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第57話 雪道を進む元魔王
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支度が整ったアリエスは、いよいよサンカサス王国以外の場所へと向かうことになる。
聖女として生まれ変わってから初めての国外に、アリエスは心躍らせている。
(魔王時代以来となる国外だ。実に楽しみで仕方がないな)
アリエスは馬車に乗り込みながら、にこやかな笑顔を見せている。
「あら?」
馬車の乗り込んだアリエスは、不思議な違和感を感じた。
馬車の外は真っ白でかなり寒いというのに、中はほんのりと温かい。思わぬ状況に目を丸くしてしまうアリエスである。
「あっ、アリエス様、驚かれましたか?」
「カプリナ様、これは一体?」
あとから乗り込んできたカプリナが、アリエスに声をかけている。どうやらカプリナはこの現象の理由を知っているようなのだ。
「馬車の座席の下をご覧ください」
「座席の下?」
アリエスは一度馬車から降りて、カプリナが座席下の板を外す様子を見ている。
板を外すと、そこにはほんのりと赤みを帯びた色で光る不思議な石が設置されていた。
「魔力石と呼ばれるものでして、魔物や鉱山から採れる魔石というものを加工したものになるんです。魔法を覚え込ませた特殊な魔石でして、発動させるとこのように覚え込ませた魔法を発動できるようになっているんですよ」
「へえ、そうなのですね。では、これは熱を発生させる魔法を覚えさせたというわけですか」
「ちょっと違いますね。火を発生する魔法を覚え込ませたものでして、しかもその火が石の外に漏れないように加工したものなんです」
「そうなのですか。不思議なものですね……」
アリエスは、なんとも優しい目で魔力石を眺めている。
「アリエス様、そろそろ出発しますよ。悪いですが、私も馬車に乗せて頂きます。これだけ寒いと動けなくなりそうですからね」
せっかくうっとりとしていたのに、邪魔されたアリエスはちょっとだけムッとしている。
「分かりました。それでは乗って出発致しましょう。それはそうと、私が国外に行くことの報告は必要ですか?」
「大丈夫ですぞ。わしや司祭様に任せて頂ければ。教会が誇る魔力網のすごさを見せてあげましょう」
「そうですか。それでは連絡はお任せ致します」
牧師の言葉に、つい笑ってしまうアリエスである。
何も心配がないと判明したので、アリエスはハデキヤ帝国からやってきた騎士たちの先導の下、ハデキヤ帝国へ向けて出発することになった。
一面真っ白の雪が積もっている中、雪を踏みしめる音を立てながら、ゆっくりと馬車は進んでいく。
「それにしても、ずいぶんと積もってますよね」
「そうですね。お父様によれば、このような雪が降ったのは、アリエス様の生まれた年以来になるそうです」
「初耳ですね。私の生まれた年もそんなに降ったのですか」
「はい、今と大体一緒くらいの高さになったそうです」
カプリナの証言で、以前にも大量の雪が降った年がったことが判明する。それにしても、前回大雪に見舞われたのが自分が生まれた年という話に、アリエスは思わずうなってしまう。
(うーむ。俺が魔王時代に得意だった属性が水や氷だったとはいえ、こんなに雪が降るようになるものなのか? 偶然だとしてもなんだか解せんな……)
アリエスは自分の節目の年と雪の関係に、なんとも複雑な気持ちを抱いたようだった。
アリエスの魔王時代は、魔王でありながらも攻撃魔法よりは回復魔法や防御魔法に秀でていた。
だが、魔王という立場である以上、相手を圧倒するだけの力が必要である。そのため、攻撃魔法も必死に身に付けていった。体も必死に鍛えた結果、光を除けば全属性を扱え、ムキムキマッチョな魔王となったわけである。
あまり仲間である魔族を傷つけるというのはしたくなかったので、人間の侵略者には魔法で、魔族相手には肉体言語で分からせをしていった。
そんなに鍛えた状態でも、キャサリーンが率いる連中には負けてしまったのである。
(う~ん。もしかしたら、俺の中の得意属性が、知らない間に漏れ出ているのかもしれんな。赤ん坊の頃は確かに制御が利かなかったが……、なぜ今年はこんなに雪が降るのだ?)
両腕を組んで唸ってしまうアリエスである。
「アリエス様、どうかなさりましたか?」
「いえ、なんでもありません。どうして雪がこんなに降るのかが気になっただけです」
「そうですか」
カプリナが心配そうに見てくるものだから、アリエスは適当なことを言ってごまかしておいた。
雪がかなり深く、思ったように馬車は進んでいかない。
しかし、大したトラブルもなく、どうにかサンカサス王国の国境までやって来ることができた。ただ、天気のいい時に比べれば一日余計にかかってしまったようだった。
「参りましたね。これでは新年祭までにたどり着けるか分かりませんね」
どうやら騎士たちが困っているようである。
それというのも、国境を越えてからも不思議と雪が降り続いているからである。
騎士たちによれば、アリエスのところに来る時にはまったく雪は降っていなかったのだという。そもそも雪の少ない地域なのだ。降ること自体が珍しいのである。
ところが、国境を越えた先でも雪が舞っている。
どうしてこんなに雪が降り続いているのだろうか、騎士たちは首を捻っているようである。
「参ったな。このまま新年祭にサンカサスの聖女様をお連れできなければ……」
「ああ、オーロラ様はとても悲しむでしょうな。新年祭に間に合うように俺たちを遣わされましたからね」
予想外に降り続く雪に、なんとも不穏な空気が漂い始めたのであった。
聖女として生まれ変わってから初めての国外に、アリエスは心躍らせている。
(魔王時代以来となる国外だ。実に楽しみで仕方がないな)
アリエスは馬車に乗り込みながら、にこやかな笑顔を見せている。
「あら?」
馬車の乗り込んだアリエスは、不思議な違和感を感じた。
馬車の外は真っ白でかなり寒いというのに、中はほんのりと温かい。思わぬ状況に目を丸くしてしまうアリエスである。
「あっ、アリエス様、驚かれましたか?」
「カプリナ様、これは一体?」
あとから乗り込んできたカプリナが、アリエスに声をかけている。どうやらカプリナはこの現象の理由を知っているようなのだ。
「馬車の座席の下をご覧ください」
「座席の下?」
アリエスは一度馬車から降りて、カプリナが座席下の板を外す様子を見ている。
板を外すと、そこにはほんのりと赤みを帯びた色で光る不思議な石が設置されていた。
「魔力石と呼ばれるものでして、魔物や鉱山から採れる魔石というものを加工したものになるんです。魔法を覚え込ませた特殊な魔石でして、発動させるとこのように覚え込ませた魔法を発動できるようになっているんですよ」
「へえ、そうなのですね。では、これは熱を発生させる魔法を覚えさせたというわけですか」
「ちょっと違いますね。火を発生する魔法を覚え込ませたものでして、しかもその火が石の外に漏れないように加工したものなんです」
「そうなのですか。不思議なものですね……」
アリエスは、なんとも優しい目で魔力石を眺めている。
「アリエス様、そろそろ出発しますよ。悪いですが、私も馬車に乗せて頂きます。これだけ寒いと動けなくなりそうですからね」
せっかくうっとりとしていたのに、邪魔されたアリエスはちょっとだけムッとしている。
「分かりました。それでは乗って出発致しましょう。それはそうと、私が国外に行くことの報告は必要ですか?」
「大丈夫ですぞ。わしや司祭様に任せて頂ければ。教会が誇る魔力網のすごさを見せてあげましょう」
「そうですか。それでは連絡はお任せ致します」
牧師の言葉に、つい笑ってしまうアリエスである。
何も心配がないと判明したので、アリエスはハデキヤ帝国からやってきた騎士たちの先導の下、ハデキヤ帝国へ向けて出発することになった。
一面真っ白の雪が積もっている中、雪を踏みしめる音を立てながら、ゆっくりと馬車は進んでいく。
「それにしても、ずいぶんと積もってますよね」
「そうですね。お父様によれば、このような雪が降ったのは、アリエス様の生まれた年以来になるそうです」
「初耳ですね。私の生まれた年もそんなに降ったのですか」
「はい、今と大体一緒くらいの高さになったそうです」
カプリナの証言で、以前にも大量の雪が降った年がったことが判明する。それにしても、前回大雪に見舞われたのが自分が生まれた年という話に、アリエスは思わずうなってしまう。
(うーむ。俺が魔王時代に得意だった属性が水や氷だったとはいえ、こんなに雪が降るようになるものなのか? 偶然だとしてもなんだか解せんな……)
アリエスは自分の節目の年と雪の関係に、なんとも複雑な気持ちを抱いたようだった。
アリエスの魔王時代は、魔王でありながらも攻撃魔法よりは回復魔法や防御魔法に秀でていた。
だが、魔王という立場である以上、相手を圧倒するだけの力が必要である。そのため、攻撃魔法も必死に身に付けていった。体も必死に鍛えた結果、光を除けば全属性を扱え、ムキムキマッチョな魔王となったわけである。
あまり仲間である魔族を傷つけるというのはしたくなかったので、人間の侵略者には魔法で、魔族相手には肉体言語で分からせをしていった。
そんなに鍛えた状態でも、キャサリーンが率いる連中には負けてしまったのである。
(う~ん。もしかしたら、俺の中の得意属性が、知らない間に漏れ出ているのかもしれんな。赤ん坊の頃は確かに制御が利かなかったが……、なぜ今年はこんなに雪が降るのだ?)
両腕を組んで唸ってしまうアリエスである。
「アリエス様、どうかなさりましたか?」
「いえ、なんでもありません。どうして雪がこんなに降るのかが気になっただけです」
「そうですか」
カプリナが心配そうに見てくるものだから、アリエスは適当なことを言ってごまかしておいた。
雪がかなり深く、思ったように馬車は進んでいかない。
しかし、大したトラブルもなく、どうにかサンカサス王国の国境までやって来ることができた。ただ、天気のいい時に比べれば一日余計にかかってしまったようだった。
「参りましたね。これでは新年祭までにたどり着けるか分かりませんね」
どうやら騎士たちが困っているようである。
それというのも、国境を越えてからも不思議と雪が降り続いているからである。
騎士たちによれば、アリエスのところに来る時にはまったく雪は降っていなかったのだという。そもそも雪の少ない地域なのだ。降ること自体が珍しいのである。
ところが、国境を越えた先でも雪が舞っている。
どうしてこんなに雪が降り続いているのだろうか、騎士たちは首を捻っているようである。
「参ったな。このまま新年祭にサンカサスの聖女様をお連れできなければ……」
「ああ、オーロラ様はとても悲しむでしょうな。新年祭に間に合うように俺たちを遣わされましたからね」
予想外に降り続く雪に、なんとも不穏な空気が漂い始めたのであった。
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