91 / 109
Mission090
しおりを挟む
「アエス、スーリガン殿下の様子はいかがなのかしら」
近くの空き部屋にアエスを誘い込んだフェールは、アエスにいきなり切り込んでいく。
「え、えと……」
ものすごく口ごもるアエス。この辺りの行動も、普通のオートマタならまず見る事のない姿である。だが、アエスは実際オートマタである。首や手などに、人形である事を示す接合部が見られるからだ。それにしても、オートマタであるアエスは、どうしてここまで人間っぽい部分を見せるようになったのだろうか。これはフェールにはまったく理解のできる事ではなかった。
でも、今の問題点はそこではない。フェールが気にしているのはシュヴァリエとスーリガンの動向だ。何か不穏な動きがあるという事は分かっているのだが、何を企んでいるのかそれが見えてこない、そこが問題なのである。
ところがどっこい、こうしてアエスを捕まえて問い詰めているものの、アエスは怯えるばかりで答えようとはしなかった。アリスだってオートマタっぽく感じないと思っているのに、まさかアエスまでそんなオートマタだなんて思ってもみなかったのだ。
正直言って頭が痛くなるフェールである。オートマタなのに頭が痛くなるというのもおかしい気がするのだが、そうならざるを得ない状況なのである。
「あ、あたしは死にたくないですーっ!」
突然アエスが泣き出してしまった。あまりに予想外過ぎるアエスの状態にフェールも混乱するばかりである。
「ああもう、調子が狂ってしまうわね。一体どうしちゃったというのよ、アエス」
必死にアエスを宥めながら落ち着かせようとするフェール。だが、アエスは完全に泣きじゃくっていて、とても落ち着きそうになかった。まったくどうしたらいいというのだろうか。
「うーん、仕方ないわね。オートマタとしては後輩だけれど、一番落ち着いているアリスに頼むしかないかしら。私ではさすがに手に負えないわ」
完全にお手上げのフェールである。仕方ないので、落ち着かないアエスを抱え上げると、フェールは一目散にとある場所へと向かった。
「ふぇ? フェール、どこに向かうというのですか?!」
「黙っていなさい。落ち着かないあなたが悪いんですから」
「ふええ?!」
城の中を疾走するフェールに抱えられたアエスは、常に混乱した声を上げていたのだった。
「アリス、居ますか?」
バーンと扉を開けて大声を出すフェール。その小脇にはアエスが抱えられていた。すっかり目を回しているアエス。まったく、オートマタとは思えない行動の数々である。
「まったく、どうしたのですか、フェール」
鉄道事業のまとめをある程度済ませて清書に入っていたアリスは、目の前の光景に驚きながらも冷静に対処している。
(な、何なんですか。驚いたわよ、フェール。って、その抱えているのはアエスよね? どういう事?!)
心の中はこんな感じのアリスだが、その事を悟られないようにポーカーフェイスを維持していた。
アリスが書いていた小説の中のオートマタは、実に機械のように感情はほとんどなく淡々と与えられた仕事をこなすだけの存在だった。
小説という創作物の中だからこそ、余計な感情というのを削ぎ落していたのかも知れない。
だが、転生してきた自分も含めて、ここに居るオートマタたちは個性があり、感情もしっかりと存在していた。まるで人間のようなオートマタたちがそこには居たのである。
だというのに、目の前のフェールとアエスの状態は、今の状態に慣れてきたアリスですら戸惑うばかりの状態だったのだ。
改めて状況を言うと、息を切らせながら怒鳴るような大声で所在を尋ねてくるフェールに、その小脇には片手で抱えられた状態で目を回して気絶しているアエスという不思議な光景が繰り広げられているのだ。正直状況が分からない。
「ああ、居たのですね、アリス。ちょっとこのアエスから話を聞くのを手伝って頂けませんか」
「アエス? 私にですか?」
こくりと頷くフェール。
フェールの言葉には間違いなく怒りがこもっていたので、状況は分からないなりになんとなく事情は察せてしまった。
「アエス、大丈夫ですか?」
フェールに言ってアエスを椅子に座らせてから、アリスはアエスに声を掛ける。だが、アエスはまだ伸びてしまっていて、受け答えができるような状態になかった。
「失礼しますね」
アリスはそう言うと、何を思ったかアエスの両頬に往復ビンタを食らわせていた。これはなかなかひどい絵面である。
「う……、うーん……」
声を上げるアエス。
「アエス、目を覚ましましたか?」
アリスが優しく語り掛けると、アエスはパチッと目を覚ましていた。眠る必要のないオートマタが気絶するとは一体どんな状態なのか。これだけでも怪奇、摩訶不思議である。
とりあえずそんな事は放っておいて、アリスはアエスの両肩をしっかりと持ってその顔を凝視している。目を覚ましたら正面にアリスのドアップである。アエスはものすごく驚いて声を上げそうになる。
「静かにしなさい」
口をふさいだのはフェールである。間一髪、部屋にアエスの叫び声が響くのは防がれたようだった。
どうにかこうにか落ち着かせるのに手間取ったものの、ようやくアエスは冷静になったようなので、改めて話を聞く事にしたアリスだった。
近くの空き部屋にアエスを誘い込んだフェールは、アエスにいきなり切り込んでいく。
「え、えと……」
ものすごく口ごもるアエス。この辺りの行動も、普通のオートマタならまず見る事のない姿である。だが、アエスは実際オートマタである。首や手などに、人形である事を示す接合部が見られるからだ。それにしても、オートマタであるアエスは、どうしてここまで人間っぽい部分を見せるようになったのだろうか。これはフェールにはまったく理解のできる事ではなかった。
でも、今の問題点はそこではない。フェールが気にしているのはシュヴァリエとスーリガンの動向だ。何か不穏な動きがあるという事は分かっているのだが、何を企んでいるのかそれが見えてこない、そこが問題なのである。
ところがどっこい、こうしてアエスを捕まえて問い詰めているものの、アエスは怯えるばかりで答えようとはしなかった。アリスだってオートマタっぽく感じないと思っているのに、まさかアエスまでそんなオートマタだなんて思ってもみなかったのだ。
正直言って頭が痛くなるフェールである。オートマタなのに頭が痛くなるというのもおかしい気がするのだが、そうならざるを得ない状況なのである。
「あ、あたしは死にたくないですーっ!」
突然アエスが泣き出してしまった。あまりに予想外過ぎるアエスの状態にフェールも混乱するばかりである。
「ああもう、調子が狂ってしまうわね。一体どうしちゃったというのよ、アエス」
必死にアエスを宥めながら落ち着かせようとするフェール。だが、アエスは完全に泣きじゃくっていて、とても落ち着きそうになかった。まったくどうしたらいいというのだろうか。
「うーん、仕方ないわね。オートマタとしては後輩だけれど、一番落ち着いているアリスに頼むしかないかしら。私ではさすがに手に負えないわ」
完全にお手上げのフェールである。仕方ないので、落ち着かないアエスを抱え上げると、フェールは一目散にとある場所へと向かった。
「ふぇ? フェール、どこに向かうというのですか?!」
「黙っていなさい。落ち着かないあなたが悪いんですから」
「ふええ?!」
城の中を疾走するフェールに抱えられたアエスは、常に混乱した声を上げていたのだった。
「アリス、居ますか?」
バーンと扉を開けて大声を出すフェール。その小脇にはアエスが抱えられていた。すっかり目を回しているアエス。まったく、オートマタとは思えない行動の数々である。
「まったく、どうしたのですか、フェール」
鉄道事業のまとめをある程度済ませて清書に入っていたアリスは、目の前の光景に驚きながらも冷静に対処している。
(な、何なんですか。驚いたわよ、フェール。って、その抱えているのはアエスよね? どういう事?!)
心の中はこんな感じのアリスだが、その事を悟られないようにポーカーフェイスを維持していた。
アリスが書いていた小説の中のオートマタは、実に機械のように感情はほとんどなく淡々と与えられた仕事をこなすだけの存在だった。
小説という創作物の中だからこそ、余計な感情というのを削ぎ落していたのかも知れない。
だが、転生してきた自分も含めて、ここに居るオートマタたちは個性があり、感情もしっかりと存在していた。まるで人間のようなオートマタたちがそこには居たのである。
だというのに、目の前のフェールとアエスの状態は、今の状態に慣れてきたアリスですら戸惑うばかりの状態だったのだ。
改めて状況を言うと、息を切らせながら怒鳴るような大声で所在を尋ねてくるフェールに、その小脇には片手で抱えられた状態で目を回して気絶しているアエスという不思議な光景が繰り広げられているのだ。正直状況が分からない。
「ああ、居たのですね、アリス。ちょっとこのアエスから話を聞くのを手伝って頂けませんか」
「アエス? 私にですか?」
こくりと頷くフェール。
フェールの言葉には間違いなく怒りがこもっていたので、状況は分からないなりになんとなく事情は察せてしまった。
「アエス、大丈夫ですか?」
フェールに言ってアエスを椅子に座らせてから、アリスはアエスに声を掛ける。だが、アエスはまだ伸びてしまっていて、受け答えができるような状態になかった。
「失礼しますね」
アリスはそう言うと、何を思ったかアエスの両頬に往復ビンタを食らわせていた。これはなかなかひどい絵面である。
「う……、うーん……」
声を上げるアエス。
「アエス、目を覚ましましたか?」
アリスが優しく語り掛けると、アエスはパチッと目を覚ましていた。眠る必要のないオートマタが気絶するとは一体どんな状態なのか。これだけでも怪奇、摩訶不思議である。
とりあえずそんな事は放っておいて、アリスはアエスの両肩をしっかりと持ってその顔を凝視している。目を覚ましたら正面にアリスのドアップである。アエスはものすごく驚いて声を上げそうになる。
「静かにしなさい」
口をふさいだのはフェールである。間一髪、部屋にアエスの叫び声が響くのは防がれたようだった。
どうにかこうにか落ち着かせるのに手間取ったものの、ようやくアエスは冷静になったようなので、改めて話を聞く事にしたアリスだった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
7
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる