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第39話 へとへとになる元魔王
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日に日に街の中は賑やかになっていく。
なにせ新しい聖女の指名が行われるのだから、人間たちにとっては一大事である。
教会の中ではアリエスとカプリナが着る当日の衣装のための採寸が行われており、カプリナはとても緊張した顔で臨んでいる。
「はわわわわ……。私が聖女様と並んでパレードで顔見せですか」
そう、当日は聖女の使命とともに、聖女付きとなる聖騎士の指名も行われる。なので、カプリナもアリエスと一緒にお披露目の馬車に乗り込むことになっている。
今採寸をしているのは、その時に着る衣装なのである。
伯爵令嬢であるカプリナはそれなりにおしゃれな服には慣れているが、さすがにこういった儀式の服となるとおそれ多くてこのようにカチコチになってしまうようなのだ。
(俺は魔王だったからなぁ。聖女としての生活でもそこまで派手な衣装を着ているわけではないから、これから作られるという儀式衣装がどのようなものかまったく想像がつかん。女の着る服には慣れたつもりだが、うーむ……)
採寸を受けながら、アリエスの内なる魔王は思いを巡らせていた。
アリエスが魔王時代に戦った聖女は、ローブ系の服装とはいえ、動きやすいように飾りを減らした裾も短めの戦闘用の服装だった。儀式用ともなれば、あんな感じではないだろうなと考えるものの、どのようなものであるかまったく思い当たらないのだ。
(普段の服装からして、肌があまり露出しないものだからな。それに近しいものと考えておくか)
結局考えることを放棄して、採寸係にされるがままに全身のサイズを計測されたのだった。
ようやく長かった採寸が終わる。
「それでは、当日の衣装の製作に早速取り掛からさせて頂きます。完成は儀式の五日前とみております。そこで衣装合わせをして、改めて細かい直しを致します」
「はい、よろしく頼みますね」
「すべてに優先させて、着実な仕事をさせて頂きます。なんといっても聖女様と聖騎士様の衣装を同時に手掛けられるなんて、そうそうありませんから!」
服飾店の女性は鼻息荒く言いながら、教会から立ち去っていった。
採寸を終えたアリエスとカプリナは、椅子にぐたっと燃え尽きたようにもたれ掛かっていた。
「や、やっと終わりました……」
「ええ、思ったよりも細かく採寸なさっていかれましたね……」
身長に胴回り、肩幅に頭囲などなど、全身のサイズを測れるだけ全部測っていったという感じだった。
これだけ細かくサイズを測っていくとなると、どんな衣装になるのかまったくといっていいほど想像ができなかった。
しかし、この疲れ切った状態にもかかわらず、神父たちはまったくといっていいほど容赦はなかった。
「それでは食事を終えられましたら、儀式についての説明を始めて参ろうかと思います。なにせこの儀式はとても神聖なものですから、厳格に行わなくてはなりません」
「そんなわけですので、お二人には事細かい所作や文言など、きっちり教え込ませて頂きます。お覚悟をなさって下さいね」
「え、ええ……」
まだ採寸の疲れが抜けきらないアリエスとカプリナは、神父たちの言葉にげんなりしてしまっていた。
しかし、これはやらなければならないこと。
疲れているからといって手を抜けるようなものではないので、アリエスたちはやむなく儀式に向けての特訓を始めることになったのだった。
アリエスたちの様子を見ていたサハーたちは、なんとも言えない目で二人の様子を見ている。
「なあ、スラリー」
「なあに、さはー」
「聖女ってこんな厳しいものだったんですね」
「そうだねー。もてはやされているだけのそんざいかとおもってた」
神父から流れを聞いてそれを反復している二人は、それはとても苦戦しているようだった。
魔族からすると聖女とかみんなから崇められて楽な生活をしているんだろうなというようなイメージしかなかったので、この光景はまったくもって新鮮に映っているようである。
「だが、いくら助けたくとも、人間たちの行事に私たち魔族が口を出すわけにもいきません。このまま見守るしかないのでしょうな」
「そうだねー」
聖女の護衛、聖騎士の補佐としての立場があるとはいえ、魔族であるサハーとスラリーは、二人の特訓の様子をじっと見守ることしかできなかった。
「そうです、スラリー」
「なにー?」
やることのないサハー、ちょうどいいとスラリーに話し掛ける。
「最近、怪しい魔力を感じるのですが、何か知っていますか?」
「あやしいまりょく? もしかして、らいらさま、のこと?」
「は?」
スラリーからさらっと出てきた名前に、サハーは目を丸くする。
「いやいや、ちょっと待て。ライラ様がここにいらしているというのか?」
「うん-。ようへいの、ふりしてるー」
「それはアリエス様たちには?」
「つたえてないよー? だまってて、ほしそうだったから」
「そうか。……魔王様亡き後の魔王軍が、新しい聖女が気になって人を送り込んできたってことでしょうか。なんにしても、注意深くしておかないといけないですね」
「そだねー」
真剣な表情のサハーに対して、スラリーはどこまでものんびりした受け答えである。
「ともかく、私たちはアリエス様たちを守るという使命を持っています。かつての仲間とはいえ、警戒を怠らないで下さいね」
「わかってるよ」
自分たちの役目を再確認したサハーとスラリーは、特訓に挑むアリエスとカプリナの姿を見守り続けたのだった。
なにせ新しい聖女の指名が行われるのだから、人間たちにとっては一大事である。
教会の中ではアリエスとカプリナが着る当日の衣装のための採寸が行われており、カプリナはとても緊張した顔で臨んでいる。
「はわわわわ……。私が聖女様と並んでパレードで顔見せですか」
そう、当日は聖女の使命とともに、聖女付きとなる聖騎士の指名も行われる。なので、カプリナもアリエスと一緒にお披露目の馬車に乗り込むことになっている。
今採寸をしているのは、その時に着る衣装なのである。
伯爵令嬢であるカプリナはそれなりにおしゃれな服には慣れているが、さすがにこういった儀式の服となるとおそれ多くてこのようにカチコチになってしまうようなのだ。
(俺は魔王だったからなぁ。聖女としての生活でもそこまで派手な衣装を着ているわけではないから、これから作られるという儀式衣装がどのようなものかまったく想像がつかん。女の着る服には慣れたつもりだが、うーむ……)
採寸を受けながら、アリエスの内なる魔王は思いを巡らせていた。
アリエスが魔王時代に戦った聖女は、ローブ系の服装とはいえ、動きやすいように飾りを減らした裾も短めの戦闘用の服装だった。儀式用ともなれば、あんな感じではないだろうなと考えるものの、どのようなものであるかまったく思い当たらないのだ。
(普段の服装からして、肌があまり露出しないものだからな。それに近しいものと考えておくか)
結局考えることを放棄して、採寸係にされるがままに全身のサイズを計測されたのだった。
ようやく長かった採寸が終わる。
「それでは、当日の衣装の製作に早速取り掛からさせて頂きます。完成は儀式の五日前とみております。そこで衣装合わせをして、改めて細かい直しを致します」
「はい、よろしく頼みますね」
「すべてに優先させて、着実な仕事をさせて頂きます。なんといっても聖女様と聖騎士様の衣装を同時に手掛けられるなんて、そうそうありませんから!」
服飾店の女性は鼻息荒く言いながら、教会から立ち去っていった。
採寸を終えたアリエスとカプリナは、椅子にぐたっと燃え尽きたようにもたれ掛かっていた。
「や、やっと終わりました……」
「ええ、思ったよりも細かく採寸なさっていかれましたね……」
身長に胴回り、肩幅に頭囲などなど、全身のサイズを測れるだけ全部測っていったという感じだった。
これだけ細かくサイズを測っていくとなると、どんな衣装になるのかまったくといっていいほど想像ができなかった。
しかし、この疲れ切った状態にもかかわらず、神父たちはまったくといっていいほど容赦はなかった。
「それでは食事を終えられましたら、儀式についての説明を始めて参ろうかと思います。なにせこの儀式はとても神聖なものですから、厳格に行わなくてはなりません」
「そんなわけですので、お二人には事細かい所作や文言など、きっちり教え込ませて頂きます。お覚悟をなさって下さいね」
「え、ええ……」
まだ採寸の疲れが抜けきらないアリエスとカプリナは、神父たちの言葉にげんなりしてしまっていた。
しかし、これはやらなければならないこと。
疲れているからといって手を抜けるようなものではないので、アリエスたちはやむなく儀式に向けての特訓を始めることになったのだった。
アリエスたちの様子を見ていたサハーたちは、なんとも言えない目で二人の様子を見ている。
「なあ、スラリー」
「なあに、さはー」
「聖女ってこんな厳しいものだったんですね」
「そうだねー。もてはやされているだけのそんざいかとおもってた」
神父から流れを聞いてそれを反復している二人は、それはとても苦戦しているようだった。
魔族からすると聖女とかみんなから崇められて楽な生活をしているんだろうなというようなイメージしかなかったので、この光景はまったくもって新鮮に映っているようである。
「だが、いくら助けたくとも、人間たちの行事に私たち魔族が口を出すわけにもいきません。このまま見守るしかないのでしょうな」
「そうだねー」
聖女の護衛、聖騎士の補佐としての立場があるとはいえ、魔族であるサハーとスラリーは、二人の特訓の様子をじっと見守ることしかできなかった。
「そうです、スラリー」
「なにー?」
やることのないサハー、ちょうどいいとスラリーに話し掛ける。
「最近、怪しい魔力を感じるのですが、何か知っていますか?」
「あやしいまりょく? もしかして、らいらさま、のこと?」
「は?」
スラリーからさらっと出てきた名前に、サハーは目を丸くする。
「いやいや、ちょっと待て。ライラ様がここにいらしているというのか?」
「うん-。ようへいの、ふりしてるー」
「それはアリエス様たちには?」
「つたえてないよー? だまってて、ほしそうだったから」
「そうか。……魔王様亡き後の魔王軍が、新しい聖女が気になって人を送り込んできたってことでしょうか。なんにしても、注意深くしておかないといけないですね」
「そだねー」
真剣な表情のサハーに対して、スラリーはどこまでものんびりした受け答えである。
「ともかく、私たちはアリエス様たちを守るという使命を持っています。かつての仲間とはいえ、警戒を怠らないで下さいね」
「わかってるよ」
自分たちの役目を再確認したサハーとスラリーは、特訓に挑むアリエスとカプリナの姿を見守り続けたのだった。
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