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第119話 決着を見守る元魔王
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ラースを目の前に、アリエスはにっこり微笑んでいる。
「私は聖女だから許します。ですが、みなさまはどうでしょうかね」
ラースを取り囲むように、多くの人物が立っている。駆けつけたのはヴァコルだけではなかったようだ。
「まったく、よくも今までこき使ってくれたものだな」
「戦いたくないのに、こんな戦いに駆り出して……許せない」
ずらりと、知らない間に魔族たちがラースを取り囲んでいた。
「お前たち……。この俺様に歯向かおうっていうのか?」
囲まれながらも、ラースはまだ強気の姿勢を崩していない。これでも魔王を名乗っていたのだ。簡単に弱気なところなど見せられるかというものである。
「当たり前だろう? いいように使われてポイッとされることを、誰が喜ぶかっていうのですかね」
サハーは二股の槍をラースへと突きつけている。
「私にアリエス様を襲わせた上に、口封じまでしようとしたことを忘れられるわけがないのです。あれからというもの、どうやってお前に復讐すべきか考えていました」
そういうサハーの槍からは、ひんやりとした空気が漏れ出している。
「まさかこのような形で、その願いが叶うことになるとは思いませんでしたね!」
サハーが槍を振り抜くが、ラースの体はかなり頑丈なので、表面を軽く斬ることしかできなかった。
そのためか、ラースの表情に余裕が戻ってくる。
「ふははははっ。しょせんお前らなんぞ雑魚も雑魚。この俺様の敵ではないのだ!」
笑いながらラースは立ち上がって笑い始める。
だが、その笑いもそう長くは続かなかった。
「は?」
パキパキという音が聞こえてきたため、ラースの動きが止まる。
「なんだ、この音は」
ラースは視線を自分の体に向ける。
その視線の先では、自分の体が凍り付き始めていたのだ。
「な、これはさっきのか!」
そう、サハーの振り抜いた槍で傷ついた場所から、魔法が発動しているのである。
「何のこれしき!」
ラースが力を込めると、魔法が止まってしまう。
どうだといわんばかりに、ラースは不敵な笑みを浮かべている。
「ほう、その程度の魔法を止めたくらいで笑うのですか。おめでたい奴ですね」
呆れた声を出しているのはヴァコルだ。ヴァコルはラースに杖を向けている。
(おや、ヴァコルが杖を持っているのは珍しいな。さっきは持っていなかったというのに、隠し持っていたのか)
じっとヴァコルの方を見てしまうアリエスである。
ヴァコルの方はそのアリエスの視線に気が付いたらしく、にこっと笑っている。
「ばかめ! さっきのようにはいかんぞ!」
ラースは余裕の笑みを浮かべている。
「そうか。ならば試してみるか」
ヴァコルは魔法を放つ準備をする。
「グラウンド・ピアッシング・ソーン!」
「またそれか。二度目は通じ……」
ヴァコルが魔法を放つと同時に、余裕を見せたラースだったが、同じ魔法なのにさっきとまったく様相が違っていた。
「ごふっ!」
鋭い岩の槍が、ラースの体を何本も貫いていたのだ。
「なんだ……これは……」
予想もしなかった魔法に、ラースは完全に動きが固まってしまっている。
「先程は手加減していたことに気が付かないとは……。そんな相手の力量も見極められないのが魔王とは、魔族も不幸なものですね」
「なん……だと……?」
驚きの表情を浮かべるラースに、もう一度ヴァコルの魔法が襲い掛かる。
「ぐはっ!」
突き刺さった槍から、さらに岩が飛び出し、それはとても見ていられないくらいの酷い状態になっていた。
パチンとヴァコルが指を鳴らすと、岩の槍が消えてラースが地面へと倒れ込む。
「未遂に終わったわけですから、僕からはこのくらいで勘弁してあげましょう。残りは、周りにいらっしゃる魔族たちがやってくれるでしょうからね」
「ここは私にお任せ下さい、アリエス様。さすがにこれ以上の光景を、あなた様に見せるわけにはまいりません」
「分かりました。ですが、油断はしない下さい。そいつの執念深さは、あなたもよく知っているでしょうから」
「はっ、重々気をつけます」
魔族のことだから、魔族たちに決着をつけさせようと、アリエスとヴァコルは引き揚げようとしている。
ところが、ラースはその姿に気が付いて、いきなり立ち上がる。
「おのれ、逃がさぬぞっ!」
「うわぁっ!」
瀕死のはずのラースが立ち上がったことで、周りにいた魔族たちが驚いている。
「俺はただでは死なぬ。お前だけでも……、お前だけでも巻き添えにしてくれる!」
ラースはアリエスに向かって突進をしてくる。
諦めの悪いラースの姿に、アリエスはため息が出てしまう。
「ハイシールド」
防御魔法を張り、ラースの突進を防ぐ。
「ガードインパクト」
淡々と跳ね返すと、さすがに満身創痍のラースには耐えるだけの力がなく、大きく吹き飛ばされる。
「醜い姿と声です。もう見せてくれるな。焼き尽くせ、フレイムジャベリン!」
追い打ちをかけるようにヴァコルが魔法を放つ。
「俺様が……、俺様がこんなことで! ぐぎゃああっ!!」
炎の強力な槍に貫かれたラースは、空中で燃え尽きてしまうのだった。
「私は聖女だから許します。ですが、みなさまはどうでしょうかね」
ラースを取り囲むように、多くの人物が立っている。駆けつけたのはヴァコルだけではなかったようだ。
「まったく、よくも今までこき使ってくれたものだな」
「戦いたくないのに、こんな戦いに駆り出して……許せない」
ずらりと、知らない間に魔族たちがラースを取り囲んでいた。
「お前たち……。この俺様に歯向かおうっていうのか?」
囲まれながらも、ラースはまだ強気の姿勢を崩していない。これでも魔王を名乗っていたのだ。簡単に弱気なところなど見せられるかというものである。
「当たり前だろう? いいように使われてポイッとされることを、誰が喜ぶかっていうのですかね」
サハーは二股の槍をラースへと突きつけている。
「私にアリエス様を襲わせた上に、口封じまでしようとしたことを忘れられるわけがないのです。あれからというもの、どうやってお前に復讐すべきか考えていました」
そういうサハーの槍からは、ひんやりとした空気が漏れ出している。
「まさかこのような形で、その願いが叶うことになるとは思いませんでしたね!」
サハーが槍を振り抜くが、ラースの体はかなり頑丈なので、表面を軽く斬ることしかできなかった。
そのためか、ラースの表情に余裕が戻ってくる。
「ふははははっ。しょせんお前らなんぞ雑魚も雑魚。この俺様の敵ではないのだ!」
笑いながらラースは立ち上がって笑い始める。
だが、その笑いもそう長くは続かなかった。
「は?」
パキパキという音が聞こえてきたため、ラースの動きが止まる。
「なんだ、この音は」
ラースは視線を自分の体に向ける。
その視線の先では、自分の体が凍り付き始めていたのだ。
「な、これはさっきのか!」
そう、サハーの振り抜いた槍で傷ついた場所から、魔法が発動しているのである。
「何のこれしき!」
ラースが力を込めると、魔法が止まってしまう。
どうだといわんばかりに、ラースは不敵な笑みを浮かべている。
「ほう、その程度の魔法を止めたくらいで笑うのですか。おめでたい奴ですね」
呆れた声を出しているのはヴァコルだ。ヴァコルはラースに杖を向けている。
(おや、ヴァコルが杖を持っているのは珍しいな。さっきは持っていなかったというのに、隠し持っていたのか)
じっとヴァコルの方を見てしまうアリエスである。
ヴァコルの方はそのアリエスの視線に気が付いたらしく、にこっと笑っている。
「ばかめ! さっきのようにはいかんぞ!」
ラースは余裕の笑みを浮かべている。
「そうか。ならば試してみるか」
ヴァコルは魔法を放つ準備をする。
「グラウンド・ピアッシング・ソーン!」
「またそれか。二度目は通じ……」
ヴァコルが魔法を放つと同時に、余裕を見せたラースだったが、同じ魔法なのにさっきとまったく様相が違っていた。
「ごふっ!」
鋭い岩の槍が、ラースの体を何本も貫いていたのだ。
「なんだ……これは……」
予想もしなかった魔法に、ラースは完全に動きが固まってしまっている。
「先程は手加減していたことに気が付かないとは……。そんな相手の力量も見極められないのが魔王とは、魔族も不幸なものですね」
「なん……だと……?」
驚きの表情を浮かべるラースに、もう一度ヴァコルの魔法が襲い掛かる。
「ぐはっ!」
突き刺さった槍から、さらに岩が飛び出し、それはとても見ていられないくらいの酷い状態になっていた。
パチンとヴァコルが指を鳴らすと、岩の槍が消えてラースが地面へと倒れ込む。
「未遂に終わったわけですから、僕からはこのくらいで勘弁してあげましょう。残りは、周りにいらっしゃる魔族たちがやってくれるでしょうからね」
「ここは私にお任せ下さい、アリエス様。さすがにこれ以上の光景を、あなた様に見せるわけにはまいりません」
「分かりました。ですが、油断はしない下さい。そいつの執念深さは、あなたもよく知っているでしょうから」
「はっ、重々気をつけます」
魔族のことだから、魔族たちに決着をつけさせようと、アリエスとヴァコルは引き揚げようとしている。
ところが、ラースはその姿に気が付いて、いきなり立ち上がる。
「おのれ、逃がさぬぞっ!」
「うわぁっ!」
瀕死のはずのラースが立ち上がったことで、周りにいた魔族たちが驚いている。
「俺はただでは死なぬ。お前だけでも……、お前だけでも巻き添えにしてくれる!」
ラースはアリエスに向かって突進をしてくる。
諦めの悪いラースの姿に、アリエスはため息が出てしまう。
「ハイシールド」
防御魔法を張り、ラースの突進を防ぐ。
「ガードインパクト」
淡々と跳ね返すと、さすがに満身創痍のラースには耐えるだけの力がなく、大きく吹き飛ばされる。
「醜い姿と声です。もう見せてくれるな。焼き尽くせ、フレイムジャベリン!」
追い打ちをかけるようにヴァコルが魔法を放つ。
「俺様が……、俺様がこんなことで! ぐぎゃああっ!!」
炎の強力な槍に貫かれたラースは、空中で燃え尽きてしまうのだった。
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