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第118話 聖女な元魔王
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パキッ……。
「なっ!」
防御魔法に亀裂が入ったのを見て、アリエスは驚愕の表情を浮かべている。
それもそのはず。この状態で攻撃を跳ね返すガードインパクトを使えば、自分にもダメージが入る可能性が高いからだ。
頑丈だった魔王の体でなら余裕で耐えられるだろうが、まだ十一歳という幼い人間の体だ。この状態で放って耐えられるかどうかは疑問なのである。
「ふはははっ! どうした、跳ね返すんじゃなかったのか?」
焦った顔を見て、ラースの表情に余裕の笑みが浮かぶ。
こうしている間にも防御魔法には亀裂が段々と入っていく。このままでは防御が破られてしまう。
(やむを得まい。このまま相打ち覚悟で放ってやる!)
アリエスは覚悟を決める。
「ガード……」
その瞬間、アリエスの前に何かが割って入る。
「魔王様、我らが盾になります」
「いつも助けられていたのですから、こういう時くらい返させてください」
「あなたたち……」
先程アリエスが助けた魔族たちだった。自分たちが肉壁になると、防御魔法の代わりになると申し出てきたのだ。
「ありがとうございます。必ずや、このラースは私の手で鉄槌を下してくれます」
魔族の二人にお礼を言うと、アリエスは再び表情を引き締める。
「ガード、インパクト!」
アリエスが魔法を発動すると同時に、防御魔法のひびがさらに大きくなる。そして、跳ね返しきれなかったラースの力が、防御魔法を砕いてアリエスたちに襲い掛かってくる。
「なんの、これしき!」
「魔王様は、俺たちが、守る!」
二人の魔族がアリエスの身代わりとなって衝撃のすべてを受けている。
「大丈夫ですか、お二人とも!」
すべての衝撃が過ぎ去り、アリエスは心配になって魔族たちを確認しようとする。
「はい、大丈夫ですとも」
「頑丈だけが取り柄ですからね、俺たちは」
にっこりと微笑んでいるものの、魔族たちは全身傷だらけだ。
すぐにでも治してあげたいものだが、ラースがどうなったのか、そちらの確認が先だ。回復中に襲われれば、その方が危険なのだから。
「ふははははーっ! 俺様は不死身、俺様は強いのだ! 死ねえっ、旧時代の魔王よ!」
やはり中途半端に跳ね返すことになったのが原因か、ラースは思った以上にダメージを受けていなかった。
不気味に笑いながら、再びアリエスに襲い掛かってくる。
「まったく、頑丈さだけならピカイチですね!」
アリエスはすぐさま防御魔法を展開しようとする。
ところが、ここでラースは予想外の行動に出てきた。
「させるかっ、おらぁっ!」
なんと、手に持っている棍棒を投げつけてきたのだ。
あまりにも予想外の行動だっただけに、アリエスは思わず面食らってしまう。
そのために回避行動が取れない。
(いかん、このままでは食らってしまう。だが、体が思うように動かんぞ)
内なる魔王が動こうにも、さすがに十一歳の少女の体がいうことを聞いてくれなかった。
このまま直撃してしまうのか。そう思った時だった。
「危ない、アリエス様!」
また誰かがアリエスの前に飛び込んできた。かと思うと、アリエス目がけて飛んできた棍棒を、見事に叩き落していた。
目の前に立っていたのは、予想もしない人物だった。
「大丈夫ですか、アリエス様」
「サハー、護衛なのに遅いですよ」
「アリエス様が勝手に動きすぎるんですよ。まったく、我に返った魔族たちを説得するのに、どれだけ時間がかかったと思ってらっしゃるんですか……」
アリエスの反応に、大きなため息をつくサハーである。
「お前は、サハーか。くそっ、あの時に死んだのではなかったのか」
「おいおい、勝手に殺さないでくれませんかね。確かに、あんたに仕込まれた毒のせいで死にかけはしましたけどね」
「くそっ、ディサイトの仕込んだ毒を消し去ったというのか」
「ああ、あの日陰者ですか。悪いですが、あの方なら私の浄化魔法で消し去りましたよ。まったく、あれがお前をそそのかして、私がいなくなった後の魔王軍を好き勝手していたようですね」
「ぐっ……」
アリエスはラースの質問に答えることなく、すでに討伐済みだということを告げる。そのことを聞かされたラースは、さすがに分が悪いと感じたのか、表情に焦りの色が見え始めた。
「わ、分かった。降参する。俺が悪った。だから、このまま見逃してくれ」
なんとも醜いものである。劣勢になったかと思えば、急に命乞いを始めていた。
さすがのアリエスも、これには言葉もない。
よくもこんな情けない魔族が、自分の育てた魔王軍を好き勝手してくれたものだと呆れ返っている。
だが、アリエスはラースに向けて笑顔を見せる。
「分かりました。私は許しますよ、聖女ですから」
にっこりと微笑んで見せると、ラースは安心したような表情を見せる。
ところが、アリエスはにこにことした表情を浮かべながら、さらに言葉を続ける。
「ですが、みなさんがあなたのことを許すでしょうかね。ねえ、ヴァコル様?」
「ああ、こんなやつは放っておけないな」
アリエスが振り向いた先には、怒りの感情を爆発させたヴァコルの姿があったのだった。
「なっ!」
防御魔法に亀裂が入ったのを見て、アリエスは驚愕の表情を浮かべている。
それもそのはず。この状態で攻撃を跳ね返すガードインパクトを使えば、自分にもダメージが入る可能性が高いからだ。
頑丈だった魔王の体でなら余裕で耐えられるだろうが、まだ十一歳という幼い人間の体だ。この状態で放って耐えられるかどうかは疑問なのである。
「ふはははっ! どうした、跳ね返すんじゃなかったのか?」
焦った顔を見て、ラースの表情に余裕の笑みが浮かぶ。
こうしている間にも防御魔法には亀裂が段々と入っていく。このままでは防御が破られてしまう。
(やむを得まい。このまま相打ち覚悟で放ってやる!)
アリエスは覚悟を決める。
「ガード……」
その瞬間、アリエスの前に何かが割って入る。
「魔王様、我らが盾になります」
「いつも助けられていたのですから、こういう時くらい返させてください」
「あなたたち……」
先程アリエスが助けた魔族たちだった。自分たちが肉壁になると、防御魔法の代わりになると申し出てきたのだ。
「ありがとうございます。必ずや、このラースは私の手で鉄槌を下してくれます」
魔族の二人にお礼を言うと、アリエスは再び表情を引き締める。
「ガード、インパクト!」
アリエスが魔法を発動すると同時に、防御魔法のひびがさらに大きくなる。そして、跳ね返しきれなかったラースの力が、防御魔法を砕いてアリエスたちに襲い掛かってくる。
「なんの、これしき!」
「魔王様は、俺たちが、守る!」
二人の魔族がアリエスの身代わりとなって衝撃のすべてを受けている。
「大丈夫ですか、お二人とも!」
すべての衝撃が過ぎ去り、アリエスは心配になって魔族たちを確認しようとする。
「はい、大丈夫ですとも」
「頑丈だけが取り柄ですからね、俺たちは」
にっこりと微笑んでいるものの、魔族たちは全身傷だらけだ。
すぐにでも治してあげたいものだが、ラースがどうなったのか、そちらの確認が先だ。回復中に襲われれば、その方が危険なのだから。
「ふははははーっ! 俺様は不死身、俺様は強いのだ! 死ねえっ、旧時代の魔王よ!」
やはり中途半端に跳ね返すことになったのが原因か、ラースは思った以上にダメージを受けていなかった。
不気味に笑いながら、再びアリエスに襲い掛かってくる。
「まったく、頑丈さだけならピカイチですね!」
アリエスはすぐさま防御魔法を展開しようとする。
ところが、ここでラースは予想外の行動に出てきた。
「させるかっ、おらぁっ!」
なんと、手に持っている棍棒を投げつけてきたのだ。
あまりにも予想外の行動だっただけに、アリエスは思わず面食らってしまう。
そのために回避行動が取れない。
(いかん、このままでは食らってしまう。だが、体が思うように動かんぞ)
内なる魔王が動こうにも、さすがに十一歳の少女の体がいうことを聞いてくれなかった。
このまま直撃してしまうのか。そう思った時だった。
「危ない、アリエス様!」
また誰かがアリエスの前に飛び込んできた。かと思うと、アリエス目がけて飛んできた棍棒を、見事に叩き落していた。
目の前に立っていたのは、予想もしない人物だった。
「大丈夫ですか、アリエス様」
「サハー、護衛なのに遅いですよ」
「アリエス様が勝手に動きすぎるんですよ。まったく、我に返った魔族たちを説得するのに、どれだけ時間がかかったと思ってらっしゃるんですか……」
アリエスの反応に、大きなため息をつくサハーである。
「お前は、サハーか。くそっ、あの時に死んだのではなかったのか」
「おいおい、勝手に殺さないでくれませんかね。確かに、あんたに仕込まれた毒のせいで死にかけはしましたけどね」
「くそっ、ディサイトの仕込んだ毒を消し去ったというのか」
「ああ、あの日陰者ですか。悪いですが、あの方なら私の浄化魔法で消し去りましたよ。まったく、あれがお前をそそのかして、私がいなくなった後の魔王軍を好き勝手していたようですね」
「ぐっ……」
アリエスはラースの質問に答えることなく、すでに討伐済みだということを告げる。そのことを聞かされたラースは、さすがに分が悪いと感じたのか、表情に焦りの色が見え始めた。
「わ、分かった。降参する。俺が悪った。だから、このまま見逃してくれ」
なんとも醜いものである。劣勢になったかと思えば、急に命乞いを始めていた。
さすがのアリエスも、これには言葉もない。
よくもこんな情けない魔族が、自分の育てた魔王軍を好き勝手してくれたものだと呆れ返っている。
だが、アリエスはラースに向けて笑顔を見せる。
「分かりました。私は許しますよ、聖女ですから」
にっこりと微笑んで見せると、ラースは安心したような表情を見せる。
ところが、アリエスはにこにことした表情を浮かべながら、さらに言葉を続ける。
「ですが、みなさんがあなたのことを許すでしょうかね。ねえ、ヴァコル様?」
「ああ、こんなやつは放っておけないな」
アリエスが振り向いた先には、怒りの感情を爆発させたヴァコルの姿があったのだった。
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