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SCENE028 大迫力
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ボス部屋に到着した瞬間、衣織お姉さんがバトラーに斬りかかっていた。
一体どういうことなのか、僕は理解が追いつかない。
「ほほう、これはご挨拶ですな。問題となるやもしれませんが……、プリンセス、配信を始めて下さい」
「えっ、うん」
バトラーはとても落ち着いていて、僕に配信を始めるように言ってくる。
わけが分からないけれど、僕はすぐさまドローンを引っ張り出して、配信を始めることにした。
「こんにちは、ダンジョンマスターのウィンクです」
僕がいつもの挨拶をすると、「こんらみあー」というコメントがずらりと並ぶ。ちょっと待って、配信を始めると同時になんでこんなに人が来るの?!
「今日はダンジョンに探索者の方がいらっしゃいまして、ちょっと大変なことになっています」
『どしたん?』
コメントが来るので、僕はドローンをくるりと別の方向へと向ける。
そこでは、衣織お姉さんとバトラーが戦っている。
『ふぁっ?!』
『鬼百合の衣織じゃん。なんでこんなところに?』
『なんでバトラーさんと戦ってるんだよ』
『状況が分からんぞ』
視聴者さんたちもまったく状況を理解できないみたいだ。僕もまったく分からないよ。
「はははっ、あなたはお強いですな。これだけ歯ごたえのある相手、久しぶりで燃えますぞ」
「ただのパイソニアではないな。私の実力なら、簡単に真っ二つにできるはずなのな」
「はははっ、そこいらの雑魚と一緒にしてもらっては困りますな。我はプリンセスを守る護衛でもあるのです。私が弱くては、務まらぬでしょう?」
「ふっ、面白い!」
僕が配信をしている目の前で、衣織お姉さんとバトラーはますます火花を散らしていた。まったく、なんでこの二人は楽しそうに笑ってるの?
『ひゅ~、さすがトップクラスの探索者の戦いは違うなぁ』
『まさかこのダンジョンでこんな戦いが見られるとはな』
『ウィンクちゃんが呆然とするのも無理はない』
そう、視聴者さんの指摘の通り、僕はまったく何も発していない。ただ、衣織お姉さんとバトラーの戦いを配信し続けているだけなんだ。
ただそれだけなのに、同接数はだんだんと増えていく。気が付けば、今のチャンネルフォロー数の何倍にも膨れ上がっていた。
「ふむ、管理局の人間が呼び寄せただけあって、腕前は確かですな」
「まったく、とんでもないパイソニアがいたものだな。スキルを駆使してもダメージを与えられる気がしない」
「はっはっはっ、プリンセスを守るためでしたら、我が文字通り体を張ってでもお助けしますからな。そのためには半端な強さではいけないのですよ」
「なるほどな!」
戦いながら会話をしている様子に、僕はどうしても理解ができなかった。
さらに、僕の様子とは裏腹に、視聴者さんたちはだんだんと盛り上がっていっている。
ようやく、戦いが終わる。
衣織お姉さんの剣はバトラーの首筋に、バトラーの蛇の腕が衣織お姉さんの首元につきつけられていた。
「ふっ、どうやら引き分けのようですな」
「引き分けということでいいようだな。まったく、これでまだ本気ではないとは驚かされる」
二人はそう言い合うと、お互いの攻撃の手を引っ込めていた。
すごすぎて、僕は動きを追うことで精一杯だったよ。ちゃんとドローンは捉えてたみたいだけど、本当にダンジョン配信用のドローンってすごいな。
『ひゅう、まさか鬼百合の衣織の戦いが見られるとはな』
『バトラーさん、あれでまだ本気じゃないらしいぞ』
『さすがはウィンクちゃんの執事、格が違い過ぎる』
『見るたびにこの蛇顔執事がカッコよく見えてくる』
視聴者さんたちがどんどんバトラーに魅了されていっている。バトラーは姿が姿だけど、立ち振る舞いもそうだけど、戦っても強いもんね。これで惚れない方がおかしいっていう気はするよ。僕もバトラーにはつい頼り切っちゃう。
だけど、ここは僕のダンジョンだ。僕も強くならないととふんすと鼻息荒く気合いを入れていた。
「えっと、いかがでしたでしょうか。どうやら、衣織お姉さんがこのダンジョンで初心者の指導にあたってくれるらしいんです。新人講習のことはまだ管理局の方が予定を決めきれていないようですけど、募集が始まったらよろしくお願いしますね」
『りょ!』
『何この初心者ダンジョン。魅力詰まりまくりやん』
『ダンマスは可愛いし、バトラーさんはかっこいいし、それにトップランカーの探索者までいるって、上級者でも押しかけそうだぞ』
『応募してやるぜ!』
『はえ~、これはめっさ楽しみだわ』
視聴者さんたちもかなり期待を寄せているみたい。これは早くダンジョンを作らないといけないな……。ポイント足りるかな?
視聴者さんたちの盛り上がりとは逆に、僕にはものすごいプレッシャーがかかってきてしまう。でも、今さらな後戻りはできないから、あとで頑張ろう。
「では、今日のところはこれでおしまいです。また次回をお楽しみに!」
『おつらみあ~』
ぷつんと配信を終了させる。
ひとまず何もなくてよかったものの、衣織お姉さんは管理局の二人から説教を受けていた。
いきなりバトラーに斬りかかったんだから、まあしょうがないよね。衣織お姉さんも反省しているみたいだし、僕は衣織お姉さんを許しておいた。
なんだかんだあったけど、衣織お姉さんにダンジョンを紹介できてよかったよ。あとは、衣織お姉さんからアドバイスをもらいながら、設置するモンスターや罠を決めていかないとね。
どんなダンジョンになるんだろうな。ちょっと楽しみになってきちゃった。
そうそう、今回の配信が終わった後、ダンジョンポイントが8000くらい増えてたよ。配信ってすごいね。
一体どういうことなのか、僕は理解が追いつかない。
「ほほう、これはご挨拶ですな。問題となるやもしれませんが……、プリンセス、配信を始めて下さい」
「えっ、うん」
バトラーはとても落ち着いていて、僕に配信を始めるように言ってくる。
わけが分からないけれど、僕はすぐさまドローンを引っ張り出して、配信を始めることにした。
「こんにちは、ダンジョンマスターのウィンクです」
僕がいつもの挨拶をすると、「こんらみあー」というコメントがずらりと並ぶ。ちょっと待って、配信を始めると同時になんでこんなに人が来るの?!
「今日はダンジョンに探索者の方がいらっしゃいまして、ちょっと大変なことになっています」
『どしたん?』
コメントが来るので、僕はドローンをくるりと別の方向へと向ける。
そこでは、衣織お姉さんとバトラーが戦っている。
『ふぁっ?!』
『鬼百合の衣織じゃん。なんでこんなところに?』
『なんでバトラーさんと戦ってるんだよ』
『状況が分からんぞ』
視聴者さんたちもまったく状況を理解できないみたいだ。僕もまったく分からないよ。
「はははっ、あなたはお強いですな。これだけ歯ごたえのある相手、久しぶりで燃えますぞ」
「ただのパイソニアではないな。私の実力なら、簡単に真っ二つにできるはずなのな」
「はははっ、そこいらの雑魚と一緒にしてもらっては困りますな。我はプリンセスを守る護衛でもあるのです。私が弱くては、務まらぬでしょう?」
「ふっ、面白い!」
僕が配信をしている目の前で、衣織お姉さんとバトラーはますます火花を散らしていた。まったく、なんでこの二人は楽しそうに笑ってるの?
『ひゅ~、さすがトップクラスの探索者の戦いは違うなぁ』
『まさかこのダンジョンでこんな戦いが見られるとはな』
『ウィンクちゃんが呆然とするのも無理はない』
そう、視聴者さんの指摘の通り、僕はまったく何も発していない。ただ、衣織お姉さんとバトラーの戦いを配信し続けているだけなんだ。
ただそれだけなのに、同接数はだんだんと増えていく。気が付けば、今のチャンネルフォロー数の何倍にも膨れ上がっていた。
「ふむ、管理局の人間が呼び寄せただけあって、腕前は確かですな」
「まったく、とんでもないパイソニアがいたものだな。スキルを駆使してもダメージを与えられる気がしない」
「はっはっはっ、プリンセスを守るためでしたら、我が文字通り体を張ってでもお助けしますからな。そのためには半端な強さではいけないのですよ」
「なるほどな!」
戦いながら会話をしている様子に、僕はどうしても理解ができなかった。
さらに、僕の様子とは裏腹に、視聴者さんたちはだんだんと盛り上がっていっている。
ようやく、戦いが終わる。
衣織お姉さんの剣はバトラーの首筋に、バトラーの蛇の腕が衣織お姉さんの首元につきつけられていた。
「ふっ、どうやら引き分けのようですな」
「引き分けということでいいようだな。まったく、これでまだ本気ではないとは驚かされる」
二人はそう言い合うと、お互いの攻撃の手を引っ込めていた。
すごすぎて、僕は動きを追うことで精一杯だったよ。ちゃんとドローンは捉えてたみたいだけど、本当にダンジョン配信用のドローンってすごいな。
『ひゅう、まさか鬼百合の衣織の戦いが見られるとはな』
『バトラーさん、あれでまだ本気じゃないらしいぞ』
『さすがはウィンクちゃんの執事、格が違い過ぎる』
『見るたびにこの蛇顔執事がカッコよく見えてくる』
視聴者さんたちがどんどんバトラーに魅了されていっている。バトラーは姿が姿だけど、立ち振る舞いもそうだけど、戦っても強いもんね。これで惚れない方がおかしいっていう気はするよ。僕もバトラーにはつい頼り切っちゃう。
だけど、ここは僕のダンジョンだ。僕も強くならないととふんすと鼻息荒く気合いを入れていた。
「えっと、いかがでしたでしょうか。どうやら、衣織お姉さんがこのダンジョンで初心者の指導にあたってくれるらしいんです。新人講習のことはまだ管理局の方が予定を決めきれていないようですけど、募集が始まったらよろしくお願いしますね」
『りょ!』
『何この初心者ダンジョン。魅力詰まりまくりやん』
『ダンマスは可愛いし、バトラーさんはかっこいいし、それにトップランカーの探索者までいるって、上級者でも押しかけそうだぞ』
『応募してやるぜ!』
『はえ~、これはめっさ楽しみだわ』
視聴者さんたちもかなり期待を寄せているみたい。これは早くダンジョンを作らないといけないな……。ポイント足りるかな?
視聴者さんたちの盛り上がりとは逆に、僕にはものすごいプレッシャーがかかってきてしまう。でも、今さらな後戻りはできないから、あとで頑張ろう。
「では、今日のところはこれでおしまいです。また次回をお楽しみに!」
『おつらみあ~』
ぷつんと配信を終了させる。
ひとまず何もなくてよかったものの、衣織お姉さんは管理局の二人から説教を受けていた。
いきなりバトラーに斬りかかったんだから、まあしょうがないよね。衣織お姉さんも反省しているみたいだし、僕は衣織お姉さんを許しておいた。
なんだかんだあったけど、衣織お姉さんにダンジョンを紹介できてよかったよ。あとは、衣織お姉さんからアドバイスをもらいながら、設置するモンスターや罠を決めていかないとね。
どんなダンジョンになるんだろうな。ちょっと楽しみになってきちゃった。
そうそう、今回の配信が終わった後、ダンジョンポイントが8000くらい増えてたよ。配信ってすごいね。
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