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第8話 二度目の小学生
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それから三日後の水曜日のことだった。
夕食を食べていると、おじいちゃん先生から話しかけられる。
「マイや。ちょっといいかい?」
「なあに、おじいちゃん」
おじいちゃん先生はどうも真剣な様子だ。
「お前さんが元の世界に戻れるかどうかわからんのでな、悪いがこちらの世界に合わせた生活をして欲しいんじゃ」
「というと?」
おじいちゃん先生が何を言っているのか、私はすぐに分かった。
学校に通ってくれっていうことだろう。元々住んでいた場所だから、そのくらいはすぐ分かるわ。
「実は、今日の昼の休診時間を使って、役所に行ってきた。それで、次の週明けから学校に通ってもらうことになったのだ」
「学校?」
私は異世界人っぽく、何も知らない感じで首を捻っている。分かっているから、分かっていないふりをするというのは心苦しい。でも、今の私は異世界出身のマーメイド族のお姫様だもの。分からないふりをするしかない。
「うむ、同じ年ごろの子どもたちが集まって、一生に勉強をする場所だな。お前さんは言葉が通じているから問題はないだろう。その容姿は目立つが、ハーフとでも言っておけばごまかせるしな」
「そうなんだ」
私はきょとんとした表情で首を傾けながら反応している。
「十二歳とか言っていたから、小学六年生として転入することになる。半年程度しか通えぬが、どうせほぼ同じ面々で中学校に上がるから問題あるまい」
「よく分からないけれど、分かった」
私が首を縦に振ったことで、おじいちゃん先生は安心したようだった。
こうして、私は二度目の小学生生活を送ることが決まったみたい。
週が明けた月曜日のこと、私はいよいよ小学生として学校に通うことになった。
「ふむ、ランドセルがよく似合っておるな」
「わざわざ髪の毛に合わせてピンクにしてくれたんだ。半年なのに、こんなのもらっちゃってもいいの?」
「構わんよ。たとえ、たったひと月だったとしても、孫を持った気になれるからな」
「おじいちゃん……」
おじいちゃん先生の正直な気持ちを聞かされて、私は思わず泣いてしまいそうになる。
そして、初日はおじいちゃん先生の運転する車に乗って、私は小学校へと向かっていった。
学校に到着すると、おじいちゃん先生から学校の先生に後退して、私は教室へと案内される。その時、私は不安そうにおじいちゃん先生へと振り返ったけど、おじいちゃん先生は笑顔で私を送り出していた。
やって来たのは6年2組。ここが私が半年間通うことになる教室。
前世の自分と比べて五つ年下、マーメイドのお姫様の期間も含めると、十七歳も年下な子どもたちと一緒に学ぶことになる。
私は思わず緊張してきてしまう。それだけ年下の子たちとうまくやっていけるのだろうかという不安が、今さらながらに襲い掛かってきた。
廊下に一人立ち、教師が先に教室の中へと入っていく。
「本日は最初に、みなさんにお知らせがあります」
朝のホームルームが始まる前に、教師はそんな前振りをしている。
騒がしかった教室の中が、一時的に静まり返っている。
この空気がなんとも懐かしいものだわ。私も、転校生が来た時は、同じような反応をしていた記憶があるもの。どんな子が来るんだろうって、ドキドキワクワクしたものだわ。
「入ってきなさい」
「はい」
教師に呼ばれて、私は教室の中へと入っていく。
教卓の横に立って、私は教室の中を見ている。一斉に私の方に視線が向いているので、なんとも怖さも感じる光景だった。
学期途中の転校生っていうのは珍しいし、今の私の容姿はサンゴ礁のようなピンク色の髪の毛だから、よく目立つものね。
私の隣では、黒板に教師が名前を書いている。
『波白マイ』
これが今の私の名前。実にマーメイドっぽくて、私はとても気に入っている。
黒板に私の名前を書き終えた教師は、私に自己紹介をするように促してくる。なので、私は名前と簡単な挨拶だけをすることにした。
細かい設定なんてまったく考えていないもの。しつこい質問はプライバシーだとか言って却下すればいいと思うわ。
そんなこんなで、私はどうにか最初のホームルームをやり過ごした。
だけど、その後もやっぱり私への興味が絶えないらしくて、それはしつこいレベルの質問攻めにあってしまったわ。
予想はしていたけれど、しつこすぎて疲れちゃう。
「こら、あなたたち。転校生に初日からあまり圧をかけないの!」
「うるせえよ、委員長。気になるんだからしょうがないだろ」
「だからって、言っても限度があるの。これ以上はやめなさい」
「ちぇーっ! 行こうぜ」
委員長と呼ばれた女の子のおかげで、私はどうにか難を逃れることができた。
「大丈夫だった。転校初日から災難ね」
「いえ、大丈夫です」
「そっか。私は平川彩菜、このクラスの委員長をしているの。困ったことがあったら頼ってね」
「あ、ありがとう」
クラスの委員長、平川さんのおかげで、転校初日はどうにかやり過ごすことができた。
でも、こんな調子でこれからの生活はどうなっちゃうんだろうか。私はため息をつくばかりだった。
夕食を食べていると、おじいちゃん先生から話しかけられる。
「マイや。ちょっといいかい?」
「なあに、おじいちゃん」
おじいちゃん先生はどうも真剣な様子だ。
「お前さんが元の世界に戻れるかどうかわからんのでな、悪いがこちらの世界に合わせた生活をして欲しいんじゃ」
「というと?」
おじいちゃん先生が何を言っているのか、私はすぐに分かった。
学校に通ってくれっていうことだろう。元々住んでいた場所だから、そのくらいはすぐ分かるわ。
「実は、今日の昼の休診時間を使って、役所に行ってきた。それで、次の週明けから学校に通ってもらうことになったのだ」
「学校?」
私は異世界人っぽく、何も知らない感じで首を捻っている。分かっているから、分かっていないふりをするというのは心苦しい。でも、今の私は異世界出身のマーメイド族のお姫様だもの。分からないふりをするしかない。
「うむ、同じ年ごろの子どもたちが集まって、一生に勉強をする場所だな。お前さんは言葉が通じているから問題はないだろう。その容姿は目立つが、ハーフとでも言っておけばごまかせるしな」
「そうなんだ」
私はきょとんとした表情で首を傾けながら反応している。
「十二歳とか言っていたから、小学六年生として転入することになる。半年程度しか通えぬが、どうせほぼ同じ面々で中学校に上がるから問題あるまい」
「よく分からないけれど、分かった」
私が首を縦に振ったことで、おじいちゃん先生は安心したようだった。
こうして、私は二度目の小学生生活を送ることが決まったみたい。
週が明けた月曜日のこと、私はいよいよ小学生として学校に通うことになった。
「ふむ、ランドセルがよく似合っておるな」
「わざわざ髪の毛に合わせてピンクにしてくれたんだ。半年なのに、こんなのもらっちゃってもいいの?」
「構わんよ。たとえ、たったひと月だったとしても、孫を持った気になれるからな」
「おじいちゃん……」
おじいちゃん先生の正直な気持ちを聞かされて、私は思わず泣いてしまいそうになる。
そして、初日はおじいちゃん先生の運転する車に乗って、私は小学校へと向かっていった。
学校に到着すると、おじいちゃん先生から学校の先生に後退して、私は教室へと案内される。その時、私は不安そうにおじいちゃん先生へと振り返ったけど、おじいちゃん先生は笑顔で私を送り出していた。
やって来たのは6年2組。ここが私が半年間通うことになる教室。
前世の自分と比べて五つ年下、マーメイドのお姫様の期間も含めると、十七歳も年下な子どもたちと一緒に学ぶことになる。
私は思わず緊張してきてしまう。それだけ年下の子たちとうまくやっていけるのだろうかという不安が、今さらながらに襲い掛かってきた。
廊下に一人立ち、教師が先に教室の中へと入っていく。
「本日は最初に、みなさんにお知らせがあります」
朝のホームルームが始まる前に、教師はそんな前振りをしている。
騒がしかった教室の中が、一時的に静まり返っている。
この空気がなんとも懐かしいものだわ。私も、転校生が来た時は、同じような反応をしていた記憶があるもの。どんな子が来るんだろうって、ドキドキワクワクしたものだわ。
「入ってきなさい」
「はい」
教師に呼ばれて、私は教室の中へと入っていく。
教卓の横に立って、私は教室の中を見ている。一斉に私の方に視線が向いているので、なんとも怖さも感じる光景だった。
学期途中の転校生っていうのは珍しいし、今の私の容姿はサンゴ礁のようなピンク色の髪の毛だから、よく目立つものね。
私の隣では、黒板に教師が名前を書いている。
『波白マイ』
これが今の私の名前。実にマーメイドっぽくて、私はとても気に入っている。
黒板に私の名前を書き終えた教師は、私に自己紹介をするように促してくる。なので、私は名前と簡単な挨拶だけをすることにした。
細かい設定なんてまったく考えていないもの。しつこい質問はプライバシーだとか言って却下すればいいと思うわ。
そんなこんなで、私はどうにか最初のホームルームをやり過ごした。
だけど、その後もやっぱり私への興味が絶えないらしくて、それはしつこいレベルの質問攻めにあってしまったわ。
予想はしていたけれど、しつこすぎて疲れちゃう。
「こら、あなたたち。転校生に初日からあまり圧をかけないの!」
「うるせえよ、委員長。気になるんだからしょうがないだろ」
「だからって、言っても限度があるの。これ以上はやめなさい」
「ちぇーっ! 行こうぜ」
委員長と呼ばれた女の子のおかげで、私はどうにか難を逃れることができた。
「大丈夫だった。転校初日から災難ね」
「いえ、大丈夫です」
「そっか。私は平川彩菜、このクラスの委員長をしているの。困ったことがあったら頼ってね」
「あ、ありがとう」
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