婚約者を傍で優しく見守る主人公のディアナ。
そんなある日…
「婚約破棄して他の男と婚約!?」
そんな噂が飛び交い、優男の婚約者が豹変。冷たい眼差しで愛する人を見つめ、嫉妬し執着する。
その姿にディアナはゾクゾクしながら頬を染める。
小型犬から猛犬へ矯正完了!?
結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?
おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました!
皆様ありがとうございます。
「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」
眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。
「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」
ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。
ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視
上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。
お姉さまが家を出て行き、婚約者を譲られました
さこの
恋愛
姉は優しく美しい。姉の名前はアリシア私の名前はフェリシア
姉の婚約者は第三王子
お茶会をすると一緒に来てと言われる
アリシアは何かとフェリシアと第三王子を二人にしたがる
ある日姉が父に言った。
アリシアでもフェリシアでも婚約者がクリスタル伯爵家の娘ならどちらでも良いですよね?
バカな事を言うなと怒る父、次の日に姉が家を、出た
殿下は私を追放して男爵家の庶子をお妃にするそうです……正気で言ってます?
重田いの
恋愛
ベアトリーチェは男爵庶子と結婚したいトンマーゾ殿下に婚約破棄されるが、当然、そんな暴挙を貴族社会が許すわけないのだった。
気軽に読める短編です。
流産描写があるので気をつけてください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる