魔王聖女

未羊

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第61話 魔力暴走を抑える元魔王

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 スラリーとサハーの一件が無事に終わり、オーロラと和やかに話を始めるアリエスたち。
 その中でアリエスは、ふとオーロラに話を振ってみることにする。

「あの、オーロラ様」

「なんでしょうか、アリエス様」

 にっこりとオーロラは対応している。

「ハデキヤ帝国というのは、これほどまでに雪の降る地域なのでしょうか」

 アリエスが質問をしたのは、この外の雪についてだった。
 これにはオーロラもちょっと困った顔をしていた。なんて答えるのがいいのかと迷っているようにも見える顔だった。

「そうですね。ハデキヤ帝国でということに限れば、私は初めて見ました」

「それでは、オーロラ様自体は?」

「私は聖女の仕事として他の国に行くこともありますので、私自身は見たことがあります」

「そうなのですね」

 迷っていたように見えたオーロラだったが、意外と普通に答えてくれた。
 その答えを聞いて、アリエスは確信めいたものを持ったようだ。

「あの、この雪なのですが、もしかしたら私のせいかもしれないのです」

「あら、そうなのですか? ちょっとお聞かせいただいてもよろしいでしょうか」

「はい」

 興味津々なようなので、アリエスは自分と雪にまつわる話について話を始める。
 その話を聞いたオーロラは、ふむふむと何度も頷いているようだった。

「どうでしょうか、オーロラ様」

 アリエスは不安な表情を見せている。

「ええ、事情は分かりました。それはあり得ないことではないですね」

 オーロラからの答えはこうだった。

「私も水属性の力が強いタイプの聖女です。同じような経験はありますよ。何日も雨が降りやまないということがあったそうです」

 なんと、オーロラも似たような経験をしたことがあるのだという。
 アリエスは思い切り食いついてしまう。

「どうすれば……。どうすれば雪はやむのでしょうか。このままではみなさんに迷惑をかけ続けてしまいます。聖女であるというのに、人様に迷惑をかけるだなんてそんなことができるわけがないのです」

 アリエスは強く訴えている。
 オーロラはそのアリエスの気持ちがよく分かる。なので、自分が能力の暴走を抑えた時の方法を伝授することにする。

「特別な時ゆえに、魔力の暴走が起きているのでしょう。こういう時は、その属性をわざと消耗させて、魔力を枯渇させるといいのです」

「なんて荒療治なんですか……」

 オーロラの話を聞いて、サハーがツッコミを入れている。

「でも、その方法が一番なのは間違いないですね。私たちフィシェギルも水属性がやたら強くなる時には暴走をすることがありましたからね」

 なんと、サハーにも同じような経験があるという。魔王時代の部下でもあったというのに、アリエスはそのことを知らなかった。
 驚きの過去に目を丸くしながらも、アリエスはその方法に賭けてみようと思い立つ。
 ところが、オーロラは何かを思い出したらしく、アリエスに待ったをかけた。

「なんでしょうか、オーロラ様」

「魔力量の問題がありました。私が暴走させた時は、大きな湖ができていましたね」

 オーロラの証言を聞いて、思わず黙り込んでしまうアリエスである。
 魔力の暴走を抑えるのに大きな湖ができたと聞いて、自分の魔力であるなら、一体どれだけの雪が積もるのか想像ができなかったからだ。

「……暴走がおさまるのを待った方がよさそうですか?」

「かも知れませんね。これに対処できるとしたらあの人でしょうけれど、魔族がいる現場に来てくれるでしょうか」

「私がどうかしましたか?」

「うわぁっ!!」

 オーロラが悩んでいると、突然声が聞こえてきたので、部屋中全員が驚いていた。

「キャサリーン。い、いつ来たのですか」

「たった今ですよ。そこにいる魔族、ちょっと訳ありみたいですから、今は見逃してあげましょう。それよりも、今はあなたですね」

 突然現れたキャサリーンが、アリエスに近付いていく。

「魔力を放出させて鎮めるなんていうのは、素人のやり方です。私たちは聖女なのですから、この方法くらい知っておきなさいと思いますね」

 キャサリーンはそう言いながら、アリエスの両手をつかむ。
 すうっと深呼吸をすると、アリエスに対して魔力を流し込み始める。

「聖女の魔力は救いの魔力。どんな魔力ともなじみ、同調し、乱れを整えるもの。さあ、どうですか?」

「あっ、なんだか温かくて、落ち着いてきます」

 キャサリーンの魔力が自分の中に流れ込んできたのを感じて、アリエスはなんだかぽかぽかとした気持ちになってくる。
 同時に、聖女の魔力が自分中に流れ込んできて反発しないことに驚かされていた。なぜなら、アリエスの魔力は元々が魔王の魔力だからだ。
 つまり聖女へと転生した時に、魔力の質が魔王のものから聖女のものへと変換されたということを示している。
 この事実に、アリエスはほっとしたような残念なような複雑な気持ちになっていた。

「ほら、これでもう大丈夫です」

 キャサリーンが声をかけると、アリエスは目を開ける。

「あっ、アリエス様。見て下さい!」

 カプリナが叫ぶので窓の外へと視線を向ける。
 なんと、さっきまで降り続いていたはずの雪が、アリエスの魔力がおさまると同時にやんでいたのだった。
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